大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 12月31日 輸入雑貨(1)

2023-12-31 19:50:22 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 12月31日 輸入雑貨(1)






 今の彼女と付き合い始めたばかりの頃の話です。
とある駅前で彼女と待ち合わせをしていたのだが、その日は時間より早く着いてしまった。
近くに喫煙所があったのでそこで煙草を吸っていると、すぐ近くで黒人男性が露店の準備をし始めた。
 並べているのは、カラフルなビーズで作られたネックレスやブレスレット。
どれも鮮やかな原色が多用されており、大ぶりなビーズが多く使われた派手なものばかりだ。
退屈なので横目で品物を見ていると、その黒人が視線に気付いて声をかけてきた。

「 オニイサン、見テッテヨ。
コレ、アフリカ本物ネ。
ケニア、コンゴ、スーダン、イロンナ国ノヨ。
安イ安イヨ。」

いや俺そんなの付けないし、と断ろうとした時、運悪く彼女が来てしまった。

「 お待たせ~、あ、カワイイ!」

俺の顔もろくに見ないうちから、彼女の目は色とりどりのアクセサリーに釘付けとなった。
すぐに幾つかのネックレスを手に取ると、置かれた小さな鏡の前で自分の胸元に当て始める。

「 最近フォークロアが流行りなんだよね~。
私もこういうの一個欲しいなって思ってたんだ。」

まずい流れだなと思っていると、案の定彼女はキラキラした笑顔で俺を見つめた。

「 買って!」
「 やだよ、自分で買え。」
「 今日、記念日じゃん!買って!」
「 何の記念日だよ。」
「 付き合って、えーと・・・、5週間ちょっと記念日!」

凄まじく半端な記念日を提示され、俺は言葉を失った。
俺の沈黙を勝手に肯定と判断した彼女は、どれにしよっかな~とひとしきり悩んだ後、ひとつのネックレスを手に取った。

「 これ・・・・。」

と呟いた後、笑顔だった彼女の顔から、すっと笑みが消えた。
この瞬間、俺は彼女が別人に変わってしまったかのような感覚を覚え、言いようのない不安を感じた。
彼女はどこかうつろな表情でネックレスを見つめたまま、

「 これにする。
これがいい。」

と黒人に差し出した。

「 アリガトネ~、サンゼンエンネ~。」

と言いながら、黒人がネックレスを袋に入れて彼女に手渡す。
 正直俺は、このネックレスを彼女に買ってやりたくはなかった。
さっき感じた不安が頭を離れなかったからだ。
だが、黒人に、

「 オニイサン、サンゼンエン!」

と真顔で催促され、俺は流されるまま金を支払ってしまった。

「 ありがとう、大事にするね!」

そう言って振り返った彼女からは、先ほどの異様な雰囲気はすっかり消え失せていた。












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日々の恐怖 12月24日 病院の夜の巡回

2023-12-24 19:00:58 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 12月24日 病院の夜の巡回






 前勤めてた病院での話です。
夜中に巡回してたら、二人部屋からうなり声がした。
二人部屋の一人は入院したてで症状が重く、全然意識のないおじさんA。
もう一人も時々弱くうなるだけで、1ヶ月ずっと夢の中にいる寝たきりのおじいちゃんB。

” Bさんがうなったのかな?”

と思い訪室すると、寝たきりのはずのBさんのベッドが空だった。

” えっ?”

と思って部屋を見回し、巡らせた目が真後ろの開いたドアをとらえた時、 廊下の光を背にして立つガリガリのBさんがいた。
点滴抜いて左半身血まみれだ。
あごが外れるくらい口を開いて、目は前方斜め上を見ている。

” えっ、えっ、なにこれ?”

と混乱していたらBさん、

「 ぅうぅうううおおおーー!」

と雄叫びとともに、両手を横に広げて倒れ込んできた。
 突然のことに私は悲鳴を上げてしりもちをつき、しかし覆い被さるBさんがケガしないように必死で抱きかかえながら、
必死にもがいて振り向いたら、 意識のないはずのAさんが首だけこっち向けて、充血した目をカッと見開いて笑っていた。
吐いた。











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日々の恐怖 12月17日 モニター

2023-12-17 09:06:11 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 12月17日 モニター






 俺が警備員やってたのは、テナントがいくつか入ってるビルだった。
常駐警備員ってのは途中に待機時間あるくらいで、基本的に交代制の24時間勤務だ。
故に深夜ビル内の巡回や駐車場の巡回なんかもやるんだけど、必ず決まった時間に発報するパッシブセンサー(人影とかで反応する)箇所がある。
 先輩や隊長からは、

「 あのパッシブはオカルト発報だから。」

って聞いていたから、あまり気にしていなかった。
でも、発報あれば一応行かなきゃいけないのが警備員だから、一応行く、6階に。
 でもって毎度のことながら発報したんだが、俺は駐車場の巡回をしていた。
無線で、

「 また発報したよ、外から何か見える?」

って言われたから、

「 見て来ます。」

って言って、ビルの表に回って6階を見上げた。
 外から見て初めて気付づいたんだけど、6階のパッシブがある辺りが青く光っていた。
すごくビビって、無線で、

「 6階パッシブ近辺で光を見た!
急行して!」

って連絡してから、防災センターにダッシュで戻った。
 防災センターで各階のエレベーターホール、各フロアのモニターを確認してたら、6階に急行した先輩の後ろを、
何か青い輪郭の影みたいのがついて行ってる。
先輩に無線で、

