日々の恐怖 11月25日 応急処置講習用の人形(1)
病院で事務員やってたときの話です。
自分の病院の地下にはカルテ倉庫があった。
2~5年前のカルテはすべてここに収められていて、久々の患者が来るとわざわざ地下まで取りに行かなければならない。
そして、このカルテ倉庫のドアのすぐ右脇に30cmくらいの隙間があり、そこにケンタ君の愛称で呼ばれてる等身大の人形があった。
応急処置講習とかに使う人形なのだが、いつも青いビニールシートにくるまれていて、しかも必ず足だけ見えてるという、どう見ても、
“ 狙ってるだろ!”
という置き方で安置されていた。
かく言う自分も入職初日の案内時、ケンタ君が目の端に入ってしまい、本気で飛び退いたら課長代理のおばちゃんに笑われた。
それで、このケンタ君だがたまに内科受付とかのヘルプで入って、地下にカルテを取りに行かせられると毎回ではないんだが、ちょくちょく向きが変わっている。
手前に足が来てたり、奥に足が来てたり、
“ 案外駆り出されてるんだな~。”
くらいにしか、その時は思っていなかった。
そしてある日の夜勤日だった。
もう、3、4回入ってそろそろ慣れてきた頃、10時頃に急患が入り、当直医師は受けるとのことで患者検索の結果、まだ地下にカルテをがあるようなので仕方なく地下へ行った。
さすがに夜の地下は怖いので、廊下の電気全部つけて倉庫に突入した。
入る直前、ケンタ君に心の中で、
“ こんばんわ~。”
とか言いいながら入って行く。
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