『子供たちにとっての本当の教科書とは何か』 ★学習探偵団の挑戦★

生きているとは学んでいること、環覚と学体力を育てることの大切さ、「今様寺子屋」を実践、フォアグラ受験塾の弊害

勉強のできる子を育てるには⑦

2016年12月24日 | 学ぶ

 毎年暮れ、その年の想い出に立体授業や課外学習のようすを、個人別に次年度のカレンダーにしてプレゼントしています。そのカレンダーの紹介です。KAEDEの分もあります。

お母さん・お父さんに伝える心
 以前から、時々団の家庭連絡用成績報告を紹介しました。毎月の学力コンクールの結果報告等ですが、その中に各自の成績を見て、さまざまな検討ができるように、毎回結果総評を掲載しておきます。参考にしていただける部分もあると思うので、今回はその中から抜粋して数編を紹介します。「お母さん・お父さん・子どもたちに伝える心」を読みとっていただけると思います。
 なお、これらは旧年度のもので、また同一年度・同一学年のものばかりではありません。順番も前後していることを、ご承知おきください。

基礎課程(4年生・特進3年生)第6回10月度学力コンクール総評
 試験前に話したことですが、三人とも少しずつ頭を使って考えると云うことができるようになってきています。お母さん方は、そんなのいつも考えてるじゃないのと思うかもしれません。しかし、考えると云うことを教えてあげないと、子どもたちは考えることがなかなかできないものです問題を読んで何を聞かれているのか、どう答えるべきかなど、きちんと考えて答えを出せるまでになるには、たいへんな道のりがあります。
 多くの子は考えることを知らないまま、大きくなっていくような気がしてなりません。書いてあることとのコミュニケーションがきちんととれないと、考えることはできません。まず読むことに「埋没」できなければ、考えることができないのです。国語の試験問題などかなりむずかしいのに、試験のようすを見ていると、三人とも、それなりに考えることができるようになってきていて、うれしい限りです。

基礎課程(4年生・特進3年生)第8回12月度学力コンクール総評
 頭の良さは「持って生まれた能力」で決まるもの、みなさん方の多くは、そのようにお考えになっているかもしれません。しかし、日々、頭の柔軟な可能性の塊のような子どもたちを見ているぼくにとっては、大きなまちがいだと云うことがよくわかります
 頭の良さを育てるために、まずたいせつなことは、子どもたちの教科書に出てくる学習対象に対する体験知です。つまり、教科書に出てくるものやことに、どれだけ「なじんでいるか」と云うことです。知らないもの、見たことがないような物に対する学習や知識の暗記を強制されるほど、苦痛なことはないはずです
 たとえば、みなさんが、まったく知らない人のアルバムを見せられて、それぞれの身長・体重や出身地・経歴などを教えられ、「それを覚えなさい」といわれれば、どうでしょう。今の子どもたちにとって、小学校や中学校で学ぶ学習内容は、どんどんそんな感じに近くなっています。
 体験の中から興味や好奇心を引き出し、考えるきっかけをつくってあげること、そして、むずかしいことでも我慢して考え始めること、考え続けること、ぼくの造語ですが、「学体力」を身につけなければなりません。
 頭の良さは生まれつきでは決してありません。頭の良さを育てる環境を用意すれば、そして、我慢することを教えれば、たいていの子は、素晴らしい頭の持ち主になってくれます。ぼくは、今、それを教えています。

基礎課程(4年生・特進3年生)第4回8月度学力コンクール総評
 成績が上がるようになる、それほど本来の頭が良くなくても、いつの間にか結構すごい頭になっているという例を、ぼくは毎年と言っていいほど見てきています。京大や阪大・国立大学の医学部に進んだ子はたくさんいますが、どの子も最初からすごい頭の持ち主ではありませんでした。いつの間にかすごくなったのです
 そのためにはたいせつな条件があります。まずやるべきことを陰ひなたなくきちんとやれるようになること、素直で柔軟であること(その上での頑固さはいいですが、ただ「頭が固いだけ」だというのは頭の悪さの典型です)、そしてできれば負けん気が強いこと。その条件を身につければ(めんどくさがらず意識してしつけることで十分可能です。実は、それも条件に入るわけです)。
 昨日京大工学部へ進んだK・T君が教室に遊びに来てくれて、授業のようすを見ながら後輩に算数のアドバイスをしてくれていました。京都から帰る度に立ち寄ってくれますが、教室を出るとき、後輩の発展課程(6年)の三人に、「君たちはむちゃくちゃ運がいいねんで、この塾に来れて先生に教えてもらうことができるなんて、むちゃくちゃ幸運なんやで」と云ってくれました。
 彼には、いつも元気をもらうのですが、ほんとうに教師冥利に尽きる一瞬でした。「世の中、金じゃない」と思えるのは、こういう経験ができるからです。「見掛け倒しで人間らしい付き合いができにくい世の中」で、「人の心が理解できない情けない人間関係も蔓延しています」が、K・T君、Y・S君など、素晴らしいOBたちと、末永く「人間らしいつきあい」ができているからです

