大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 12月3日 二つ目の玄関(1)

2023-12-03 13:47:23 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 12月3日 二つ目の玄関(1)






 彼女の家には玄関が二つある。
ひとつは、ドア。
ご家庭にある玄関ドアをイメージして貰えばおおむね合っているだろう、普通のドアだ。
もうひとつは引き戸。
星のような放射状の模様がある型板ガラスを使った、古い引き戸だ。
開け閉めするたびガラガラうるさいという。
 ドアが二つあるというと二世帯住宅を想像するが、そうではない。
彼女の家は普通の一軒家だ。
玄関が二つあるということと、それに付随して変則的な間取りになっている以外、特筆するところはない。
 なんでも古い家を壊すとき、祖父母の希望でわざわざ残したらしい。
つまり、引き戸のある場所が元々は玄関だったわけだ。
 それを残して新しい家を建てた。
そしてわざわざ新しい玄関も作った。
そういうことらしい。

「 なんだってまた、そんなことを?」
「 死んだ人が訪ねてくるからだよ。」

彼女が当たり前のようにそう答えるものだから、一層混乱した。

 曰く。
集落で死人が出ると、初七日から四十九日を終えるまでの間に、彼女の家に故人が訪ねてくる。
夜明け頃。
あるいは夕方が多いそうだ。
 薄暗いなか、がしゃがしゃと引き戸を叩く音がする。
見に行くと、ガラスの向こうに人影がある。
型板ガラスなので、細かいところはわからない。
ぼんやりとした、人型の影だ。
それがじいっと立っている。
 ねじ締り錠を回し、引き戸を開ける。
そこには誰もいない。
ついさっきまで、人影があったはずなのに。
そういうことが、あるのだそうだ。

「 そのあとは?」
「 亡くなった人の家に電話して、来たよ~って連絡してたかな。」
「 なんのために?」
「 それは、よくわかんないんだけど。」












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日々の恐怖 11月24日 Reserved seats(2)

2023-11-24 15:13:15 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 11月24日 Reserved seats(2)






 私が頷くのを見届けてから、彼は話しはじめた。

「 いや、大した話ではないんですけどね。
親父が定食屋を改装してこの喫茶店をはじめてから、なぜだかあんなことになったんです。
あの予約席のプレート、いくら片付けても、朝になったら勝手にあそこに置かれてるんですよ。     
 もちろん、誰も触ったりしてませんよ。
プレートを捨てても、いつの間にかあそこに戻ってきてるんです。
 それにあの席、妙にひんやりとして寒気がすると思ったら、
別の時は、今しがたまで誰かが座ってたような温もりが残っていることもあって。
正直、気味が悪いんです。
 一度椅子ごと撤去したこともあったんですがね。
次の日私が来たら、店の窓ガラスが全部割れていて、それも内側から。
 その後も雨漏りやら空調の不調が続いて、結局椅子を戻したんです。
そしたら、店内の不具合もピタリと止まって。
その後はもう、あそこの席は初めからないものとして、無視することに決めました。
放っておけば、特に害はないのでね。」

思いがけない話が聞け、私はますます呆気にとられた。
予約席は亡き戦友のもの、という話に勝るとも劣らない、不可思議な話だ。

「 お父様は、何かご存知だったのでしょうか?」
「 何も知らなかったと思いますよ。
僕と違って真面目なもんだから、あの席をどうにかしようと、真剣に考えてましたね。
ここは俺の店なんだから俺が座ってやる、なんて言って、一日中座ってたこともありましたよ。
席がひんやりしてたもんだから次の日風邪を引いて、それが元の肺炎で亡くなりましたけどね。」
「 それは、それは・・・・。」

私はかける言葉が見つからなかった。
 彼の言い方だと、先代の死はまるであの予約席のせいなのだが、店主はあまりにもあっけらかんとしていた。

「 その、戦友云々の話がどこからきたかはわかりませんけど、そんないい話になっているんなら、
大歓迎ですよ。
親父も僕も、そこの席の由来を聞かれた時はいつも適当にはぐらかしてましたから、
お客さんの間で憶測が憶測を呼んだ結果なんでしょうけど。」

