大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 5月31日 不思議な話(1)

2019-05-31 09:09:15 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月31日 不思議な話(1)




 友人の家を久しぶりに訪ねた際、不思議な話はないかと問うと、

「 俺の携帯、よくなくなるんだ。」

と、彼は言った。

「 それは不思議な話なのか?」

私だって、自分の携帯がどこに行ったのかわからなくなることはしょっちゅうだ。
 しかし、彼はそうではないと言う。

「 なくなり方が、なんだかおかしいんだ。
こいつ、多分、俺に隠れて旅をしてるんだよ。」

友人は、ガラケーとスマホを一台ずつ所有しているが、旅をするのはガラケーの方だという。
 普段使いしているのはスマホの方で、ガラケーは半ば、リビングの定位置に鎮座する置物と化している。
動かすことはほとんどないのに、なぜか時々なくなってしまう。
 あちこち探すが、心当たりがないため見つからない。
どうしたものかと思っていると、二、三日後に思わぬところから着信音がして居所が知れる。
それがいつものパターンだそうだ。

「 だから最近は、なくなっても慌てないんだ。
しばらくしたら、出て来るってわかったからな。」

見つかるのは、台所の戸棚の奥や、階段下の暗がり、洗面所下の収納の中、友人の職場のデスクの中にあったこともあり、意図的に隠したか隠れたかしなければありえない場所ばかりだという。









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しづめばこ 5月30日 P558

2019-05-30 10:32:16 | C,しづめばこ


 しづめばこ 5月30日 P558  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 5月29日 梅の古木(3)

2019-05-29 09:19:31 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 5月29日 梅の古木(3)



 祖母の言う通り、梅の古木の下は先程の賑やかさが嘘のように静まり返っていた。
そして少女は今度こそ無事に、父親のお使いを果たすことができたという。

「 梅の木の下では、春の訪れを寿ぐ宴が行われていたそうです。
祖母は運悪くそこに居合わせて、いたずらをされたんでしょうね。」

彼女は、祖母の不運の真相をそう語ってくれた。

「 宴を開いていたのは、神様ですか?」
「 さあ、それはわかりません。
祖母が言うには、皆さん人間に見えたそうですけど。」
「 それにしても、おばあさまのおばあさまは、さすが年の功ですね。
そういう言い伝えは、昔からあったんでしょうね。」

私が感心して言うと、彼女は少し意味ありげに笑った。

「 本当か嘘かはわかりませんが、祖母の祖母という人は、不思議なものを見る力があったそうです。
小遣い稼ぎに占いなんかをして、当時はよく当たると評判だったそうですよ。」
「 はぁ・・・。」
「 話に出てきた梅の古木は、まだ健在です。
ですが私は祖母以外から、その梅の木にまつわる不思議な話を聞いたことは、ありません。」

彼女はにっこりと微笑んだ。
私の鼻腔を、幻のように梅の香が通り抜けていった。







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日々の恐怖 5月27日 梅の古木(2)

2019-05-27 10:57:43 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月27日 梅の古木(2)




 宴の参加者は皆笑って少女の方を見ていたが、その中に近所の見知った顔は一人も見つけられなかった。
 なんとなく気味の悪さを感じた少女は、首を振って行かないことだけを表すと、そのままその場を離れた。
特に引き止められることもなかったが、少女を追いかけるようにドッと笑いが起きたという。
 その後も何事もなく少女は無事に家にたどり着いたが、そこで大変なことに気がついた。確かに買ったはずの酒がなぜか無くなっており、徳利はすっかり空っぽになっていたのだ。
 途方にくれた少女は、こっそり彼女の祖母に泣きついた。
自分でもよくわからないままに経緯を話すと、祖母は心得たように笑いながら、

「 これでもう一回お使いしておいで。」

と、少女に小銭を握らせた。

「 大丈夫、もうきっと、なにもないから。」

よくわからないながらに、先程の宴会にきっと原因があると思っていた少女は、もう一度そこを通って酒屋に行きたくはなかった。
 しかし、使いが果たせなかったとバレた時の父親の拳骨の方が、もっと恐ろしい。
少女は泣きべそをかきながら、ついさっき通ったばかりの道を引き返し、酒屋へ走った。







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日々の恐怖 5月25日 梅の古木(1)

2019-05-25 12:00:00 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月25日 梅の古木(1)




