やがて一輌だけの列車が一番線ホームに入ってきました。これが私の乗る10時8分発車の車輌で、ひたちなか海浜鉄道の「顔」とされるキハ3710型でした。このタイプは二輌あって、今回のは前面左上に「02」の番号があるので2号車と分かります。
前月に那珂湊駅でも見かけた車輌ですが、乗るのは今回が初めてでした。大きくペイントされた形式番号の「3710」は湊線の「みなと」にちなんだものです。
前部の昇降口を入ると、すぐ右手にスタンプがセットされていました。「世界一楽しい片道きっぷ」の二番目のスタンプでした。早速押しました。
二番目のスタンプは宇津木優季でした。スタンプはどの車輌にもセットされている、ということですが、この鉄道は往路と復路を一輌ずつが走って那珂湊駅にてすれ違う形で運行されているので、スタンプは二個あって双方の車輌にセットされているのだろうと考えました。
平成10年に製造された車輌なので、車内は真新しい感じがまだありました。昇降口の内部に運賃箱がセットされているのが、地域鉄道のワンマンカーらしさを感じさせますが、実際には運転手と車掌の二名で運行される場合もあるようです。
勝田の次は日工前でした。「にっこうまえ」の読みから「日本工業前」のような名称を連想しましたが、正確には「日立工機」でありました。もとは日立工機従業員の専用駅であったのが、いまでは一般客も利用出来る駅となっています。駅名表示板のデザインには、日立工機にちなんで工場で使われている歯車、電動ドリル、電動ノコギリが表されています。
次の駅は金上でした。駅名表示板のデザインがどうみても飛行機と戦車にしか見えないので、自衛隊の基地が近くにあるのかな、と思いました。勝田駅でもらった資料をひらくと、陸上自衛隊の勝田駐屯地が近くにあることが分かりました。陸上自衛隊だから戦車はあるんだろうけど、飛行機も保有しているのかな、と思いました。
次の駅は中根でした。デザインはどうみても古代の矛と前方後円墳なので、有名な古墳が近くにあるのだと分かりました。その通り、駅から歩いて約25分のところに、関東地方を代表する壁画古墳として知られる虎塚古墳があります。全長約56メートルの前方後円墳で、国の史跡に指定されています。春と秋に壁画公開があるので、機会があれば立ち寄ってみたいですね。
この中根駅から次の那珂湊駅までの区間は、ほぼ一直線となり、のどかに広がる水田地帯の中を走るのですが、そのあたりの景色や雰囲気が良くて、この鉄道が最も景色になる場所だろうな、と思いました。
那珂湊駅に着いて降車しました。駅名表示板のデザインはかなり凝っていて、前月に見た時には意味がよく分かりませんでしたが、この駅にある車庫と駅のマスコットの猫が表されているのだと気付きました。猫の名前は確か「おさむ」だったかな・・・。
駅構内の北側には幾つかの車輌が停車していました。左側は昭和40年製造のキハ205で、右側の一両目は私が乗ってきたキハ3710型の同型車1号車でした。これらの車輌がローテーションで運行されているのですが、全部の車輌に乗る機会は地元住民でもなかなか無いと聞きました。
勝田行きの車輌はキハ222でした。前月に阿字ヶ浦までの往復で乗った車輌でした。
ホームから改札口への連絡踏切を渡ろうとすると、勝田行きのキハ222が発車して次第に遠ざかっていきました。そのまま立ち止まってしばらく見送りました。
かくして那珂湊駅に着きました。前月の乗車区間とあわせて全線を体験したわけです。改札口の左側の精算所ドアの横には「世界一楽しい片道きっぷ」の案内ポスターが貼ってありました。 (続く)