大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 8月29日 識別 (2)

2020-08-29 19:11:24 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 8月29日 識別 (2)



 流石に名前予測は無理だった。
ああいう離散的な物はコンピュータには理解できない。
だが驚くことに、学歴推定(中卒・高卒・大学卒・一流大卒の4パターンだったが)は、6割近い正答率を誇った。
 また出身地も、北海道から沖縄までの連続的な値としてコンピュータに認識させると、(都道府県レベルで)10%近い正答率だった。
なんだ10%か、と思うなかれ、これは結構衝撃的だった。
 年齢の推定は人間でもおおよそアタリは付けられるが、出身地の推定を10回に1回もピッタリ当てられる人はそうそういないだろう。
要するに、十分量のサンプルがあればコンピュータの推論は割りとアテになる、ってこと。
それで、本題はここからだ。
 ある日、チームでも結構マッドなサイエンティストAが、

「 余命推定やってみようよ。」

と言い出した。
当時全盛期だったデスノートの影響でも受けたのだろう。
 しかし、個人情報サンプルには当然ながら余命なんて欄は無い。
Aは言った。

「 撮影年・没年が分かっている歴史上の人物の写真でも使えばいい。
白黒でも認識精度に大きな影響は無かっただろう?」

もちろんカラーのサンプルに比べると精度は落ちるが、顔認識のメカニズム上、ほとんど問題はない。

「 しかし、それではサンプル数が足りないのでは?」
「 要は顔と撮影日と死んだ日がわかりゃいいんだ。
天災やら事故やらの被害者を使えばいい。」
「 ちょっと待て、それじゃ外発的な要因で死んだサンプルが混ざることになるぞ。」
「 それでいいんだよ!」

そこには、ニヤニヤするAがいた。






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日々の恐怖 8月27日 識別(1)

2020-08-27 20:32:48 | B,日々の恐怖


 日々の恐怖 8月27日 識別(1)


 数年前の事、俺はとある企業でとある研究チームの一員だった。
と言っても、白衣を着て薬品を扱うような研究職じゃない。
俺達がやってたのは、カメラの顔認識システムとその応用の研究だ。
1台のメインコンピュータにアプリケーションを入れてそこに各地の防犯カメラの映像を送ると、顔を認識して『ID:0001はX→Y→Zを通った』ってログを勝手にどんどん作成してくれる。
ただ、そんなのは当時でも結構ありふれてたから、そのベースとなる顔認識アプリケーションにじゃんじゃん機能を加えていくことになった。
数撃ちゃ当たるってヤツだな。
 最初に取り組んだのは、年齢推定の実装だった。
聞いたことあるんじゃないかな。
メカニズムとしては天気予報と同じで、予め顔と年齢をセットで数千通り読み込ませておいて、カメラが顔を認識したらその正解リストを基に予想値をはじき出すって感じだ。
シンプルな方法の割には精度が高くて、試験段階でも4割くらいはピッタリ当てて、後は誤差プラマイ8歳程度だった。
 結構面白かった。
でもまあ、年齢推定なんてのも色んなとこが挑戦してて、もっと独特なモノを実装せねば、と奮闘していた。
幸い俺達の手元には大量の顔写真&個人情報サンプルがあったので、色々と試すことが出来た。
名前、学歴、出身地などなど。







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日々の恐怖 8月22日 古いアパート(2)

2020-08-22 10:06:59 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 8月22日 古いアパート(2)



 ある時、家に帰ると押入れから物音がしたような気がした。
押入れを開けたが、当然誰もいない。
 何日かして、風邪でバイトを早退し、いつもより早めに帰宅した。
ドアを開けると、そいつはいた。
使った後の割り箸を舐めながら、その女は俺を見た。
俺は大声を上げ、外に逃げた。
 近所の人に警察を呼んでもらい、パトカーが来た。
事情を説明して、部屋を調べてもらった。
外で待っていたら、女の喚き声が聞こえ、警察官に捕まり出てきた。
 翌日、警察に呼ばれ教えてもらった。
犯人は隣に住む1人暮らしの女性で、精神的に病んでいて通院中だそうだ。
古いアパートだから押入れの天井はすぐ外せるらしく、そこから出入りしていたそうだ。
 理由は、最初は隣人への好奇心らしかったが、それが恋愛感情に変わったそうだ。
俺が隣人のその女を見たのは、その時初めてだった。
髪の長い痩せたその女の風貌が気持ち悪かった。
 警察官に言われた。
その女は精神疾患だからすぐ釈放される。
引っ越した方が安全だ。
 とりあえず荷物をまとめ、友達の家に転がりこみ、少したってから今のアパートに移った。
そんな事から1年程たち忘れかけてた頃、アルバムを整理しようと開くと、その女の写真が俺の写真の横に貼られていた。








