大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 3月29日 白狐(1)

2023-03-29 18:28:04 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 3月29日 白狐(1)





 今日はイブなのに暇してるから話してく 。
私は首都圏で生まれ育った。
別段都会でもなく、田舎でもない。
至って普通の住宅地のど真ん中。
小学校まで徒歩2分という素晴らしい立地に生まれ、順調に進学した。
 進学した小学校の真裏には、神社があった。
便宜上、神田神社とする。
幼稚園の頃から毎日前を通っていたけれど、初詣や縁日、お祭りなんかでしか立ち寄ったことはなかった。
理由は一つ、怖かった。
 神社の入り口にある大鳥居も、その側にあった樹齢百何年の御神木も、それらを守るように覆い茂った何十年もかけて育ち上げた木々たちも、全てが子供心に怖かった。
神主も宮司もいない鬱蒼とした神社だけど、本殿が古臭いくせにいつも整って綺麗で、そのアンバランスさも少し不気味に感じてたのかもしれない。
なのでその神社が何を奉っているのか、どういう由来があったのかなんて勿論知らない。
周りの大人もあまり知らないみたいで、神田様や神田さんなんてざっくりと呼んでいるだけだった。
なので私自身も、その神社に興味を向けたことはなかった。

 小学校二年生の時だった。
何の授業かは覚えていない。
生活か道徳だったように思う。
何故だか急に小学校の屋上から富士山を見てみようという話になった。
 普段は施錠されて立ち入ることも出来ない屋上という非現実に小二は沸いた。
私も沸いた。
わくわくしながら取り敢えず自分の家を探した。









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日々の恐怖 3月26日 井戸(3)

2023-03-26 09:13:43 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 3月26日 井戸(3)






 気持ちも心機一転して工事も順調に進んだかに見えた。
現場に資材荷揚げするタワークレーンのフックに、玉掛けワイヤーを掛けたまま鳶が休養に入ってしまった。
その玉掛けワイヤーから、シャックル(※U字形の連結金具)が現場に隣接する交差点の横断歩道に落ちた。
地上13階に立ててあるタワークレーンだから、40m位の高さから1kg近い重さのものが落ちたのだ。
 怪我人が出た。
それが一般人ではなく、現場に出入りしてる営業の人の足に跳ね返って当たった。
幸い怪我は大した事なく明るみには出なかった。
 躯体工事も終わり工事は設備内装工事にと移った。
内装工事で何が起こったか起こらなかったか俺は知らない。
 俺は立体駐車場の追加工事を頼まれ再び現場に戻った。
所長に、変な事は続きましたが何とか終わりましたねと言ったら、色々とあったけど何とか終わりそうだ、みんなで打ち上げでもしようと言ってきた。
後日、職長ひとりにコンパニオン2人が付く大きな打ち上げが開催され、現場施工の全てが終わった。

 何年か経って、鳶と現場で再会した。
あの地下にあった井戸らしきものを埋めた現場の話をした。
鳶はあまり話には乗り気じゃなかった。
当時サブリーダーの奴が今は職長をやっていて、昼休みに俺の所にきた。

「 ○○さん、あの現場の後なんか変な事ありませんでしたか?」

俺は、

「 お~、とんでもない借金背負ったわ。
全部跳ね返したがな。」

と言った。
鳶の職長は、

「 こっちは班解体ですわ、そんで今は僕がやってます。
他の躯体業者さんも皆潰れたらしいですわ。」

確かにそんな話を聞いたけど、良くある話で気にもしなかった。
 鳶の職長は最後に、あの現場の最後の最後で片付け専門の土工さんが亡くなったと教えてくれた。
現場で倒れたらしく、鳶が人工呼吸してビンタかましたら一度は目を覚ましたらしいのだが、すぐまた目を閉じてしまったと。
こないだその現場の近くに応援で入って、住民はそんな事何も知らずに住んでるんだろなと考えると、知らない方が幸せだなと思った。











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日々の恐怖 3月22日 井戸(2)

2023-03-22 20:36:01 | B,日々の恐怖







 日々の恐怖 3月22日 井戸(2)







 鳶にあれは何だと聞いたら、井戸らしいと答えた。
現場は海の近く、地下10mに井戸?
水が嫌って程湧き出る場所に石板で蓋された井戸?
誰がどの時代にどんな方法で、この水が湧き出る地下10mに井戸掘って、しかも石板で蓋して埋めたんだ?
そして地上には古いお地蔵さんが収められている祠。
ここは弄ってはいけない場所なのは明らかだった。
 所長にここには何があったのか聞いたら、ここには立体駐車場があって車が落下する事故もあり、不吉な場所だから御祓いを何回もしたと言った。
とにかく事故だけは気をつけてやってくれと念を押された。
地下にあった井戸らしきものも基礎工事のコンクリートで埋められ、工事は地上階に移った。
 とにかく現場が上手くいかない。
言い訳を埋め立てた井戸のせいにするわけじゃないけど、計算出来ない人工(※にんく: 作業員一人当たりの一日労働に対する原価)が掛かった。
それは他の業者でも同じで、想定外の人工で赤字が続いてとある業者が地上2階で倒産し逃げた。
 俺もこのままなら最後には600万相当の赤字になると計算し、本社にかけ合ってこの工事から手を引きたいと申し出た。
本社は後施工になった分突貫で人工も掛かるだろうから、赤字分はなんとかするから最後までやってくれと話してきた。
俺はとりあえず月々の支払いを保障してくれるならと工事を続ける事にした。
 鉄骨の立て方でそれは起こった。
7~8階だったと思う。
通りが合わないらしい鉄骨屋が大騒ぎしだした。
建物が真っ直ぐ立たないらしい。
こんな事は俺は聞いた事ないし、鉄骨屋も監督も墨出し屋も頭抱えていた。
俺は何かマンション建設を邪魔されてると思って、所長にもう一度御祓いをしようと願い出た。
この時はほんとそんな雰囲気が現場を包んでいて、所長もすぐ段取りしてコンクリート打設を止めよう御祓いをした。