 彼女の祖母が、まだ少女だった頃の話である。
春は名のみの、風の寒いある夕方、少女は父親から、晩酌の酒を買ってくるよう言いつけられた。
 当時は入れ物を持参して、その分だけ酒を入れてもらう方法が一般的だった。
その為、一合徳利とぴったりちょうどの小銭を渡され、少女は歩いて十分程の道のりを酒屋へと向かったのだった。
 酒屋までの道すがらには、一本の梅の古木があった。
大きな木だったが、年を取ると木も禿げるのか、大きさの割に花も葉も数は少なかった。
しかし毎年、近所のどの梅よりも早く花を咲かせる木だったという。
 酒屋からの帰り、こぼさないよう徳利を慎重に抱えながら歩いていると、梅の古木の周辺がなにやら賑やかなのに気がついた。
まだ寒いというのに、何人かが酒盛りを始めたらしい。
 つい先ほど通った時は影も形もなかったのに、宴会はすでに出来上がっているかのように賑やかだった。

「 おーい。」

そのうちの一人が、少女に声をかけた。

「 おーい、ちょっと寄っていかんか。
お菓子もあるぞ。」

お菓子、という言葉に少女の心は動かされ、ちらりと梅の木の方を見た。








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日々の恐怖 5月23日 挨拶(2)

2019-05-23 12:00:00 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月23日 挨拶(2)




 どうやら奥方は写真の周辺から動けないようで、それならば自由のない彼女か自分のことを知りたがるのは当然だと、彼は度重なる詮索に忍耐で答えていた。
しかし彼女の詮索は、次第に干渉と束縛へと変わっていった。

「 あなた、お疲れじゃない? 今日はお仕事お休みしたら?」
「 出かけないで、家にいてくださいな。」
「 ずっと私と一緒にいてよ。」

とうとう、彼も堪忍袋の尾が切れた。

「 いい加減にしろ。
お前は幽霊だからいいだろうが、生きてる俺は食わなきゃならんし、そのためには働かなきゃならんのだ。
そんなこともわからなくなったのか。
少し黙ってろ!」

そんな風に彼が奥方に怒鳴ったのは、初めてのことだった。
 奥方はしばらく黙っていたが、やがて一言、

「 そう・・・・・。」

と呟いた。
そしてそれきり、彼に話しかけることはなくなったという。

「 奥さん、成仏できたんですね。
少し寂しくなったかもしれませんが、よかったですね。」

私は、心底ホッとしてそう言った。
 しかし、彼は意外そうな顔をして首を振った。

「 いやいや、彼女は成仏なんてしていませんよ。
喋らなくなった分、動き回れるようになったみたいでね。
今じゃ、僕にぴったりくっついて、あちこち出歩くのを楽しんでいるみたいですよ。」

ごく当たり前のことのようにそう話す彼に、私は愛想笑いをしながら、背中に氷が走るような感覚を味わったのだった。









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日々の恐怖 5月20日 挨拶(1)

2019-05-20 19:02:58 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 5月20日 挨拶(1)



 彼は若い時から、同い年の奥方と仲睦まじい夫婦として評判だった。
残念ながら子供はなかったが、その分いつまでも恋人気分で、二人きりの生活を楽しんでいた。
 ところが、五十代半ばという若さで、奥方は不慮の事故で亡くなってしまった。
彼は深く悲しみ、しばらくは食事も手につかないほどだったいう。
 ある朝のこと、目覚めた彼はいつものように、遺影の奥方に挨拶をした。
すると、遺影から、

「 おはよう。」

と返事があったのだ。
その後も、彼が遺影に話しかけるとおうむ返しのような返事が返ってきた。
 写真の裏に何か仕掛けがあるのかとも疑ったがそんなことはなく、声は幽霊か幻聴か、そのどちらかであると思われた。
しかし、彼にとってはどちらでも関係なかった。
はじめこそ驚いたものの、懐かしく優しい奥方の声が、ありしの日のように自分に語りかけてくれることが、何よりも嬉しかったのだ。
 朝な夕な、食事時、出勤時と帰宅時と、まるで生きていた時のように奥方の写真に話しかけていると、そのうちおうむ返しだった返事も変化してきた。
 奥方の方から声をかけてくれるようになり、

「 お疲れさま。」
「 今日は何をしたの?」

と問いかけてくれるようになった。
 ところがそんな生活が半年も続いた頃、彼は家に帰るのが億劫になっていた。
あれほど嬉しく感じていた奥方の言葉が、負担になっていたのだ。

「 おはよう、あなた。今日は何をするの?」
「 どこに行くの? 誰と出かけるの? お帰りはいつ?」
「 今日は何がありました? 夕飯は何を食べるの?」

生前の彼女はこんなにも詮索好きだったかと、自分の記憶を疑ってしまうほど、奥方は彼の行動を逐一知りたがった。









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日々の恐怖 5月18日 勅使河原君と夢(3)

2019-05-18 18:29:19 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月18日 勅使河原君と夢(3)




 退院の日、荷物を運びにきたおいちゃんが、

「 そういや坊さんが布団のことを聞いてたぞ。」

と言い出しました。

“ 布団・・・・、布団・・・・・・。”

と考えて、勅使河原君は思い出しました。
通夜のとき、母親を寝かせていた布団を倉庫に放置してあったのです。

“ さてはあれが原因か!”

