絶滅した日本列島のゾウのはなし(Ⅱ)
—消えたゾウたち、その謎を追う―(8)
消えたステゴドンの謎を追う(その3)
〈松本彦七郎とステゴドン研究再論②〉
先ずは、松本「1924b」に着眼してみます。松本は、ステゴドンはゾウと比較して、
化石の産出されている地域がアジア大陸に限られており、その分布の範囲が狭いことを指摘しています。確かに、北米やヨーロッパにおいても産するという報告はあるが、「それは真のステゴドンでは無いことが分かって居る」としています。しかもゾウと比較すると、原始的だと評しています。
松本は、大型哺乳類の化石研究では、1920年代における第一人者だったと言えます。またステゴドンとゾウの臼歯化石から日本列島に固有の長鼻類がいたことを最初に解明したことでも知られています。
ゾウ目と言いますか、ステゴドンの化石を基にした長鼻類の系統進化に関する研究、たとえば岐阜県可児市平牧累層(平牧動物化石群、Hemimastodon (= Gomphotherium annectens)などの最初の「記載」は、どれも松本彦七郎によってなされたものと聞いています。1924年にまとめられた松本のステゴドン属の系統進化の研究は、当時としては、国際的に知られたものでした。
この一連の研究事情については、今では十数年前になりますが、亀井節夫は松本の研究が、長鼻類化石の研究に国際的に重要なかかわりを持つことになったと述べています。
前にも述べましたが、松本(「1924b」)は、日本産ステゴドンの先祖について、1924に属名をProstegodon(プロステゴドン)と名付けたのですが、先取権(さきどりけん、法律的には「先取特権〈さきどりとっけん〉」と使う)のあるStegolophodon (ステゴロフォドン)属としてまとめたと言われています。
一説では、この長鼻類では、ペンタロフォドン科の小型のステゴロフォドンの一属と見られています。また、日本で産出している最古種には、Stegolophodon pseudolatidens(S.シュードラティデンスゾウ)やS.Tsuda (ツダゾウ)がいると言われています。
松本によりますと、Prostegodonは普通のステゴドンより原始的で、瘤歯マストドンと比較したとき、その中間的だったと指摘しています。また、松本によるとマストドン類は、「瘤歯マストドン類Bunomastodontsと稜歯マストドン類Lophomastodonts」とに二大別されるとも指摘しています。
そして臼歯の前方が中凸であることも特徴の一つだとし、の稜、第一及び第二稜が、マストドン類と同じように「頂」が中凹であり、後方の稜は普通のステゴドン属と同じように「頂」が中凸をなしていると記しています。
加えて、「前方なる稜は上顎ならば内側の半稜、下顎ならば外側の半稜が三葉式構造(trefoil pattern)の名残を示す」(「1924b」)、そして三葉式構造は瘤歯マストドン類の特徴であるとも指摘し、「後方の稜は一列に排列せる乳房状突起の集合より成る」のは、普通のステゴドンと何ら変わらないと述べています。
余計なことですが、1924年の論文で、松本彦七郎が「三葉式構造(trefoil pattern)」というテクニカルタームを用いて古生物学の論文を書いておられることにむしろ驚いています。
ところで、後のことですが、すでに述べましたが亀井節夫は、ステゴドンと名付けられたことに関して「臼歯の噛み合わせの面に、尖った屋根状の稜が平行に走っていることからステゴドンと名づけられた、と説明しています。
ギリシア語で屋根を意味するステゲstegeと、歯をさすオドントスodontosをあわせたものが、ステゴドン(Stegodon)の名の由来である、とも言われています。
—消えたゾウたち、その謎を追う―(8)
消えたステゴドンの謎を追う(その3)
〈松本彦七郎とステゴドン研究再論②〉
先ずは、松本「1924b」に着眼してみます。松本は、ステゴドンはゾウと比較して、
化石の産出されている地域がアジア大陸に限られており、その分布の範囲が狭いことを指摘しています。確かに、北米やヨーロッパにおいても産するという報告はあるが、「それは真のステゴドンでは無いことが分かって居る」としています。しかもゾウと比較すると、原始的だと評しています。
松本は、大型哺乳類の化石研究では、1920年代における第一人者だったと言えます。またステゴドンとゾウの臼歯化石から日本列島に固有の長鼻類がいたことを最初に解明したことでも知られています。
ゾウ目と言いますか、ステゴドンの化石を基にした長鼻類の系統進化に関する研究、たとえば岐阜県可児市平牧累層(平牧動物化石群、Hemimastodon (= Gomphotherium annectens)などの最初の「記載」は、どれも松本彦七郎によってなされたものと聞いています。1924年にまとめられた松本のステゴドン属の系統進化の研究は、当時としては、国際的に知られたものでした。
この一連の研究事情については、今では十数年前になりますが、亀井節夫は松本の研究が、長鼻類化石の研究に国際的に重要なかかわりを持つことになったと述べています。
前にも述べましたが、松本(「1924b」)は、日本産ステゴドンの先祖について、1924に属名をProstegodon(プロステゴドン)と名付けたのですが、先取権(さきどりけん、法律的には「先取特権〈さきどりとっけん〉」と使う)のあるStegolophodon (ステゴロフォドン)属としてまとめたと言われています。
一説では、この長鼻類では、ペンタロフォドン科の小型のステゴロフォドンの一属と見られています。また、日本で産出している最古種には、Stegolophodon pseudolatidens(S.シュードラティデンスゾウ)やS.Tsuda (ツダゾウ)がいると言われています。
松本によりますと、Prostegodonは普通のステゴドンより原始的で、瘤歯マストドンと比較したとき、その中間的だったと指摘しています。また、松本によるとマストドン類は、「瘤歯マストドン類Bunomastodontsと稜歯マストドン類Lophomastodonts」とに二大別されるとも指摘しています。
そして臼歯の前方が中凸であることも特徴の一つだとし、の稜、第一及び第二稜が、マストドン類と同じように「頂」が中凹であり、後方の稜は普通のステゴドン属と同じように「頂」が中凸をなしていると記しています。
加えて、「前方なる稜は上顎ならば内側の半稜、下顎ならば外側の半稜が三葉式構造(trefoil pattern)の名残を示す」(「1924b」)、そして三葉式構造は瘤歯マストドン類の特徴であるとも指摘し、「後方の稜は一列に排列せる乳房状突起の集合より成る」のは、普通のステゴドンと何ら変わらないと述べています。
余計なことですが、1924年の論文で、松本彦七郎が「三葉式構造(trefoil pattern)」というテクニカルタームを用いて古生物学の論文を書いておられることにむしろ驚いています。
ところで、後のことですが、すでに述べましたが亀井節夫は、ステゴドンと名付けられたことに関して「臼歯の噛み合わせの面に、尖った屋根状の稜が平行に走っていることからステゴドンと名づけられた、と説明しています。
ギリシア語で屋根を意味するステゲstegeと、歯をさすオドントスodontosをあわせたものが、ステゴドン(Stegodon)の名の由来である、とも言われています。
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