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デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

あの人は今!?ユタ・ヒップの30年後

2007-10-14 08:22:14 | Weblog
 かつて一世を風靡した有名人や突然ブラウン管から姿を消したアイドルを捜索し、現況を伝える「あの人は今!?」というテレビの特別番組があり春秋、年末年始の特番期に放映される。野次馬的に怖いもの見たさも手伝って高視聴率を獲得しているようだ。売れっ子で多忙なアイドル生活から開放された安堵感からか、あのスリムで美しかった体形が崩れているケースが多い。アイドルは輝いていた若い時の記憶だけを留めておいたほうがいいようで、偶像化したものを現実に置き換えると夢はなくなる。

 芸能界の移り変わりは激しいが、ジャズ界も同じことでいつの間にか消えたジャズメンも多く、ドイツ生まれの美人ピアニスト、ユタ・ヒップもその一人だ。女流プレイヤーが好きな評論家レナード・フェザーの肝煎りで、ブルーノートに4枚のアルバムを残したまま消息を絶っている。レニー・トリスターノに傾倒したクールなピアノと評されるが、それはハンス・コラーとドイツで活動していた時期のことであり、ニューヨークに渡ってからはバップ色が強く、ホットな本場のジャズシーンが彼女のスタイルを変えたのだろう。

 写真は当時出演していたジャズクラブ、ヒッコリー・ハウスのライブ盤で、フェザー自らオープニングで紹介する熱の入れようだ。短く答えるヒップの声は可愛らしいが、女性とは思えない力強いタッチで、ピーター・インドとエド・シグペンをバックに筋の良いピアノが聴ける。とりわけバラードの解釈が見事なもので、モンクの名演で知られる「ジーズ・フーリッシュ・シングス」では、何とモンクのフレーズも飛び出す。過ぎ去った日々を回想する歌詞を持つこの美しいメロディを、美人ゆえに浮名を流し、仲も噂されたフェザーやホレス・シルバーを想い弾いたのかも知れない。

 ヒッコリー・ハウスの専属ピアニストは、ヒップがを辞めた後、56年に渡米した秋吉敏子さんが引き継いでいる。ヒップの消息はこの後聞かれなくなるが、87年に秋吉さんが、アッティラ・ゾラーの誕生パーティに招かれたところ、ヒップに30年ぶりに会ったという。あのスマートで美人だった面影はなく、丸々と太っていて最初は気付かなかったそうだ。どうやら豊かなヒップに変っていたらしい。
コメント (39)
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