団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

3.11後の原子力・エネルギー政策の方向性:飯田哲也・環境エネルギー政策研究所所長

2011-06-08 21:42:32 | 日記

飯田哲也(いいだ・てつなり)氏

環境エネルギー政策研究所所長

専門:放射性物質の安全管理、エネルギー政策

※4月5日に日本記者クラブで行われた講演を基に書き起こしています。

講演内容はYoutubeでも公開されています

はじめに. 福島第一原発の現状

 原子力の仕事をしていたのは20年前です。原子炉本体ではなく、放射性物質の管理をしていました。福島第一原発の使用済み燃料の中間貯蔵施設の規則作りに関わり、その後、申請者側として設計と安全許認可を担当しました。

 イントロダクションとして、今の事故をどう見ているかお話します。

 今起きている事故は、間違いなく世界史に残る最悪事故の一つであるということは共通認識だと思います。フランス、オーストリアから、既に放出された放射性物質がチェルノブイリの数10%と指摘してされていますし、スティーブン・チュー(米国エネルギー省長官)がニューヨークタイムズに語ったところによると、シミュレーションコードに基づいて原子炉の中でメルトダウンが起きている様子を語っています。

 日本では、そういう評価を全くやっていませんが、メルトダウンの様子をシミュレーションするコード(アメリカではセーフティーコードと呼ぶ)を、アメリカなどいくつかの国では持っていて、出てくる核種からも、メルトダウンは間違いないと評価しているのです。また、格納容器と圧力容器が1、2、3号機で破損しているだろうということも相当確からしいです。

 このあたりは、京大の小出さん(小出裕章氏:京都大学原子炉実験所)とか後藤さん(後藤政志氏:元東芝原子炉設計者)が詳しく解説されています。

 私の本題は、そこから後です。現時点で、これまでとってきた対応が常に後手後手で、その場しのぎで、より深刻な状態になって、泥縄式に対応するというのが見受けられます。朝日の論座1997年の2月号で始めて活字になった「原子力ムラ」、私が名付け親なんですが、の無策、無能、無責任な構造に加えて、官邸主導と、当事者意識と当事者能力のない原子力保安院と東電の3つのリーダーシップの混乱がこの現状まで悪化させてきたのだと思っています。

 現時点で汚染水の処理が最大の課題になっていますが、タンカーなどであれが完全に処理できたとして、そのあと通電したとしても、中の核分裂生成物が相当程度に出ている状況において、一次冷却水の閉じ込めを復旧するような溶接とかポンプの取り替えもしなきゃいけないとなると、水で冷却する閉じ込め機能に戻していくというのは、早い段階であきらめた方がいいんじゃないかと思います。

 放水をしながら注水をしながら汚染水の処理を続けていくというのは、短期的にはそれは避けられないことではあるのですが、それを優先的にやっていくと、作業員の被ばく総量を、個人・集団ともに、いたずらに増やしてしまうだけです。出口戦略側に早急に移らなくてはいけません。

 今日はそこを含め、二度と悲劇を繰り返さないための戦略を提言します。

(カッコ内SMC注記)

 

 

1. 原発震災の出口戦略

  その1番目は、出口戦略を早く固めるということです。

 細野さん(細野豪志首相補佐官)が数ヶ月かかると言ったことに与野党から噛みつきがありました。そんな言葉遊びの噛みつきをしてどうするのでしょうか。私は、数ヶ月で収まれば楽観的だと思います。数年単位でかかるんではないかと思います。その事実認識を政治家は持ってほしい。言葉遊びのけんかをするなと言いたい。

 数年で放射能垂れ流しの状態が収まったとして、あとに高レベル廃棄物処分の場合でも千年単位の人工管理が必要なことを考えると、そのあとの管理に数百年単位の時間がかかります。そういう事態に直面しているという認識に立ったうえの、今日の提案です。

 まずは原発震災管理官を置くべきだと思います。その人のもとにすべての協力体制を整えて、現場の封じ込めの指揮を執らせるべきです。

 方向性としてはチェルノブイリ型の石棺にシフトすべきです。当然のことながら、コンクリートで固めると、この先数年間、実はもっと長期に崩壊熱が出るので、その熱で核燃料が溶解してしまいます。この崩壊熱を管理しながら、放射性物質を閉じ込める、水ではない方法にたどり着かねばならない。これは相当に困難です。しかし、やっていかなくちゃいけません。