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日々の恐怖 3月20日 井戸(1)

2023-03-20 19:29:39 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 3月20日 井戸(1)





 俺は建設業をやっている。
マンションを造っているんだが、施工前に地鎮祭というのを近くの神社から神主さん呼んでやる。
普通は業種的に地鎮祭には呼ばれないんだが、その物件では呼ばれた。
元々は立体駐車場で、頻繁ではないが事故も起きており、敷地の片隅に古い小さな祠があり、中にこれまたかなり古いお地蔵さんが収められていた。
 4スパン地上13階建てのマンションの建設が始まった。
打ち合わせも終わり基礎の乗り込み前に、所長に躯体業者でもう一度御祓いを行うと集められた。
 こんな経験は今まで初めてで、俺は所長に、

「 この現場は何なの?」

と聞いた。

「 ○○君は現場で変な経験とかない?
霊的なもんとか・・・・。」

正直、この所長は頭おかしいと思った。
話が面倒くさい感じだったから、

「 僕の家には家系図が残っていて、先祖に神主さんがいるから平気です。」

と言っておいた。
 この棟はD棟と呼ばれ、他に同じ敷地内にA棟B棟C棟が既に施工中で、D棟が搬入路として後から施工が開始された。
D棟の基礎掘削工事から、小さなトラブルや労災適用には至らない事故も起きている事を鳶の職長から聞いて、俺は細心の注意を持って施工に当たろう思った。
 基礎の深さは地上からおよそ10mで、貯水槽や設備室を兼ねていて、普通の基礎よりは深く複雑だった。
現場は海の近くで地質は砂、水も湧き出でウェルポンプも常に稼働、そんな状況での基礎工事だった。
 湧き出る水を汲み上げるウェルポンプの能力も限界で、一次コン打設を急いだ。
俺は、現場のほぼ中央付近に不自然にパネコート材で蓋をされてる場所が気になった。
捲ってみると石の板みたいな物が数枚置いてけぼりあり、それを隠しているみたいだった。











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日々の恐怖 3月15日 レクイエム 6

2023-03-15 12:25:58 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 3月15日 レクイエム 6






 入院中はたくさんの人に支えられた。
大手術もした。
今思えばそんなこともあったな、と思うが、当時は本当に大変だった。
もう二度とこんなことになりたくない。
そう思った。
 大学の開校期間中に復帰できた。
単位もいくつか落としたが、周りの支えもあり、なんとかなった。
そうして時は過ぎて行った。
 僕は大学三回生になり、就活をしていた。
就活は本当に大変だった。
毎日色々なところに行っては、説明会に出たり、面接を受けたり、テストを受けたりしていた。
順調に物事が進むようには思えなかった、そんな時のことだった。

 大阪、梅田の地下街を就活の合間に歩いていた。
僕の就活の息抜きはラーメンで、色々な店を捜しては食った。
今回は坦々麺。
今もあるかどうかはわからないが、有名な泉の広場を抜けた先にある。
 本格坦々麺の店に向かい、注文した。
料理が出てくるのを待っていると、携帯が鳴った。
僕は、

” 選考の連絡かな・・・?”

と思い、嬉々として通話ボタンを押した。
その瞬間、口の中に誰かが手を突っ込んできたのかと思うほど、口が引き攣り、喋れなくなった。
 なんでこんな時に、こんなことになるのか。
持病も何もないのになぜ、と思いながら、耳を澄まして相手の声に集中した。
後で掛け返せばなんとかなると思った。
すると聞こえてきた声は意外なものだった。

「 あの~、すいません。
その携帯、僕のなんですが、そちらはどなたですか?」

間違いなく僕の声だった。
そして彼は電話を切った。
 その瞬間、僕の口は元に戻っていた。
そんな馬鹿な、間違い電話だろうと思う僕に坦々麺が運ばれてきた。
食べようとした瞬間、僕の耳に聞こえたのは、店内のBGMに使われていたレクイエムだった。

「 そうか、あのとき聞こえていたのは、これだったのか・・・。」










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日々の恐怖 3月7日 レクイエム 5

2023-03-07 16:34:36 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 3月7日 レクイエム 5






 僕の右耳には携帯が当てられていて、僕はストレッチャーの上だった。
窓を見ると街灯が素早く移動する。
明らかに救急車の中だった。
 全てを察して、僕は母親に言った。

「 えらいことになってしもた!
ごめん、ほんますまん。」

そう、僕は途中でトラックと交錯して、事故を起こして気を失って搬送されている最中だった。
それまで見た風景は、たぶん夢かなんかなんだろう。
そう思って目を閉じたらそのまま気絶した。
 次に目を覚ましたのは、いわゆる集中治療室だった。
自分の間近で鳴ったナースコールで目を覚ました。
夜中に目を覚ますと、看護師がやってきて、安心させるような言葉をかけて、去っていった。
そこでまた気を失った。
 翌朝、鏡を見て驚愕した。
事故の影響でボコボコに腫れていた。
医者は笑いながら、大体治るから大丈夫、と言葉をかけてくれたが、目の下の骨をおり、網膜も少し傷が入ったようで、経過観察と絶対安静を余儀なくされた。
 僕を見て母親と姉は泣いた。
僕は本気で詫びた。
その時初めて自分の命が自分だけのものではなかったことを知った。










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