大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

しづめばこ 11月30日 P462

2016-11-30 18:15:37 | C,しづめばこ



 しづめばこ 11月30日 P462  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



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日々の恐怖 11月29日 チエ(3)

2016-11-29 20:25:45 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月29日 チエ(3)




 死因は原因不明の高熱だった。
突然ガーッて熱が上がって、入院して、それっきり。
 俺はもしかしたら、俺が御神酒サボってるせいじゃないかって思った。
でも親にも婆さんにも言えなかった。
罪悪感とか、そんなん。
妹が死んだのは俺のせいだって思った。
 でも、母親は、妹が死んだのはチエのせいだって言い始めた。
話を聞くと、妹は今際の際に、

「 ちえちゃーん。」

と泣いたらしい。
 ちえちゃーんなんて友達は妹にいなかったし、思い当たる事があれば、あの怪しげな人形だ。
 俺が過去騒いだせいかも知れないけど、母親も過敏になって、

「 人形を捨てる!」

と言い出して、妹の葬儀中に大喧嘩した。
 この一件から、うちの両親は不仲になって、母親は実家へ帰った。
親父は黙々と仕事をして、婆さんはチエを抱きながら毎晩泣いた。
親父仕事から帰って来ないし、婆さんは泣いてばかりだし、この辺りから、俺が家事をするようになった。
 次に婆さんの呆けが始まった。
今思えば当然だ。
飯を食うか、部屋に篭って人形抱きながらぼーっとして、泣いて、泣き疲れたら寝てた。

「 ご飯だよ。」

って呼びに行ったら、何か食ってんの。

「 何食ってんの?」

って聞いたら、

「 ご飯。」

って言う。

“ はあ・・・?”

と思いながら、婆さんの顔見たら、金色の糸が口から出てんだよ。
そんで、手元には半分剥げたチエ。
俺はこの時が一番怖かったとおもう。
急いで婆さんから吐き出させた。










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日々の恐怖 11月28日 チエ(2)

2016-11-28 19:28:42 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月28日 チエ(2)




 休みの日だったか、まだ明るい時で仏間もいやに明るかった。
昨晩、下げ忘れた御神酒を下げに仏間に入ると、チエが定位置にいない。
 チエは、いつも置いてある棚から畳へ落ちていた。
そして、手首が外れていた。
正直、俺に何かするために這い出して動かしたのかと思った。
 びびって走って家族のいる居間にいると、婆さんがいて、怒られるかもとは思ったが、本気で怖かったので婆さんに報告した。
 俺の尋常じゃない様子に婆さんも心配になったのか、一緒に居間にきてくれた。
そしたらチエは、今度はちゃんと定位置にいた。
手首もついている。
 俺が嘘を吐いた感じになってしまったが、弁明している時に親父がきて、

「 あ、悪い。
それ俺が落とした。
トイレ行ってから直したんだよ。」

“ 犯人親父かよ!”

勘違いして半泣きになっている俺を親父が爆笑して、婆さんも今度は俺を慰めて、事なきを得た。
 でも、その晩、婆さんが寝たあと、親父が俺の部屋にきた。

「 昼間のあの人形な、戻したのは俺だ。
だけど、落としてはいない。
お前、本当に嘘は吐いていないか?」

 親父の話によると、俺が大きな音を立てながら仏間を出てくるのを見て、どうしたのかと仏間を覗いたらチエが落ちてたのを発見した。
見つかるとまずいから、そっと直したという話だった。
 ただ、おかしかったのは、手首なんて取れてないと親父が言ったことだ。
どうやって落ちて、どうやって手首がくっついたのか。
 それで、俺は怖くなって、御神酒上げる係をサボるようになった。
御神酒持って出て、客間で2.3分待って、それから居間へ戻る。
多分、半年くらい御神酒を上げてなかった。
その頃、妹が死んだ。
小学校に入って間も無くだった。











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日々の恐怖 11月27日 チエ(1)

2016-11-27 19:16:57 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月27日 チエ(1)




