寓居人の独言

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思い出話 [遺伝子診断について](20140211)

2014年02月11日 22時40分35秒 | 日記・エッセイ・コラム

  私がまだ大学生だった頃だから50年以上前の話になる。遺伝子を題材にしたSF小説が次々と出版された。多くは海外作家の書いたものの日本語訳のものであった。それらの中で最も私が衝撃を受けたのは、遺伝子診断によって妊娠中の胎児の選択をするというものであった。その結果為政者の思想を深く理解する人間だけの社会を構築する。つまり単一思想の社会に遺伝子を利用するというものであった。しばらくして自然出産を是とする人たちが水面下で組織を作り、反対運動を開始して単一思想社会を転覆するという結論であった。
 最近始まった遺伝子診断は、この小説の主旨とは全く異なる意味を持っている。私が現役だった頃、授業で優生保護思想の発生とその社会的運用によってアメリカとドイツで重大な人権問題が発生したことを説明した。そのような事情を説明した後で、遺伝子病に関するVTRを見せ、遺伝子診断とその可能性について説明し学生にアンケートを実施したことがある。遺伝子診断を行った結果によって妊娠中の子供の将来を決めることについてのものだった。解答結果については統計的な分析をしていないのでここには示さないが、遺伝子診断によって不幸な結果が発見された場合、出産するかどうかの判断は女性だけの問題では無いことを認識しなければならない。例えば、遺伝子に異常が発見された子を育てるための社会の支援をどうするかが問題になると言う重要な問題がある。