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日々の恐怖 8月20日 古いアパート(1)

2020-08-20 18:50:05 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 8月20日 古いアパート(1)




 俺が住んでたのは、築30年以上の古い木造2階建てのアパートだった。
駅の近くだったが、古いせいか周りの物件より安かった。
 当然、安いところに住む住民はみんな生活状況は悪かった。
1日中咳き込んでる老人。
四六時中訳の分からない言葉でケンカしてる外人夫婦。
そんな所に住んでいた。
当時の俺はフリーターで、働いてはいたが収入は少なかった。
 ある頃から部屋の異変が始まった。
最初は、ささいな事から始まった。
 捨てた記憶がないのに、ゴミ箱が空になっていた。
ゴミなんか盗むやつはいないだろうから、俺の勘違いって事にした。
 数日後、またゴミ箱が空になった。
これで確信した。
誰かがゴミを盗んでいる。
でも、なぜゴミなんだろう。
そう思いはしたが、たかだかゴミがなくなったくらいで気に留めるのはやめた。
 今度は数少ないパンツが1枚消えた。
コインランドリーに持って行き、帰ってきたら昨日履いたのがない。
数日後、部屋の中から出てきた。
なんかおかしい。
 台所の茶碗が洗われてた。
もちろん、自分でやった記憶はない。






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日々の恐怖 8月17日  夜が来たから(10)

2020-08-17 19:09:49 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 8月17日  夜が来たから(10)




 私は昨日、帰ってきてすぐに寝て、停電する夢を見てた。
そうとしか解釈しようがないです。
 念のために、母に電話してみました。
母はすぐ出て、

「 これからパートに行くんだけど、どしたの?」 
「 昨日の夜、電話した?」
「 いや、してない」

 あとは、あのガス検知器だけです。
イスに上がって金属の箱を見たら、4隅がネジ止めされてたんです。
 そのときはどうにもならず、大学の帰りにねじ回しを買ってきて、箱を開けました。
中は真ん中に一つだけ、ブレーカーのような大きなスイッチがあって、上にあがってました。
下側に白い紙が貼ってあり、そこに筆字で、

”夜”

ってあったんです。
 大家さんに連絡したんですが不在で、不動産屋にかけました。
担当者が出たので解約したいって話すと、理由を聞いてきたから、一言だけ、

「 ガス検知器の中を見ました。」

そう言ったら、

「 ああ、わかりました。
解約は了承します。
次のお部屋はお決まりですか?」

頭にきたので電話を切り、誰かに話を聞いてもらいたくてここに来たんです。








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日々の恐怖 8月15日  夜が来たから(9)

2020-08-15 15:33:58 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 8月15日  夜が来たから(9)




 布団をかぶっていると、

“ ドンドン、ドンドン・・・・!”

ドアをノックする音が聞こえ、それは、

“ ドカン、ドカン・・・・!!”

と蹴りつける音にかわりました。
でも、私はずっと布団か出ず、そのうちに音は聞こえなくなり、眠ってしまったんです。

 目を覚ますと朝の気配がしました。
はい、外が明るくなってたんです。
時間は9時を過ぎてましたが、その日、大学の授業は午後からでした。
 まず携帯を見ました。
でも、実家の母からの着信はなかったんです。
あと、電気もつきました。
 すごく怖かったんですが、隣の部屋の前に行ってインターホンを押すと、隣の人が出てきて、

「 どうしたの?」

と聞くので、

「 昨日、停電ありましたか?」
「 いや、気がつかなかったけど・・・・。」

こんなやりとりになったんです。
この調子だと、私が部屋に入ったことも否定されるだろうと考えて、言い出せませんでした。
ここまでくると、全部が夢だったって思いますよね。








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日々の恐怖 8月13日  夜が来たから(8)

2020-08-13 18:17:26 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 8月13日  夜が来たから(8)



 隣の人は、窓に寄ってカーテンを開けました。
外をのぞくと、私のとこからは見えない塀の中のお墓が青白く光ってて、たくさんの人がいるように思ったんです。

「 え、あれは?」 
「 死んだ人が少し出てきてるの。
夜だから。」
「 ええっ・・・??」 

ここで急にすごく怖くなったんです。
ロウソクの光に照らされた顔が、別人のように思えてきて。

「 私、戻ります。」

そう言って、逃げるようにして部屋に戻ってきました。
でも、相変わらず真っ暗で。
 すると、携帯が鳴ったんです。
番号は実家から。
 おそるおそる出てみると、やはり母でした。

