団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

福島第1原発の廃炉手続き難航も 事故時、法に規定なし

2011-06-16 20:49:27 | 日記

2011年6月16日 10時33分

 東京電力が廃炉の方針を決めている福島第1原発1~4号機に関し、現行の法令に事故を起こした原子炉の廃止に関する規定がないため、廃炉の手続きを進められない可能性がある。

 原子炉の廃止手続きは、原子炉等規制法や経済産業省令が定めている。電力会社が耐用年数を経過して運転を終えた炉を廃止する場合、規制法は「廃止措置計画」を作成して経産省原子力安全・保安院に提出するよう義務付けている。保安院が廃炉の計画を認可する。

 認可の基準は省令により「原子炉の炉心から使用済み燃料が取り出されていること」「核燃料や、核燃料によって汚染された物の管理・処理・廃棄が適切であること」などとされている。これらはいずれも運転が正常に終了していることが前提だ。東電の勝俣恒久会長は3月30日の記者会見で、1~4号機を廃炉にする方針を明言。しかし、1~3号機は溶け落ちた燃料の一部が格納容器の底に堆積する「メルトスルー(溶融貫通)」が起きている可能性が高い。燃料が原形をとどめていないとみられ、どうやって取り出すか具体的な方法は見通せない。現状では廃炉の計画の認可基準を満たしていない。

 東電は「(事故収束という)現状の対処に全力を尽くしており、廃炉に向けた検討をする段階にない」(松本純一原子力・立地本部長代理)として、申請は急がない意向。保安院は法令の見直しの必要性を「まだ検討していない。いずれ考えなければならないが、その手前で考えることがたくさんある」とし、当面は事故対応を優先させる考えを示している。

(中日新聞)


原発被害の国際補償体制を IAEA閣僚宣言に明記へ

2011-06-16 20:46:36 | 日記

20日からウィーンで始まる国際原子力機関(IAEA)閣僚級会合で採択を目指す声明の最終案に、原発事故に対する国際的な補償体制確立の必要性が明記されていることが15日、明らかになった。

 福島第1原発事故で放出されたとみられる放射性物質が中国や韓国、ロシアなどで検出されたことから、国境を越えた被害をもたらす重大な原発事故への国際的対応があらためて焦点に浮上、最終声明案に新たに盛り込まれた

 共同通信が入手した最終声明案は、他国で発生した原発事故の被害を受けた国々が「適切な補償」を受けられるよう国際的な体制の確立を訴えている。同案は閣僚宣言として20日にも採択される見通し。

 日本原子力産業協会によると、原子力事故の損害賠償を定めた主な国際的取り決めは「ウィーン条約」や「原子力損害補完的補償条約」などがある。

 しかし、ウィーン条約の加盟国は中東欧など30カ国余りにとどまる。同補償条約は米国など4カ国で、発効もしていないため、福島事故後、国際的な補償体制の整備が求められていた。

【ウィーン共同】


名港管理組合、実費支給で条例化へ---費用弁償やめ交通費に

2011-06-16 20:39:05 | 日記

古屋港管理組合議会は16日、議会運営委員会を開き、議会出席ごとに日額1万円が支給される費用弁償を、交通費の実費支給に改めることで一致した。9月までに臨時議会を開き、条例化する。「報酬の二重取り」などと批判を浴びている議員報酬も臨時議会で見直すと決めた。

 伊神邦彦議長は報道陣の取材に、今年3月に前議長が示した費用弁償や報酬の削減に関するあっせん案は「今の議会にも引き継がれている」と説明。報酬見直しを「なるべく早く条例化したい」と話した。

 報酬に関するあっせん案は、出席ごとの日額1万円と月額1万円を併用する内容。出席日数はおおむね年10日のため、年額は現行のほぼ半分の22万円となる。

 自民、民主はあっせん案での決着を目指す方針。党代表の河村たかし市長が「市議や県議として組合議員をしており、報酬の二重取り」と批判する減税日本は廃止を目指す。共産は廃止に同調、公明は出席ごとの日額1万円を求めている