店主はそう言って笑った。
私はコーヒーを一口含み、この店主にこの味が付いていれば、どんな噂が出回っても客足に影響はないだろうと、心中頷いた。













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日々の恐怖 11月20日 Reserved seats(1)

2023-11-20 20:52:22 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 11月20日 Reserved seats(1)





 雰囲気の良いジャズ喫茶だった。
中に入るとコーヒーのかぐわしい香りが漂い、音楽は耳に心地よい。
何時間でも居座れるような空間で、実際店内にはいつも、長居の常連客の姿があった。
 現在切り盛りしている店主は二代目で、初代は戦後の混乱期、小さな定食屋からこの店を始めたそうだ。
そして晩年、念願だったジャズ喫茶へ趣旨変更したらしい。
 この店のカウンターの一番奥の席には、いつでも予約席のプレートが置かれている。
しかし、実際に誰かが座っていることはない。
その席は、先代店主の戦友専用のものらしい。
 先代店主は戦時中、出征先で戦友たちと夢を語らった。
そして、いつか自分が大好きなコーヒーとジャズの店を開くから、その時はお前たち必ず来いよと約束したそうだ。
先代店主はなんとか生きて帰ることができたが、戦地で命を散らした者も大勢いた。
そんな戦友たちとの約束を守るため、先代店主は彼ら専用の席を作り、他の誰も座らないよう予約席のプレートを置いたのだという。
 それは、息子である今の店主にも引き継がれている。
雨の日や薄曇りの日には、その席にじっと腰掛ける若い男性の姿が、うっすら見えることもあるのだという。

店主はコーヒーを淹れながら、

「 なんですか、それは!
常連さんたちに担がれたんでしょう。」

と、私の話を豪快に笑い飛ばした。
知人から聞いた喫茶店の不思議話を、店主ご自身からも伺おうと、店を訪ねた時のことだ。
呆気にとられる私にコーヒーを出しながら、店主はまだクスクスと笑っていた。

「 うちの店の由来は、確かにその通りですけどね。
親父は若い頃病弱で、戦争には行かずに済んだんですよ。
だから、約束を果たそうにも戦友はいないんです。」
「 では、あの予約席は…?」

私が視線をやった先は、カウンターの一番奥の席だった。
そこには知人の話の通り予約席と書かれた金色のプレートが置かれ、椅子には上等そうなクッションが乗せられていた。

「 あぁ、あれはですね。」

店主は途端に渋い顔になる。
店内を見渡し、私の他にはまだ誰も客がいないことを確認した。

「 絶対に他言しないと約束してください。
客足に響くと困りますから。」












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日々の恐怖 11月11日 校庭を通る人達 

2023-11-13 12:15:34 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 11月11日 校庭を通る人達 






 生前小学校の教員をしていた祖父が大学生だった頃の話です。
ちなみに場所は宮城県です。
 先に学校を卒業して県内の小学校に勤めていた先輩に、

「 年末年始の宿直を代わってほしい。」

と頼まれた祖父は、先輩の頼みをバイト感覚で引き受けました。
 その小学校は村外れに建っていて、学校の西の方には村の人たちの作業場(木を切ったりとか何かしていたそうです)があり、
学校を挟んで、東の方には村の人たちの家がありました。
学校の北側に作業場と村の人たちの家をつなぐ道があって、校舎はその道の南側に建っていました。
 ところが、日が暮れると村の人たちは、西の作業場から東の自宅まで、校舎の北の道ではなく、
校舎の南側、つまり校庭の中を通って帰っていたそうです。
宿直係の祖父としては校庭に勝手に入られると困るんですが、村の人たちは、

「 北の道は験が悪いから。」

と言って校庭を通りたがります。
祖父は、よく分からないけど仕方がないと思い、

” 西門から入ってきた人影が東門から出ていく姿を確認できたらヨシ。”