「 先輩の後ろに何かいます!」

って言ったんだけど、先輩に無線届いていないのか全然気にせず歩いている。
でもモニターには、先輩の後ろの影がずっとついて行って、その後、先輩が角を曲がって消えた。
 先輩が戻ってきてからから経緯を話したんだけど、先輩から信じられない話を聞いた。

「 いつものことだと思って、6階に行かずにトイレ行って来た。」
「 えっ?
だってモニターに先輩が映ってましたから!
マジで影がいたんです!」
「 そんじゃモニターの録画見てみようぜ(笑)。」

なんて余裕かましてたから、ムカついて録画をみた。

「 ほら、これ、先輩・・・。」
「 いや、違うな。」

拡大してみたら、そこに映っていた警備員は、よく見ると先輩じゃなくて、俺だった。

「 え・・・?」

先輩に怒られた。

「 お前だろ、バカ!」

もう訳わからなくて、当時は6階に行くのが怖くなって、行くのを誤魔化していた。










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日々の恐怖 12月9日 二つ目の玄関(2)

2023-12-09 19:38:13 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 12月9日 二つ目の玄関(2)






 どうやら彼女の生まれた集落では、死者が彼女の家を訪ねることは、死者を送る一連の手順に含まれているようだ。
いや、送られるための手順といったほうが正確か。
 死んでから四十九日を終えるまでの間に、彼女の家を訪れることで、迷わず向こうへ旅立てる。
そんな風習というか、思想のようなものを集落全体で共有している。
なにがどうなってそんな話になったのかは、誰も知らない。
知らないが、そういう考えがある以上、軽々に玄関を変えるのも気が引ける。
古い玄関を残したのは、そういう理由らしい。

「 ドアのほうには来ないんだ?」
「 そう。
なんでか知らないけど、古いほうだけ。」

昔は普通の客も死者もそちらに来たから、区別はできなかった。
今は、普通の客はドアのほうに来るのでわかりやすいらしい。

「 昔は嫌だったな~、お客さんが来るの。
おばけかどうか、開けるまでわかんないんだよ。」
「 別に、なにもないんだろ?」
「 ないけど。
でも、なんかやだ。」
「 まあ、わかる。」

 見えなかろうが、いなかろうが、嫌なものは嫌だ。
たとえ見えなくても、そこにいるかもしれない。
たとえもういなくても、さっきまで確かにそこにいた。
そういうことが思い浮かんで、なんとも嫌な、うすら寒いような気分になる。
 そもそも、訪ねてきているのは本当に故人なのだろうか?
開けても誰もいないのなら、その正体は謎のままのはずだ。
ただ、昔からそう言われており、実際集落で死者が出たときに現れるから、そうなのだろうと思っている。
実は、まったく無関係な別のなにかである、という可能性が否定できないのでは?
そんなことを考えると、少々寒気がした。
 この話に関連して、鍵の話も聞いた。
件の玄関に取り付けられている、ねじ締り錠。
これは常にかけておかなくてはならない。
幼いころから、彼女は耳にたこができるくらいしつこく、そう言い聞かされたという。
 人が来たときだけ開けて、用が済んだらすぐ締める。
開けっ放しにしておいてはいけない。
誰でも開けられるようにしておいてはいけない。
必ず、内の人間が開けるようにしておくこと。

「 そうじゃないとね、入ってきちゃうから。」

そういう理由だそうだ。













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日々の恐怖 12月3日 二つ目の玄関(1)

2023-12-03 13:47:23 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 12月3日 二つ目の玄関(1)






 彼女の家には玄関が二つある。
ひとつは、ドア。
ご家庭にある玄関ドアをイメージして貰えばおおむね合っているだろう、普通のドアだ。
もうひとつは引き戸。
星のような放射状の模様がある型板ガラスを使った、古い引き戸だ。
開け閉めするたびガラガラうるさいという。
 ドアが二つあるというと二世帯住宅を想像するが、そうではない。
彼女の家は普通の一軒家だ。
玄関が二つあるということと、それに付随して変則的な間取りになっている以外、特筆するところはない。
 なんでも古い家を壊すとき、祖父母の希望でわざわざ残したらしい。
つまり、引き戸のある場所が元々は玄関だったわけだ。
 それを残して新しい家を建てた。
そしてわざわざ新しい玄関も作った。
そういうことらしい。

「 なんだってまた、そんなことを?」
「 死んだ人が訪ねてくるからだよ。」

彼女が当たり前のようにそう答えるものだから、一層混乱した。

 曰く。
集落で死人が出ると、初七日から四十九日を終えるまでの間に、彼女の家に故人が訪ねてくる。
夜明け頃。
あるいは夕方が多いそうだ。
 薄暗いなか、がしゃがしゃと引き戸を叩く音がする。
見に行くと、ガラスの向こうに人影がある。
型板ガラスなので、細かいところはわからない。
ぼんやりとした、人型の影だ。
それがじいっと立っている。
 ねじ締り錠を回し、引き戸を開ける。
そこには誰もいない。
ついさっきまで、人影があったはずなのに。
そういうことが、あるのだそうだ。

「 そのあとは?」
「 亡くなった人の家に電話して、来たよ~って連絡してたかな。」
「 なんのために?」
「 それは、よくわかんないんだけど。」












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