 それと同時に放射能のモニタリングがあまりにもバラバラでいい加減なので、早期に、空気中、土壌表面のフォールアウト、地下水、食物、海洋、これを、徹底的に網羅的にリアルタイムでモニタリングできる体制を整えるべきだと思います。

 放射能汚染はこの先何年も続くと想定し、恒久的なモニタリング体制を整える必要があります。

 これを早急にやりつつも、避難区域の設定と避難民のフォローアプについては、今のように同心円でなく、実測値も出ていますし、予測もかなり角度の高い予測が可能ですから、実測と予測に基づいた避難区域をただちに再設定することが必要だと思います。

 その他のポイントとしては、恒久的な事故処理機関を設立する必要があります。この仕事は、閉じ込めだけでも数年、そのあとの管理も百年単位の仕事ですから、新しい事故処理機関を立てる。その長が原発震災管理官、全権を掌握した人になります。

 これは日本原子力開発研究機構を改組して、ここはおよそ2000億円の予算を持っていますから、高速増殖原型炉もんじゅとか、不要不急の研究開発をただちにやめて、その予算をほぼ全てそちらに振り向けるといいと思います。

 今回とてつもない賠償金が必要となります。東京電力が全ての賠償責任を負うことは大前提ですが、それでもなお足りない可能性が高い。これは国がカバーするしかない。そのときに原発埋蔵金を活用すべき。再処理等積立金が現時点でも約3兆円、今後も毎年5000億円ぐらい積み上がっていきますので、まずはこれを当てていく。さらに原発関係の不要不急の関連団体、特殊法人、社団法人、そういったところを徹底的に事業仕分けしてそちらに当てていく。少なくとも再処理等積立金だけで3兆円あります。

 

 

2.原発震災の教訓化戦略と原子力安全行政の刷新戦略

 第2番目としては、原発震災の教訓をしっかり洗い直す。これはまさに事故調査委員会の「設置」です。

 枝野官房長官もすでに言及していますが、利害関係者、原子力安全保安院も原子力委員会も、調査をする側ではなくていわば被告の立場になりますので、そういった利害関係者から独立した事故調査委員会を立て、さらには、原子力政策、エネルギー政策を遡った事故調査をやるべきだと思います。それを前提として、原子力安全行政を刷新することを提言します。

 今回の事故は、我々の認識では、きっかけは天災だけど、事故そのものは人災です。 

 これまでも、神戸大学の石橋(克彦)名誉教授をはじめ、共産党の吉井議員(吉井英勝衆院議員)であるとか、あるいはパブリックコメントであるとか、地元の脱原発派議員であるとか、今回の事故をほとんど予言したかのような指摘がされていました。

 今回の事故は、そういうことを全く無視して、しかも4年前に柏崎刈羽原発で地震の直撃を受けながら、それを一顧だにせずやってきた原子力政策の問題であります。

 今、まずすべきことは、浜岡原発に代表される今回と同じような地震リスクにさらされている原子力発電所をただちに停止することです。これは、中部電力が自発的に止めるというより、国が停止命令を出すべきです。

 今の原子力安全保安院、原子力安全委員会、これまでの「原子力ムラ」という態勢は、事故処理の経過を見てもあきらかなように、ほとんど実効性がありません。事故の予防に関しても、事故が起きてからの対処についてもまったく実効性がない。

 たとえば、アメリカのNRC(原子力規制委員会)は大統領の権限すら及ばない独立性を持っていて、NRCが80キロの退避というと、アメリカ大使館も、米軍ですら従わないといけない。そういう独立性の高い規制機関を作り、自ら安全解析ができる態勢にしなくてはいけません。

 私も部分的に経験がありますが、日本の原子力安全評価の態勢というのは、絵空事のような字面合わせでしかなくて、原子炉でいうと東芝、日立、三菱の御三家が文章すべて作成して、それに電力会社が表紙をつけて、それを経産省の安全課の役人の人が、いわば、「てにをはチェック」をするような形で、そのあと安全審査委員会のそうそうたる先生が、そこできっちりとした解析をしてチェックするのではなく、その場で見た分厚い文書に、やはり「てにをはチェック」をする。しかも全体としては、同じ原子力ムラの人たちですから、例えば石橋先生が例外的に耐震基準の委員に入られても、まったく聞く耳持たずで押しきっていくわけです。そういう態勢でやって、安全性が担保できるわけがないのです。安全規制の機関を抜本的に見直す必要があります。