 組合議員は30人で愛知県議と名古屋市議が務める。報酬は年46万8千円(現在は特例で8%減の43万円)。報酬に加え、出席のたびに日額1万円の費用弁償が支給される。

 本会議では、今春の市議会解散の影響で暫定となっていた2011年度予算に肉付けした304億円の一般会計予算案を原案通り可決した。


国民より米国を優先する政府・保安院の欺瞞

2011-06-16 20:20:57 | 日記

計画的避難区域に指定された福島県の飯舘村で、5月31日時点で全村民6177人のうち23%にあたる1427人が区域内に残っていることがわかった。政府は5月末の避難完了を目標としていたが、避難先の確保が困難なこともあり、当初から「間に合わない」との異論も出ていた。

放射性テルルが検出されたことの意味

 その飯舘村の南に隣接する浪江町、さらにその南の大熊町。この二つの町で、福島第一原子力発電所の事故発生の翌12日午前8時半過ぎ、放射性ヨウ素や放射性セシウム、放射性テルルが検出されていたという。経済産業省原子力安全・保安院が6月3日になって公表した緊急モニタリング調査データから明らかになった。

 ここで問題なのは「放射性テルルが検出された」ということである。テルル132は代表的な核分裂生成物で、融点が450度、沸点が1390度であるから通常は固体である。固体が何キロも飛散することは考えにくいので、炉心溶融の結果出てきたと推測される。

 核燃料の主成分はウラン酸化物で、それが溶けるのは2800度である。この温度になるとテルルが酸化して二酸化テルルになっている可能性が高い。沸点は1390度だから炉心溶融した超高温の環境下では蒸発して飛び散る可能性が高い。最近検出されたストロンチウム、アメリシウム、キュリウムなども同様である。

国民に即座に知らせるべき事実だった

 そのような放射性物質が事故の翌朝に原発から10キロ近くも離れた場所で検出されたということは、私たち国民が知らされていたよりも早く炉心溶融は起きており、圧力容器や格納容器、建屋までもが損傷していたことになる。

 本連載でも私は「炉心溶融は間違いなく起っている」と述べてきたが、それは格納容器の圧力、黒煙、二本の水蒸気、水素爆発などの状況証拠を積み重ねて推論した結果である。外部に気体以外のテルルのような物質が飛散していれば、燃料が溶融していることは間違いない。

 炉心溶融ではなく被覆管が破損している程度ならヨウ素などの気体か、融点がほぼ常温であるセシウムが水と反応して外部に出てくることは考えられるが、テルルやストロンチウムは出てこない。つまりテルルが広範囲に散っていたということは、炉心溶融が起り、しかも圧力容器と格納容器がその密閉機能を失ってしまっていた、ということである。

 保安院は、3月12日の午前8時半には福島第一原発が深刻な事態になっていることを認識していたのだ。この事実は即座に国民に知らしめなくてはいけないものである。にもかかわらず保安院は3カ月近くも事実を隠し、しかも「発表するのを忘れていた。隠す意図はなかった。申し訳ない」の一言で済まそうとしている。言語道断というべきであろう。

米国に伝えていたと考えれば辻褄が合う

 あくまでも私の推測だが、保安院はテルル132が検出された事実を米国には伝えていた可能性がある。米国政府は3月16日、在日米国人に対して半径50マイル(約80キロメートル)圏内から避難するよう勧告し、大使館業務を大阪に移したとき、「ずいぶん大袈裟な反応だ」と感じた人も少なくなかったろう。しかし、それも正確な情報をいち早く保安院から得ていたと考えれば辻褄が合う。

 米国が独自調査でテルル132を検出していた可能性もなくはないが、「事故の翌朝8時半」というのはかなり早い段階のことであり、米軍とはいえ、そこまで迅速に行動できたかどうかは疑問が残る。したがって、やはり政府・保安院が米国に一早く知らせたと考えるのが自然だ。

 米国は事故の数日後から独自の無人機を福島第一原発上空に展開しており、その分析で水素爆発した2、3日後には炉心溶融を確信していたと思われる。しかし官邸がその事実を認めないので日本が事故を隠蔽しているということで、その後は独自の判断で行動することになったようだ。

 米軍の無人機は北朝鮮などの核実験などを検出するために開発されており、炉心溶融で検出される放射性同位体は核爆発とほぼ同じなので、むしろ「得意技」の範疇に入るに違いない。

まったく国民を馬鹿にした話だ

 保安院の西山英彦審議官は「発表しなかったことに特別な意図はなかった」と弁明しているが、本当は「意図があった」はずだ。あるいは米軍に証拠を突きつけられて、自分たちもそのくらいの証拠は持っている、と応じた可能性もある。

