日々の恐怖 5月16日 白狐(14)
「 神罰があるとかないとか言い出しても水掛け論だからその辺りはどうでもいいけども、俺はあると思っていた方が人生楽しいからそう思うことにしてるよ。」
と小豆さんは返した。
私もそう思うことにした。
神社を燃やすというメンタルを持った人間がどういう人なのかはわからないけど、犯人は家具の角に足の小指毎日ぶつけてればいい。
正直今も、神様と一緒にいたなんてあんまり信じてない。
現実世界でこんな話大声で出来ない。
でも信じることと、あると思う事はまた少し別だと思うから、そういうこともあるんだなぁと思うようになった。
あんなに思い焦がれた神様に、一時でも使われたのならこんなに嬉しいことはない。
修復してからの節句の祭りでは、拝殿奥の扉が開かれて石像が公開されるようになった。
一年に一回、遠くからあの白い世界を見ることが出来る。
切り取られた白さはやっぱり綺麗で、この感覚は片思いに似てるんだとその時に気付いた。
今年のツアーでも小豆さんに会った、
バンドのツアー日程を調べて私が来るのを待ち構えていた小豆さんは、今年は袴姿だった。
「 ちゃんと正装も見せとかんとな!」
と言うけれど、
” 袴の色が茶色・・・?”
言葉にすると茶色としか書けないけれど、なんというか茶色?と首を傾げたくなるような色だった。
おっさんはセンスがない。
センスのない神職は、
「 神さんは気まぐれで我儘なもんだから、またこっそり君と全国回るかもしれないよ。」
と言った。
そう思った方が楽しいから、そうであると思うことにする。
多分私は一生、あの白さに片思いし続けるんだと思う。
そういうお話。
神様に利用されても何の利得も無く、イブも一人で過ごすアラサーの盛り上がりに欠ける話に付き合ってくれてありがとう。
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