と思っていました。
 そんな風に何日か過ごして、年が明けました。
その日は雪が降っていて、夜だけど変に明るかったそうです。
いつも通り宿直室で過ごしていた祖父は、東門(村の人たちの家がある方)から西門(作業場がある方)へ抜ける人影を見ました。
 いつもと方向が逆なのでおかしいと思ったそうです。
夜に作業場に行くのも変な話ですし、そもそも新年早々です。
不思議に思った祖父が外に出てみると、雪に残っているはずの足跡がついていません。
ぞっとしましたが、まあ敷地から出ていったからいいかと思い、部屋に戻って普通に寝ました。
 その後、戻ってきた先輩にその話をしましたが、先輩も、

「 へーそうなんだ。」

という感じで特に変わった反応はなく、無事にバイト代をもらって帰りました。
 ところがその数カ月後、先輩から連絡がありました。
先輩は、

「 東から西に行った人の顔は見なかったな?」

と確認してきました。
そして、

「 お前は卒業したら地元(群馬です)に帰って就職するんだろ?
もうこの村には来るなよ。
特に西側の作業場には絶対に行くな。」

と念押ししてきたそうです。
 祖父は、

” 言われなくても特に用ないし行かないけど・・・。”

と思ったそうです。
 祖父の昔話はそれだけです。
その小学校はとっくに廃校になりました。
私が、

「 昔は宿直の仕事があったんでしょ?
何か怖い話ないの?」

とねだった時にしてくれた話ですが、オチもないし、父も祖父からこの話を聞いたことはないそうです。
なんだかよく分からない話です。












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日々の恐怖 11月6日 子供の幽霊

2023-11-06 17:32:29 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 11月6日 子供の幽霊






 友人Kの家には子供の幽霊がいた。
右の頬に赤アザのある、小さい女の子だった。
歳は小学校低学年か、もしかしたら未就学児だったかもしれないというから、幼いと言っていい。
ごく普通のシャツとスカート姿だったけれど、季節を問わず、あかね色のはんてんを着ていたという。
その子はKが中学生の頃に現れるようになったそうだ。
 最初に見つけたのは中廊下だった。
L字の廊下を曲がっていく背中を見たのだという。
驚いて追いかけたが、女の子は煙のように消えていた。
廊下の先の部屋も調べたが、見つけることはできなかった。
 その日以降、Kの家の中では女の子がたびたび目撃されるようになった。
最初はKだけが見ていたが、そのうち家族も見るようになった。
 女の子は、家の敷地の中ならどこにでも現れた。
母親の家庭菜園を眺めていることもあれば、リビングで飼い猫にちょっかいを出していることもあった。
家族の誰かがそこへ来ると、あっという顔になって物陰へ隠れてしまう。
そしてそのまま消えてしまうのだそうだ。

「 視界から外れると、消えるんだよ。」

 ほんの一瞬、目を離せば、その隙に消えてしまう。
なにかの影に隠れて視界から消えると、そのままいなくなる。
そういう存在だったそうだ。
Kは躍起になって女の子を捕まえようとしたが、一度としてそれが叶ったことはなかった。
 女の子は、その幼い容姿からは想像もできないほど機敏だった。
あっという顔をしてから、逃げ出すまでがとても素早いらしい。
しかもずいぶん身軽で、助走もつけずにぽんと跳ねてソファーを飛び越えて消えたことがあるそうだ。
 女の子は、Kが高校三年生の時まで家にいた。
進学に合わせて上京することになり、荷物を整理していた時に会ったのが最後だという。
トイレに行って帰ってくると、自室に積んだ段ボールを見上げていたそうだ。
いつも通り、あっという顔で戻ってきたKを見た。
けれどいつもと違って、すぐには逃げなかったという。

「 俺、もうじき出てくんだよ。」

そのときは、何故だかKも捕まえる気にはならなかったそうだ。
代わりに、そんな風に話しかけた。
 女の子はしゅんとした顔で、段ボールの影に隠れて、消えた。
それきり、女の子は姿を見せなかったという。

