わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

4人の人気女優が風に舞う!「ペタル ダンス」

2013-04-18 17:33:11 | インポート

18 宮﨑あおい、忽那汐里、安藤サクラ、吹石一恵、4人の若手人気女優が「ペタル ダンス」(4月20日公開)で共演しています。監督・脚本・編集を手がけたのは、CM出身で映画「好きだ、」(06年)で注目された石川寛。題名の「ペタル」とは「petal:花びら、花弁」のことだそうです。彼女らの旅を淡々とスケッチしたロードムービーで、心の触れ合いや、若い女性が抱える孤独感、胸の隙間を埋めようとする心理の移ろいが描かれていきます。
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 学生時代からの友達、ジンコ(宮﨑)と素子(安藤)は、気になる噂を耳にする。6年間会うことがなかったクラスメートのミキ(吹石)が、地元に帰って自ら海に飛び込んだというのだ。そのため、ふたりはジンコがたまたま出会った原木(忽那)と一緒に、一命を取りとめたというミキが暮らす故郷に向かう。北の果てにある風の街へ…。彼女らは、それぞれ胸に傷を抱えている。ジンコは、ボーイフレンドとの関係に屈折した思いを抱く。素子は夫と別れた。原木は、なぜか自殺に興味を抱いているらしい。そんな彼女らが北を目指してドライブするうちに、互いの心を通い合わせ、あるいはそれぞれの思いに沈む。
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 北の海と空、そして風。カメラは、灰青色のくすんだ映像で女子たちの心象風景をとらえる。石川監督は、脚本をベースにしつつ、撮影現場で生成されるものを大事にする演出姿勢を持つという。つまりは、ある意味で女優たちに即興演技を求めるわけだ。結果、哀しみや不安を抱えた女性たちの等身大の姿が生き生きと描き出される。たとえば、吹石一恵は「演出?エチュード?ドキュメント? いまだかつて出会ったことのない演出方法に、はじめは戸惑うばかりでした」という。海辺をさ迷い歩き、それぞれのモノローグを紡ぎ出すヒロインたち。寒々とした風景に向かい合う彼女らを映し出す映像が新鮮です。
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 しかし、映画全体を支配するのは、女子たちの心の空洞とツブヤキしかありません。これが、いまの女の子らしさというものか。すべてが、灰色の風景に溶かされていく。彼女らを取り持つのは、間(ま)や表情、そして仕草。最後に、3人は入院中のミキに会い、彼女が飛び込んだ場所を目指して海に向かう。更に言えば、ジンコのボーイフレンド(風間俊介)や、素子の元夫(安藤政信)も存在感がうすい。原木の前から姿を消した親友(韓英恵)は、こんなことを語る。「風に乗って飛んでいるものに願いごとを言うと、願いがかなうんだって」―すべてが風まかせの、おぼろげな青春像のようだ。(★★★+★半分)

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連載記事「昭和と映画」

今回のテーマは「フランス・ヌーヴェルヴァーグの衝撃」


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