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わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

イーストウッドの<死後の世界>考「ヒア アフター」

2011-02-21 18:15:12 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Hereafter_1_1b スティーブン・スピルバーグ製作総指揮、クリント・イーストウッド製作・監督の「ヒア アフター」(2月19日公開)は、<死後の世界>をテーマにした異色作です。主人公は、3人の男女。パリ在住の女性ジャーナリスト、マリー(セシル・ドゥ・フランス)は、津波にのまれて呼吸停止した時に臨死体験した光景(ビジョン)が頭から離れない。かつて霊能者として活躍していたジョージ(マット・デイモン)は、死者との対話に疲れ、いまはサンフランシスコの工場で働いている。ロンドン在住の少年マーカスは、交通事故で亡くなった双子の兄の霊との交感を望んでいる。ドラマは、この3人が抱える苦悩を並行してつづりながら、最後に彼らの人生がロンドンで運命的に交錯するさまをとらえます。
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 脚本を執筆したのは、「クイーン」「フロスト×ニクソン」でアカデミー賞にノミネートされたピーター・モーガン。スピルバーグは、この脚本に惚れこみ、「誰が監督すべきか、はっきりしている-イーストウッドだ」と即断したとか。イーストウッドも、「死後の世界に関しては、その存在を含めて、人はそれぞれ異なる信念を持っているが、それらはすべて仮説だ。実際に自分がそこへ行くまで、真実は誰にもわからない」と興味津々。マリーが見た白いビジョン。以来、彼女はそれにとりつかれて調査を開始、一冊の本に仕上げる。また、他人の手に触れただけで、その人の縁故だった死者と交感できるジョージの不思議な能力。ウェブサイトで霊能者を訪ね歩き、ジョージの存在にたどり着くマーカス少年。
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 冒頭、東南アジアで恋人と休暇を楽しむマリーが津波に襲われるシーンが、圧倒的な迫力。次いで、世界各地の3人の男女の魂の放浪が巧みにつむがれていく。その辺の語り口は、さすがイーストウッド監督、みごと! でも、決して神秘的でも謎めいてもいない。死後の世界の存否をエンターテインメントの形で問う、といった感じなのだ。だから、見たあとで「なぜ、いま死後の世界なのか。それが、どうしたの?」といった思いがすることは否めません。出演者では、マリーに扮したセシル・ドゥ・フランスが魅力的。最近では、「シスタースマイル/ドミニクの歌」(09年)で演じた実在した歌う尼僧、ジャニーヌ・デッケルス役がバツグン。これから一層飛躍しそうなベルギー出身のチャーミングな女優です。


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