「 家族も見かけなくなったって言うんだから、いなくなったんだろうな。」

Kはそう言っていた。
そうかもしれないと思う一方、私は別の可能性も考えていた。
 最初に女の子を見つけたのは、Kだった。
家族が見えるようになったのは、その後だ。
そしてKが家を去ると、家族が女の子を見ることはなくなった。
もしかしたら、Kの存在が女の子と家族を繋ぐ唯一の接点だったのではないか。
私は話を聞いて、そんなことを思い付いたのだ。
 女の子はいなくなったのではなく、接点を失って誰にも見えなくなったのかもしれない。
そして今もその家で、誰にも見られないまま暮らしているのかもしれない。
女の子は誰にも気づかれずに、一人、家の中にいる。
 もちろん、ただの空想だ。
証拠も確信もない。
だから彼にその思い付きは言わなかった。

「 その子、捕まえたらどうする気だったんだ?」

代わりにそう聞いてみると、Kは少し考えて、

「 名前を聞く・・・・、かなぁ。」

と答えた。












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日々の恐怖 10月30日 石鹸

2023-10-30 17:09:05 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 10月30日 石鹸






 小学校の教員をしていた友人から聞いた話である。
当時友人が勤務していた小学校は、都市部と田園部が半々といった場所だった。
 ある初夏の頃、学校の校庭にある手洗い場の石鹸が盗まれるという小さな事件が続いた。
水道の蛇口の根元に縛り付けられた、赤いビニールネットに入ったレモン石鹸である。
新しいものに付け替えても、すぐに何者かがカッターのようなものでネットを切り裂いて、
中の石鹸を持ち去ってしまうのである。
 始めのうちは、

「 物好きもいるものだ。」

と職員室の軽い話題でしかなかったが、事件が頻発し目撃者がだれもいないという事で、
やがて校舎の内外を管理する教頭が乗り出してきた。
 教頭は、

「 いたずら者を捕まえて、しっかりと指導しなくては!」

と意気込んで、付近の見回りを強化したのだが、犯人の目星もつけられないまま夏休みになった。
休み中も犯行はぽつぽつと続き、一部の児童は”学校の七不思議だ!”と色めき立った。
 やがて秋になり運動会も終わった頃、台風がやって来て周囲の小川を氾濫させたり、
校庭のヘチマ棚を飛ばしたりと、この地域にも多少の被害をもたらした。
台風騒ぎの最中は例の石鹸盗難事件はなかったのだが、その後は1学期同様に続いたので管理する教頭を悩ませた。
 その頃、教頭は奥さんから自宅の雨どいの掃除を頼まれていた。
どうやら先の台風で落ち葉が雨どいに詰まってしまったようである。

「 雨水が溢れて困るから早くして!」

とせっつかれた教頭は、高い所は大の苦手で気乗りはしなかったが梯子をかけて渋々屋根に上ったところ、
我が目を疑った。
雨どいの中が黄色いのである。

「 まさか・・・・?}

と目を凝らしたがやっぱり黄色。
詰まっていたのは落ち葉ではなく、なんとものすごい数のレモン石鹸であった。
 しかもそれらを良く見ると使い古して小さくなったものではなく、
どうも学校で度々盗難にあっていた、あのレモン石鹸のようだった。

「 何で俺の家の雨どいにこんなものが・・・?」

と恐怖と冷や汗でクラクラしつつも、教頭は丸一日がかりで石鹸を全部取り除いたそうだが、
数えてみると60数個もあったという。
 結局のところ、未だに目撃者すらいないこの謎の石鹸騒動の犯人はというと、
どうもカラスしか考えられないのではという結論に達した。
 学校から教頭の家まで約3キロ。
自家用車で通勤していた訳だが、カラスが校庭の水道の所から嘴でネットを破り、
石鹸をくわえて、よりによって何故か教頭の家の雨どいに運んで・・・?
はたしてカラスにそんな芸当ができるのだろうか?
それとも別の何かの仕業なのだろうか?
 実際に他に六つあったかどうかは知らないが、そこでこの出来事は正式に”学校の七不思議”に昇格する事となったそうである。
その後、校庭の水道のレモン石鹸はポンプ式のものに付け替えられたのは言うまでもない。












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日々の恐怖 10月22日 不動産屋(6)

