大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 1月31日 枕(1)

2017-01-31 21:54:15 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 1月31日 枕(1)




 ウチの母から最近聞いた話です。
当時、18とかそこらの母はちょっと距離のあるところで就職していた。
百貨店の接客と長時間通勤で精神と肉体の疲労は半端なく、常に肩こりが酷かったらしい。
 熱い風呂とマッサージで誤魔化してたけど、流石に限界がきたらしく整体へ行くことにした。
整体の先生が施術しながら、ここのコリが酷いとか片足に体重かけ過ぎだとかをお説教してきて、すこしうんざりしてたんだけど、

「 枕が合ってない。」

って言われてドキン!とした。
 そんなに裕福じゃなかった母は昔から重ねた本にタオルを巻いて枕代わりにしてたらしく、その頃もまだ即席枕を使うクセが抜けてなかったそうだ。
なんだか見抜かれた気がして恥ずかしかったらしい。
二度は来ないな、と決めた。
 しっかりと施術してもらって身体も楽になった翌日、母はさっそく自分の勤め先の百貨店で枕を買う事にした。
まだその頃は、羽毛とか綿とかソバ殻しかなくってビーズやら低反発やらは置いてなかった。
 母はある程度固くて高さの調節がしやすそうなソバ殻の枕を選んだそうだ。
その日、早速買ったばかりの枕を使ってみたら、自分でも驚くくらい熟睡していた。
 しばらく快眠が続いて、同僚からは、

「 最近、○子さん、がんばってるね。」

みたいなこといわれて、なんとなく話の流れで肩こりとか整体とか新しい枕の事を話した。
 そしたら同僚の人も、

「 私も枕変えてみようかなぁ。」

とかいってその人も同じソバ殻の枕を買ったらしい。
その日を境くらいに同僚の人はものすごい遅刻が増えたそうだ。
 理由を聞くと、

「 熟睡しすぎて起きれない。」

っていわれた。
 かくいう母もこのところ物凄く熟睡してるせいで朝一人で起きれないことが多々あった。
当時はまだ実家暮らしで祖母が起こしてくれてたからいいけど、休日は寝疲れするまで寝ていた。
 肩こりは以前ほど酷くもないし、なにより熟睡できるなら良いかってことで気にもかけてなかった。













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日々の恐怖 1月30日 客商売

2017-01-30 18:48:56 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 1月30日 客商売




 10年くらい前の話です。
私はスナックでバイトをしていた。
 スナックには、雇われママとそのご主人がいて、私ともう一人、5歳年上のお姐さんとで回していた。
みんな仲が良くて、私とお姐さんの送り迎えはご主人がしていた。
 ある時、このご主人から携帯で、

「 ちょっと早いけど迎えに行っていいか?」

と聞かれて、

「 はい、お待ちしてます。」

と答えた。
 で、スナックに着くと、ご主人が、

「 夕べ、鍵締めて帰ったんだけど、今日、来てみたら椅子もテーブルも無茶苦茶なんだ。
鍵を持ってるのは、俺だけだしなぁ・・・・。」

店内は無茶苦茶だった。
 二人でそれを片付けて、

「 今までも、たまにこんな事があったんだよなぁ・・。」
「 ママさんは知ってるんですか?」
「 うん、知ってる。
一人でここに来ないようにしてる。
繊細な人だから・・・・。」
「 お祓いとかしたらどうですか?」
「 客商売だし、あまりしたくないな・・・。」

そんな事を話して、淡々と仕事をした。
 後日、酔っ払ったママさんから、

「 あんた、テーブルや椅子が動くって聞いて辞めないよね。」
「 別に私に被害がないので・・・。」
「 私は怖いよ。
本当に怖い。
今すぐ何もかも放り出したいけど・・・。」

 この話をした10日後、ママとご主人は夜逃げした。
お姐さんと私はちょっと途方にくれたけど、私は別のバイトに受かり、お姐さんは実家に帰った。
 あの椅子やテーブルが動く現象がなんなのか分からないけど、ママたちの夜逃げ後、あの店に入る店子は半年くらい単位で替わっている。