と思い、ソッコーで廃品処理の業者に頼んで倉庫にあった親の遺品を全部捨ててしまいました。
人でなしです。
 捨てる作業中にわかったのですが、母親は、父親の葬儀に使った布団も、祖母の葬儀に使った布団も、み~んなとってあったのでした。
 もう、やめてよね・・・・・・。
以来、あの薄気味悪い夢はみてません。
 親不孝ものの勅使河原君に、死んだ親も呆れたものと思われます。
今は実家は全部人に貸してますので、墓参りで帰っても滅多に寄りません。
別段ナニもないようですし、まあ、これでいいかなと。









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日々の恐怖 5月16日 勅使河原君と夢(2)

2019-05-16 09:38:35 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月16日 勅使河原君と夢(2)




 そうこうするうちに、勅使河原君は吐血してしまいました。
ブハッと血を噴いて、あわてたものの、この状態では救急車は呼べないし、 家族もいないので、タオルで顔を押さえて自分で徒歩五分の病院にいきました。
ちょっと間抜けです。
 即入院です。
検査の結果、胃と食道が荒れてるだけで大したことがないとわかりました。
投薬で血は止まったんですが、動きがとれず、病室で、

「 困ったなあ・・・・・・。」

と考えてますと、親戚のおいちゃんがやってきました。
 おいちゃんは、勅使河原君を子どものころから可愛がってくれた人です。
土建屋の親分で頼りになります。
 おいちゃんは勅使河原君の夢の話を聞くと、

「 それは親が、若い身空でひとりになった勅使河原君を不憫がって、連れていこうとしてるんだろう。」

と言いました。
 勅使河原君も、身体が弱ってるので、そうかもしれないなあという気になります。
でも彼女もいるし、結婚もしたいし、こんな早く連れていかれてはたまりません。
そのことを言うと、おいちゃんは、

「 じゃあ、おいちゃんが勅使河原君のために、あの世の父ちゃん母ちゃんに頼んでやろう。」

と言って帰っていきました。
おいちゃんはお寺に勅使河原君の親の位牌をもっていって、盛大に拝んでくれたそうです。









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日々の恐怖 5月14日 勅使河原君と夢(1)

2019-05-14 09:57:07 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月14日 勅使河原君と夢(1)




 勅使河原君の家族は母親だけでしたので、母親の死後、勅使河原君は広い家に一人ぽっちになってしまいました。
職場からも遠い上、勅使河原君の安月給では家の固定資産税が払えません。
かといって、育った家を売るには忍びなく困っていたところ、貸して欲しいという人が現れて、勅使河原君は家の半分を貸すことにしました。
 毎日家の中を片づけていたのですが、我が家なのになんとも家の中が怖いのです。
とくに玄関から自分の部屋のいく間に土間というか広い倉庫があり、その扉の横を通るとき妙にゾクゾクします。
 身体も弱っていたんでしょう。
そのうち夢をみるようになりました。
 勅使河原君が倉庫の横を通っていると、突然扉がひらいて、真っ青な顔をした死んだ家族や知り合いが中から手をさしのばし、引っ張りこもうとするのです。
 みなボロボロの死に装束をつけて、ぞっとするような姿です。
両手をつかまれて、

「 ぎゃ~っ!」

と叫んだところで眼がさめます。









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しづめばこ 5月12日 P557

2019-05-12 11:21:27 | C,しづめばこ


 しづめばこ 5月12日 P557  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 5月11日 奇声

2019-05-11 09:24:11 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月11日 奇声




 友人Aの話です。
彼が住むマンションに、迷惑な酔っぱらいがいた。
斜め向かいの部屋の男で、明け方近くに帰ってくると廊下で奇声をあげるのだ。
 フリーデザイナーのAはそんな時間まで仕事をしている事が多く、酔っぱらいの奇声で集中力を削がれるのだという。
 腹に据えかねたAは、ある夜、酔っぱらいの奇声が聞こえると同時にドアを開けた。