2023-10-22 09:13:43 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月22日 不動産屋(6)






 一昨日、男の姉がKさんに謝罪に来てくれたのだという。
そして男の奇怪な行動について話してくれた。
 姉が男から聞いた話によると、男は彼女が自殺をした後、部屋に篭りがちになっていた。
しかし夜になると誰からか見られているような不安な気持ちになる。
気になって窓から外をそっと覗いてみると、近くの道路に死んだはずの彼女がこちらを見て立っていた。
女性はしばらくそのままでその後、どこかに去っていく。
毎日それが続き、我慢できなくなった男は彼女の後を追うことにした。
 彼女に気づかれないよう静かに後を追うと、Kさんの住んでいるアパートに行き着いた。
しかし彼女は部屋の前まで来ると姿は消えてしまう。
彼女が部屋に入ったのだと思って、部屋の前まで忍び寄り、様子を伺うのだがどうにもならない。
どうにもならないイライラが、死んでまで自分に付きまとう彼女に対する怒りに変わり、
男は発作的にあのような行為をしてしまう。
そういう行動を何週かごとに繰り返していたようだ。
 神妙な面持ちで話をするKさんを見て俺は少しあきれた。
確かに気持ちの悪い話ではあるのだが、男は精神を病んでいたので幻覚を見ている可能性があるし、
なによりも心霊やオカルトを信じていないはずのKさんが、そんな話を鵜呑みにするのはおかしいと思ったからだ。
 そんな俺の気持ちを感じたのかKさんが、

「 実は昨日の夜・・・・。」
「 えっ!また男が来たんですか?」

反射的に俺が聞くと、

「 いや・・・、違うんだけど・・・・。
やっぱいいです。」

と何か歯切れの悪い返事だった。
 腑に落ちず、さらに聞こうとしたが彼のあまりに青ざめた表情を見て気の毒になり、それ以上の話を聞くのをやめた。
結局、Kさんは次の部屋が見つかるまで知人の家に泊めてもらうことで終わり、彼と別れた。
実際に自分が心霊現象にあったわけではないですが、いわくつきの部屋にはこんなトラブルもあったという話です。











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日々の恐怖 10月14日 不動産屋(5)

2023-10-14 10:50:18 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月14日 不動産屋(5)






 俺は警察官から男の素性について聞いて驚いた。
男はKさんの部屋で自殺した女性と知り合いだった。
以前、男は女性と付き合っていたがしばらくして別れたとの事だった。
 しかし女性の方が未練があり、ストーカーになってしまったのだという。
女性はその後自殺、男も女性からの激しいストーカー行為に心を病んでしまい、病院の精神科に通院していたようだ。
 Kさんの部屋に行った動機に関しては、あいまいな事を言っていて良く分らないとのことだった。
結局、男は家族に向かいに来てもらい、そのまま実家で療養することになった。
事件はとりあえず解決し、Kさんも一安心した様子で別れた。

 翌日、仕事に行きMさんに昨日の出来事を話した。

「 幽霊の正体見たり、ですよ。」

俺は得意そうに言い、

「 いわくつきの物件は出る出るというけど、まあ大体現実はこんなもんだよなぁ。」

と二人で笑っていた。
 ところが男が捕まって三日後にKさんから連絡があった。
聞くと、部屋をすぐに解約して欲しいとの事だった。
理由を問いただしたのだがあやふやな態度をとられてしまいどうにもならないので、俺は本人に直接会う事にした。
 Kさんのところに行くと、青白い顔をした本人が待っていた。
解約の理由を俺が問い詰めると、Kさんがうつむき加減に理由を話してくれた。









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日々の恐怖 10月7日 不動産屋(4)

2023-10-07 09:37:26 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月7日 不動産屋(4)