 さらに安全行政の戦略として、無限責任の原子力損害賠償法についてお話します。これはどういうことかと言うと、現在原子力損害賠償法の原子炉1炉あたりの保険金額は1200億円です。しかも今回のように天災だと免責になります。電力会社が暗黙のうちに無限責任を負うという法体系ですが、しかし電力会社がカバーしきれない場合に結局は国、すなわち国民の税金で補填することになる。この法律は、もともとはアメリカのプライス・アンダーソン法に端を発しています。自動車でいうところの自賠責保険に相当します。これは、近年に入って無限責任にすべきだという議論がありました。

 金融工学を使うと、地震保険と同じ無限責任にしても、保険料金は計算できます。フランスで計算した所、保険料金を上乗せするとフランスの電気料金が3倍ぐらいになると試算されたことがあります。実際に適応されたことはありませんが。こういう事故が起きた以上、原子力損害賠償法の保険料率に関しては、天災に関しても免責無しで、しかも無限責任でカバーできる保険料率に切り替えるべきだと、私は思います。それを引き受ける保険会社があるかどうかわかりませんが、それを前提にしなくては、筋が会わない。

 

 

 

3. 原子力・エネルギー政策の転換戦略

 原子力の新増設と、核燃料サイクル事業、これはただちに停止すべきです。

 そもそも六ヶ所再処理工場と高速増殖原型炉もんじゅは、とうとう全く無意味な事業になり、しかも無惨きわまりない形で止まっていますので、止めても差し支えない。使用済み燃料は、乾式中間貯蔵という、より安全で、より低コストな当面の解答がありますので、使用済み燃料のあふれかえる部分については停止すべきです。

 出口としては既存のエネ政策機関をすべて改革して、新しいエネルギー政策機関として、「総合エネルギー政策会議」を内閣府の元に設けて、なおかつ環境エネルギー庁を設けるべきだと提案します。

 日本の原子力発電の行方には3つのシナリオがあります。原子力発電は漠然と電力量の30%をまかなっていると思われているかもしれませんが、日本の原子力発電所は相当老朽化が進んでいて、今回事故を起こした福島原発はちょうど40年です。通常40年で廃炉することが想定されていて、日本の原子力発電所は、そういう意味では後期高齢者の域に入りつつある。40年でそのまま廃炉していくとなると、長期的には、相当これから原子力の設備容量は下がっていきます。これが第一のシナリオですが、もはやありえません。

 次に今回の地震で影響を受けた後のシナリオとして、福島第一、第二、女川、柏崎刈羽、浜岡、東通について、BWRタイプでなおかつ地震のリスクのある原子炉をただちに止めて、そのほかの原発はは40年寿命で生かすとすると、原発がまかなう電力量は2020年で1700万キロワット、10%ぐらいに落ちます。これが新しい現実です。

 もう一つ脱原発の期待に応えて、2020年で原発をゼロにする。

 この3つのシナリオのうち、一番目のシナリオはなくなったので、残る2つの新しい現実を前提に、これからのエネルギー政策を立てることになります。

 今回、計画停電という名前の無計画停電に陥ったいくつかの要因があります。もちろん原子力一局集中というのもありますが、西日本には電気があり余っているのに100万キロワットしか送れない、この閉鎖的な電力市場を、この機に見直す必要があります。

 東電はおそらく一時国有化は避けられないと私は考えていますが、それを併せて独禁法の対象から電力をのぞき、電気事業法を改正し、全国一帯の送電会社を確立することを検討すべきです。

 その送電会社は東西一体運用できることが必要です。東西は50サイクルと60サイクルに分かれていて、技術的な問題があって100万キロワットしか送電できないとみなさん思われているかもしれませんが、実は北海道と東北の間も60万キロワットしか送電してない。東北と東京の間も500万キロワットしか送電していない。電力会社はすべて地域独占であるがゆえに、彼らは国民の電気料金を費やして「鎖国的な電力市場」を形成していたわけです。これが、今見るときわめて不都合です。

 さらに電力会社が送電線を独占し、自然エネルギーを排除してきたゆえに、日本は自然エネルギーの普及において著しく立ち後れています。

 その二つのことを改善する送電会社でないといけません。これから送電線に集中投資をしなくてはなりませんが、自然エネルギーを爆発的に普及させるためのインフラ投資になります。