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しづめばこ 1月29日 P473

2017-01-29 18:27:55 | C,しづめばこ



 しづめばこ 1月29日 P473  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



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日々の恐怖 1月28日 声

2017-01-28 21:42:20 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 1月28日 声




 30年も前の話なんで、記憶違いもかなりあると思う。
しかし、途中でトイレを借りた武州日野駅の公衆便所がやたら汚かったのは、はっきり覚えている。
駅の外にあるトイレでワラジムシが大量にいた。
 テントやコッヘルやコンロ、食料、毛布を持参して男4人でキャンプしに行ったんだけど、車で鉄橋を通るたびに下の川でバーベキューやキャンプや釣りをしてる人が見えて、

「 こんな人目があるところは嫌だな・・・。」

という話になって適当な場所を探していた。
 しばらく行くと木の橋があってそこに車を停めたと思う。
そこからリュックで川沿いにずんずん徒歩で歩いた。
川沿いといっても道があるわけじゃなくて大岩を登ったり、進めないところは川の中を歩いたりして川上に進んで行った。
 やっとテントを張れそうなちょうどいいスペースを見つけて、ここにしようってことになった。
あとはテントを設置して、トイレの穴を掘ったり、スイカやビールを川に沈めたり、川で泳いだりで特に書くこともないんだけど、山が近いせいかラジオが入らなかった。
NHKの電波だけガーガーいう雑音の中に少し聞こえて夜になると少しマシになるって感じだった。
 最初の晩はとにかく寒かった。
毛布を敷いてるのに地面の冷たさに参った。
 翌日、これは寒すぎだっていうんで何人か川を戻って、近くにあったキャンプ場に毛布を借りにいった。
でも夜の寒さが何とかなると快適そのもの、楽しいキャンプだった。
 おかしなことが起こったのは、それから2日くらいたってからだった。
真夜中、俺が聞き取り難いラジオを聞いていたら、突然、電池が切れた。
そして、周囲が静かになった。
 すると、外から女の声が微かに聞こえてきた。

「 川でキャンプをしないでください。
川でキャンプをしないでください。」

そう聞こえるんだ。
 川下のほうから声がすると思ってたら、だんだんと近づいてきてテントの前まで来た。
テントの前で喋ってるのが聞こえて、もう怖くて外を見ることも他の3人を起こすこともできなかった。
俺は毛布を被って、怖い怖いと思いながらも時間が経つと寝てしまったようだ。
 翌朝になると仲間の一人がもう帰ろうと言い出した。
夜へんなのが来た、川でキャンプするなって女が言いに来たって言う。
 寝ているとばかり思っていた仲間の一人も、同じ声を聞いていたらしい。
声を聞いていなかった2人が、

「 誰か本当に人が来たんだろう。」

と言ったが、その声を聞いていたヤツが、

「 街中の事件現場や病院じゃあるまいし、こんな人のいない山の中に女が来るわけない。」

これに俺も、

「 そうだ、そうだ。」

と同意した。
それで、これは相当ヤバイかもしれないと、結局キャンプをやめて帰ることになった。
 その帰り道に、また駅のトイレに寄ったとき、でっかいリュックを背負った行商のおばちゃんから、

「 あんたたち、あそこでキャンプなんかしたら危ないよ。
キャンプに来た若い子が鉄砲水に流されて何キロも下流で見つかったことがあるのよ。」

という話を聞いた。
 俺達がキャンプした川と、鉄砲水があったという川が同じなのかは分からない。
たぶん違うんじゃないかと思うし、実は今でも自分が体験したことを半分くらい疑っている。
でも、あの夜のことを思い出すと今でも不思議に思う。











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日々の恐怖 1月27日 顔(4)

2017-01-27 19:05:40 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 1月27日 顔(4)




