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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 1月30日 ガキの頃の話 (6)

2025-01-30 23:49:38 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 1月30日 ガキの頃の話 (6)






 しばらく沈黙のやりとりが続いた後、そこはやはりリーダーなわけで、Sが最初に沈黙を破った。

「 見ただけで、何で俺たちと分かるんや?
俺たちの顔まで見たんか?
俺ら一人一人の名前も分かるんか?」

教師らは誰も口を開かない。
立場が逆転したようにSは続ける。

「 証拠もないのに、呼び出してええんか?
悪さって何や?
俺らが何したって言うんや?」

と、一気にまくしたてたSに、

「 言うてええんか?」

と、Sの担任がSを牽制したが、勢いが止まらなくなったSを誰も止めることは出来なかった。

「 言わんかい!」

と、売り言葉に買い言葉なSをみて、俺はバレた後のことを考え始めた。
しかし、どう考えても、それは胡麻化しようがない状態な訳で、俺は親に知られてぶん殴られ
ることを覚悟するしかなかった。
 そして、俺の担任が俺に言った。

「 空き家に入りこんだな?」
「 ・・・・・。」

俺は何が起きているのか理解が追いつかずにいた。

” 空き家・・・・・???”

Kを横目で見たが、俯いているので表情までは見れなかった。
 続いてMを見たが同じ。
Sは顔面蒼白。
そんな三人を見て、更に俺は取り残されたまま沈黙した。
 賽銭泥棒の件で呼び出されたと思っていたはずが、空き家に不法侵入の疑いがかかってい
ることに理解が追いつくはずもない。

「 知りません、空き家って、何?」

と、やっと俺は始めて口を開いた。

「 まだ惚ける気か?」

と担任に詰め寄られたが、

「 知らんもんは知らんのや。
何や、空き家って!」

と、今度は俺がSに噛みつく形に変わった。









 
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日々の恐怖 1月22日 ガキの頃の話 (5)

2025-01-22 20:02:51 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 1月22日 ガキの頃の話 (5)






 帰り道の途中、どちらかが言うわけでもなく公園に立ち寄り、俺とKはブランコに腰をかけた。

「 Mがチクったんやろ?」

最初に口を切ったのはKだった。

「 何でや?
自分も一緒に居て、Sにお菓子買って貰って食べた癖に。
しかも、Sは兄ちゃんやぞ。」

とKはつづけた。

「 だいたい、誰にチクったんやろ?」

そんな話をしながら何も答えもでず、Mは裏切り者ということだけが延々と繰り返された。

 それからしばらくしてSは学校に登校してきたけど、何となく俺もKもあの日以来、SとMに
近寄ることを避けた。
放課後に4人で帰ることも遊ぶこともなく、自然と俺・KとS・Mという組み合わせで別々に
帰る日が続いた。
 喧嘩をした訳でもないから、気まずいまま数週間が過ぎた頃、担任から呼び出しをくらった。
体育係だった俺とKが、放課後活動で体育館周りの草むしりをしていた時だった。
最初は掃除サボれてラッキーだったはずが、別室に呼ばれてドアを開いた瞬間にS、Mも呼
び出されたメンバーだと分かると鼓動が跳ね上がるのを感じた。
 今更だがSは1学年上。
俺とKは同い年同じクラス。
Mは1学年下。
 それぞれの担任が俺たちの前に座り、これから裁判が始まるかのような重々しい空気が流
れていた。

「 お前ら、最近、放課後に悪さしよるんと違うか?」

最初に口を開いたのはSの担任。
俺たちは誰も何も言わず俯いたまま。

「 立ち寄り禁止場所にフラフラ上がって行きよるの見たって学校に連絡があったんやが、どう
じゃ?
お前らか?」

つづいて俺たちの担任が追い打ちをかけて、更に鼓動が早まりながらも一様に黙秘を続けた。
 Mの担任は女。
ただ黙ってその場に居たが、圧力だけはヒシヒシと感じるくらいのベテラン女教師だ。
俺たちがいつまで黙秘権を行使できるか見物と言わんばかりにしばらく教師も口を開かないで
いた。









 
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日々の恐怖 1月13日 ガキの頃の話 (4)

2025-01-13 10:16:39 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 1月13日 ガキの頃の話 (4)