 すでに、アメリカでもヨーロッパでも、「スーパーグリッド」に集中投資しています。これは主には高圧直流送電線で自然エネルギーの集中地帯と幹線を結んでいくことです。日本でもぜひそれをやっていくべきと思っています。

 もう一つ原発国民投票の実施を提案します。

 スウェーデンが1980年、オーストリア、イタリア、日本でも巻町で原発の住民投票がありました。国民投票の意味合いというのは、白黒決着をつけるというよりも、国民が政策の当事者意識を持って、ある期間その問題を徹底的に考え抜くという、国民教育にあります。スウェーデンでも1年間ありました。

 一部脱原発派の方には、国民投票でマスメディアがプロパガンダに載っけられて負けるんではないかと心配する人もいます。しかし、私は、勝ち負けではなく、原子力と環境とエネルギーと日本の未来を一年間徹底的に考え抜くツールとして、国民投票をやることにすごく意味があると考えます。

 

4.緊急エネルギー投資戦略

 特に東日本の復興に自然エネルギーをあてていくことに、大きな意味があります。

 一つには、自然エネルギーは大規模発電所に比べて、きわめて短期的に投資ができます。今日の日経新聞に、火力発電を環境アセス無しで作るという禁じ手的な記事がでていましたが、大きな火力発電所は大会社しか儲かりません。風力発電も大会社なんですが、風力発電、太陽光発電の建設工事は、小規模な地方の建設業や町工場でもできます。しかも、地域のマネーをしっかりとまわしていくことができます。

 もともと地域金融は預貸率が低いので地域の投資先がありません。そこで自然エネルギーを投資先にして、信用保証協会を活用して、地域のエネルギー企業には信用保証協会の信用をつけるので地域金融のお金を回しなさいということにすると、数兆円のお金を回すことができる。地域のお金を地域の設備投資に使っていくと、経済と雇用と金融の投資にプラスのメリットがある。自然エネルギーの開発を短期的には投資戦略、経済戦略として活用できます。 

 現在、2010年で自然エネルギーは、水力8%、地熱とバイオマス発電の合計で2%で、全電力量の10%程度なのですが、これをドイツと同じペースで増やすとすれば、2020年までに30%にすることが不可能でないと私は考えます。

 大胆な投資をしていくと、エネルギーコストとエネルギーリスクを回避でき、なおかつ京都議定書の免除なく、中期目標を含めてしっかりと達成していけると考えます。

 長期的には自然エネルギーを2020年で30%、2050年で100%、同時に総量削減型のエネルギー効率化とあわせて、大胆なエネルギーシフトを図っていくべきと考えます。

 無計画停電について。不足部分の見込みは東京電力と我々はほとんど一緒です。我々は、需給調整契約を大きく4つに分けて、2000キロワットを超える事業家に対してすべて、政府が電気事業法27条を活用して需給調整契約を締結することを提案します。

 2000キロワット超で3000件の事業家があるので、それで約2000万キロワットの電力を削減することができます。

 経団連の言う一律25%節電をすれば、500万キロワット、40%程度節電すれば800万キロワット削減できます。

 ライフラインの病院や鉄道は除外するにしても、さらに節電を深掘りできると思いますし、50から2000キロワットはピーク料金を設けて押し下げる。家庭について50キロワット未満はアンペアを落として、ピークの引き下げをしていく。具体的な措置をとることによって、今のように市民生活、産業経済、ライフラインをずたずたにする無計画停電をやらずに乗り越えることができると、我々は考えます。

一般社団法人 サイエンス・メディア・センター


東電やめたら電気代3割節約 立川競輪場、契約先変更で

2011-06-08 20:50:10 | 日記

東京都立川市が運営する立川競輪場(同市曙町3丁目)が2010年度、電気の購入先を東京電力から特定規模電気事業者(PPS)に替えたところ、電気料金を前年度の3割近く節約できたことがわかった。
予想以上の「効果」に、市は見直しの対象を拡大。今年度は、小・中学校など53施設が東電以外と契約した。

 PPSは「電力の自由化」を生かし、自前の発電所などから調達した電気を売る新規事業者。市行政経営課によると、PPSから競輪場に提案があり、経費節減の一環として電気の購入先を見直すことになった。入札の結果、住友商事系のサミットエナジー(本社・中央区)が東電に競り勝った。