 床に頭を思い切り打つと思ったその瞬間に、Bは自分の布団の上で我に返った。
しばらくの間、自分がどうなったのかもBにはわからなかったが、もし今のがただの夢じゃなかったら、と思うとAが心配になり、電話したのだと言う。
 そして、本棚の前で自分が落とした本が確かにあることをAから聞いて、夢じゃないと確信し、今すぐ部屋から出るように促したのだそうだ。
 Bの話を最後まで聞いたAは、困惑することしかできなかった。
外に出た時、Bが自分のすぐ近くにいたのだろうか?
そして自分の部屋で奇妙な目に遭い消えた後、入れ違いに自分が戻ったということなのか?
今まで何事もなく平穏に暮らしてきたあの部屋に、本当にそんなものがいるのだろうか?
 AはBに礼を言い、朝になってから部屋に戻ると約束して電話を切った。
外が明るくなり、車や人の通りが増えた頃に、Aは意を決して部屋に戻った。
中はカーテンを閉めたままで真っ暗だった。
 玄関、廊下の電気を点けたまま、本棚の方に注意しながら、部屋の電気のスイッチを点けた所で、Aは気付いた。
Bに急き立てられ慌てて部屋を出たAは、電気を消さなかったはずなのだ。
 結局、契約の関係もあり、2ヶ月後にAはそのアパートから引っ越した。
2か月の間、Aは本棚の上に盛り塩を置いていた。
Aにはその間何事も起きなかったという。
 Bには無事を知らせるつもりで何度か電話を掛けたが、相当その時の体験が堪えたらしく、 すぐに向こうから切ってしまうようになったため、再び疎遠になってしまった。
引っ越してからは、Bからの電話もなく、Aも何事もなく新居で平穏な生活を送ったという。
 これが、AとBの二人が体験した奇妙な出来事の一部始終です。
私は、大学を卒業した直後のAからこの話を聞き、その後Bに電話で確認し、二人の話した内容を一つにまとめてみました。
二人とも現在は何事もなく、Bは時間が経過したこともあり、気軽にこのことを人に話せるようになったことや、Aはあれから何度も連絡をくれたのに申し訳ないことをしたと言っていました。
 Aの部屋には本当に何かがいたのか。
Bは本当にAの部屋に夢の中で行ったのか。
何かいたとしたら、何故Bは助かったのか。
何故疎遠だったBが引き寄せられたのか。
今となっては何も分かりません。
ただ、そのアパートは学生に人気で、あの時の部屋も、きっと何も知らない誰かが住んでいるはずだとAは言います。













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しづめばこ 1月26日 P472

2017-01-26 20:17:44 | C,しづめばこ



 しづめばこ 1月26日 P472  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



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日々の恐怖 1月15日 顔(3)

2017-01-15 19:46:11 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 1月15日 顔(3)




 一度も来たことのない場所なのに、BにはAの住む部屋がなんとなくわかった。
3階の、通路の奥から3つ目の部屋。
Bは鍵が掛かっているはずのドアを開けた。
 玄関に入ると、右に洗濯機、少し進んで左に風呂場、その奥には電気がついたままの部屋。
部屋の中心には炬燵、左の壁際にベッド、そして右の壁際には本棚。
何となくAらしい雰囲気の部屋だとBは思ったと言う。
 Aはそれを聞きぞっとした。
部屋のある階や場所、内装までまったく同じだったからだ。
 Bは本棚を見て、本を貸し借りしていたことが懐かしくなり、本を手に取ってみた。

“ この漫画、最新刊出てたんだな。
このグレーの本は小説かな?”

と本をもう1冊取ったとき、急にBは強い気配を感じ、そちらを見た瞬間、本を落としてしまった。
 本棚の横の白い壁に、右を向いた女の横顔があった。
Bが、

“ 何だ、コイツは・・・?”

と思っていると、その顔が徐々に回転し、こちらを向いて来る。
 正面で向き合ったとき、女は無表情で肌の色が壁紙とまったく同じ白だった。
Bには一瞬仮面に見えたという。

“ これは本当に夢なのか・・・・。”

Bは突然無性に恐ろしくなった。

“ Aの部屋に何故こんなものがいるのか?
自分はこいつに引き寄せられたのではないか?”

