大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 8月31日 Q&A

2013-08-31 18:11:44 | B,日々の恐怖






   日々の恐怖 8月31日 Q&A





2013年2月

 近所の空き家から最近、夜中に奇声が聞こえてきます。
もう10年くらい前から空き家で、元々とある家族が住んでいたのですが旦那さんの仕事の転勤で引っ越してそれ以来空き家になっています。
ただ売りに出されているわけではなく恐らくその家族がいまだに所有しているとは思うのですが帰ってきているのを見たことがありません。
 一週間ほど前から夜中の23時くらいに女の人の奇声が聞こえてくるのです。
ただ何故だか近所ではその声を聞いたのが私しかおらず凄い怖いです。
幻聴かなと思ったのですが、携帯で録音してもしっかり入るので本当に叫んでいるみたいです。
ただ、人の出入りはもちろんありませんし、ガスなども撤去して窓も割れたりしており、生活できる環境ではありません。
これは放置した方がいいのでしょうか?
毎日ビクビク過ごしています。

補足
 昨日、さすがに不安になり警察に相談しました。
一応、調べに来てくれましたが窓やドアは人間が入り込める隙間はなく、中から人の気配はしないそうです。
さすがに無断で入るわけにもいかず外から見て回っただけですが特に物音もしておらず、気のせいではと言われました。
また霊感は一切なく心霊スポットに友人と行った時も何も感じませんでした。




10日後

 前に質問しました“近所の空き家から奇声が聞こえてくる質問”の結果を書きます。
猫と言う意見が多かったのですが、結論を言えば幽霊でした。
私しか聞こえずおかしいと思い、友人6人を呼んで一緒に聞いて欲しいとお願いしました。
 夜になり案の定、奇声が聞こえてきて友人にも聞こえていたのでこれは確実だと思い、直ぐに空き家に行ってしらべました。
割れた窓から中を覗き込んでみたら、ボロボロに焦げた服を着た女性が立っており奇声をあげていました。
あまりにも驚いて皆で走って逃げました。
この時点では不審者だと思っていました。
 後日、前に相談した警察の方に連絡を取り、女性がいた事を伝えると直ぐに持ち主に連絡をしてくれました。
しかし連絡の結果は、その家の家族は7年前に亡くなっていると言うことでした。
 私の住む所から2時間くらい離れた場所に、その家族の親戚の方がその家の持ち主になって住んでおられ、その日の午後に来てくれて家の中を一緒に見ましたが誰もおらず、女性が立っていた場所には結構な量の埃が溜まっており、その周辺にも足跡がない事から気のせいだと言われました。
その時点で幽霊だと確信したのですが、話はそこで終わりませんでした。
 その親戚の方に元々の持ち主の家族の事を詳しく聞いたところ、実は引っ越し前に生まれたばかりの息子さんがお風呂で溺れて亡くなりました。
奥さんはそれ以来精神に異常をきたすようになり、周辺住民に迷惑がかかると判断し、やむ無く離れた所に転居することにしたそうです。
 しかし奥さんは息子さんの事が忘れられずその家に戻ってきては泣いていたそうです。
7年前のある日、旦那さんと一緒にその家にまた車で行っていたとき、事故に遭い亡くなったそうです。
 最後に家族の写真を私たちに見せてくれました。
そこに写っていた奥さんこそ、私たちが見た奇声をあげていた女性だったのです。
皆様から回答を貰い最初は猫だろうと思っていたのですが、こんな嫌な話になってしまい申し訳ありません。
 翌日、私たちとその家を、親戚の方のご厚意でお祓いをして貰いました。
それ以来、奇声は聞こえていません。
多くの回答ありがとうございました。

















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日々の恐怖 8月30日 立田山

2013-08-30 18:47:58 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 8月30日 立田山





 俺が大学生の頃の話です。
大学の周りには立田山があって、その山道には霊園があった。
当時、俺は学園祭実行委員会だったから、授業が終わる夕方から夜の11時くらいまで、大学の周辺の食堂とかからカンパをもらいに、先輩と出回りをしていた。
 学園祭まであと3日、その日の晩のことだった。
この日は先輩と別行動で、俺は立田山の麓にあるR食堂にカンパをもらいに行っていた。
その帰り、霊園を通りかかったとき、霊園の中に人影が見えた。
俺は人一倍怖がりなので、『あれは見間違いだ』と頭の中で繰り返し、足早に山を下っていった。
 翌日、先輩にそのことを話すと、先輩自身もその人影を見たというのだ。
しかも、先輩が「それは老婆だ」とまで言い切った。
そんな会話を二人でしていると、他の連中が興味津々に話に加わってきた。
もともと実行委員会をやるようなお祭り騒ぎが大好きな連中だから、その日の夜、肝試しをすることになった。
 午後11時、俺たちは6人でその霊園までライトを持ってハイクをした。
案の定、やはりそこには人影があり、それまでは饒舌だった他のメンバーも言葉を失った。
確かにそこにいるのは一人の老婆だ。
 しかし、なぜ墓場に・・・・?
俺たちは不自然でないように、あくまでも山を登りにきただけであるかのように、霊園にはそれ以上目をやらずに別の会話を始めた。
すると、その老婆が近寄ってきた。