Kさんの住むアパートまでは俺の自宅から自転車で十分位の所にあり、急いで現場に向かった。
 アパートの隣接する道路まで来て遠目に部屋を見ると、アパートの電灯の中に人影が見える。
自転車を降り、静かに歩いてアパートの入り口まで来ると、そこには黒い薄手のジャンパーに青色のジーパン姿の男が、
Kさんの部屋の前で何か怒鳴っているのが見えた。
 警察はまだ来ていなく、どうしようか迷って立ち尽くしていると、男が不意にこちらに顔を向けた。
男は人がいる事に気づいて驚いたが直ぐに顔を隠すように俯き、こちらに向かってくる。
そして入り口で立ち止まっている俺の脇をすり抜けるように男は立ち去ろうとしていたので、
逃げられると思い咄嗟に男の腕をつかんだ。
男は俺の手を振り払い逃げ出そうとしたので、今度は男の腰にしがみついた。
その拍子に男は前のめりになり、地面に俺と共に倒れこんだ。
 男はすぐに立ち上がったのだが、そのさいに片方のスニーカーが脱げた。
しかし、そのまま逃走。
俺も残ったスニーカーを掴み、後を追いかけたが途中で見失ったので追うのをあきらめ、一旦アパートに戻った。
戻ると警察官が来ていてKさんと話していた。
 俺が事の次第を警察官に話していたが、その途中で男が他の警察官に捕まったと連絡が入った。
その後、警察に行き事情聴取をされた男は素直に犯行を認めた。











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日々の恐怖 9月29日 不動産屋(3)

2023-09-29 20:41:44 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 9月29日 不動産屋(3)






 しかし、それから二週間ぐらいが経って、またKさんから以前と同じような事が起きたと言う連絡を受けた。
俺はただ事ではないと思い、彼に直接会って話を聞きくことにした。
それによるとKさんはその日の夜、二時ぐらいまでゲームをしていた。
すると突然、どこからか革靴のコツコツと鳴る足音が聞こえてきた。
足音はだんだんと近づいてきて部屋の前まで来ると止まり、その後ドアを激しく叩く音が聞こえ、それと同時に男の怒鳴り声が聞こえてきたという。
 男は、

「 いい加減にしろ!」
「 もう俺に付きまとうな!」

などと言っていて、十分ぐらいそれが続いた後、静かになったということだった。
 霊とかオカルトが平気なKさんもこれには参ったらしく、青ざめた表情を浮かべていた。
警察に通報しようかどうか考えたが、またその男が来るかもしれないので、その時に通報して現行犯で捕まえてもらうことにした。
 そしてさらに二週間後に、また男が来たのだ。
夜中の一時過ぎあたりに俺の携帯電話が鳴る。
Kさんからで、電話に出るとKさんが興奮気味に、

『 来た来た!聞こえるでしょ!』

そう言うと携帯電話を玄関に向けたらしく、コツ、コツと革靴が地面を叩く乾いた足音が聞こえる。
足音はだんだん大きくなっていき、しばらくして突然止まった。
少し間をおいて、

” ドンッ!ドンッ!”

とドアを激しく叩く音が、それと共に男の怒鳴り声が聞こえた。

『 ひぃっ!
やっ・・・・・、やばい!』

Kさんの押し殺した悲鳴のような声が携帯を通して聞こえてくる。

『 こっ・・・、これはもう警察でしょ!』
「 わかりました警察に連絡してください。
俺もそっちに行きます。」

電話を切り、部屋着であるジャージ姿のままで俺は自宅を出た。











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日々の恐怖 9月19日 不動産屋(2)

2023-09-19 19:49:56 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 9月19日 不動産屋(2)





 興味を持った俺は、Kさんに紹介する部屋の事について聞いてみた。
その部屋は一人暮らしの二十代の女性が半年くらい前に自殺した部屋で、事件後は誰も借り手がついていない物件だった。
実際に部屋を見てみたくなった俺はKさんの担当を代わってもらい、二日後にKさんと共に部屋を見に行った。
 部屋に行く途中、Kさんと話をしたのだが、彼は霊などのオカルトは全く信じていないようで、
以前にもいわくつきの部屋に住んでいたという。
その時も特に霊体験をしたことはなかったそう。
 アパートは築八年ほどの二階建てのごく平凡な建物だった。
以前は近くにある機械の部品組み立て工場で働く、一人暮らしの派遣労働者がほとんど入居者だったようだが、
不況の煽りを受け派遣切りがあったので、今ではアパートの入居率は2割ほどしかいない。
 目的の部屋は、道路から入って一階の一番手前の場所だ。
ドアを開けて中を見たのだが、何の変哲も無いワンルームの部屋だった。
Kさんからも特に意見がなかったのでその日のうちに契約が成立し、次の週には入居した。
 しかしKさんが部屋に住んで一週間ぐらいが過ぎたとき、突然彼から苦情の電話が来た。
Kさんの話によれば、彼が夜中に寝ていると突然、

