『子供たちにとっての本当の教科書とは何か』 ★学習探偵団の挑戦★

生きているとは学んでいること、環覚と学体力を育てることの大切さ、「今様寺子屋」を実践、フォアグラ受験塾の弊害

勉強のできる子を育てるには⑩

2017年01月14日 | 学ぶ

がんばれ! 受験生
 冬期講習の入試実践テスト結果報告サンプルを一部掲載しています。また、「中学進学後~」の掲示を見て、団員諸君の小学生時の成績と、その進学後OB教室指導を経て大学受験するころの爆発力を精査、読みとってください

 きちんと見ていただければ、つまらない「詰め込み学習」の無意味さが、よく確認できると思います。子どもは大きく、夢があり、そしてどこに出しても恥ずかしくない子に育ってほしいものです。
 今日(14日)は私立中学統一試験日です。人数が少ないので、毎年受験生がいるわけではないのですが、今年は2名が受験します。入塾テストがあるわけではなく、団員はいわば、近所のやんちゃ坊主やいたずら小僧ばかりです。
 無試験で入塾した子たちを計算方法や本の読み方・ノートの書き方という初歩から指導します。したがって3年生、少なくとも4年生からの指導がより効果的です
。5年生になってからでは、「頭ではわかっていても、身体は動かず」という結果になることがよくあります。このことについては後程考えます。

 課外学習や立体授業・さまざまな作業を通じて、「やってはいけないこと」「どうしてもやらなくてはならないこと」を叱ったり褒めたりしながら指導していきます。課外学習や立体授業での指導については、今までくわしく伝えていますので、旧ブログを参照してください。
 「さまざまな作業を通じて」とは、たとえば夏期講習の暑い日、植込みや前庭に水をまきながら、植物の蒸散作用のしくみやようすを話したり、虹ができるしくみを解説しながら散水で実際に虹をつくります

 また前栽の植木の刈込では高いはしごを使って屋根にあがり、上から植物のようす、枝の広がり方や葉のつき方を観察します。刈り取る植木ばさみは、「てこの原理の指導」には最適です。枝の太さによる刃の使い方や刈り方のちがいが、力点・支点・作用点の理解深化の何よりの応援です
 それらの植木には小鳥用の子どもたち自作の巣箱が取り付けてあります。みんなでたくさん作っても雀が営巣したのは一個で、その他では、中を覗いたり入ったりしても巣作りしませんでした。
 巣作りしない巣箱なんか意味があるのか? と考えている方はいませんか? 「巣作りする」より「しない」方が、実は学ぶことが多いということは、お気づきでしょうか
 自然の、たいせつななりたちやしくみは、そうした疑問や失敗の「不思議体験」を通じて学びます。買ってきた市販の巣箱に小鳥が入っても、自らが考え試行錯誤して作ったわけではありません。それでは自作のノウハウをさまざまな機会に応用するアイデアは生まれません。彼我の「脳のはたらき」がまったく異なる、というのはおわかりですか?

 今教室に鎮座している「学ちゃん」のでっかい水槽の掃除や水替えは大変な作業ですが、持ち運びできないので排水は手動のポンプを使います。石油ポンプのように握って離す、というタイプです。
 勢いよく水が排出されるにはちょっと工夫がいりますが、その過程で、(ふだんは見えない!)大気圧のはたらきや高い木の上まで水を吸いあげる植物のしくみが明らかになります(あきらかにします)。
 教室はお湯が出ないので、ぼくの部屋の温水器からバケツに水を入れ、台車にバケツを乗せて運びますが、途中には段差があります。ここでも、台車の前輪を上げるには「てこの原理」を応用しなければなりません。このようにそれぞれのタイミングで、そのしくみを考えさせます