「 あんたら、わしんこと見にきたっちゃな?
霊て思てから。」

皆絶句した。
俺は何がなんだか分からなくなっていた。
 ようやく仲間の一人が、

「 すいません!」

と上ずり声で謝っていた。
 老婆はしばらく俺らに説教をしたあと最後に、

「 わしはな、去年、夫ば殺されたっちゃげな。
あんたらみたいな大学生が学園祭前に浮かれて、酒ば飲んじから車ば運転してからの。
夫ば轢いたった!」

老婆は涙声で、俺らに向かって怒鳴った。
俺らは何も言えなかった。
 老婆は続けて、

「 ちょうど今ぐらいの時間じゃ、夫が殺されたんは。
んでな、夫がよう夢に出てきて、『あの山ば通る糞ガキどもば呪い殺してやる』って言うもんじゃけんが、わしは夫が墓から出てさらかんように、こうやって学園祭前は墓ば見とるげな。」

俺たちは墓に手を合わせて、その日は解散した。














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しづめばこ 8月29日 P267

2013-08-29 18:36:16 | C,しづめばこ
しづめばこ 8月29日 P267 、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



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日々の恐怖 8月29日 置薬

2013-08-29 17:54:26 | B,日々の恐怖







   日々の恐怖 8月29日 置薬






 N県の郡部で某製薬会社の置薬セールスをしていた男の話です。
彼は学生時代から社交的な男でスポーツマン。
如才のなさが田舎の人にも受けてけっこう良い成績を挙げていた。
 ある日、彼がいつものようにセールスをしていて、飛び込みで入った家は大きな旧家だった。
主は県立高校の教諭で主の父、母、奥さんの3人が農業に従事しているという、よくあるパターンの兼業農家。
ここぞ!と持ち前の如才なさを発揮して彼は瞬く間に契約を取ったのだが、妙に気に入られてしまって、ついでに…と主人の将棋にしばらく付き合う羽目になった。
 そこにお茶を持ってその家の娘さんが入ってきた。
清楚で整った顔立ちの、一見していいとこのお嬢さんという感じの彼女に彼はぼーっと見とれた。
 それからというもの、彼は休みともなればなにかにつけて用事を見つけては足繁くその家に通った。
彼女の方もまんざらではなさそうで、また父親も彼のことを気に入っていたため、交際は順調に進んだ。
もちろん田舎のことゆえ、婚前交渉などとんでもない、噂でも立てられたら…、という風潮が強く交際は今時珍しいほどの清純なものだった。

 そうこうしている内に、彼の営業成績の良さが認められ、彼に横浜の大きな支社に転勤の話がきた。
あわてて彼は娘を説き伏せ、父親に土下座して結婚の許しを貰うことにした。
 父親は「願っても無いこと!」とあっけないほど簡単に許可してくれたのだが、娘の方は少し顔色が優れなかった。
いぶかしんだ彼は自分の車の中で「あんまり嬉しそうじゃないよね」と少し詰問調で娘に理由を聞いた。
すると彼女はぽろぽろと涙をこぼして、
「 実はわたし、自傷癖があって…結婚生活をうまくやっていけるかどうか不安でたまらないの。」
とブラウスの袖をめくった。
 そこには幾重にもわたって刃物で切りつけたために肉が盛り上がり、まるで新聞紙を丸めたような皺と引きつった傷が無数に刻まれていた。
さすがに彼も一瞬、言葉を失いましたが、うつむいて泣いている彼女を見れば生理的嫌悪感よりも、痛々しさや哀れに思う気持ちの方が強く、「そんなことは二人で乗り越えよう!」と彼女を抱きしめた。

 横浜の社宅での暮らしが始まった。
新婚ということで当然セックスの問題も重要な要素で、彼は心中密かに心配していたのだが、彼女は彼の願いどおり処女で、下世話な話だが彼はそのウブな反応にも充分満足していた。
 しかし彼女は明るいところでは絶対に身体を許さない。
男はスケベな生き物だから、たまには明るいところでセックスを楽しみたいと思うこともあったのだが、彼女はそんなときは目に恐怖すら浮かべて彼を見つめるので、彼もそれ以上無理強いすることはできなかった。
 そんなある夜、夫婦の夜の生活が終わって、彼女はシャワーを浴びに浴室に行った。
ふと、そこで彼のいたずら心がむくむくと頭をもたげた。
足音を忍ばせてシャワーを浴室のドアを開けてシャワーを浴びている彼女に抱きついた彼は、彼女よりも先に思わず悲鳴を上げた。
 真冬であるにも関わらずシャワーは身を切るような冷水だった。
「 なんで水なんだ!?」
と問いただしても、
「 体が火照ってしまって…。」
という言葉にそれ以上は負い目のある側としては追求できるはずもなく、何となく釈然とせずにベッドに入った。

