4時半に仕事を終了。博多駅で姫を拾って高速で久留米へ。今日は久留米市民オーケストラの定期演奏会。このオーケストラにはかつてワシがお世話になった「古雅書店」の古賀さん(通称:ヒゲコガさん)がバイオリンで参加されているのだ。聞きに行かずにおらりょうか?大牟田で古本屋を営む古賀さんはワシにとっては文学における師匠(勝手に思ってる)であるだけでなく、音楽にも造詣が深い。オーケストラ暦は40年、久留米市民オーケストラには創設時から20年在籍されているそうな。すごいやねぇ。仕事も趣味も素晴らしい。人生を楽しんであるねぇ。
今日はワーグナー、ハイドン、ドヴォルザークなどが聞けたが、最初のワーグナーからワシは本当に感動の波に包まれた。ただ素晴らしいの一言。古賀さんは「まだまだばらつきがある」と言われていたがワシにはわからなかった。アンコールでバッハの「Air on the G」が始まった時、涙が出そうになるほど感動した。ワシはこの曲がこの地上の音楽の中で一番好きなのだ。
ワシと姫が座った席の後に偶然にも古賀さんの奥さんが座っておられた!演奏終了後に古賀さんご夫妻と少し話ができた。演奏を終えて満たされた感じの古賀さんの優しい表情が印象に残った。笑いながら「こっちが本業かもしれない」と言われていた。いや確かにアマチュアとは思えない完成度だった。
演奏を聴いてワシがいかに感動したか、ワシの言葉ではうまく表現できんので、ちょっと先人たちを真似して表現してみよう。
(横光利一風)
私は客席からひとりひとりの手の動きを見ながら陶酔に浸った。耳元を過ぎてゆく絹のやうな旋律。音の波は私の中で反響し、深く記憶に刻まれていつた。語り合うバイオリンとチェロ。私は一音も聞き洩らすまいと精神を集中し、脳の中の不要なものを一切片付けて聞き入つた。心を揺らすのは音の向こうにある情熱。
(川端康成風)
オーケストラの周りは繊細に織られた絹のやうな複雑で美しい音に包まれた。それが徐々に客席にひろがつていつた。私はただその音の波の中に漂つた。ホールの全てが旋律に支配された。フルートやピッコロは無邪気な魚だつた。コントラバスは海鳴りだつた。私は海底に深く沈んでゆくかのやうなゆるやかな解放を感じた。
(森鴎外風)
ワーグナーが始まるやいなや、戦慄一閃我が体内を貫いた。かくも荘厳なる芸術の形を他に見出すことができない。奏者それぞれの情熱が音となつて発せられ、それが宙において見事に融合された。個々の芸術はここにおいて一つの新たな芸術へと昇華し、我ら聴衆の上に降り注いだ。誠にもつて壮麗絢爛、我が魂は深く揺すぶられた。
(久保田万太郎風)
それにしてもとにかく驚いたァね。何がかって?だって考えてみなよ。この人たちは、プロじゃないんだぜ?それなのに、この完成度だ、驚かずにいられるかってんだ。チケットの2,000円は、しっかりもとはとったどころじゃねえ、払い足りねェって、客のこっちが、思うくらいだ。いったい何回くらい、練習すりゃァ、あんなにきれいに、演奏できるもんかね。
(尾崎紅葉風)
壇上の人々が奏でし音は稜々と響きわたりて我ら聴衆の心を揺るがし、弦は流れ、管は響き、打楽器はとどろきて、場内を埋め尽くせり。かつて我、かくも壮麗なる芸術に触れしことあらざれば、心躍ることひとかたならず、全ての音をこの身体にて受けとめんと全神経を集中すること、あたかも乾いたる土に水を落とすが如し。
疲れた・・・でもこれっていい練習になるな。
(おまけ:ル・シュクルの林田さん風)
時々クラシックコンサートに行きます。でもアマチュアは久しぶりです。完成度が高くてびっくりしました。本当にアマチュアですか?どれくらい練習してますか?レパートリーは何曲くらいありますか?
「大河の調べ」
情熱の
旋律つどひて
流れゆかん
壮麗なるかな
大河の調べ
蔵
(古雅書店の古賀さんに捧げます。下手くそですけど・・・)