日々の恐怖 2月2日 何かあってもうちは知らないから(7)
その日も、
「 ほいリーダー、見えますかぁ?」
「 お、さんきゅ~。」
と、手元を照らしてもらいリーダーが鍵をかけていると、ガラス戸に映る同僚が照らしてくれている明かりの輪が、何か、
” ぼわん!”
といきなり大きくなった。
が、リーダーは気にせず、そのまま鍵を鍵穴から抜き取って振り向いた。
そして、
「 じゃ、帰りま・・・・・・。」
と言っている同僚たちの後ろに、大きな白い光の球が、こちらへと向かって飛んで来るのが見えた。
「 う、うわわわわわ!」
それを見てリーダーがわけのわからない声をあげると、同僚たちも振り向き、すぐに気付いて、
「 げっ!」
「 ぎゃっ!」
などと悲鳴をあげてそれぞれに逃げ出した。
リーダーもすぐに逃げようとしたが、その時まだ、玄関の施錠確認をしていない事を何故か思い出し、この非常事態だというのに、ガラス戸の鍵がちゃんとかかっているかどうか後ろ手で戸をガタガタと動かして確認しているすぐ真横を、1メートルはありそうな巨大な、しかも車のヘッドライトの様に強烈な白い発光体がガラス戸を突き抜けて、建物の中へと入って行った。
光の球の中には何か人影の様なものも見えたが、そんなことはどうでもよかった。
リーダーは大きな発光体を目の前で見ながら施錠を確認し、飛んで逃げた。
「 もし施錠し忘れてたら、責任問題だろうが。
俺の立場としてはそっちの方が怖いから、幽霊よりも。」
と後にリーダーはぼやいていたという。
「 結局なんとか納品できましたけどね、まずはメインの部分だけ。
でも、本番に乗せてからも普通なら考えられないバグやエラーが出まくるし、ディスクも何度か飛ぶしプリンターも何台か壊れるし。
買ってきたばかりの新品のケーブルがどういうわけか壊れてるとか、マウスの中のボールがいつの間にか割れてるとか。
もうお手上げでしたよ。
僕は本番が動きだしてから他の現場の担当になりましたけど。
ホント、あらゆる意味でとにかく早く逃げ出したかったです。」
その商店は今も営業しており、裏庭の倉庫もまだあるという。
倉庫についての曰くは、
” 聞くな!”
と会社から命令されていたので、わからずじまいだそうです。
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