「 お母さん、こっちも停電、これ、どうなってるのよ?!」
「 だから、夜が来たんだって。
もうすぐお父さんがそっちへ着くよ。」

私は携帯を放り出し、部屋の鍵をかけてベッドに逃げ込みました。







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日々の恐怖 8月12日  夜が来たから(7)

2020-08-12 17:47:21 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 8月12日  夜が来たから(7)




 そしたらやっぱり街全体が真っ暗で。

「 そうだ、隣はどうしてるんだろう・・・・?」

はい、私の部屋は端なんですけど、右隣の人はあいさつをして知っていて、私と同じ大学生だったんです。
 インターホンを押しましたが、反応ありません。

“ ああ、停電で、これも切れてるんだ・・・。”

と考えて、ドアを、

“ ドンドン!”

とノックしました。
 そしたら、ドアが少し開いて、

「 誰・・・?」

という声がしたので、

「 あたし、隣の村田。」

そう言うと、チェーンロックを外す音がしてドアが開きました。

「 あ、すみません、
急に停電になったので、何かわかることないのかと思って・・・・。」
「 入って・・・・。」

中はぼうっとオレンジ色の明かりで、部屋のテレビ台の上にロウソクが立ててあったんです。

「 あ、準備いいですね。
うちは懐中電灯もつかなくて。
どうして停電になってるか、わかりますか?」
「 夜が来たから。」
「 え? どういうことです?」 
「 ほら、こっち来てみて。」








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日々の恐怖 8月10日  夜が来たから(6)

2020-08-10 18:44:50 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 8月10日  夜が来たから(6)




 その途端、部屋の電気が、

” パッ!”

と消えたんです。

「 え、え? ホントに停電?!」

ガス検知器がまた鳴り出したんです。

“ ウワン、ウワン、ウワン・・・。”

赤い光の点滅で、天井がまだらになって見えました。

「 ああ、どうしよう・・・・?」

暗い中をキッチンまで行きましたが、もちろんガスはついてないです。
まずこれを止めなきゃと思ったんですが、まごまごしてるうちに音と光が消え、真っ暗闇になったんです。
 窓のカーテンを開けてみました。
下は道なので、街灯とかの光が見えるはずなんですが、それもなくて、この地域一帯が停電なんだと思いました。
でも、地震があったわけでも、台風でもないのに。
 とにかく暗くてどうにもならず、手探りで机の引き出しから懐中電灯を出したんです。
スイッチを入れると、一瞬だけつきましたが、すぐに消えて、また真っ暗に。

“ ああ、こんなときに電池切れ・・・・。”

玄関のドアを開けて外の廊下に出てみました。









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日々の恐怖 8月9日  夜が来たから(5)

2020-08-09 18:57:44 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 8月9日  夜が来たから(5)




 冷蔵庫から飲み物を出してると、携帯が鳴ったんです。
出てみると地元にいる母でした。

「 あ、お母さん、どしたの、こんな時間に・・・・?」

実家は夜が早くて、ふつうはもう寝てる時間なんです。
 母はいつもののんびりした声で、

「 お父さんの具合が悪くってねえ・・・・。」 
「 え?どういうこと・・・・?」

変なことを言うなあと思いました。
私の父は4年前に病気で亡くなってて、母は、実家で兄の家族と同居してるんです。

「 お父さんて、どういうこと・・?」

そしたら少し沈黙があって、

「 そっちは停電してないのかい?」

って。

「 何言ってるのよお母さん、私のとことそっち、すごく離れてるじゃない。
お母さんのほう、停電なの?」 
「 そうかい、停電じゃないのかい・・・。
じゃあ、夜が来るよ。」

そこで電話は切れました。







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日々の恐怖 8月8日  夜が来たから(4)

2020-08-08 19:40:59 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 8月8日  夜が来たから(4)



 それから、1ヶ月は何も起きなかったです。
照明のほうは旧式で、LEDは無理だったんですけど、蛍光管を変えたら明るくなりました。
 先月のことです。
夜の8時ころでしたか。
バイトから帰って、キッチンで料理してました。
 簡単な献立ですけど、生活費節約のために、毎日自炊してたんです。
そしたら、フライパンの油がパチンとはじけて顔にあたり、びっくりして横の壁にドンとぶつかってしまって。
 そのとき、

“ ウイン、ウイン・・・・。”

ってサイレンの音がすぐ上から聞こえて、見るとガス検知器のライトの点滅が激しくなってました。
あわてて火を消したんですが、ガスの臭いはしなかったです。
 私がぶつかったせいだと思って、見てみようと机からイスをひっぱり出してるうち、音は消えて、点滅も収まったんです。
 はい、それから2週間後くらいですね。
その日は遅く、11時ころに部屋に戻りました。