 競輪場の電気料金は、東電と契約していた09年度は約6200万円。だが、10年度は約4500万円に下がり、電気代を約27%節約できたことになる。
市によると、気候の変動もあって単純比較はできないが、単価が安くなった点が効果として表れているという。

 市は見直しの範囲を拡大。今年度は市立の小・中学校や地域学習館、福祉施設など53施設を3グループに分け、グループごとに契約先を検討。それぞれ異なるPPSから電気を買うことにした。

 今年度は契約先を選ぶ際、価格だけでなく、発電に伴う二酸化炭素の排出量など環境にどれだけ優しいかも基準にした。それでも今のところ、電気代2割弱の節約が見込めるという。

 節約の成功例として、立川市には他の自治体から問い合わせが来ている。同課の田中準也課長は「これほど節約できるとは当初考えていなかった。最大限の見直しを進めているが、今のところ不便はない」と話す。昨年5月に開庁した市役所新庁舎についても、今後見直しを検討していくという。(大西史晃) asahi.com


大腸菌被害で有機農法に疑問符、バクテリアに「理想の環境」

2011-06-08 07:49:35 | 日記

 化学肥料などを使わず有機的に栽培されたモヤシは味が良く栄養価も高いが、その一方で、有機農法には危険なバクテリアの繁殖場所として理想的な環境が整っている。  

 モヤシは大腸菌の感染源として疑われることが世界的に見ても多い。5月中旬からドイツを中心に22人が死亡し、2300人以上が体調不良を訴える事態にまで発展した大腸菌感染についても、大豆の有機栽培農家に疑いの目が向けられたことは驚きではないと衛生専門家は指摘する。 

 今回の大腸菌被害は、有機農法の将来について疑問を投げかけているとの見方もある。 

 英イースト・アングリア大学の公衆衛生学教授、ポール・ハンター氏は「大西洋の両側において、モヤシが感染原因となることは非常に多い。衛生的に栽培するのは非常に難しく、菌を付着させないよう細心の注意を払わなくてはならない」と指摘。「通常の化学物質や非有機的な肥料を使用しないオーガニック農場は、より多くのリスクを負っている」との見方を示した。 

 ハンター教授自身も、これまでにオーガニックの果物や野菜を購入したことはあるとする一方で、有機野菜を使った生のサラダについては、「まさにこの理由から」避けたとしている。 

 ドイツを中心に拡大している大腸菌の被害では、牛の腸管に存在するとされる腸管出血性大腸菌(STEC)が確認されていることから、感染源は、肥料や何らかの排せつ物である可能性が非常に高い。 

 <種の汚染> 

 ドイツでの感染問題の渦中にいる有機生産農家は、肥料は使っていないとしている。しかし専門家は、豆の種や栽培に使用した水が大腸菌で汚染されていたか、種を取り扱った人物経由で菌が付着した可能性もあるとの見方を示す。

そして菌が一度付着してしまえば、有機栽培は菌の繁殖に最適な環境ともなり得る。 

 ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院のブレンダン・レン微生物学教授によれば、「モヤシは37度ほどの高温で栽培されることが多いが、その温度は大腸菌が育つのに最も適している」。レン教授はそれを、複数の悪い状況が同時に発生する「パーフェクト・ストーム」のようだと指摘。頻繁に起こることはないとしながらも、現実となれば短時間で野菜が汚染されることもあると述べた。 

 モヤシを感染源とする食中毒は新しいことではない。米国では1997年、大腸菌感染を調査した結果、アイダホ州で収穫されたアルファルファが感染源として特定された。 

 また、アイルランドのトリニティ・カレッジ・ダブリンで臨床微生物学を教えるスティーブン・スミス氏は、死に至ることもある溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症させる大腸菌が、アルファルファを汚染することもあると過去の研究で明らかになったとしている。 

 HUSは腎臓の機能を低下させることもあり、ドイツで拡大している被害でも患者の死因や病因となっている。 

 スミス氏によると、大腸菌は種の表面に付着し、数カ月にわたって休眠した後でも、発芽の際に10万倍に増殖することがある。 

 <20─50歳の女性が被害に> 

 ドイツと他の欧州諸国では、1997年に米国で発生した大腸菌感染と同様に、感染者の大半は20─50歳の女性となっている。このグループは、原因がモヤシ以外とされた過去の大腸菌感染では、それほど被害を受けていない。専門家はこの理由として、若い女性は他のグループと比べ、健康に良いとの考えから生のモヤシを食べる傾向にあるとしている。 