 他にも彼女には妙な癖があった。
彼が寝苦しくて時折夜中に目覚めると決まって彼女がベッドに座って彼をじっと見つめているのだ。
 少し薄気味悪くて、
「 なんでそんなに見つめるの?」
と聞いても、
「 いや、あなたの寝顔を見ていたくて。」
と答える妻。
 その他にも、彼が自分の誕生日に急な仕事で関西に出張になり、
「 ごめん、俺の誕生日は来週に回してくれない?」
と電話して1泊2日の仕事を終えて家に帰ると、ダイニングテーブルには2日前に腕によりをかけて作ったと思しき、誕生日のご馳走がラップもかけられずに干からびていた。

 彼はこのとき初めて自分の妻が恐ろしくなった。
少なからず精神の傾斜がおかしいと感じざるを得ない。
しかし医者に行け!というのもためらわれた。
彼女の田舎では精神科=社会生活不適合者というイメージが根強く、とても聞いてくれそうも無い。
 仕方なく彼は自分と妻のストレスを和らげるためによかれと、つがいのオカメインコを飼い始めた。
彼女も喜んで世話をしているようで、彼もほっと一安心していた。

 そんな折、また出張の命令がきた。
少し心配に思いつつも、まあ最近は落ち着いてきたようだからと彼は自分を納得させ、「出張に行くけど、風邪引くなよ。あとインコの世話も頼むよ。」と出かけていった。
 2泊の出張を終え、家に帰った。
妻は快活な笑顔で迎えてくれた。
よかった、彼は胸をなでおろした。
 ふと窓辺を見ると鳥かごが空だ。
「 あれ?インコは?」
「 ごめんなさい。掃除しようとカゴをちょっと開けたら逃げてしまって…。」
「 ええ~っ!なんだよ!もう。」
「 ほんとうにごめんなさい。」
逃げたものを責めても仕方ない。
 彼は自分を無理やりに納得させ、出張でたまった洗濯物の袋をもって洗濯機に向かった。
全自動の蓋を開けると妙な臭いが気になった。
鉄のような、生臭いような臭いだ。
記憶の底をたどってその臭いの心当たりを見つけたとき、彼の顔色は変わった。
まさか…。
 妻が夕食の買い物に出かけるのを待って、彼は台所の生ごみ入れをそっとのぞいた。
そこには首をねじ切られたインコが一羽、そして首を噛み千切られたもう一羽のインコが無造作に投げ込まれていた。

 気づいた人もいるかもしれませんが、文中の「彼」とは実は私のことです。
妻とはこれが引き金になって別れました。
会社も辞めて、新宿の同業他社に転職しました。
別れて後は一切、妻やその親戚とは逢っていません。
電話番号も全て変えました。
 でも、まだ時折、真夜中に電話がなります。
受話器の向こうでは女性が泣いています。
そして誕生日には玄関のドアの前に山盛りのご馳走が並べられているのです。


















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日々の恐怖 8月20日 衝撃

2013-08-20 18:33:47 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 8月20日 衝撃





 我が家が心霊スポットに囲まれた土地に建っていると知った時が一番衝撃的だった。
うち(一軒家・築35年)の雨漏りがひどくなってきて、屋根を直すついでにリフォームするか、という話し合いのときに、

私「 そういやうちって建てるときいくらぐらいかかったの?」
母「 えーと、土地つきで300万ちょっとぐらい。」

なんですと!?いくらなんでも安すぎませんか!?
 うちの地域は都会ってわけではないけど田舎というには微妙、ってぐらいのとこだし、立地的にも悪いとこはなさそう、(最寄駅から歩いて3,4分、バス停も歩いて1分ちょいのとこにあり、徒歩15分圏内にコンビニ・スーパー・郵便局・病院(内科と歯科)等あり)だし、いったい何があればそんな安くなるのですか?
と聞いたら、「たぶん幽霊が出るからじゃない?」ってさらりと言われますた。

①たまに夜中にガッチャガッチャ音を立てて行進する落武者?っぽい霊が大勢出る。
②家の近くに大きな湖があって、そのあたりから若い女の人の声や赤ん坊の泣き声が響き渡る。
③すぐ近所にある、元の住人が一家心中して以来何十年も人が住んでないはずの空き家の中から、真夜中に大勢の人間が談笑する声が聞こえてくる。
④ある地点で必ず一時停止しなければならない道路がすぐ近くにある(我が家から歩いて2分ぐらい)。一見なんの変哲もない普通の平坦とした道なのに、「ある地点」で一時停止しない車は必ず何かが起こって運転手が死ぬ。

父「 幽霊なんて気にしないで生活してればちょっかいかけてこないもんだ(`・ω・´)キリッ」
母「 騒音ぐらいしか害ないみたいだし、耳栓してればノープロブレム!(`・ω・´)キリッ」

なんだそりゃ。
 まさか家の中や周辺で写真撮ると変なモヤ(だいたい赤か白の)が写りまくったり、おひな様をはじめとする人形の髪が、伸びたり顔が変わってたりしてたのはそのせいだったのか!?
ていうか①~③は初耳ですよ!?
全く気付かなかったし、全く聞こえませんでしたよ!?