 子どもたちは、こうした作業を通じて、身近なもの・身の回りにいつも存在しているものの「科学的裏付け」に目覚めていきます。それが「科学の目」を育むはずです。「考えるきっかけ」を生み出すはずです
 ぼくは、科学館や先端科学イベントに連れていくという、「目先だけ」、ありきたりの指導について、よく「難癖!?」をつけます。それは、子どもたちが科学(学習)に目覚め、学習の大切さを理解し、やがて科学者として世に出ることができるようになるのも、こうした身のまわりの事象、何気ない日常の中の自然のしくみやはたらきを理解するからこそ、と信じているからです。

 歴史に残る偉人や科学者の大発見や大発明に大きく寄与したのは、こうした日常での観察や学習や指導がきっかけだったはずです。科学館や先端科学イベントの訪問は、そうした指導も併行しなければ、大きな効果は生まれないのではないか。そう思うからです。
 ぼくとこういう日々を過ごしてきた諸君が試験でまずい結果を出すはずがない。彼らが試験に向かう時は、いつもそう信じて送り出します。そして、子どもたちには、「一生懸命頑張ったから、解けない問題はないよ」と伝えます。

付け焼刃はやめよう!
 もう一つ、この機会にぜひ伝えておかなくてはならないことがあります。
 それは「受験勉強、試験合格のみに特化した缶詰学習はやめろ」ということです。
 試験の前や入試に合格するためだけの勉強は、いわば、「パスポート」としての役割しか果たしません。見も知らない「外国に行く」ときは便利でしょうが、使わずに放っておくと期限切れになって、糞の役にも立たない
 そうではなくて、「生きていくために必要なもの」はもっと身近な物、箸であり茶碗であり・・・云わば日々使う道具の数々です。その不思議やしくみこそ面白さの根源です。勉強は「箸」や「茶碗」でなければなりません
 日常使うものですから、日々積み重ねてその使い道やはたらきをしっかり血肉化するという学習が必要です。毎日、少しずつ、きちんと味わい、消化しながら進むこと。

 試験の前に、たとえば12時間ぶっつづけ、何カ月も続ける、「疲れて嫌になる」勉強ではなくて、一日一時間を何年も続ける勉強です。そうして初めて学習は血肉化され、たいせつな使い慣れた箸や茶わんになってくれます。一生役に立ちます。
 そういう指導を目指しましょう、お父さん・お母さん。そして心ある先生方。
 そうした指導を受けて現在大きく育ってくれた一人が、京大大学院を卒業後、医師や医療の現状に目覚め、神戸大に学士入学し医師を目指したK君です。K君の団在籍時のようすを一部紹介します。

 団は無試験入塾ですから、多くの子は学習習慣が未だついていない、或は、あっても家庭でお母さんやお父さんの指導を受けながら、という子がほとんどです。K君は全く学習経験がない口でした。
 入団後5年生になって初の団オリジナルの学力コンクールでは、ご覧のように、国語2点(4~5人いた平均点26点)・算数18点(同37点)計20点という得点でした。もちろん満点は各100点で二科目合計200点です。彼は宿題を、まじめに指示通りきちんと続けていきました。

 その後の推移は掲載のとおりですが、団の指導を受けたK君をはじめとするOB諸君が見せる爆発力は、裏表ない日々の努力によってそなわった「学体力」と「頭の使い方やはたらきの結果」です。「無闇な無理強い」や「詰め込み」ではない余裕と、正当な学習法がもたらしたものです。もう一度、最初の掲示の近畿トップ校と団との大学進学成績比較を精査して、これらの意味するところをご理解ください

 なお、2月から団の新学期が始まります。団では理解ある一生懸命なお父さん・お母さんと一緒に、大切に子どもたちを育てたいと考えています。大きく育てましょう。若干名の定員余裕があります。