 そして、Bは、

“ ここに自分が来てはいけなかったのではないか・・・。”

と思った。
 こちらを向いている女の顔が歪み、口が徐々に開いて来る。

“ 何だ・・・?”

とBが思った瞬間、急に誰かに襟首を掴まれたように、体が引き倒された。
 Bが勢いよく仰向けに倒れて行く。
女の口が動いていたが、Bには何を言っているのか聞こえなかった。












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しづめばこ 1月14日 P471

2017-01-14 18:45:45 | C,しづめばこ



 しづめばこ 1月14日 P471  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



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日々の恐怖 1月13日 顔(2)

2017-01-13 18:32:41 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 1月13日 顔(2)




 Aは更に混乱した。

“ 進学後は会っていないBが、何故自分の部屋の中を知っているのか?”

Bは言った。

「 その落ちてる本って、○○の最新刊と、グレーの装丁のハードカバーじゃないか?」

確かに言う通りだった。
本棚の方に行かなくても一目でわかった。

「 やっぱりそうか、とにかく今すぐそこから出てくれ!」

気味が悪くなったAは、コンビニに行ったときの恰好のまま、電気も消さず外に出た。
 近所にはコンビニ以外開いてる店がないことと、アパートから離れたいこともあり、Aは歩きながらBと電話を続けた。

「 なあB、お前、俺の部屋に来たことなんてないよな?」
「 お前の家の場所も知らない。
でも、お前の部屋に入った。
訳わからんと思うけど・・・・。」

そういうとBは、さっき自分の身に起きたことを話し始めた。
 Bがいつものように寝ると、突然深夜の住宅街に立っているのに気付いた。
まったく見たこともない街で、Bは驚きながらも、これは夢だと自覚できたそうだ。
 すると、眼の前の建物からAが出てきたのが見えた。
BはAを久しぶりに見たことに嬉しくなり、声をかけたのが見向きもしない。
 そのまま近くのコンビニへ入るAを見て、

“ 夢だからな・・・・。”

とBは不思議と納得した。
 Aが見えなくなると、Bは急に、Aは今どんな暮らしをしているのか気になった。

“ 今出てきた建物に住んでるんだよな・・・。”

とBはそのアパートに入ってみた。













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日々の恐怖 1月12日 顔(1)

2017-01-12 19:33:41 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 1月12日 顔(1)




 友人のAとBから聞いた話をしたいと思います。
Aが大学に進学し、アパートで一人暮らしを始めて2年目の頃の話です。
 近々雪も降りそうな初冬の深夜、Aは部屋に電気をつけたままコンビニへ行った。
新刊雑誌を立読みし、飲み物を買って部屋に帰った途端、携帯電話が鳴り出した。
 時計を見ると、午前2時半頃だった。
誰かと思い着信を見ると、友人のBだった。
 Bは、Aと高校で同じクラスで、お互いに本を貸し借りする仲だったが、進学先がAの学校から遠く離れた専門学校だったこともあり、疎遠になっていた。
 Aは戸惑った。

“ しかし、何故こんな時間に、久々に電話をかけてきたのか・・・?”

とにかく、久しぶりのBとの会話ということで、Aは電話に出た。

「 もしもし、Bか?なんでこんな時間に?」
「 Aか、お前今どこだ!
まだコンビニか!?」

いきなり、切迫した声でBが聞いてきた。

「 え、いきなり何だよ、コンビニって?
ひょっとして、お前このへんにいるの?」
「 まだ外か?
部屋に戻ってないのか?
だったら、絶対戻るな!」

Aは唐突なBの命令に驚いた。
 しかし、すでに部屋に戻っているのでそれもできない。

「 いや、今もう部屋にいるけど・・・。
何、どうしたの?」
「 もう部屋にいるのか・・・。
頼む、俺の言うこと信じて部屋から出てくれ!」

Aが戸惑っていると、Bがさらに奇妙なことを言ってきた。

「 お前の部屋の奥に本棚あるだろ。
何か変わってないか?
本が2冊落ちてないか?」

Bの言うとおり目を向けると、確かに2冊の本が本棚の近くに落ちている。












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日々の恐怖 1月11日 死神

2017-01-11 19:35:16 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 1月11日 死神