 俺の父親には妹がいたらしい。
俺にとっては叔母にあたるが、叔母は生まれて数ヶ月で突然死んだ。
原因不明。
 待望の娘が死んでしまい、婆さんは大層落ち込んでいた。
見兼ねた爺さんが婆さんにフランス人形を買い与えると、婆さんはそのフランス人形に叔母と同じ名前のチエと名付けて可愛がった。
毎日撫で、傍に置き、綺麗にしてやり、共に寝たそうだ。
 それが変わったのが、俺の妹が生まれてからだった。
女が生まれて、婆さんは凄く喜んでいた。
 両親共働きだったし、代わりに婆さんが妹を大層可愛がって育てた。
俺も可愛がられたけど。
 それで、今まで大切にされていたチエの定位置は、婆さんの枕元でなく仏間になった。
誰もいない仏壇だけがある仏間だ。
 俺はよく先祖へ挨拶しろと、夕飯前に御神酒を上げにそこへ行かされていた。
暗くてくそ寒い、不気味な部屋だった。
 小学校高学年の時、いつも通り御神酒を上げに仏間に入り、仏壇に手を合わせた。
その時、誰かが後ろに立っているような気がした。
 振り返ると何でもない、いつも通りピンクのドレスのチエがいるだけだ。
それがその時は妙に怖かったのと、多感な時期だったのもあって思わず、

「 なんだよ、文句あるのかよ、かかってこいよ!」

と、チエを挑発した。
馬鹿だな。
 居間に戻って家族に、

「 チエに睨まれた!」

と報告すると婆さんが激怒した。
後にも先にも婆さんがあんなに怒った事はない。
 怒る婆さんに合わせるように父親も激怒、ゲンコツをくらった。
俺涙目。
 その時は謝って、それで終わり。
問題が起きたのは、数日後だった。










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しづめばこ 11月26日 P461

2016-11-26 23:03:02 | C,しづめばこ



 しづめばこ 11月26日 P461  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



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日々の恐怖 11月17日 駅への道

2016-11-17 19:45:28 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月17日 駅への道




 東京に住んでいた時の話です。
我が家の最寄り駅の一つ前の駅が、終電の際の終着駅でした。
 ある日、平日ダイヤと休日ダイヤをうっかり見間違え、自分の最寄り駅へ行く電車がなくなってしまいました。
仕方がないので初めて一駅歩くことになってしまいました。
 時間は深夜1時頃です。

“ 怖いな・・・・。”

と思っていたのですが、私の他にも同じ境遇の人が数人いたらしく、同じ方向に歩く人がぱらぱらいたため、そんな気持ちも無くなりました。
 段々分かれ道に差し掛かるにつれ、一人減り、二人減り、とうとう私と、少し先を歩く女の人だけになりました。
OLっぽい人でした。
 女の人とは、常にある一定の距離が保たれていたのですが、最寄り駅が見えてきたという時になって、徐々にその距離が縮まってきました。
 そして、とうとう追い越しそうになったとき、

“ この女の人が前を歩いてくれていたから、夜道も怖くなかった。
本当に心強かった。
どんな人だろう・・・・?
顔が見てみたいな・・・・。”

と思い、すれ違い様後ろを振り返った瞬間、

“ えっ・・・?”

一瞬で女の人の姿が消えてしまいました。
脇道も家もない一本道で、姿が隠せそうな場所はどこにもないのです。

“ あ、幽霊だったのかな・・・・”

とぼんやり思いつつ、駅にたどり着くまで先導してくれたことに感謝しました。










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日々の恐怖 11月16日 記憶

2016-11-16 18:35:33 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月16日 記憶




 生まれて来てから今までで、一番古い記憶って、いつ頃のものだろうか。
俺の場合は幼稚園の入園試験だった。
前後の記憶は大概おぼろげなんだけど、この時の出来事は、それこそ昨日の事のように覚えてる。
いや、正確には覚えている気になっていたと言うべきだろうか。
 俺が入園試験を受けたところというのは、カトリック系の幼稚園だった。
別に生家が宗教をやっていたわけではなく、単純に近いという理由でその幼稚園が選ばれたそうだ。
 試験の会場は、幼稚園と道路を挟んだ向かい側にある小さな教会だった。
もちろん教会までは親と一緒に行ったんだけれど、子供だけで一人ずつ別室に通されて、神父と面談を兼ねた簡単な試験をするという内容だった。
 最初は、

「 お名前はなんていうの?」
「 好きな食べ物は?」

とか当たり障りのない内容だったんだけど、少ししたら大きめの画用紙を取り出して、

「 これは何色ですか?」

って質問が始まった。
 その画用紙は全面が単色で塗られていて、なんてことはない、考えるまでもない質問だと思った。
赤の画用紙が出てはその通り答え、緑の画用紙が出てはその通り答え、と特に問題はなかったんだけど、それがいつまで経っても終わらない。
 さすがに出てきた順番までは覚えてないものの、色は赤、緑、紫、白、黒の5種類だった。
この5色をひたすら答えさせられた。
 その5色の出し方も不思議で、最初のうちは満遍なくランダムで出されていたものの、回を重ねるたびに黒の出現頻度が上がっていった。
30回目くらいに達した時には、もう黒しか出なくなっていた。