「 あんたは霊感ゼロなんでしょ。
たぶん幽霊に何されても影響は受けなくてすむだろうから大丈夫!
実際今まで何もなかったでしょ?」

なんて言われたって怖いもんは怖いですよ!?
と突っ込みどころ満載すぎて、いろいろと衝撃だった。















      ☆8月21日より、一週間ほど休みます。
 
               by おおみね せいふう











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日々の恐怖 8月19日 スリスリ

2013-08-19 18:16:40 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 8月19日 スリスリ





 小学生の頃、近所に杖をついたホームレス風のおばあさんがいた。
いつも近所をうろついていたが、スーパーのベンチで弁当を買って食べているのを何度か見たので、金はあったらしい。
もしかしたらホームレスじゃなかったのかも。
 そしてある日、そのスーパーのトイレに行ったら、そのおばあさんがいた。
三つある洗面台を順番に移動しながら髪を梳かしている。
洗面台と床にばらばらと落ちる抜け毛、酷い異臭。
幽霊のような佇まいにガクブルして、その日はそのまま逃げた。
 そして後日、母と買い物をしに車に乗っていると、またそのおばあさんを見かけた。
足をさすりながら、バス停のベンチで休んでいるようだった。
 そして、スーパーに着いて中に入ると、なんとそのおばあさんが肉売場をうろついていた。
バス停からスーパーまで車で10分。
車の私達に歩きで追い付く訳がないし、
もしあそこからタクシーやバスを使ったとしても、私達の方が早く着くのは明らか。
瞬間移動したとしか思えない。
 その日の夜、私と母は今度は歩きで習い事から帰っていた。
すると、また前方におばあさん発見。
度々の奇怪な行動に母と二人でガクブルしたが、しかし母はとんでもないことを言いだした。

「 私、いつもあのおばあさんがどこへ帰るのか気になってたの。
ちょっとつけてみない?」。

なんちゅー大人だと思ったが、面白かったので母と二人おばあさんの後を追った。
 おばあさんは路地を曲がった所の電柱に近づいていって、抱きつきスリスリし始めた。
あまりのキモさに母を目を見合わせたが、次また目を向けるともうおばあさんはいなかった。
そこは一本道で曲がり角はない。
 それ以来、もうおばあさんは見かけない。
気味悪かったけど、思い出すとちょっと楽しい。
私と母の間では、あのおばあさんは電信柱の妖精ってことになってる。















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日々の恐怖 8月18日 駅

2013-08-18 19:11:42 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 8月18日 駅





 昔、北陸の某所に出張に行った時のことです。
ビジネスホテルを予約して、そのホテルを基点にしてお得意様を回る事にした。
 二日目、最後の所でちょっと飲んで、その後ホテルに戻る事になった。
ホテルまで鈍行列車で20分。
疲れていたせいか、うとうとして気が付いたら降りるはずの駅だった。
あっと思って立ち上がったときはもう遅く、列車は出発してしまっていた。
 4~5分して、次の駅に列車が停車したので急いで降りた。
降りて列車が発車してふと気づくと、がらんとしたホームに私が一人。
ホームの端に掘っ立て小屋のような木造の建物があり、それが駅舎だった。
 蛍光灯がぼんやりと灯っている無人駅。
降りるはずの一つ手前の駅は、特急も停車し、ローカル線も交わる駅で、その県内では県庁所在地に続いて二番目の大きな市。
その駅から一つ目の駅でしかも本線なのに、どこかのさびれたローカル線のような雰囲気。
 駅前は真っ暗。
コンビニひとつない。
映画で見たような古臭い家がひっそりと建っている。
 次の列車は一時間後にやって来る。
列車が来るまでの一時間、恐ろしいくらい何の音もしなかった。
結局、何もしないまま一人ポツンとホームのベンチに座り、やって来た列車に飛び乗った。
 ホテルについて、次の日の時刻表をチェックして気づいたのだけど、普通列車を待っていた一時間の間、本線なので特急が通過するはずだし、反対方向の普通列車も通過するはずなのに、全く列車が通過しなかった。
静かな中に突然、私が乗りたい普通列車がやって来た感じだった。
 その半年後、再びそこに行く時があり、昼に時間が取れたので何となく行ってみた。
駅は小さいけれど、木造ではなく鉄筋だった。
一人駅員さんがいた。
 駅前には小さいけどロータリーがあり、コンビニもあった。
半年あればがらりと駅も駅前も変わるかもしれない。
でも、駅もコンビニも特に新しい感じはしなかった。
 今でもあの時、時間がずれてどこかに紛れ込んだのではないかと思う事がある。
時々、あの列車が来なかったら、と思って怖くなる。

















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日々の恐怖 8月17日 生き霊

2013-08-17 18:37:21 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 8月17日 生き霊





 10年付き合って同棲していた彼が浮気をして、女の所から帰って来なくなった時の話です。
自宅に戻っていないのは明白なのに、彼は、
「夜勤で働いていてお前(私)が家を出た後に帰って寝て、帰ってくる前に家を出ているんだ」
と言い張っていました。
 当時は帰宅していないのは分かっていましたが、浮気かどうかは確信がなかったので、単に私に飽きて別れたいだけなのか、他に好きな人が出来たのか、随分と悩みました。
夜は殆ど眠れず、食欲も、何かをする気力も無くなって、会社に行く以外は横になって天井を眺めるだけの日々を、2ヶ月も過ごしました。