 イースト・アングリア大学のハンター教授は、「有機農法を中心に、モヤシ業界は大きな課題に直面するだろう。有機栽培のサラダは、そうでないサラダほど安全ではないかもしれない」と語った。

(ロイター日本語ニュース 原文執筆:Kate Kelland、翻訳:本田ももこ、編集:宮井伸明)


政策抜きの大連立構想は、「談合」

2011-06-08 07:00:30 | 日記

【新聞チェック】「大政翼賛会に通じる」東京新聞が大連立構想に激怒、前のめりなのは読売だけ

 菅首相の辞任時期をめぐって綱引きが続く中、民主・自民の両党の間で急浮上してきた「大連立構想」。民主党の岡田克也、自民党の石原伸晃両幹事長は5日、東日本大震災の復興を急ぐため、大連立構想を進めることで足並みをそろえた。首相の早期退陣に道筋をつけるための環境整備の一環とも言えるが、主要各紙の7日の社説を見ると、「失政への猛省が足りぬ」「何のためにやるのか」などの見出しが並び、ほとんどの新聞が慎重姿勢だった。政治家の間で、どんな政策を実現するのかというすり合わせをする前に「まずは大連立」と枠組みばかりが議論されていることへの違和感が強いようだ。

 中でも東京新聞に至っては、“大連立の「大」は、大政翼賛会の「大」に通じる”とまで酷評。両党の各派の衆院議席数を合わせると衆院の87%、参院の78%を独占する巨大与党が誕生するだけに、警戒感が強いようだ。ただし、大連立構想の旗振り役と言える読売新聞だけは「救国内閣へ環境整備急げ」と前のめりになっている。

 以下、各紙の内容を詳しく見ていこう。(太文字が各紙の見出し)

大連立構想 失政への猛省が足りぬ(東京

 東京新聞は、「大連立」そのものに反対の立場だ。昨年7月の参院選で与党が大敗して「ねじれ国会」になった時点で、与野党が協力しないと政権運営がたちゆかないことは分かっていたと批判し、両党にこう注文をつけた。

民主党が今すべきことは、混乱の原因となっている菅首相の退陣時期を明確にし、菅首相がどこまで案件を処理するのかという「政権工程表」を明示することだ。
自民党も国民の利益を第一に、協力すべきことには進んで協力すべきだ。大連立でなければ物事が進まないというのではおかしい。


 はっきりは書いていないが、自民党が閣外協力することまでは認めても、閣僚を送り込む「大連立」までは望まないようだ。そして、「政権延命策」や「大政翼賛会」のキーワードまで出して、「大連立」批判を続ける。

岡田氏は記者団に、大連立によって「震災や税・社会保障の一体改革を乗り越えることが必要だ」「第一党から首相を出すことが基本だ」とも述べたという。この発言からは、大連立構想が民主党の政権延命策にすぎず、どさくさ紛れに消費税まで増税してしまおうという狙いも分かる。
大連立の「大」は、大政翼賛会の「大」に通じる。民主、自民が連立すれば衆院議席の九割近く、参院議席の八割近くを占める。一時的だとしても、批判や少数意見が封じられるのは望ましくない。

 普段から「平和憲法」の護持を掲げている東京新聞。未曾有の大震災であっても、少しでも戦時下を連想させるような政権運営は許しがたいようだ。

大連立 何のためにやるのか(朝日

 朝日新聞も大連立には慎重派。菅内閣の政権運営が危機的な状態だということは認めているが、現在の政局となっている「まず大連立ありき」という枠組み優先のは警鐘を鳴らしている。

民主党はいま、政権をとったものの運営に行き詰まり、党内の対立も深刻化している。国会で何らかの事態打開の方策が必要なことは、だれの目にも明らかだ。だから世論調査でも大連立容認が増えている。

しかし、直ちに大連立というのはちょっと待ってほしい。 民主、自民両党は総選挙で政権をかけて戦った。それが一緒になったのでは、多くの小選挙区で、政権に批判的な票は行き場を失いかねない。

 せっかく定着した二大政党制が無駄になると非難した上で、「子ども手当てなどのマニフェスト見直し論議を経て党内の意見を整理する方が先だ」と民主党側に注文をつけている。