 私たち国民の健康を犠牲にしても、米国には本当のことを伝え、在日米軍をはじめ米国関係者に適切な対応をとってもらおうという「意図」があったのではないか。まったく国民を馬鹿にした話である。

 もし保安院を徹底的に追及して本音を引き出したら、きっと次のような回答が返ってくるだろう。

 「3月12日朝の段階で、炉心溶融していることは認識していた。圧力容器はもとより格納容器が破損し、放射性物質が漏れ出ていた」。しかし、「それを発表したら国民がパニックになると心配した」。つまり、「情報を出さなかったのは、パニック発生を防ぐための親心のようなものだ」。そして実際、「現場の努力で大事には至らずに3カ月が経過している。結果オーライではないか」。今回発表したのは、パニックを避けるためにむしろ良かったのではないか、という開き直りである。

 いささか意地悪すぎる見方なのかもしれないが、私は保安院の答弁を見てそう感じた。そうでなければ「特別な意図はなかった」などと、いかにも意図があった人にしか言えないセリフが出てくるわけがない。

どういう状態になったら自宅に戻れるか明らかにせよ

 私は3月27日に公開したYouTubeの動画で、「福島第一原発の1~3号機は炉心溶融している可能性が高い」と述べた。原子炉周辺からストロンチウムが検出されたことや、黒い煙が上がったことなどからそう判断したのだが、実は事態はもっと早く進行していたのである。

 幸いなことにその後の懸命な作業によって、米国の心配が今のところ杞憂に終わっている。同盟国に対して原発事故の正確な情報を伝え、しかるべきアクションを促すのは政府として当然のことである。だが、そこに「国民には知らせず、関係国だけに教える」というオプションがあっていいはずはない。政府はあまりにも国民をなめている。

 いま、福島第一原発周辺の放射能のレベルに関してもさまざまな情報が交錯している。「避難している人が戻っても問題ない」と考えられる情報もあれば、「とてもそれどころではない」というデータもある。政府のしかるべきポジションにある人がどのデータが正しいのか、どういう状態が整ったら避難している人は自宅に戻れるのか、を明らかにしなくてはいけない。

 同時に、ほぼ永久的に戻れない範囲はどのくらいと見込まれるのか(その地域から避難した人には移住を一刻も早く斡旋してあげなくてはならない)、などを明確にしなくてはならない。

残念ながら政府の発表は信用できない

 放射線レベルでも私は政府の発表を信用していない。福島第一原発の現場で働く人々の被爆に関しても、実態はもっとひどいものだと思っている。「もともと人が働けるような環境ではないところで働かざるを得ない」とうことで、線量計や被爆情報を操作していると考えるからである。海外が疑いの目で日本を見ているが、実は政府を信用しているのは日本人だけかもしれない。

 政府と保安院は事故発生から2カ月間、「炉心溶融はしていない」という態度で一貫していた。だから保安院の中村幸一郎審議官が3月12日に「1号機の炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発表したとき(つまり技術系の彼はテルルのことを知っていた可能性が高い)、菅直人首相は即座に彼をクビにした(代わりにそのポストに就いたのが前出の西山氏である)。

 正しいことを述べた人を“更迭”し、政府の意をくんで「大本営発表」してくれる人を起用する。これは、はっきりいって異常なことだ。生命にかかわるかもしれない重要な情報を国民よりも米国に先に伝えるのは、さらに異常な事態である。原発事故をめぐる政府の対応には様々な批判があるが、この問題はとりわけ強く批判されなくてはならない。私たちは断固とした怒りの声を上げるべきではないか。

大前研一


「恩義を返される国」が揺らいでいる。大震災で「好意のリアクション」が起きたわけ

2011-06-16 08:36:05 | 日記

東日本大震災のニュースは、大きな衝撃波となって世界を駆け回った。そして世界の反応も迅速だった。彼らは次々と救援隊を派遣し、多額の義援金や激励のメッセージを届けてくれた。その数は135カ国以上に達した。

 そのうちの少なくとも100カ国以上はアジア、アフリカ、中南米の国々で、日本が半世紀にわたって国の発展に必要な経済・社会基盤整備などの「国造り協力」や、行政、教育、産業人材といった幅広い「人造り協力」をODA(政府開発援助)で支援してきた国々であった。 