「 この色は何かな?」
「 これは何色?」
「 この色は?」

延々と繰り返される質問に対し、俺は馬鹿正直に黒と答え続けた。
 そのうち神父は、無表情のままに徐々に声を荒立て始めて、

「 これは本当に黒!?」
「 黒に見えるのか!?」
「 黒かどうか、もっとよく見ろよ!!」

と、気づけばもう質問の体裁を保っていない状態になっていた。
 目の前の神父は相変わらず無表情で、口もそんなに大きく開けているようには見えないのに、声はどんどん大きく、また口調も汚くなって行く。
 明らかな大声なのに誰も助けに来てくれない。
一緒に来ている母親も、部屋の外で待っているはずなのに来てくれない。
その状況に耐え兼ねて、俺はついに泣き出してしまった。
ここで俺の記憶は途切れる。
 後に母親にこの時の事を尋ねたのだが、聞かされた話は全く異なっていた。
簡単な入園試験があったのは事実だが、会場は教会ではなく幼稚園の一室で、母親も同席していたという。
 考えてみれば2歳3歳の子供が一人で面談を受ける事は考え辛いし、客観的には母親の弁が正しいのだろう。
でも、俺ははっきりとその時の事を思い出せるし、今でもたまに夢に見る。
この記憶、いったいどこから来たのだろうか?













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日々の恐怖 11月15日 顔

2016-11-15 19:16:05 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月15日 顔




 俺は4歳になるまで、夜はバアちゃん家に預けられていた。
夜はバアちゃんと並んで寝るんだけど、その部屋に死んだジイちゃんの仏壇があった。
で、夜中に目が覚めたりすると、たいてい金縛りになる。
その時、必ず仏壇の戸が少し開いてて、中から誰かがこっちを見ている。
扉に手をかけて、白い顔を半分覗かせて。
 最初は、ジイちゃんだと思っていた。
バアちゃんが仏壇に向かって、

「 じいさん、・・・・・。」

って呼び掛けるのを見てたから。
 だけど、その顔、良く見ると子供みたいなんだ。
こっちを見ながら、うっすらと笑っている白い子供の顔。
そんなものを見ながら、俺は不思議とも思わずに、4歳までその部屋で寝ていた。
 バアちゃんは俺が11歳の頃に死んだ。
良く覚えていないけれど、何かの病気だった。
半年ぐらい入院していて、見舞いに行くと割と元気に見えたのに、急に具合が悪くなったかと思うと、2日くらいで死んでしまった。
 それでも、自分の死期はうすうす感じ取っていたみたいで、死ぬ間際には、

「 やっと、じいさんのところへ行けるね・・・。」

みたいなことを言って、周囲を困惑させていた。
 バアちゃんは、具合が悪くなったと同時に昏睡状態に陥った。
親族は交代で病室に詰めていたんだけど、最後を看取ったのは俺の母親だった。
そのときの様子が、ちょっと変だったらしい。
 母親は、病室のベッドの横で本を読んでいたんだけど、何となく呼ばれたような気がして、バアちゃんの方を見たそうだ。
 すると、昏睡していたはずのバアちゃんが目を開けていた。
瞬きもせず、じっと天井の方を見つめている。
 母親が声を掛けようとした時、バアちゃんの口が動いた。

「 お前、じいさんを何処へやった。」

実の子である母親が、今まで聞いた事もないような、低い声だった。
 呆気にとられていた母親が我に帰ると、バアちゃんはもう目を閉じていて、それから半時間程で、あの世へ旅立ったそうだ。
 バアちゃんは、あの白い顔をずっと見ていたのかも知れない。
今思えば、そんな気がする。











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日々の恐怖 11月14日 ズル休み(2)

2016-11-14 18:20:11 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月14日 ズル休み(2)




 それで妹は、怖さの余り、

「 違います!」

と心の中で答え、そして何を思ったか次に、

「 向こうです」

と私の部屋の方向を目線で指した。
そうすると女はその方へ、ベランダ伝いにゆっくり歩いて行って見えなくなったとか。
 私は、

「 なんてこと、してくれるのよっ!」

と怒りました。
つまり、私の所に来たのは妹のせいだったわけです。
 その話を聞き、たしかに見せられた地図には路線が書いてあったと気付き、これは無関係ではあるまいな、といよいよ寒くなった。
 本当なら地図の場所に行けば何か進展したのかもしれないが、あいにくボヤけて見えなかったわけで、その後は何も出来なかった。
 腕が切れていたのだし、

“ ×印の所に腕があるのでは?”

