【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「赤い風船」:吾妻橋一丁目バス停付近の会話

2008-08-23 | ★門33系統(豊海水産埠頭~亀戸駅)

さすが、風船屋。いろいろな色の風船があるな。
私の好きなのは、何と言ってもシンプルな赤い風船だけどね。
おいおい、旅行会社の回し者みたいなこと、言うなよ。
ああ、そういうツアー・ブランドもあったわね。
行くなら、どこがいい?
そりゃあ、パリよ、パリ。赤い風船でパリなんて、最高にロマンチックじゃない。
アルベール・ラモリスの「赤い風船」みたいにか?
そう。真っ赤な風船がパリの空の町並みをふわふわ、ふわふわと飛んで。
それだけの映画。
それだけで十分。50年以上前の映画とは思えないほどくっきりとした美しい映像で蘇っていたわ。
噂だけは聞いていた幻の名作ってやつをようやく観られた満足感はあるけど、そんなに感動的な映画だったか?
あたりまえじゃない。かわいい男の子と赤い風船の交流なんて、これ以上誌的な関係が世の中にある?しかも、場所はパリよ、パリ。これ以上、ふさわしい場所が世の中にある?
まあ、たとえば吾妻橋よりは絵になるかな。しかし、物語が単純すぎてなあ。
単純なんじゃないの、シンプルなの。
どこが違うんだ?
シンプル・イズ・ベスト。この映画は、上映時間も短いし、話もシンプルだけど、それだけに心に訴えかけてくるものは深いのよ。なんて豊穣、なんて優雅。だから、いまだに名作として語り継がれているんじゃない。
まあ、ワン・アンド・オンリーの映画で、これやられちゃうと、他の映像作家が何をつくろうが風船をモチーフとする限り、この映画を超えることは不可能だけどな。
そう、しゃちほこばった言い方しないでも、ただ単にスクリーンに流れている映像に身をまかせているだけで、至福の時間が過ごせると思わない?
眠くもなるけどな。
えー、信じられない!
って驚いたときのお前の顔のほうが信じられなーい。
余計なお世話よ。とにかく、この映画の良さがわからない人間は、馬に蹴られて死んじまえ。
同時上映が「白い馬」。これも少年と馬の友情を綴った短編映画。これに比べれば「赤い風船」はずいぶんと洗練された印象ではあった。
「白い馬」は習作、あの映画があったから秀作「赤い風船」が出来上がったのよ。あの、見事なラスト。震えるほどの映像。
CGなんてなかった時代だろうに、あれはどうやって撮影したんだろうな。
この風船屋さんで聞いてみようか。
風船だけに、せんの風になったんだ、なんてね。


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ふたりが乗ったのは、都バス<門33系統>
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