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日々の恐怖 8月7日  夜が来たから(3)

2020-08-07 18:09:09 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 8月7日  夜が来たから(3)



私が、

 「 あれは?」

って聞いたら、

「 あっ、ガス検知器です。」

という答えで、たしかに、真ん中に小さなライトが一つ点滅していました。
そのときはなんとなく納得したんですけど、今考えれば赤い色って変ですよね。
 で、引っ越しをしました。
荷物が少なかったので、業者には頼まず、大学のサークル仲間で免許を持ってる人が運んでくれたんです。
 その日の夜は、お礼に、新しい部屋でピザなんかをとって、少しお酒を飲んだんですけど、一人、

「 この部屋、なんかなあ・・・・・・。」

っていう友だちがいて、

「 何?」

って聞いたら、

「 気を悪くしないでね。
ケチをつけてるわけじゃないんだけど、この部屋、暗く感じない・・?」

実は、私もそう思ってたんです。
けどそれは、部屋の照明が古くなっているせいだと考えてました。
蛍光灯だったので、新しい大家さんに、LEDとかに変えられないか話してみようと思いました。








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日々の恐怖 8月6日  夜が来たから(2)

2020-08-06 08:43:34 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 8月6日  夜が来たから(2)




 そこですね、道をはさんで墓地になってたんです。
もちろん高い塀に囲まれてるので、外からは墓地だとはわからないんですけど。
 でも、私はあんまり気にならなかったんですよ。
というのは、空いていた部屋は2階のいちばん端で、お寺の区画は切れてて、窓からはお墓が見えなかったんです。
 不動産屋さんは、

「 所有者からははっきり聞いてはいませんが、こういう事情で他所よりお安いんだと思います。」

こう話してました。
それで、立ち退きの期限もあったので、そこに決めちゃったんです。
 それとですね、今回の話に関係があるんですけど、キッチンのついた一間の部屋の中を見せてもらってるとき、ガス台の上、換気扇があるところの横に、金属の赤い箱があったんです。
はい、天井から10cmほど下で、もちろんイスとかに上がらないと手が届かない高さです。








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日々の恐怖 8月5日  夜が来たから(1)

2020-08-05 08:49:49 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 8月5日  夜が来たから(1)



 村田さんから話を聞きました。

 今晩は、都内の大学に通っている村田と申します。
よろしくお願いします。
私、大学の3年生なんですけど、今年の10月にアパートを引っ越したんです。
 はい、前のアパートが、道路の拡張工事に引っかかって取り壊されるためです。
そのことは前から言われてたので、8月ころから新しい部屋を探してました。
 不動産屋さん回りをしてたら、すごく条件のいいところが一ヶ所あったんです。
前のところよりも大学に近くて、電車を使わずに通えそうな距離で、しかも家賃も1万円ほど安いという。
 それで、現地を見にいったとき、不躾かと思ったんですが、不動産屋さんに、

「 こんな家賃なのは、なにかわけがあるんですか?」

って、思いきって聞いてみました。
そしたら、不動産屋さんはちょっと困った顔をしましたが、外に出て、アパートの裏手側に回ったんです。






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日々の恐怖 8月2日 地味な子(3)

2020-08-02 19:03:23 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 8月2日 地味な子(3)



 しばらく息をついてから再出発しようとすると、前方数十メートル先に人がいた。
あの男だった。
男は舗装された歩道ではなく、獣道を通ってM子を先回りしていたようだった。
M子は必死に来た道を引き返して逃げ、その日はバイト先近くの満喫で一夜を過ごした。
 真相は、あの男は所謂”丑の刻参り”をやっており、M子はそれを目撃してしまったらしい。
丑の刻参りは、他人に見られると自分に呪いが返ってくるらしく、もし見られた場合は見た者を殺すしかないそうだ。
 自分の顔が男に覚えられていることを恐れたM子は、満喫近辺の美容院が開いてすぐに駆け込み、ヘアースタイルとメイクをしてもらった。
服も手近にあった店で出来るだけ真逆の印象になるものを購入し、鞄も買い換え、自転車は捨てた。
 それからというものM子は男が自分を殺しにくることを恐れて、当時のM子とは真逆の姿をし続けていると言うのだ。
 その話を大真面目にするM子を、酒の入っていた私は笑い飛ばした。
どう見ても被害妄想乙で、心配症にしてもやりすぎだと。
 そう言う私の顔を見つめて、M子は申し訳なさそうに言葉をつづけた。

「 あの男は今でもあの町にいて、私のことを探している。
Rさんは気を付けた方がいい。
当時の私と少し似ているから・・・・。」








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