素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

絶滅したナウマンゾウのはなし(20)

2022年03月11日 09時16分20秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち
     絶滅したナウマンゾウのはなしー太古の昔 ゾウの楽園だった
     日本列島ー(20)


  第Ⅳ部 絶滅したナウマンゾウのはなし

  
 (3)絶滅説を考える

  1)大型哺乳類の温暖化絶滅説、すなわち気候変動による大型動物の絶滅説には、小生もすごく関心を持っています。以下、国立科学博物館地学研究部の冨田幸光が語る示唆に富む一説に注目しながら言及したいと思います。

  冨田は、1つは、最後の氷期が終わると急激にあったかくなりますから、その環境変化が問題だったのではないかと。しかしながら、もし環境変化だとしたら、大型動物だけが絶滅するのはおかしいじゃないか、とも考えられます。というのは小型の哺乳類、具体的にはネズミとかビーバーとかですが、ああいうちっちゃいやつがどれだけ減ったかっていうと、5%から10%ぐらいなんです。

  一方で、大型哺乳類は70%ぐらい絶滅しているんですよ(第5回「日本の巨獣はなぜ消えた?」『Webナショジオ』・2014/7/18)と説いておられます。大変興味ある話です。

  2)また、米国の古生物学者スティーブン・M・スタンレー(Steven・M・Stanley:1941-)は、「地球の気候変化が生物絶滅の最も重要な原因である」(長谷川善和・清水長訳『生物と大絶滅』、1991)といっています。

  そして彼は、生物という広い分野での大絶滅を取り上げ、二つの原因を指摘しています。一つは、「地質学的には突然である全地球規模での海面の低下が、海生生物の大絶滅の原因として一番重要だと認められてきている」といい、二つ目として、「全地球規模での気候変化が、大絶滅の最も根本的な原因だ」と指摘しています。

  この点では、前述の冨田も同じですが、冨田は、大型哺乳類が大絶滅あるいは大量絶滅に至った原因をもう一つ挙げています。それは、前にも取り上げたことなのですが、冨田は、「もう一つは、人が狩ったせいだ、という説ですね。オーストラリアでは、5万年前にアボリジニの祖先がやってきて4万5000年くらい前にバタバタッと大きな哺乳類がいなくなった。だから、やっぱり南北アメリカも人間のせいでしょっていう意識が強いんです。

  ただ、ネイティヴ・アメリカンの祖先がアジアからアラスカに渡ったのは、3万年ぐらい前のことでした。それは最終氷期の真っただ中のことなので、南に進めたのは、間氷期に近づいた今から1万2000年ぐらい前のことなんです。

  ゾウ類を追って南へ下ってきたハンター(人類)が少し増えたとしても、1000年後の1万1000年前に絶滅してしまうほど過剰殺戮が行われたかは疑問なんです」、と述べています。冨田が『Webナショジオ』で語っていることは、ナウマンゾウの絶滅説を考える上では、とても大切な話だと思えるんです。

  3)冨田が指摘するように、人類による過剰狩猟説とか大量殺戮説は、ナウマンゾウの絶滅原因論としては疑問なんです。それは、人類の狩猟活動が大型草食獣を過剰に狩猟するとか、大量に殺戮といいますか、大昔であっても人類が衣食住のために、大型草食獣を絶滅に追い込むような狩猟をしていたとは思えないんです。

  後期更新世の末期になりますと、日本列島は温暖期に入り、湿潤な気候で、気温は現在よりも平均で2~3℃は高温だったといわれています。最終氷期の最寒冷期後、約20,000年前から始まった海水面の上昇、いわゆる縄文草創期の海進で、草地が減少し深い森林に覆われていたと推察されます。

  絶滅の危機に追いやられたのは草食の大型獣の宿命だったと考えられます。ナウマンゾウが日本列島から消えたのも最終的にはこの時代ではなかったかと思います。絶滅原因として考えられるのは古気候変動説です。

  この時代、地球上というか世界の人口は500万人程度だったのではないか、そう推計するのは人類生態学者の大塚柳太郎です。また、大塚によりますと、5500年前でも地球上の人口は1000万人程度だったのではないかと推測しています。

  日本列島について考えましても、北海道のナウマンゾウは5万年前〜4万年前まではかなりの頭数が生息していたようです。その頃、地球上の人口は100万人位でしょうから、十勝平野の忠類辺りに人類が住んでいたかどうかさえ確証がないのです。よしんば人類が住んでいたとして、ゾウなど大型哺乳類の狩りをしていたかどうか定かではありません。

  確かに、野尻湖ではその湖底からは大量のナウマンゾウの化石、そして狩猟用の道具類と思われる石器や骨器が多数出土しております。

  専門家の間では、野尻湖岸が2万年ないしそれ以上も前から続いていたキルサイトだったのではないかと推測がなされています。ナウマンゾウが、人類との出会いで犠牲になる機会が増えたことは否定しませんが、しかしそれによってナウマンゾウの絶滅した理由を説明できるとは思えないのです。


   


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