” ドンッ!ドンッ!”

という大きな音で起こされたという。
飛び起きてドアのほうに向くと、部屋の外で男が何か怒鳴ったりドアを叩いたりしていたそう。
こういった苦情は良くある事で、

「 どこかの酔っ払いが騒いでいるのだろうから大丈夫ですよ。」

と彼をなだめるように説得した。
Kさんもしぶしぶ了承してその場は収まった。










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日々の恐怖 9月12日 不動産屋(1)

2023-09-12 11:08:26 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 9月12日 不動産屋(1)





 俺は一年前から不動産の仕事をしている。
主な仕事は部屋の紹介など。
そこの不動産会社は高校の部活の先輩、Mさんが勤務していて、そのつてで紹介してもらった。
 ある時、二十代ぐらいの男性が部屋を探しに来た。
その男性、Kさんからいわくつきの物件を紹介して欲しいと言われたのだ。
突然の事に要領の得ない俺の様子をみて、先輩のMさんが間に入ってくれた。

「 お客さん、そうゆうものをお探しならこちらへ。」
「 後は俺がやるから大丈夫だ。」

と代わってくれた。
 Kさんが帰った後、Mさんが事情を話してくれた。
Mさんによると時々、Kさんの様にいわくつき部屋を狙ってやってくる客がいるのだそう。
目的は大体二つに別れていて、一つは怖いもの見たさや興味本位で、もう一つは家賃が安いからとの事。
Kさんは後者だった。
 この仕事をしていれば、いわくつきの部屋というモノにいつかはぶつかるのだと思っていたが、まさかそこに自ら住みたいという人がいることに驚いた。
しかしMさん曰く、Kさんの様に自らすすんで部屋に住みたい人は少なくないのだという。

「 霊とかオカルトを信じない人には、ただの格安物件だからな。」

とMさんは笑いながら話していた。









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日々の恐怖 9月5日 オッサンの家(6)

2023-09-05 18:21:31 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 9月5日 オッサンの家(6)





 それからは見知らぬ人達が家を出入りするようになった。
たぶん霊媒師だと思った。
その頃から家の中は変なお香の匂いと、訳の分からない念仏みたいのが聞こえ続け、近所から苦情が来る毎日だった。
 俺の高校の入学式にも両親は顔も見せず、家族バラバラで部屋で過ごす日々が続いた。
夏頃に異音と泣き声は無くなった。
どっかの霊媒師が成功したみたいだと俺は思ったが、誰も居間に寄り付かなかった。
 その後、俺は高校3年になり東京の大学に進学が決まり、母とオッサンと縁を切りたかったので
新聞奨学生の手続きをしてた2月の終わりに、また異音が鳴り始めた。
しかも今度は家中で聞こえるようになった。
 俺は話すタイミングはここしかないと思って、卒業式の次の日に弟と妹に兄から聞いた話をした。
当然、その夜に母とオッサンに呼ばれさんざん怒られた。
その頃、兄は連絡がつかなくなっていたので素直に兄に教えてもらったと話し、オッサンが母に言ってなかった前妻への暴力、
この家を出るために自分がタイミングを見計らっていた事などすべて話した。
母は前妻への暴力とかは知らなかったらしく激しく狼狽していたが、これ幸いに全て吐き出し、
そのまま家を出て友人の家に泊まり上京した。
 その後の顛末は、弟から聞いた話しでは母は実家に詫びを入れ、家に離婚届を置いて、実家に帰り家業の手伝いをしている。
弟と妹はそのまま母について行き、祖父の元で暮らす。
母が置いていった離婚届が提出されていなかったらしく、事後処理は弟がして大変だったようだ。
自分は大学入る際に、先輩に手伝ってもらいオッサンの戸籍から抜け、実父の姓に戻り何事も無く暮らしている。
 今回話そうと思ったのは、祖父が先日105歳で大往生し葬儀で実家に帰った際に、
オッサンが例の家の仏間で自殺したことを知らされたからだ。
ただ自分を含め家族はあの家から逃げ出したので、オッサンが一人でどうしていたかは分からない。