とか、

「 娘さんですか?」

の言動から、

“ 父親の愛人では!?”

等と、家族で話した。
しかし、特に思い当たる節はなかったようで、結局それで終わってしまった。
今でも我が家では話題に出て来る話です。










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日々の恐怖 11月13日 ズル休み(1)

2016-11-13 18:14:31 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月13日 ズル休み(1)




 当時の私は中学生くらいだったと思う。
学校をズル休みして昼寝していたら金縛りにあった。
 元から疲れたりするとよく金縛りになるような体質だったので、

“ いつものことか・・・・。”

と無理矢理二度寝しようとしたのだが、その日はどうも違った。
突然仰向けに寝ている額のあたりをグイグイと誰かが押さえつけてきた。
 金縛りにあいながらも目を開けると、どうやら何かの紙片を顔に押し付けられてるらしかった。
いかんせん近すぎてボヤけたその紙片の詳細までは見えなかったが、手書きの地図で目的の場所に×印がついていたのがわかった。
そうこうしている間に寝てしまったので結局それだけのことだった。
 夕飯の時にその話をしたところ、妹から意外なリアクションが返ってきた。
もしかしたら同じヤツに会ったかもしれないとのことだった。
 実はこの妹もその日ズル休みをして昼寝していたのだが、同様に金縛りにあい、しかも見たらしいのです。

“ ガタゴトン、ガタゴトン・・・・・・。”

と電車の音で目を覚ますと、目は開けられるのに金縛り状態だったそうだ。

「 ・・・・・ですか?」

言葉の一部が電車の音で掻き消されている。
 声の方を視線だけで見ると窓の外、ベランダに片腕が無い女が立っていた。
薄緑色のポロシャツを着ていたのが印象に残っている、と言っていました。

「 ・・・・さん、ですか?」

電車の音に掻き消されてはいたが、数回のその問いかけに、

「 娘さんですか?」

と言っているのが聞き取れた。











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しづめばこ 11月12日 P460

2016-11-12 17:52:16 | C,しづめばこ



 しづめばこ 11月12日 P460  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



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日々の恐怖 11月11日 老い(3)

2016-11-11 18:45:42 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月11日 老い(3)




 好奇心が先に立ったのか、私は階段に一段、足をかけた。

「 ダメだよ、行っちゃあ!」

その時、私を咎めるような声がした
 驚いて声のした方を振り返ると、そこに曾祖母が立っていた。
たいへん長生きをした人で、九十九まで生きた。
このときは、八十くらいではなかったか。
夫に早くに死なれ、女手一つで店を大きくした、たいへん気丈で厳しい人でもあった。
 その人も、

“ 早くこっちにおいで・・・・。”

と私を手招きしている。
 再び階段を見上げると、さすがに曾祖母だけは恐いのか、ヨシ子ちゃんは背を向けてゆっくりと、暗い階上を戻って行くところであった
 やがて、その姿は暗がりに溶けていった。
曾祖母は私の傍、階段の下まで来ると、剣呑な顔をして、

「 あんなに良くしてしてあげたのに、悪戯をするな。」

と、そんな意味のこと上に向かって言った。
 後で叔母の話すところによると、本家には従兄弟が三人いるのだが、三人ともが同じ体験をしているのだそうである。
 不思議なことに大人がいるときには出ないんだそうな。
もし、あのまま三階に行っていたらどうなっていたのか。
あの三階に何があったのか、わからず終いのまま
 家はいつの間にかコンクリートの二世帯住宅に建て替えられたそうである。
今は曾祖母も叔母も、すでにあちらの世界の人間である。
春は、あちらとこちらの世界の境界が少しあいまいになる、そんなことを考えながら、またうつらうつらとしてくる昨今である。










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日々の恐怖 11月10日 老い(2)

2016-11-10 19:13:31 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月10日 老い(2)