ブータンで有名な「ダショー西岡」 

 多くのメッセージには日本への「恩義を返す」という文言があった。改めて、「恩義」はまさに世界共通の価値観であるとの認識を深めた。

 例えば、東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要メンバーであるインドネシア政府は先陣を切って救援隊員15人の派遣、義援金200万ドル(約1億6200万円)を決めた。同じく主要メンバーのタイ政府は、日本救援予算2億バーツ(約5億3400万円)を決定し、毛布2万枚と義援金500万バーツ(約1340万円)の提供も表明した。

 アジアではASEAN 10カ国に加え、中国、台湾、韓国、インド、パキスタン、ブータン、トルコ、さらには南アフリカ、メキシコ、ブラジル、ペルーなど途上国、新興国などの素早い行動が目立った。

 特筆すべきは、ヒマラヤ山脈の山麓にある小さな国、ブータンのワンチュク国王からも義援金100万ドル(約8100万円)が届いたことだ。1人当たり国民所得2030ドル(2009年)のブータンにとって100万ドルの価値は日本人とは比べられないほど高い。そこに彼らの日本への思いの深さが秘められているのである。

 ブータンでは、日本人の農業協力専門家「ダショー西岡」を知らない者はいない。ダショーとはこの国最高の名誉を示す称号である。ODAの専門家として1964年に派遣された西岡京治氏は、この地で命果てるまでブータン水稲の開発に取り組み、遂に成功へ導いた。標高の高い所は水温が低く、稲作に適さないと言われていたが、彼は水路を蛇行させることで水温の低下を防いだ。ダショー西岡はこの国の国民的英雄なのである。 

モンゴル、火力発電所の「恩義」 

 もう1つ、中央アジアに位置する草原の国モンゴルは救援隊員12人の派遣と義援金100万ドルを決めたが、モンゴル政府は公務員を対象に給料の1日分の募金を呼びかけ、その輪が一般市民に広がって1億2500万円以上に達した。

 モンゴルが1990年代に社会主義国から市場経済国へ移行する時から、日本は最大の援助国としてモンゴルの国造りに協力してきた。

 日本が援助を始めた頃の冬、首都ウランバートルで唯一の旧ソ連製火力発電所が故障して冬期の都市機能が失われる危機に瀕した。首都の地域暖房機能が落ちて、ウランバートル100万人が過酷な冬を送らざるを得ないという時に、日本は間髪入れず機材の手当てを行い、専門家チームを派遣して火力発電所の復旧を成功させた。以来、この時の話はウランバートル市民の伝説となっており、日本への「恩義」の1つになっている。

 例を挙げれば際限がないが、こうした日本への思いこそが我が国援助の無形の資産(アセット)である。その一方で、有形の援助資産も世界中に散在している。

 日本最大の援助国であるインドネシアのユドヨノ大統領は、「われわれは日本に国造りの最初から助けられた。日本のいう国造りはインフラ造りからという援助哲学は間違っていなかった」と日本への「恩義」の一端を披露している。

ただ、よく観察していると、ASEAN諸国は単に「恩義」だけでなく、日本がアジアの中で健全な姿で存在することを願う側面があることが分かる。それは、中国を対局においたアジアのバランス・オブ・パワー(力の均衡)ということあり、そのために一刻も早い復興を願っているのだ。

 日本の同盟国である米国もそう願っているに違いない。政治家はそういう立場にあることを深く認識して、この国難に立ち向かう必要があると言いたい。

 

「信義を重んじる国」という印象

 

 5月1日、アフリカのセネガルの首都ダカールで開催された閣僚級会合での松本外相の発言は、日本の威信を放っていた。この会合は第4回TICAD(アフリカ開発会議)での合意達成状況を確認するものであった。

 松本外相は、「日本は大震災を乗り越え、これまでと同様に国際社会の平和と安定のために積極的に役割を果たしたい」と述べたあと、「日本は国際公約したアフリカ支援倍増を実行する」と明言した。この発言は現在の日本の置かれた状況から、世界に「信義を重んじる国」という印象を深く刻んだ。

 アフリカへの支援倍増とは、2003~07年の5年間のODA実績平均、約9億ドルを基準に、約束の2012年までに18億ドルを達成することを指している。2012年はアフリカ支援倍増の最終年にあたる年で、最後の成果が問われる年でもある。

 日本が最悪の困難に直面していることは世界中が知っている。また、最悪の財政難に陥っていることも知っている。それでも日本はやせ我慢してでも国際約束を守るという態度を世界に示した。

 

予算編成バトルが繰り広げられた

 