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日々の恐怖 9月1日 オッサンの家(5)

2023-09-01 12:07:55 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 9月1日 オッサンの家(5)





 ある日、オッサンが納骨も終わって落ち着いたぐらいに、

「 今夜は帰らん。」

と言ってどっかに行った。
 兄が夜1時過ぎにトイレに行ったら、オッサンが血相変えて帰ってきて、仏間に飛び込んで念仏みたいのを唱えてた。
それで、また母親が出たんだなと理解したそうだ。
さらに、兄が中学に上がる頃から異音が鳴るようになり、赤ちゃんの鳴き声がするようになった。
家の中でしか寝れないし、原因不明の物音と赤ちゃんの泣き声にいたたまれなくなったオッサンは、霊能者にすがりまくったらしい。
 兄は、

「 ガキだったから分からないけど、親父は凄い大金使ったと思う。
効果が無ければ霊能者に電話でがなりたて、また新しい霊能者を探す。
そんなのが1年間ぐらい続いたよ。」

と言った。
ちなみに、兄はその頃から非行に走って家にあんまり帰ってなかったそうだ。
 そんなこんなでなんとか霊媒師を見つけ鎮める方法を教わり、今に至るらしい。
そしてオッサンは仏間から離れるように寝所を増築して、少しでも仏間から距離を取ろうとした結果、歪な増築を繰り返した家になった。

「 じゃあ供養されたんじゃないの?
まだ聞こえてるよ。」

と聞くと、

「 お祓いしてからかなり時間が経ったから、効果が無くなったじゃね?」

と無表情で兄は答えた。

「 とにかく、こんな家に関わった以上、長くいるとオマエまでなんかあるかも知れないから、高校でたらこの家を離れろ。
大学でも就職でも良いから家を出ろ。」

と言われた。
 最後に、

「 弟と妹にこの話をするかどうかはお前に任せる。
まだ2人とも子供だから慎重に時期を見計らって話せよ。」

と言って、再び鍵をかけた。










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日々の恐怖 8月29日 オッサンの家(4)

2023-08-29 09:21:15 | _HOMEページ_





 日々の恐怖 8月29日 オッサンの家(4)





 そんな状況がしばらく続き、兄が小学生高学年になった年に奥さんはその部屋で死んでいた。
自殺した形跡もなく、ただ動かなくなってたと兄は言った。
(実際に警察も来たが心筋梗塞と言われたらしい)
その時点で自分も正直、母親のバカさ加減が原因とはいえなんでこんな家で暮らさなきゃいけないのか分からなくなったし、
それとオッサンがこの家を離れないのも疑問に思った。
 で、兄に聞いた。

「 なんでそれでもこの家に住んでるの?」

すると兄は、

「 ここ離れたらお袋が出るんだってよ、鬼の形相で。」

と言った。
 俺の疑問を感じ取ったのか、兄は話を続けた。
葬儀を終わらせて、オッサンの実家に休養を兼ねて行ったらしいんだが、オッサンは毎夜、
亡くなった奥さんが動かない赤ちゃんを抱いてオッサンに縋りつく夢を見たらしい。
夜中に何度も目覚め狼狽しているオッサンを見て、親族は疲れてるんだろうと同情こそすれノータッチだったそうだ。
 オッサンは兄にその事を何度も話して同意を求めたらしいが、兄は自分で見てないので曖昧に相槌を打ってたらしい。
そして何故か家に帰るとその夢を見ることも無く、オッサンはだんだん元に戻っていった。










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