美術の旅人 Voyageur sur l'art  

「美術」との多様な出会い。見たこと、感じたこと、思ったこと。

野のエレガンス

2011-05-01 06:50:11 | レビュー/感想
土曜の夜、フィギャースケーター・キムヨナの演技をたまたまテレビで見ていた。全体として音楽と一体となった流れるようなリズムの中に、ふっと力を抜く瞬間がある、そのとき、まさにいま開こうとしている花のような微妙な美のかたちが生まれる。ありふれた言葉で言えば、巧まざる美といったらよいだろう。この試合では安藤美樹が表現力豊かな素晴らしい演技で優勝したが、そしてポイント、ポイントで加点していく審査方式では彼女の優勝が妥当なのだろうが、ここには努力ではかなわないものがある、と思った。彼女はどういう人間でどういう背景を持っているかなど私はまったく知らないが、また知りたいとも思わないが、この自然な優美さは韓国舞踊や柔らかい白磁の名品の美の奥にあるものと同質の何かが、自然に表れ出たたものだと思う。他の選手の演技では耳ざわりなレトリックを連発していたアナウンサーも彼女の演技が佳境に入るにつれ沈黙を余儀なくされた。静かな停止した時間の中で美しい形だけが風に吹かれる花のように舞っている。
(絵:イム・ヒャンス)

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