 風邪の割には中々登校してこないSを、俺もKも心配して何度もMに、

「 Sの風邪、大丈夫か?」

と尋ねても、

「 Sは熱と言ってもそんなに高熱じゃないし、咳も出よらん。
元気にしとるけど、体にブツブツが出来て、それが引かんから登校出来んだけ。」

と聞かされた。
 医者に行ったけど伝染病の類いでもないし、蕁麻疹と診断され大事をとって休
んでるとのことだった。
それを聞いて安心した俺とKは、

「 うつる病気じゃないなら会いに行けるし、今日、一旦家帰った後お見舞いに
行く。」

とMに伝えた。
 放課後、見舞いに行くとMから聞かされた通り、Sは元気そうな様子で俺らを
迎えてくれた。

「 悪いな。
大したことないんやけど、おかんが外に出してくれんのや!」

と、ふて腐れたようにベッドに座りながら、俺が親から手渡された差し入れに手
を伸ばすSは、本当に病人なのか疑わしいレベルで、我先にチョコレートケーキ
を選んで食べた。
 しばらく談笑したり漫画を読んだりして楽しみ、そろそろ帰る流れになった
頃、Kが元気付けの意味も込めて、

「 そんなけ元気なら明日には学校来れるやろ?
お前が休みよったら退屈。
はよ、おっさん探し行こう!」

と言ったのを機に、Sが黙り込んだ。
何となく踏み込んでは行けない場所に踏み込んだ気がして、気まずくなった俺た
ちは、早々と切り上げるかの様に、

「 とにかく、早よ治せよ。」

と言い、腰を上げようとした時、

「 チクったやろ?」

とSがボソっと言った。

「 俺が賽銭盗んだの、チクったのお前らか?」

とまた俯きながら呟いた。
俺がKを見ると、Kは頭を横に振り否定のポーズをとった。
 勿論、俺も誰にも話してなどいない。
Mをみると、Mは俯いて黙り込んでいた。
明らかにMが犯人だと分かったが、誰もその場では何もかも云わなかった。
 微妙な空気に耐えられなくなった俺もKも、

「 何のことか分からん。
誰もチクったりせん。
チクったら自分らもグルやのに、そんなアホなことする奴おらん。
気のせいやろ?」

とだけ言い残して、逃げるようにSの家を後にした。







 
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日々の恐怖 1月4日 ガキの頃の話 (3)

2025-01-04 11:18:20 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 1月4日 ガキの頃の話 (3)





そんな俺らを気にも止めずSは、

「 あのおっさんが賽銭置きに来よったん辞めたんやろ。
あいつ、俺が盗みよるの見たから置きにくるん辞めたんやわ。」

Sによると最後の賽銭に有り付いた日、その日は五百円玉と十円玉が数枚。

「 まぁ、こんなもんか・・・・。」

と賽銭をくすねて駄菓子屋に向かうために山を下りようとした時、山の反対から男が登ってく
るのが見えた。
賽銭泥棒がバレたと思ったけど一向に男は神社に入ってくる気配もなく、ただじっとそこに
立ち止まっていただけだった。
 何故、俺達に今まで黙ってたかと言うと、

” 誰もおっさんの気配に気付いてないことが怖かった。
みんなに確かめて、おっさんが自分にしか見えない存在だとしたら、それを認めるのは怖い。”

というようなことを言った。
Sの話を聞いて薄ら寒いものを感じ、皆がしばらく無口になった。
 そんな空気を変えたのはまたしても、言い出しっぺのSだ。

「 でも、それからや。
賽銭なくなったの。
やっぱりあいつが賽銭置きに来よったけど、俺が盗みよるの見て置くのやめたんやろ?
だから、あいつは普通のおっさんや。
幽霊でもなんでもない。
あいつ近くに住んでるんちゃうか?
明日探しに行こうや!」

怖いもの知らずな俺たちの次なる遊びはおっさん探しに決まったとこで、その日は解散した。
 ところが、その次の日から、

” いざおっさん探し!”

となるはずが、しばらく梅雨独特のシトシトした雨が続き、外出ができないまま数日が過ぎた
頃、言い出しっぺのSが急に熱を出して学校を休んだ。
弟Mによると、夏風邪だろうとの事で特に気にも止めなかったが、今思えばこの辺りからSの
奇行が始まったように思う。








 
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