「 わわッ! 」

その男はもう一度奇声を発し、まじまじとAの顔を見ると、恥ずかしそうにぺこりとお辞儀をした。
 文句を言おうとしたAだが、シラフにしか見えない男に拍子抜けして、そのままドアを閉めた。
 しばらくすると向かいの部屋の男は引っ越し、OLらしい女性が入居した。
もう奇声を聞くこともないだろうと安堵したAだったが、年末の深夜に女の奇声を聞いた。
反射的にドアを開けると、彼女は前の住人と同じように驚き、Aの顔を見た。
 何か言いたそうにしている様子が判った。
彼女が口を開きかけたのを見て、Aはドアを閉めた。
 おそらくあの二人は、Aの部屋のあたりに何かを見たのだ。

「 変な話は聞きたくないから、普段も会わないようにしている。」

とAは言った。








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日々の恐怖 5月8日 お参り(2)

2019-05-08 10:50:02 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月8日 お参り(2)




“ 一言挨拶してこの列から離れるか・・・。”

 しかし、Sさんは声を発してこの人達の注意を自分に向けさせるのは、何故か怖ろしいことのように感じたという。

“ このまま神社までついて行って、母と帰ってくるか・・・・。

などと考えていると、Sさんの斜め前を歩いていたおばあさんが急に振り向き、人差し指を口に当て、無言のまま、

“ し~ぃ・・・・・。”(静かに。)

という恰好をした。
そして、列から離れるよう手振りで示した。
 そのままSさんはゆっくり列から離れ、その行列が社の方角に進んで行くのを見送った。
列から離れる時、おばあさんはSさんに向かってにっこり微笑み、Sさんも懐かしさを感じながら会釈した。
 そこではじめてSさんは、誰も足音を立てていなかったこと、誰も懐中電灯を持っていなかったのに、行列全体がぼんやりと薄明るかったことに気がついたという。
 家に帰り着いたSさんは、お参りに参加しているはずの母親が居たことに驚いた。
更に驚く事に、回復祈願の当人が手術中に死亡した為、お参りは中止になったというのだ。

“ お参りはなかった。
では、私が出会ったあの行列は何だったのか?”

 そこまで考えた時、Sさんは、

「 あっ!?」

と声を上げた。
 歩いていた最中に感じた引っ掛かたものだ。

“ あの行列の真ん中辺りにいたのは、この夜手術中に亡くなった人ではないか!”

 そして、Sさんにこっそり列から離れるように指示してくれたおばあさんは、Sさんが子供の頃、Sさんを孫のように可愛がってくれた近所のおばあさん(故人)だったそうな。
そして、あの行列が向かっていった先には、たしかに神社もあるが村の墓地もある。











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日々の恐怖 5月6日 お参り(1)

2019-05-06 17:47:37 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月6日 お参り(1)




 Sさんの村では重病人が出ると、村人が寄り合って、夜に神社にお参りし回復祈願をするという風習があった。
 30年近くも前の真冬の出来事である。
村人の一人が手術を受けることとなり、その晩 村でお参りをすることとなった。
 その日、仕事で遅くなったSさんが、最終バスで村に帰り着いた頃には、辺りはすでに真っ暗になっていた。
家に向かって歩き始めたSさんは、通りの向こうから20~30人位の集団がこちらに向かって近付いて来るのに気がついた。
 朝、母親からお参りがあることを聞いていたSさんは、特に不審と思わず、自宅と社への道が途中まで一緒ということもあり、立ち止まって列の後ろについた。
 ただこの時、何となくではあるが、列の先頭を歩きたくないと思ったそうだ。
途中から列に加わったSさんに、誰も注意を払おうとしない。
集団は2列となり、昼間に降り積もった雪の中をゆっくりと進んで行った。
 いつもならば、世間話の一つでもしながらにぎやかく進んでいくのに、この日に限って皆うなだれ、小さな声でお経のようなもの呟いている。
あまりの静かさに、Sさんは足音を立てるのすら憚られ、妙に息苦しい雰囲気を感じた。

“ お参りには母も参加しているはずだ・・・。”

 Sさんは、最後尾から母親の姿を探してみた。
しかし、先頭にでもいるのか見あたらない。
 周りの人も見覚えはあるのだが、どこの誰なのか判らない、それに何か引っ掛かる。
そのうち、列は社と家との分かれ道にさしかかった。








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しづめばこ 5月4日 P556 

2019-05-04 18:23:49 | C,しづめばこ


 しづめばこ 5月4日 P556  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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