模型サークルの知人T氏は、今年に入ってから更にガルパン戦車プラモへの情熱が高まったそうです。劇場版を観て感動し、それから11回も映画館に通ったそうなので、もう完全にガルパンファンの一人に連なっているといって良いでしょう。
そのT氏が、先日に電話で問い合わせてきたのは、聖グロリアーナ女学院チームのマチルダⅡ歩兵戦車に関することでした。
「序章のゴルフ場での場面がカッコ良かったんで、ダー様率いるチャーチルとマチルダの小隊作ってみようと思ってるんよ」
「いいですねえ、頑張ってチャレンジして下さい」
「それがね、近所の模型店行ったらさ、公式キットのチャーチルは売り切れやったの。マチルダはタミヤのがあったから一個買ってきたのよ」
T氏が購入されたのは、上図のタミヤの「イギリス歩兵戦車マチルダ Mk.Ⅲ/Ⅳ」のキットでした。公式資料でも模型雑誌のガルパン関連記事でも必ず紹介されているキットです。ホビーサーチでの案内情報はこちら。
T氏は、モデルグラフィックスの定期購読者なので、このキットが2016年1月号のガルパン特集記事にて「文句なしの決定版」と推奨されていることも御存知です。公式設定資料のガルパンアハトゥンクでも、劇中車は「イギリス歩兵戦車 マチルダ Mk.Ⅲ/Ⅳ」とありますから、誰でも上図のキットを買うに決まっています。
ところが、T氏の次の話し声は、一段トーンが落ちました。
「ところがね・・・、箱開けてキット見て、資料と見比べたら、あちこち違うのよ・・・。修正せんとあかん所がいっぱいあるんで」
「仰る通りです。マチルダもガルパン戦車の常で、実車とは色々違ってて各型のごちゃまぜ状態なんです」
「えっ、というと、星野さんはやっぱりそういうの把握してるんやね」
「大体はね・・・、私もまだキット買ってませんから、実物見てどうのこうのとチェックしてませんけど、公式の資料図とかを見ますとね、Mk.Ⅲ/Ⅳとありますけど、劇中のマチルダは細部の形状とかにMk.Ⅱの特徴が入ってるように見えるんですよ」
「Mk.Ⅱ・・・・、ああ、やっぱり型が違うのか・・・」
「違うっていうか、厳密に言いますと、Mk.Ⅱの特徴も併せ持った Mk.Ⅲ/Ⅳ、というふうにガルパンのマチルダⅡを捉えるべきだと考えてるんです」
「そうか、なるほどねえ・・・。すると、そのMk.Ⅱもキットがあるんかね?」
「ありますよ。古いキットですけどね」
上図が、そのMk.Ⅱのキットです。これもタミヤの製品で、現在のMk.Ⅲ/Ⅳのキットが2009年に発売されるまでは、マチルダⅡ歩兵戦車のキットといえばこちらの方が有名だった筈です。
ホビーサーチでの案内情報はこちら。
「星野さんは、ガルパンのマチルダを作る場合にはMk.Ⅱの方を使うの?」
「そこまでまだ考えてませんけど・・・。うーん、でも作るとなったらですね、形状が近い方のキットを使うことになると思います。その場合はMk.Ⅱの方が適切ならばそれでいきますけど・・・、でもこれって旧キットの扱いなんで、タミヤでもスポット生産品にしてるみたいですし、今じゃ普通に入手するのはまず無理ですね。中古品市場で探さないといけないかもしれない」
「そういうことか。Mk.Ⅱが入手困難になってるから、いま公式でも模型誌でも現行モデルのMk.Ⅲ/Ⅳの方を紹介してるわけか・・・」
「おそらくは、そういう事情でしょうね」
「でもなあ、それっておかしいと思わへんか?キット買って組み立てたら、劇中車とあちこち違うっていうのに、「決定版」はない、思うで。プラッツのケースとはまた違うけど、こっちもキットがガルパン戦車に絶対ならないわけや」
「残念ですが、ガルパン戦車プラモに関しては、100パーセントピッタリのキットは存在しないと思っておいた方が無難ですよ」
「まったくや」
結局、T氏は購入した現行モデルのMk.Ⅲ/Ⅳのキットを改造して劇中車に少しでも近づけるべく努力する、という方針を固めたようです。事実、それしか選択肢が無かっただろうと思います。
それではダー様のチャーチルもあちこち違うのかね、とT氏が話していましたので、この機会に調べてみました。上図は、去年9月に発売された公式キットです。発売元はファインモールドですが、キット自体はタミヤからのOEM供給です。
ホビーサーチでの案内情報はこちら。
公式キットのベースとなったタミヤの製品がこれです。公式資料と同じ名前で、外見もほとんど劇中車と共通しています。ガルパン仕様への修正点は五つぐらいですが、さらに後部ラックのガソリン缶のパーツが2個ほど不足し、パーツの形状自体が劇中と異なる、といった相違があるようです。
ホビーサーチでの案内情報はこちら。
はからずも、聖グロリアーナ女学院チームの戦車のキットの紹介になってしまいました。チームにはあとクルセイダーも登場していますが、現時点で1/35スケールの適応キットはイタレリの古いキットしかなく、それも入手は困難でありますので、実質的には対応キットが無いに等しい状態と言えましょう。
したがって、今後のクルセイダーの公式キット化にあたっては、イタレリの古いキットをOEM供給してもらうか、新規に開発してゆくかのどちらかでしょう。