 そんな状態でも仕事だけはしていたのは、彼の嘘を決定的にするのが怖かったからです。
本当に彼が言うように、私が居ない間に帰ってきているのかもしれない、思い過ごしなのかもしれないと。
それと同時に、嫌いなら嫌いになった、好きな人が出来たならそれでも良いから、ハッキリして欲しいと願うようになりました。
気持ちは徐々に変化して、私がこんなにも苦しんでいるのに彼は楽しく遊んでいる、悔しい、憎い。
そんな事を考えるようになりました。
 そうこうする内、不思議と女の存在がハッキリと感じられ、彼女の顔までは分からないけれど髪型や体型、彼と二人でシングルの布団で寄り添って寝ている姿までも、頭に浮かぶようになったのです。

 そうなってから数日、半泣きの彼から電話がありました。
嘘をついていた、女の所に寝泊まりをしていた、家には帰っていない、悪かった、許して欲しい。
そんな内容でした。
 何故急に本当の事を言うのか、最後まで嘘を付き通して女の存在を隠したまま別れる事もできたのに、と問い詰めました。
すると、毎日、昼といわず夜といわず、私が現れるると言うのです。
 昼は視界の隅にいて、振り返ると居ない。
眠っていると、いつの間にかすぐ側にいて金縛りになり、耳元で「嘘付き。嘘付き。嘘付き。」と呟き続けるのだそうです。
嘘がバレている、もう隠し通せないと思った。
好きな女性が出来たけれど、長く付き合ったお前とこんな別れ方をして良いものか悩み、別れを言いだせなかった。
 でも、もうお前の元には戻れない。
お前が怖い。
そうしてしまったのは自分の責任だけれど、怖い。
許して欲しい。
そう言って彼は泣きました。

 彼の罪悪感が私の影を見せたのではないか、よりによって私の生き霊のせいにするなんて、私を悪者にしたいのかと憤りを覚えたのですが、ふと私が見ていた彼女の特徴を口にしてみました。
 明るい茶髪のショートカット、身長155cmくらいでポッチャリ体型、鎖骨のあたりにホクロが二つ並んでいて、左腕に火傷の跡がある。
私は彼女に会ったこともないのに、それら全部が当たっていました。
号泣してゴメンナサイと言い続ける彼の震える声を聞いて、私も別れを決意しました。

















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日々の恐怖 8月16日 お~い お~い

2013-08-16 18:44:05 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 8月16日 お~い お~い




 俺が小学生の時に体験した話です。
小学校中学年の時のことであんまり詳しい状況を覚えてないのだが、当時、家族と旅行でフェリーに乗った。
夕暮れが迫る時間帯で俺は船の船尾の方で一人で海を見てたんだけど、(家族は部屋みたいなところにいた)気が付くと薄暗くなり始めた海から、

「 お~い お~い。」

と俺を呼ぶ声がする。
俺はふと呼ばれたほうを見る。
すると、変なオッサンが海から首から上だけ出して俺に一生懸命叫んでる。 
しかも、「お~い」ばっかりで他には何も言わない。
 俺は、

「 ミャ~!! ひ、人が溺れてる~よ!」

と思い、ダッシュで近くにいた船員さんに人が溺れていることを伝えて一緒にもとの場所に戻ったが、その時にはもうすでにそのオッサンはいなかった。
 船員さんが詳しい状況を求めてきたので、ことの次第を詳しく話したら、

「 ああ・・。
それは見なかったことにしたほうがいいよ・・。
それに気にしなくていいから・・・。」

とだけ言って去って行ってしまった。
 俺は、

「 人が溺れて死にそうになってるのに、わけのワカランこと言って見殺しにすんのかよ!!」

と憤りながら、もう一回オッサンを見た船尾のところに戻った。
 気のせいだったのか・・・、と思っていたら、

「 お~い お~い。」

と、俺を呼ぶ声がまたもや薄暗い海から聞こえてきた。
俺がもう一度海に目をやると、さっきのオッサンがまたもや海から首上だけ出して俺に向かって呼びかけてる。

「 ヤパーリ、人が溺れてるジャン!!」

と思って、再び船員さんに知らせに行こうとした瞬間、呼びかけてるオッサンの隣にポコっともうひとつ別のオッサンの顔が海から浮かび上がってきた。
 その時にやっとその異常に気が付いた。
船は進んでいるのにそのオッサン達は船と同じ速度で船についてきている。
新たに浮かんできたオッサンも、

「 お~い お~い。」

とだけ俺に向かって叫んできた。
 そして、あれよあれよという間にオッサンは増え、全部で5つもの別々のオッサンが俺に向かって、

「 お~い お~い。」

の大合唱を始めた。
 さすがに俺も尋常じゃないものを感じてすぐにその場を立ち去り、親に今あったことを夢中で話したのだが、家族だれ一人とて信じてくれなかった。
しょせん人生そんなものなのかも。
人間が信じられなくなりそうな一瞬でございました。




 その話、オヤジが経験している。
今オヤジと離れて暮らしてるから、とりあえず覚えてるやつを書くよ。
今度会った時にまた聞いておく。
 よくあるパターンなんだけど、波間に頭だけ出ていて、「おーいおーい」っていうのは結構頻繁に見たらしいよ。
太平洋のどまん中で、オヤジが当直に立った時とかも、何度か見たって言っていた。
いきなり「おーいおーい」だもの。
最初は慌てて「漂流者だ!」ってみんなを呼んだりしたらしいけれど、古参のひとは航路のどこでそれが出現するか知ってるらしく、