 昨年の夏の話です。
その夜は友人との飲み会で、かなり帰りが遅くなった。
終電も逃し、このまま朝まで飲み明かすかーって話だったんだけど、私は次の日用事があったので帰ることにした。
 私の自宅は新宿からそう遠くなく、タクシーに乗ればすぐに着くけど、まあ歩けない距離じゃないし酔い覚ましがてら歩いて帰るかってことで、暗い夜道を一人で歩いた。
 賑やかな繁華街を離れ、住宅街に入る。

“ 夜風が気持ちいいなァ・・・。”

なんて思いながら歩いていると、突然、暗がりから小学校低学年くらいの全身黒ずくめの男の子が現れて、

「 むかえにきました!」

って私に言うんだ。
 私が、

「 え・・・?」

って戸惑っていると男の子は私の顔をじーっと見つめた後、

「 あっ、ごめんなさい、間違えました!」

って走って行っちゃった。

“ なんなの、あれ・・・?”

 時刻は午前2時を回ったところ。
こんな夜中に小さな男の子が一人で外をうろついているなんて、どう考えてもおかしい。
 不審に思いながらも、その日は無事に帰宅した。
まだ起きていた弟に今あったことを話すと、

「 死神だったんじゃねーの?」

と笑われた。
 私も、

「 そーだね。」

なんて笑いながら、さして気にも留めていなかった。
 数日後、近所で不幸があった。
亡くなったのは私と同じ年頃の女の子だった。
原因不明の突然死だったらしい。
そしてその子の家は、あの日の夜、男の子が走って行った方向だった。
 単なる偶然かもしれないけど、本当にあの男の子は死神だったのかもしれない。

“ もしあの夜、私が間違われたままだったら・・・。”

そう思うと背筋が寒くなった。












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日々の恐怖 1月10日 赤ん坊(2)

2017-01-10 18:03:58 | B,日々の恐怖





  日々の恐怖 1月10日 赤ん坊(2)





 振り返っても誰もいません。
私は怖くなって、

「 もう帰ろうかな・・・・。
明日、朝早く来てしようかな・・・。」

と声に出して言いました。
 急いでPCの電源を切って、荷物をまとめて立ち上がり、背後のドアの方へ振り返ろうとしたときに、自分の右側(リハビリ道具が色々置いてある)が目に入りました。
 そのシルバーカーが2台並んでいる前に、一人の小さなお婆さんが立っていました
その身長は私の肩まで程です。
 徘徊なんかはよくあることですが、ドアは開けた形跡が無いし、入院患者にこんなお婆さんがいた覚えもありません。
新しい方なら、私達リハ関係者には通達があるはずです。
 一瞬で、もの凄い悪寒を感じて固まってしまった私の方へその老女は近づいて来て、私の腰に手を回し抱き着きました。
そして、恐怖で動けない私を濁った目でじっと見上げ、ゆっくりと赤い口を大きく開け、

「 おぎゃァ!」

と赤ん坊のような泣き声を出しました。
 どれくらい経ったかわかりませんが、私は思い切り名前を呼ばれ、強く肩を叩かれました。

「 ООさん!?ООさん!!」

ハッとして振り返ると、3階の看護師長が立っていました
 なんでも、リハ室から甲高い悲鳴が聞こえたので慌てて来てみると、私が呆けた様な顔で、声だけは凄く大きな声で叫んでいたそうです。
後ろには2人の看護師と介護師さんがいました。
そこで私は安心して泣き出してしまいました。
 今では何だったのか、誰だったのかは判りません。
あの後、結局その病院は辞めてしまいました。
ただ、その時の同僚とは今でもたまに連絡しますが、私がいた頃も日常茶飯事だった足音やナースコール、笑い声などは、今でも頻繁に起こっているそうです。











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日々の恐怖 1月9日 赤ん坊(1)