 ところが、ここに至るまでには自民党も巻き込んでの予算編成バトルが繰り広げられていた。

 第1ステージでは、震災対応の第1次補正予算(約4兆円)の財源の一部として2011年度のODA予算(5727億円)から20%(約1000億円)を捻出する案が民主党・岡田克也幹事長筋から出された。

 そして実際には2011年度のODA一般会計予算は、前年に比べて7.4%の減額(460億円)となった。こうした減額は2000年以降12年間も続いており、ピークだった1997年度の1兆1687億円と比べると、半分以下になっている。

 おそらく民主党政権も財政当局も「ODAは評判が悪く、国民の支持率も低い」と踏み、20%減額でも反発はないだろうと高をくくっていたのであろう。

 そして、第2ステージでは民主党のみならず自民党議員の様子が変わった。それは世界135以上の国々からの「ニッポンがんばれ」といった心のこもった激励メッセージや、“恩返し”とも言える多額の義援金が続々と届けられたからである。

 日本の政治家も覚醒した。政治家の多くは、マスコミのステレオタイプの「ODAは役に立っていないのではないか」という批判に耳を傾けていた。彼らは最貧国からも「お世話になっている」と恩義を明示したメッセージが届いていることを知るにつれて、「役に立ったのだ」という見方に変わろうとしている。

今回の予算削減には国際NGO(非政府組織)グループもODA大幅削減を言い出した岡田幹事長に抗議した。彼らは国際公約通りに1日=1ドル以下で生活している貧困層の人々を助けようとする国連のミレニアム開発目標を実現してほしいと訴えた。

 そうした葛藤の下、当初掲げられた「20%減額」は「10%減額」で何とか歯止めがかかった。

 その予算内容は専門的すぎるので、詳細は省略するが、端的に言うと、将来の日本外交に重要な2国間(日本とそれぞれの途上国との関係)のODA事業費にはそれほど手を付けずに、国連機関への分担金などの減額で何とかカバーした格好だ。

 

ODAの3分の2は税金ではなく「別財布」

 

 実はODA予算といっても税金に依存する一般会計部分(約5000億円規模)は、国家予算の規模に比べると大河の一滴のようなものであって、大局に影響を与えるほどのものではない。

 ODAには有償援助の円借款協力部門がある。これは途上国への開発資金の低利、長期の貸付資金であるから、その財源は別財布の政府の財政投融資資金から捻出される。その規模は1兆円レベルに達する。

 ODAと言えば、すべて税金で賄われていると思っている人が多いが、極端に言うと、ODAの3分の2は税金ではなく財投資金という別財布から借りたものである。

 こういう制度は先進国の中では日本だけであって、欧米諸国のODAは原則無償で、すべて税金から拠出されている。その意味で、日本のODAは財政を圧迫するほどの存在ではない。むしろ現在、過去貸し付けた資金が年間約5000億円規模で返済され、それに少しの利息収入も上乗せされて帰ってくる。その意味で円借款は、日本の海外資産と言っても過言ではない。

 

日本の援助哲学でもある「自助努力」

 

 もっとも、「円」で貸す協力は一般市中金利と世銀など国際開発金融機関との中間金利帯をなしており、これまで途上国の大規模な資金を必要とする経済・社会のインフラ部門建設で大きな成果を上げてきた。

 今回の震災でいち早く救援隊を派遣し、義援金を用意したインドネシアやタイは、アジアの中でその恩恵を一番享受した国である。一方、急成長を遂げている中国も円借款を有効活用した国として知られている。

 民主党政権が打ち出している「新成長戦略」の一環として打ち出している鉄道、水、原発などの巨大インフラ輸出では、民間のリスクを軽減する意味で、円借款協力は重要な戦力になるはずである。

 また、有償の円借款協力は「借りたものは必ず返す」という意味で、日本の援助哲学でもある「自助努力」を促すことになり、途上国の自立の精神を涵養するという一面を持っている。欧米の原則無償の援助は、「人道」を前面に出しているものの、往々にして依存心を産んで、自立の精神を阻んでいるとも指摘されている。

 このように、陰に陽に途上国の発展に寄与してきた日本のODAが、震災を機に「減額して当たり前」という雰囲気に飲み込まれるのは、残念なことだ。その背景にはODAに対する日本国民の理解不足や誤解もあると思う。この連載では、それらを解きほぐしつつ、これからのODAのあるべき姿を探っていきたい。