「 ああ、またか・・。」

って言うんだって。
 当時の船は、レーダーとかも無かったのかな?いやあったのかもしれないが精度がイマイチだったのかもしれない。
そのせいか、船首と船尾に立って、毎日交代で航路を見る「ワッチ」という当直があったらしい。そういう時に出るんだって。
 太平洋の、激戦地の近くとかでよく見たって言ってた。
きっと戦時中の船が多く沈んでるのかな。
その「おーいおーい」を見た後は、船のみんなでオニギリや酒、タバコなんかを海に投げ入れてやるんだって。
怖いって言うよりも、同じ船乗りとしてすごく悲しいんだって。
だから「日本に一緒に帰ろう。この船に乗れよ。」って心の中で必ずみんな言ってたそうだ。

















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日々の恐怖 8月15日 指

2013-08-15 19:39:25 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 8月15日 指




 俺の爺様が海軍で衛生兵をやってたときの話です。
あるとき、激しい海戦があって、艦は沈まなかったが、戦友が目の前で弾け飛んだり、甲板にでっかい穴が空いたりで、それはもう酷い有様だったらしい。
 その後、幾日か経ち、掃除やらお清めやらが落ち着いてきたころ、爺様が自分の箪笥の引出しを開けると、誰かの指がごろっとでてきた。
なんでも艦に弾が当たると、その衝撃で引出しががらっと空き、次の瞬間ぱっと閉まる。
その一瞬の間に、バラバラになった体の一部がはいってしまう、ということがよくあるらしい。
 爺様はその指をよく清め、海へ葬った。
ところが、次の日、引出しをあけると、またあの指が入っている。
驚いた爺様は必死になって引出しを掃除し、同じように海へと葬った。
が、次の日も指は入っていた。
 爺様は怖くなってそれ以来、引出しを開けることはできなかった。
爺様はいまでも、引出しを開けたひょうしにその指のことを思い出し、同時に亡くなっていった戦友たちのことを思い出すそうです。















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日々の恐怖 8月14日 怪談話

2013-08-14 19:01:02 | B,日々の恐怖






    日々の恐怖 8月14日 怪談話






 昔、訪問販売の営業をしていた会社で聞いた怖い話です。 
営業の仕事の内容は、営業5人程のグループ毎に車両長と言うものが付き、車両長が指示した場所(集合住宅)に降ろされます。
営業はそこで契約まで話を持って行き、車両長が契約書を持ってきて書いてもらうと言うシステムです。


 以前、本社の方にとても業績の良いAという若い男がいた。
グループBの車両長Gは入社の時から特別Aを気に掛けていて、AはGの車両に乗る事が多かった。
 ある日のこと、Gの車両に乗っていたAは、最近調子が良かった事もあり、契約の決まりやすい新築物件(ファミリー)に優先的に降ろされた。
 しかし、その物件は留守・居留守が多く、インターフォンにすら全然出て来ない。
まあ、良くある事ではあったので、余り気にせず最後の家のインターフォンを押した。

『 はい。』

若い女性の声が出た。
美人だったらいいな、と思いつつ、意識しなくても勝手に出てくる挨拶を口にした。
 程なくして玄関を開けた女性はとても感じの良い人柄で、有り体に言えば“決めやすそうな”雰囲気を持っている。
しかも、中々いない美人。
否応なしにモチベーションが上がった。

“ これはいけるな。”

 これまでの営業である程度の勘が働いたAは、咄嗟にそう思った
話している感じもはまっている。
Aの予想は当たり、女性は玄関口で話しただけでかなりノリ気で、すんなりと室内に招き入れてくれた。
 カウンターキッチンに通されたAはある事に気付いて顔を青くした。
天井に、びっしりと、赤ちゃんの写真が貼ってあったからだ。
それはサイズも被写体も様々だったが、兎に角隙間無く貼られていた。異様な光景だった。
 Aはその光景に恐怖を感じたが、先程まで話していた女性の感じは決して悪く無かったし、むしろニコニコと感じの良い笑みと気さくな態度には好感を抱いていたくらいだった。
何より、これ位の事で契約が取れるかもしれないチャンスをふいには出来無い、と言う思いが一番強かった。

“ 天井の写真は確かに変だけど、気にしないでおこう・・・。”

Aは自身にそう言い聞かせて、商品説明や機器の実演を冗談も交えながら話した。
ファミリーでは旦那問題で契約が流れる事が多いが、そういった問題も無く、かつて無い程にスムーズな流れでさして時間も掛からずに契約の了承を貰う事ができた。

 Aは女性に了承を取ってから、契約の為にGを呼んだ。
部屋に入ったGは、Aと同じように天井の写真に面食らったようで、契約の最終確認の際もどこかぎこちない様子だった。
Aもこの部屋は不気味だったので、出来ればさっさと契約を終わらせて早く部屋を出たい、と言うのが正直な気持ちだった。
 しかし、後は契約書に捺印さえすれば契約完了、と言う所で異変が起きた。

