日々の恐怖 11月26日 応急処置講習用の人形(2)
微妙に番号違いの場所に入っていたので、探すのに手間がかかってしまった。
急いで上に戻ろうと出た瞬間、意識はしてないのに左に目がいった。
“ あれ?足が出てない・・・?”
入る前は確か、前側に足があってよく見えた。
今はそれが見えない。
探すのに手間取ったとは言え、時間とすれば10分程度だった。
“ こんな短い間に・・、いやそもそもこんな時間に、誰が何のためにわざわざ地下まで来ると言うのか・・・?”
急に背筋が寒くなり、急いで上まで駆け戻った。
その数日後AEDの講習会があり、そこで人工呼吸用の人形が使用された。
終わった後、庶務の同僚に、
「 ケンタ君、ちゃんと見たの初めてかも・・・。」
と話すと、
「 え?
あれはケンタじゃないよ、別の新しいヤツ。
あんな埃だらけの、もう使わないって。
第一、まんま放置してる古い人形に人工呼吸なんて嫌だろ?」
聞けば、ケンタ君はもう使われなくなっていたらしい。
少なくとも自分が夜、地下のカルテ倉庫に入る前には、既にお役目御免だったとようだ。
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