大連立構想 基本政策抜きなら談合だ(産経

 なんと産経新聞も朝日とほぼ同じ主張。いつも憲法改正や君が代斉唱などを巡り、朝日と対照的な社説を発表しているが、今回の政局では、珍しく足並みを揃えている。

政策抜きの大連立構想は、共に閣僚ポストを得て、復興事業を仕切りたいという思惑や利害の一致を優先させているとしかみられまい。それでは「談合」と呼ぶしかない。
 このように、枠組み優先では「談合」になってしまうと批判。大連立に前のめりになっている自民党に反省を求めている。
谷垣禎一・自民党総裁は1日の党首討論で「菅首相が辞めれば、党派を超えて団結する道はいくらでもできる」と、民主党との協力は可能だとの見解を強調した。これも、基本政策を曖昧にしたままにしている民主党政権の本質的な問題を見据えていない。自民党が政権に参加しても、重要政策の実現は望めまい。
 普段、保守主義を掲げる自民党の応援団として振舞ってきた産経だが、「大連立」構想は元々、読売新聞会長の渡邉恒雄氏が提唱していた物だけに、やや距離を置いている印象を受けた。

大連立構想 救国内閣へ環境整備を急げ(読売

 その読売新聞は、大連立構想に距離を置く各紙とは対照的にイケイケムード。「衆参ねじれ国会の下、震災復興に機動的に取り組むには、民主党も自民党も単独では力不足だ」と談じた上で、「期限付きの救国内閣」の準備を急ぐように促している。
 
 肝心の政権運営については「民主党が自民党に譲歩せよ」という立場。マニフェストの大幅な見直しや「政治主導」のあり方を一変させることを求めている。

与党・民主党が大幅に譲歩すべきだ。政策面では、子ども手当、農家の戸別所得補償など、バラマキ政策を撤回し、政権公約を抜本的に見直すことが欠かせない。官僚を排除するだけの「政治主導」を改め、官僚を使いこなす体制を作ることも大切だ。事務次官会議を復活させ、政府と被災地の自治体とのパイプを再構築することも急ぐ必要がある。
 そして、最後は菅首相の即時退陣を求めて文章を締めている。
菅首相は早期に退陣するのが筋だろう。第2次補正予算の編成は、財源問題が絡むだけに、より本格的な与野党協議が要る。「死に体」の菅首相が、ずるずると政権を運営することがあってはならない。

首相の退陣時期に注目が集まる

 大連立を強力に推進する読売に対し、醒めた視線の他社という図式が浮き彫りになった。毎日新聞は「閣外協力や、期限つき大連立も復興を進めるひとつの方法だろう」と軽く触れただけだった。与野党で話が盛り上がっているとはいえ、菅首相の退陣が大前提になっている。ところが、首相は未だに退陣時期を明確にしておらず、「震災復興に一定のメドがついたら」と言葉を濁している。大連立が果たして本当にうまく行くのか。首相の決断に注目が集まっている。BLOGOS特集記事

 

民主と自民がもくろむ 理念なき「大連立」

  • J-CASTニュース
  •    「大連立」という名の「菅降ろし」が急加速してきた。菅直人首相の早期辞任を前提とし、民主党と自民党が大連立を組み協力するというシナリオだ。政策の違いが大きいのに、はたして実現できるのか。

       2011年6月6日、枝野幸男・官房長官は、「菅首相の早期退陣後の大連立」の動きについて、震災対応に「スピード感」が必要なため、「国会で幅広く協力頂ける態勢が望ましい」と前向きな姿勢を示した。

    岡田幹事長「期限とテーマ決めて」 

       6月5日には、民主・岡田克也、自民・石原伸晃の両幹事長が、NHK番組でともに大連立をめざす意向を示した。岡田氏は「期限とテーマを決めて」、石原氏は「閣内、閣外、いろんな協力がある」「(6)月内に(菅首相は)辞めて新代表と話を」と述べた。一方、公明党の井上義久幹事長は、「(大連立は)言うは易し、行うは難しだ」と慎重姿勢を示した。

       菅首相が2012年1月ごろまでの居座りを示唆した、との受け止めが広がる中、「早急に6月退陣を」と迫る声は、民主党内で鳩山由紀夫・前首相を筆頭に激しさを増している。自民が「大連立」を掲げ「6月退陣」を要求することは、民主党内の菅降ろしの背中を強く押す形となる。

       「大連立」は、連立政権の形の中でも特に、第1党と第2党が組むことをさす。政策協定を結ぶのが一般的だ。「現代用語の基礎知識」(自由国民社)などによると、大連立に限らず連立の組み方には(第2党以下が大臣を出す)閣内協力と(大臣を出さない)閣外協力がある。

       理屈の上では「閣外協力の大連立」もあり得るわけだが、大連立の「語感」としては、閣内協力を連想させるようで、石原幹事長は別の番組で「大連立と閣外協力のふたつが(選択肢として)ある」とも述べている。

    首相の座、自民に譲ってでも実行?