「 ではココと、ココと…。」
 
Gが捺印の場所を指示していると、隣の部屋へ続く襖の向こうから男の呻き声が聞こえてきたからだ。
 ううー、うー、と、それは男性にしても低い声で、思わずぞっとするくらいに、とても苦しそうに、恨めしそうに聞こえた。
 流石にAとGも面食らって、襖を見やったあと、次いで女性の顔を伺った。
つい先程まで人のいい笑みを浮かべていた女性は、ぞっとするほど無表情にAを見ていた。
 Aは恐怖を払拭する為に何かを喋ろうとしたが、女性の異様な雰囲気を感じ取って言葉を飲み込んだ。
心底目の前の女性を気味悪く感じた。
それは、きっと本能的なものだった。
 それはGも同じだったようで、二人ともまるで金縛りに遭ったように女性をただ見つめていた。その間にも、ううーーー、うーー、と云う呻き声は止まる事無く、むしろ段々と大きくなっている様に感じた。
 突然、女性が声を漏らした。
多分、笑い声だったのだとは思うが分からない。
女は相変わらず表情を少しも動かさなかったからだ。

「 印鑑を…。」

ぼそり、と女が呟いた。

「 は、・・・・。」

と何とか声を出したAに、女性は口元だけを動かしてにいっと笑った。

「 いいいいいいい、ん・・・・・。」」

女性がまるで引き伸ばしたテープの様に言った途端、今までは呻き声だった襖の向こうの声が、叫び声に変わっていた。

“ なんだ、こいつら?!やっぱり変な奴だったのか?”

Aがパニックに陥りそうになった時、更に不可解な事が起きた。
 女性の頭が目では追えない速度で左右に動いたのだ。
余りの速さに首から上がブレて見えた。
 次いで、女性は甲高い声で笑い始めた。
相変わらず女性の顔は真っ直ぐにAを向いたまま。
それで、Aは恐怖で泣き出しそうだった。
襖の向こうから聞こえる男性の叫び声と、女性の甲高い笑い声。

「 お、おい、帰るぞ…!」

Gの震えた声を聞いて、Aは荷物を掻き集めて必死に玄関まで走った。
女性が追ってくる気配は無い。
 玄関を出る瞬間に思わず振り返ってしまって、Aは後悔した。
開け放った扉からリビングが見えたからだ。
そこには正座した女性がこちらを向いていて、その向こうの襖少しずつ開き始めているようだった。
Aは、ぽっかりと見えた暗闇の向こうを想像して鳥肌が立った。
AとGは死に物狂いで車に戻ると、急いでその場を後にした。

 翌日、Aは例の家に商品の機器を忘れてしまった事に気付いた。
またあそこに戻るのは嫌だったが、取りに行かない訳にはいかない。
 AはGに頼んで、一緒に昨日のアパートに向かった。
躊躇いながらも、意を決して部屋のインターフォンを押そうとしたAは、ある事に気付いた。

「 Gさん、これ…。」

Aが指差したのは、玄関の傍に設置されていたガスメーターのタグで、それは本来、入居者がいない場合に取り付けられるものだ。
 驚いて電気メーターを見ると、止まっている。
普通、冷蔵庫とかで動いているのだが、それは少しも動いていない。

「 嘘だろ…。」

Gが呟く。
 何度もインターフォンを押して反応がない事が分かると、苛々した様子で管理会社へ連絡し、早口に事情を捲し立てた。
数十分で来た管理会社のKは、Gの話を聞いて頻りに首を傾げながらも、勢いに押されたのか、「確認するだけですよ。」と前置いて部屋の鍵を開けた。
 部屋は、信じたくは無いが未入居の状態だった。
昨日の風景はどこにもない。
ただ、ぽつん、と鎮座していた商品が昨日の出来事を現実だと突きつけていた。

 先日の出来事を酷く怖がったAは、その後会社へ出勤して来なくなり部屋に閉じ篭ったらしい。
しかし、稼ぎ頭だった事もあり、会社の上司等に説得され、“例の物件近くには行かない、新築物件には絶対に行かない”事を条件に一ヶ月後には復職した。

 Aが復帰して一週間程経ったある日、GはA君をある物件に降ろした。
何の変哲もない普通のマンションだった。
以前他の者が何度か訪問した事があり、A自身も叩いた事のある物件だった。
 十数分後、Gの電話が鳴った。
Aからだ。

「 もう決まったのか、やるなぁ、Aのヤツ。」

Gはわざと車両に乗っている他のメンバーに聞こえるように言って、電話を取った。

「 もしもし。」

電話は無言だった。

「 もしもし?A?」

数十秒後、Aの叫び声と、ばたばたと騒がしい音が聞こえた。
妙な声も聞こえる。

「 A?!どうした?!」

ただ事ではない、と感じたGは車をそちらに向かわせながらAに聞く。

『 …Gさん、自分、もう、仕事辞めさせて下さい…。』

泣きながら、Aは言った。

「 A?なにがあったんだ?」

車両長は出来る限り冷静に問いかけた。

『 出た、出たんです、あいつ。』

 Aの話を話を要約するとこうだった。
今度はポスターも何も無い普通の部屋で、普通の女性だった。
だが、話がトントン拍子に進んで、Gに電話を掛けた瞬間、女性の顔が奇妙にぐにゃりと歪み、以前会った女性の顔になった。
 そして、