 私が八つか九つくらいの時ではなかったか、そのヨシ子ちゃんが亡くなった。
三日程寝付いたと思ったら、半時間ばかり呻いて苦しんだ末に息を引き取ったそうである。
葬儀には母だけが行った。
遺骨は郷里に持って行ったのか、それとも郷里の誰かが引き取りにきたのか、とにかく本家の墓には名は入っていない。
 それから一年ほど経った、あれは春の彼岸の時分じゃなかったか、私も母に連れられて行ったのだから、たぶんそうだろう。
私は母の隣に座り、叔母達にチヤホヤされながら出された寿司でも食べていたんだろうと思う。
 途中尿意を催したので厠にたった、厠は廊下の突き当を右に曲がったところにあったと記憶している。
明治初期に建てられた、かなり古い家なので、廊下は細く、暗い、床は飴色に光っていた。
 用を済ませ、また廊下の突き当りまで来ると、正面に狭くて暗い階段がある
三階に続く階段である、随分と急で電灯も付いているのか、いないのか、上がり切った所は暗くて見えない。
そして、その中程より少し上の所にヨシ子ちゃんが立っていた。
いつもの、あのニコニコとした顔で、私に手招きをしていた。
怖くはあったろう、しかし、私はまだ三階に足を踏み入れたことが一度もなかった、何か上がってはいけない雰囲気が昔からあった気がする









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日々の恐怖 11月9日 老い(1)

2016-11-09 19:47:33 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月9日 老い(1)




 春というのは若い人達にとっては希望に満ちた、新しい生命の息吹を感じる季節だろうが、私くらいの年になると、何かざわざわと落ち着かない、それでいて妙に静かな眠りを誘う季節である。
 夜中、猫の鳴くのを聞きながら天井を見つめてる時、あるいは、こうして縁側に座って桜の散るのを見ている時、やたら昔の事が思い出される。
 知らずに向こうの空気に合わせて息をしている。
危ないぞ、と気づいて我に返ると、ひどく消耗している自分がいる。
 確か、ヨシ子ちゃん、といったと思う。
私の母方の本家は東京の下町で魚屋を営んでいて、大正の頃は皇居にも魚を卸していたそうである。
 とは言っても店の造りはそれほど大きくなく、一階が店舗、二階が住居になっており、その上にさらに三階があった。
三階と言っても布団を入れる納戸と、四畳半程の小さな部屋が一つあるだけだ。
ヨシ子ちゃんとは、戦前からその部屋に寝起きし、住み込みで働いていたお手伝いさんだった。
 本家には家族も多くいたし、別に手伝いを雇う程のこともなかったのだが、知人からどうしても、と言われ預かっているのだと聞いていた。
生国はどこだか知らないが、いずれ東京から随分と離れていたのではあるまいか。
みんなヨシ子ちゃん、とかヨシちゃんなどと呼んではいたが、歳はもう当時で四十を超えているらしかった。
 障害と言うほどではないだろうが、少し知恵が遅れていて、また口も不自由だった。
毎年、正月に親戚が集まるが、何が嬉しいのか、いつもニコニコと笑いながら人の間を、料理や徳利を運んで忙しく働いていた。
ただ、人と話したり、大人の話に飽いた私達と遊んだという記憶はない。










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日々の恐怖 11月8日 冬の日

2016-11-08 18:05:09 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月8日 冬の日




 冬になると思い出すことがある。
俺が小学2年の頃、もう22、3年以上も昔の話なんだが、小学校のすぐ隣が中学校だった。
中学校のプールは大きくて深くて、年中水が張りっぱなしで、夏が終わると濁って緑色になる。
 ある冬の日、俺はなんとなく中学校のプールを見に行った。
冬休みだったと思うが、小学校の敷地から見るプールには、人はいなかった。
 俺はフェンスの破れ目からプールに侵入した。
プールは見事に氷が張っていて、まるでスケートリンクの様で、俺はつい夢中になって氷の上を走ったり滑ったりしてしまった。
 ふと我に返って、足下をみると大きな気泡が氷の下で激しく動き回っていた。

“ なんか、ヤバいな・・・。”

と思った俺は、プールサイドめがけて走った。
 しかし、氷はバカっと割れて俺は汚い氷水の中へ吸い込まれた。

“ やべえ、死ぬのか俺・・・?”

と小学生ながら生命の危機を感じ、あらん限りのパワーを振り絞って叫んだ。

「 助けてぇ~~~!」

中学校の先生が駆け付けてくれて、俺は助かった。
 あと少し救助が遅かったら、俺は水を吸った衣類の重みで水の底に沈んでいただろう。
中学校の職員室で裸にされて毛布をまかれ親が呼び出された。
 その日はすぐに家に帰ったが、翌日も、またその翌日も、俺がプールに落ちたという話が職員室や親の間で密かに続いているようだった。
 そんな事件から3年が経ち、高学年に進級した俺はオヤジから衝撃的な話を聞かされた。
俺が溺れかけた日、そのプールの底から、

“ もう一人”

発見されたんだそうだ。
 水を吸って石の様に重くなったコートやセーターを着た、当時の俺より少し小さな男の子が沈んでいたそうだ。
俺、水の中でそいつに会ってたんだよなァ・・・。










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