       最近では、ドイツが2009年まで約4年間、大連立政権だった。国内では、現在と同様衆参ねじれ状態だった07年秋、当時の福田康夫首相(自民)と小沢一郎・民主党代表の間で「大連立」の合意が成立したとされたものの、民主党内の大反発を小沢氏がまとめ切れず、ご破算になった経緯がある。

       民主と自民の「大連立」構想は、どんな状態が考えられているのか。震災復興政策のみに限定するのか。

       石原幹事長は6月5日のNHK番組で「復興だけでなく、景気の問題もある」として、電力不足による経済への影響なども含めて「全力であたれるよう、1日も早く新体制を」と菅首相交代を要求した。必ずしも「復興限定」とは考えていないようだ。

       「大連立」の具体的な期間の長さについてははっきりしないが、石原幹事長は、解散・総選挙の時期、すなわち「大連立が終わる」期限を明確化する必要性を訴えている。

       また、大連立の際に首相を民主から出すのか自民から迎えるのか、も注目される点だ。民主党内には「首相を自民に譲ってでも良いから大連立実現を」との指摘が出る一方、衆院選挙の時期を決める解散権を自民の首相に握られることになるため、「何としても首相の座は渡すべきではない」との声も根強い。

    民主と自民では政策が「真逆」

       ところで、肝心の政策協定は本当に結ぶことができるのか。民主と自民では「真逆」の主張をしてきた政策も少なくない。

       結局はその後の協議は進まなかったものの、4月には民主、自民、公明が「3党合意」に至っていた。民主が子ども手当などのマニフェスト(選挙公約)を見直すことを前提に、公債発行を認める法案成立などへの「真摯な検討」を行うとするものだ。今後、「大連立」協議が具体化する際には、この合意がたたき台になる可能性もある。

       大連立が現実味を帯びる中、菅首相は退陣時期についてどんな決断を下すのか。岡田幹事長は「辞めるべき時期が来ても辞めないときには、『辞めてください』と言うのが幹事長の仕事だ」と6月5日、記者団に話している。


    委員長「原発、安全は間違い」 事故調査・検証委が初会合

    2011-06-08 06:56:23 | 日記
     東京電力福島第1原発事故の原因や対応を検証するため、内閣が設置した第三者機関「事故調査・検証委員会」の初会合が7日午前、東京・永田町で開かれ、運営方法や今後の調査の進め方を議論した。

     菅直人首相が冒頭、「政府も必要な資料はすべて提出する。世界の注目に応える報告をお願いします」とあいさつ。委員長の畑村洋太郎東京大名誉教授は「原発がずっと安全と取り扱われていたのは間違いだった。100年後の評価に耐えられる報告にしたい」と方針を述べ、「責任追及は目的としない。事故を正しくとらえ、背景を把握する」と語った。今月中に第1原発を視察する考えも示した。

     検証委は、事故の技術的原因や初動の対応を検証する「事故原因等調査チーム」、避難措置や住民への情報伝達の適否を調べる「被害拡大防止対策等検証チーム」のほか、「法規制のあり方の検討チーム」「社会システム等検証チーム」の4つの作業チームを設置。12月をめどに中間報告、来年夏までに最終報告を取りまとめる。海外にも情報を提供し、意見を交わす。

     他の委員からは「組織が引き起こした事故だ。意思決定の過程など数十年さかのぼって調べなければならない」「国民の意見を調査に反映するべきだ」などの意見が出た。

     検証委は行政から独立して原因を究明し、再発防止策を検討する。首相や官僚、東電役員から聴取する権限を持つが、委員は首相が指名し、検証委が内閣内に置かれるため、独立性、公平性を疑問視する声もある。

     委員は作家の柳田邦男氏ほか地震や放射線の研究者、法曹関係者、地元首長ら9人。委員長を補佐する事務局長に最高検検事の小川新二氏、委員と別の技術顧問に安部誠治関西大教授と淵上正朗コマツ取締役を置いた。(中日新聞)2011年6月7日 12時56分