「 また会ったね。」

そう言ってまたあの奇妙な笑い声で笑ったそうだ。

 Aは翌日から会社に来なくなった。
そして、そのまま退社、あとどうなったか分からない。


以上が、私の会社でまことしやかに噂されていた怪談話です。
 上司は「うちの本社であった実話だ」と言っていましたが、真偽の程は分かりません。
もしかしたら、業界で有名な怪談話等ではないかと言うのが私の見解です。
色んな場所に行く仕事柄、営業中に霊を見る人は結構居るみたいですし。




















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しづめばこ 8月14日 P266

2013-08-14 19:00:34 | C,しづめばこ
しづめばこ 8月14日 P266 、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



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日々の恐怖 8月13日 その6 まとめ

2013-08-13 18:17:07 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 8月13日 その6 まとめ





 最後に、まとめになります。
あの長屋にいた間、実は父がおかしくなって、家族はひどいDVに悩まされていました。
近所で鬼親父とあだ名がつくくらいです。
追い詰められた母もおかしくなり、家族はメチャメチャでした。
 あの家に住んでいて良いことは何もなかったと思います。
でも、引っ越してその土地を離れるとともに、あれだけ狂った父が少しずつ穏やかになったんです。
今は当時が嘘みたいに、物腰の柔らかい人になりました。
不思議です。
 当時住んでいたのは、東京の足立区です。
例のたけちゃんが落ちた生活用水路は江戸時代からあったそうで、後に区の史蹟に指定されました。
 地域で氏子になってる氷川神社もあったし、大家さん一家専用の墓守寺もありました。
土地の名前には、江戸時代の農村の名残が残っています。
そういう古い土地だったから、因縁があってもおかしくはないのかもしれません。
 正確に言うとお嬢さんメッタ刺し事件は、私達が引っ越してからの出来事です。
平成2年か3年頃だったと思います。
当時、長屋から徒歩10分くらいの場所に住んでいました。


















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日々の恐怖 8月12日 その5 四畳半

2013-08-12 18:19:12 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 8月12日 その5 四畳半





 大家さんの家は旧農家で、当時その大きな家の前に畑がありました。
長屋から見ると真横です。
そこは、今でもあるらしい。
 大家さんの家と畑の前を細い私道が通ってて、その私道は緩やかにカーブしてたんですが、丁度カーブする辺りに“何もない変な土地”がありました。
四畳半位の大きさで、植木も何もない。
 中途半端過ぎて遊び場にもならない。
私道自体は子供の遊び場だったけど、なぜかその土地には足を踏み入れた記憶があまりない。
 で、その土地のとこに電柱があって、足元に理由は分からないけどお祓いの棒が刺してあった。
神主さんが手で持ってシャッシャッとやるあれ。
割箸と半紙で作ったあれのミニサイズが、電柱の下にいつも刺さってた。
 ある日、皆で遊んでたら、同じ長屋に住むたけちゃんという悪ガキがそれを引っ込抜いて遊び始めた。
やめなよー呪われるーなんてワイワイやってたら、畑仕事をしてた大家のじいちゃんがすっ飛んできて、全員ものすごい勢いで叱られた。
やったのはたけちゃんなのに。
 で、近くにあった用水路跡(柵も何もない昔の生活用水路の名残)の傍に遊ぶ場所を変えたのだけど、普通に歩いてたたけちゃんが、いきなり横によろめいたと思ったらその用水路に転落した。
 浅かったので皆で助け上げたら、ヘドロまみれで半泣きのたけちゃんが、

「 今押したの誰だよ!何で押すんだよ!!」

押すってあんた、一人で前歩いてたやんと、笑ったのだけど、じゃあ押したのは誰って話です。
今思えば怖い。














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日々の恐怖 8月11日 その4 逃走

2013-08-11 20:03:53 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 8月11日 その4 逃走




 母はこれが一番怖かったそうです。
ある夜、砂利を踏む音が我が家の前まで来たと思ったらドアを叩く音が。
母がドアを開けず家の中から応対すると、男の声で一言、

「 追われてる、匿ってくれ。」

両親は顔を見合わせてたけど、丁重に断りました。
すると足音は我が家の庭を抜け、我が家の横にある裏へ抜ける通路にいったようでした。

 翌朝、外に出た母が血相を変えて家に戻り、父を呼んでいる。
全員で外に出て愕然とした。
砂利道に点々と血がついている。
 血は庭から裏へ抜ける通路に続いてて、どうやら夜の男はそこに隠れたらしく、通路の土には大量の血が染み込んでいる。
そうして、それを踏み付けるような沢山の足跡。
まさに倒れてたのを、誰かが夜中の間にそっと運び出したような感じ。
警察には通報はしませんでした。
ただ、父が水を撒いて血痕を消し、母が植木用の土を持ってきて上から踏み固めてた。
 もし匿ってたらどうなってたんだろう。
怖いというか、すごく後味の悪い話ですいません。
















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