発展課程(6年生・特進5年生)入試実践テスト第3回総評
 今回は今年のKS中学前期の入試問題です。ご存じのように昔から進学校として、ある程度名前が通っていましたが、近年少しレベルが落ちてきています。男女共学で、女の子のほうが最低点が高いのはいつものことで、従来から入学段階では女子の学力のほうが高い学校です。ある程度の成績をあげられるようになれば、「押さえの学校」候補のひとつかもしれません。
 中学受験と云うことで、こうして話を進めていきますが、いずれにしろ、それ以降の成長・伸長は、むずかしいこと、見たことがないような問題を「知恵の輪」を外すように、手がかりを見つけるため何度も試行錯誤を続けられる根気と負けん気があるか、粘り強く考えることを続けられるように育っているか、ということが大きな飛躍のたいせつな条件になっていきます。「学体力」です。
 今の子は甘やかされている子が多く、何でも簡単に手に入るように育てられているので、辛抱したり、我慢強く努力することがありません。それが大きな問題です。それがなかったら、ほんとうに賢い子にはなれないのです。
 「『学体力』を身につけるには何が必要か、どうしなければならないか」ということを少しずつお話ししようと母親教室を始めました。母親教室は、別にお母さんだけを対象にしているわけではなく、子どもの可能性をできる限り伸ばしたいと考えているお父さんにも、絶対役に立つと思っています。
 子どもをうまく育てるには、決して「子どもの頭の良さ」だけが条件ではありません。「家庭環境や考え方、習慣、しつけなどの総合力」が大きくものを言います。保護者のみなさんには耳の痛い話かもしれませんが、子どもを何とか一人前に、いや一人前以上に、と考えていれば、避けて通れることではありません。

充実課程(5年生・特進4年生)第1回2月度学力コンクール総評
 今月度は充実課程最初のテストです。充実課程は5年生のクラスですので、新5年生の問題をテストしました。
 習っていないことがたくさんあるので、たいへんだったと思いますが、いつも云っていますように、問題の難易度のレベルにかかわらずとりあえず読んでみて考えてみるという姿勢が、何よりも大切だと考えています。考えるという姿勢が身につかなければ何事も始まりません。まず読んでみる、わからなくても、もう一度読んでみる、そこからわかることが始まります。今書いている本にファインマンの小さいころの学習姿勢を紹介しますが、ぼくはぼくで考え続けたことで、別にまねをしたわけではないのですが、学ぶと云うことの姿勢は全く同じでした。
 何でも用意され、自ら考えると云うことが必要なくなっている現代は,どんどん考えない子どもたちを増やすように進んでいるとしか思えません。わからないことも、しつこく考えているうちに解答が見つかるのが普通です。経験からも断言できます。点数での判断ではなく、考えるという経験を重ねている子どもたちのがんばりをご理解ください。必ず将来に大きく花開きます。

充実課程(5年生・特進4年生)第3回4月度学力コンクール総評
 ご覧のように前月度に引き続いて、今月度も1999年の問題を使用しました。奈良学園から大阪大文学部(哲学科・大学院進学)へ進んだK・F君、また西大和学園から京都大学工学部へ進んだK・T君と現在の特進生3人との力関係の把握をしたかったからです。当時の成績表を添付していますので推察できると思いますが、3人ともすばらしい可能性をもっていることがおわかりだと思います。指示を守って団で普通に勉強してくれれば、大学進学に限らず、すばらしい実りを手に入れてくれるでしょう。
国語の成績について付言しますと、漢字の点数をご覧いただくとおわかりのように、現在の点数の差は漢字力の差によるところが大だと思います。いずれにしろOBの二人が同時期に42/46点ですから,3人ともすばらしい力をもっています。がんばって大きく花開いてくれるよう願ってやみません。しっかり応援してあげてください。