2017-01-09 17:53:38 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 1月9日 赤ん坊(1)




 5年ほど前の話です
当時、私はある病院で働いていました
 とはいっても看護師ではなく、社会福祉士の資格を持っているので、リハビリ科のほうで、アセスメントやケアプラン作ったり、サービスを受ける手続きをしたり、まあデスクワークっぽいものです。
患者さんたちとも勿論話しますが、多くはお年寄りの入院患者さんがほとんどでした。
 私の仕事でも一番大切なのは、監査の準備です。
主任が主にチェックをするのですが、どこの病院もそうであるように、監査の前はたいてい泊まり込みで膨大な資料をチェックして補足します。
監査課の方々が来たときに、すぐにでも望まれたものを見せられるように、またその方たちが見やすいように整理しておくのです。
 私も今までの資料を見直したり、事前監査資料というものや、事前評価なるものを監査課から貰うので、それを埋めたりしなければならないのですが、当然それに毎日の仕事もあります。
仕方ないので残ってする羽目になります。
 その日も、今までのように居残ってPCの前に座っていました。
リハビリ室には私一人です。
主任は帰ってしまっていました。
 私は元々ビビリなので、

“ 大丈夫、ナースステーションには、夜勤の看護師さんたちもいるし・・・。”

と自分に言い聞かせ、必死で仕事をしていました
よくある話ですが、この病院での不思議な体験はしょっちゅうあったのです。
 シ~ンとした部屋で仕事をしていると、私のタイピングの音に交じって、微かに、

“ キィ・・・・。”

という音が聞こえました。












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しづめばこ 1月8日 P470

2017-01-08 20:28:04 | C,しづめばこ



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日々の恐怖 1月7日 遠い記憶

2017-01-07 18:02:43 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 1月7日 遠い記憶




 少し前にあった出来事です。
私は31に先月なったばかりのおっさんなのですが、稀に変な夢をみます。
それが、夢なのか遠い記憶なのか定かではありませんが、因果関係はわかりません。
 小学生だった時の夢をみました。
それは、私が想いを寄せていた人の隣の席で給食を食べている夢でした。
とても笑顔が素敵で声も覚えていて、ずっと席替えしたくなかった当時の記憶を思い出しました。

“ あれから、数十年経って今はもう結婚しているんだろうなぁ、可愛かったし・・・。”

などと思い返しながら、何故あの時の夢をみたのかはわかりませんでした。
 私の夢の中で彼女が何かを呟いている感じはしたのですが、何を言っているのかはその時はわかりませんでした。
 その翌日くらいから、私は酷い喘息と肺炎に見舞われました。
病院2件をハシゴして入院、その後処方箋薬を大量に頂き、先生曰く、

「 酸素量も少ないし、死ぬ一歩手前でしたよ。」

などと脅かされ家に帰りました。
 多分、その時の仕事が金属を溶解するような仕事で灰や粉塵だらけになるよう現場で、肺の弱い自分にあってなかったんだろうと思いその仕事は辞退しました。
 私は未だに自分の弱さもあり独身で、

“ この年で親に迷惑をかけることが多いなぁ・・・・。”

と反省することばかりです。
 その後、なんとか病も治まり実家に行くと、母親が何か少しうつむいた様子で私に話しかけました。

「 あなたの行ってた小学校の○○さんていたでしょ?
先日、肺ガンで無くなったそうよ。
とても苦しかったでしょうね、まだ若かったし・・・。」

私は、

「 えっ、なんで、若いのにガン!?」

と、何度か繰り返し聞きました。
そして、私の脳裏で夢に出てきた時の彼女の言葉を思いました。
それは冷静に思い返してみると、

「 苦しいよ。」

って言っていた気がします。
 死に対して同期の友達や知人など失うと、あまり死ぬことに対しての恐怖など薄れて行ってしまいます。
何故、夢で私の所に来てくれたのかはわかりませんが、

“ 最後に会いにに来てくれたんだなぁ・・・。”

と、自分なりに思ってしまいました。












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