四年生(まで)の大切さ
 前回、学体力が整わないままの勉強の不備、並びに受験指導や作家(もの書き)指導をはじめとする各種指導の姿を考えました。
 見たように、「何か学びたい・身につけたい」というとき、その夢や希望を形にするために、まず問われなければいけないのは「学体力」です。それが備わっていないのに(身につけようとさせていないのに)、中途半端なままで、ムードやブーム・根拠のない情報・無責任な素人判断に流されれば、待っているのは「三日坊主」、あるいは「夢半ばで挫折」という結果でしょう。
 「夢や望みをかなえるためには、その夢が大きいほど、おろそかにできない『もの』や『こと』がある」という認識があって、はじめて確かな一歩が踏み出せます。「片手間」や「ほのかな思い」だけでは夢はかないません。
 子どもたちにも「頑張る心」や「頑張る気持ち」を伝えるべきです。そして結果が出るまでの少しの辛抱や努力をきちんと伝え、指導するべきです。それによって生まれた結果が次のステージに彼らを誘います

 現状の子育ては、その部分が大きく欠落していると感じています。それがあってこそ、「至れり尽くせり」の応援も意味をもちます。ひとつ「学習」のためのみならず、どんな夢をかなえるためにも必要なことだと思います
 さて、先週の終わりに、「引用の谷崎潤一郎のことばには子どもたちの学習にも大いに参考になるアイデアにあふれていることにお気づきですか。次週はそれを考えてみます」と結びました。先週引用の出典先、中公文庫版「文章読本」(谷崎潤一郎著)に、こうあります。
 
 昔からよく、舞や三味線の稽古をするには大人になってからでは遅い、十歳未満(小学4年生未満ということです、南淵注)、四つか五つ頃からがよいと云われるのは、全くこのためでありまして、大人は小児ほど無心になれないものですから、とかく何事にも理窟を云う、地道に練習しようとしないで、理論で早く覚えようとする、それが上達の妨げになるのであります。(上記書p90)

 
 当初、この一節を読んだ時、「十歳未満」つまり小学校4年生未満ということが強烈に印象に残りました。指導の手ごたえと全く一緒だったからです。
 ぼくはOB教室を含めると、北大に進んだK君のように、ひとりで長ければ十二年という指導期間をともにします。小学校中高学年から高校まででも7~9年間見ることが珍しくありません。その経験から、小学校4年というのが成長や指導結果の分岐点だと感じてきました
 少なくとも4年生までに来てくれた子は「寝食を共にすれば」指導を心から理解してくれているのがよくわかるのですが、5年生以降の子はどこか、「すり合わせが利かないところがある」ことが多いのです。また学習に入るにも、なかなか順調にいかない子が多い

 やはり、これはこの時期が人間的な成長のひとつの節目を暗示しているということなのでしょう。したがって、指導やしつけをスムーズに運ぼうとしたら、少なくとも小学校4年までに、きちんと基本的なところを押さえておくべきだと思います。
 たとえば、学習の漢字や計算なども「くりかえし」が不可欠ですから、4年生までの繰り返しを厭わずできる間に基本の基本である計算と漢字の学力を定着しておくべきだと思います。
 さて、「くりかえしの効用」から。とっておきのアドバイスを一つ。

 今まで団では算数(数学)の学力がすばらしく飛躍した子が三人いますが、基本的な分野をある程度押さえたのち、彼らには学習研究社の「計算問題の特訓」を日々の課題にしました。一日十題ずつ、約1900題ありますから、200日弱で1回終わります。約半年間です。
 できなかった問題をチェックしておいて、二回目は、できなかった問題を中心に、三回目も同様にやり続けます。やり終えた子たちは、「特段特殊な算数問題をやらなくても」、 難関の中高一貫校を難なくクリアし、高校時代には数学でも、素晴らしい飛躍を見せてくれました。三人とも、京大へ進学しています。くりかえしの効用です。
 しかし、その「繰り返し」ができたのも、努力することによって結果がきちんと出るということを、はっきり認識できるようになったからです。それを教えなければなりません。それによって学体力も発動します。その後は、放っておいても自ら進んでいきます


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