充実課程(5年生・特進4年生)第5回6月度学力コンクール総評
 成績表に貼付してますように、今回は駸々堂(五ッ木)テストの4年生用(過去問)を使用しています。後記のK君が受けた時期は12月ですから、4年生の後半以降になります。今回の諸君は半年以上早い受験になるわけです。さらに学習指導要領が変わり、習っていない範囲も出ていますが、答案を見ていると、どれくらい理解ができているかはわかります。
 お世辞ではなく、今年の四年生諸君の「生来の」能力は素晴らしいものがあります。ひらめきやセンス等、それぞれの諸君の持ち味はもちろんちがいますが、うまく育ってくれれば、ほんとうに楽しみな素材です。
 しかし、子育ては、ぼくだけの力ではどうにもなりません。目先の成績に一喜一憂したり、余計な不安を感じることなく、日々の行動や習慣に目を光らせ、素直でがまん強くものごとに立ち向かえるよう、子どもたちを導いてください。なお、卒業生と実績を見ていただければわかるように、団を信頼していただければ素晴らしく育ってくれます。わがままや一時の気まぐれに行く先を見まちがうことなく育てていただきますよう、重ねてお願い申しあげます。
 なお、別紙の成績表のK・F君は現在、阪大の大学院で論理学や哲学を勉強しています。時々顔を見せてくれますが、今年も赤目渓流教室に参加してくれると思います。話を聞いていただく機会があれば、アドバイスをしてもらってください。

充実課程(5年生・特進4年生)第6回7月度学力コンクール総評
 I君(4年)は以前にも上級の充実課程のテストの国語でトップをとったことがありますが、もっている力は素晴らしいものがあります。面倒くさがったり、雑になったりすることなく、ぜひその力を大きく伸ばす方向で努力してほしいと思います。
 勉強は最初は面倒くさくてしょうがないものです。おいしくもないし、気持ちも良くもないので、子どもたちはなかなかその気になれません。しかしそれらの壁を乗り越えたときに知力は生きていくのに欠かせない力になります。経済的な意味だけではありません。お金では解決できない精神的な支え、そして生きていくのに欠かせない「伴侶」になってくれるのです。それがわかったとき初めて「努力して勉強した意味」が明らかになります。その快感がわかるようになるまで、どうかあきらめずに努力して欲しいと思います。大学まで16年間、人生でいちばん大切ともいうべき十六年間が無駄だったということのないようにしてください。
 なお、G君も、かなりがんばれるようになってきました。その調子で努力すれば二年後には、努力が大きく実ってくれるでしょう。M君も相当学力や読解力がついてきたことが解答用紙を見ているとよくわかるのですが、集中力を持続することができません。そして、できないものだとあきらめ、努力を放棄してしまう癖があります。
 これはM君だけではなく、何でも簡単に手に入ってしまう現代っ子の大きな欠点です。二人との点数の差の大きな原因はそのあたりにあります。試験中も注意しましたが、その癖を直すようにしないと、もっている能力を大きく開花させることはできません。注意をよく守ってください。

充実課程(5年生・特進4年生)第8回9月度学力コンクール総評
 ごらんのように、M君が勉強を少しずつきちんとやるようになって、力がついてきました。勉強は、いつも云ってることですが、努力したことがそのまま結果に表れてきます。努力すればするほど点数や学力に反映します。
 人は裏切ることがありますが、勉強した努力の量は人を裏切りません。漢字と計算問題の宿題をどんどん進めてください。半年くらい一生懸命がんばれば、みんなに追いつけます。
 I君は消しゴムや鉛筆を忘れることが続いています。字も汚いし、鉛筆で消して答えを横に書いても平気なところなど、「学習する姿勢」という根本的なところを考え直さないと、生来の高い能力を溝に捨てることになります。
 「めんどくさがり」や「いいかげん」は、学力の伸長や高い能力を発揮するための、いちばんの「障害物」です

 来週は続編です。


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