団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

宇宙開発 長期戦略なき日本 成果示す必要

2011-06-09 22:44:53 | 日記

産経新聞 6月9日(木)7時57分配信

 来月に迫った米スペースシャトルの退役を機に、世界の宇宙開発は新たな局面を迎える。国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行は当分の間、ソユーズ宇宙船が世界で唯一の手段となり、ロシアが影響力を強めるのは確実だ。米国はISSへの輸送を民間に移管し、2030年代の火星旅行を目指して新型宇宙船の開発を急ぐ。ロシアはソユーズ運用と並行して火星有人船の開発にも乗り出す。中国は独自の宇宙基地や月探査の計画を着々と進めている。

 宇宙先進各国が21世紀半ばを視野に長期的な有人戦略を進める中で、日本は不透明感が漂う。2020年まではISS実験棟「きぼう」で実験を続けるが、その先は白紙の状態だ。

 米国が月への有人飛行を計画していた数年前、日本も相乗りで月を目指す機運が高まった。しかし、オバマ政権による同計画の廃止で日本は足場を失い、将来展望を描けないでいる。

 宇宙航空研究開発機構はISSへの人員輸送をロシアだけに頼ると一極集中のリスクが大きいなどとして、将来的に国産有人船の開発が必要と主張する。しかし、東日本大震災による財政逼迫(ひっぱく)で実現の可能性は一段と遠のいた。

 日本がISS計画や有人活動に投じる費用は、現行の枠組みだけで総額1兆円規模に及ぶ。きぼうの実験が始まって間もなく3年。有人戦略の土台を固めるためには、運用実績だけでなく、実験の具体的な成果を示す時期に来ている。(長内洋介)

原発の急速な縮小は不可避今、大胆なエネルギーシフトをめざす理由

2011-06-09 22:25:35 | 日記

飯田哲也 [環境エネルギー政策研究所所長] 【第1回】 2011年6月2日ダイヤモンド社

東京電力・福島第一原子力発電所の事故は、私たちに様々な問題を提起した。夏場の電力不足への対応という短期的課題だけでなく、原発存続の是非や、電力の供給体制のあり方といった中長期的な政策に及ぶ議論が一気に噴出している。環境エネルギー政策の第一人者として知られる飯田哲也・環境エネルギー政策研究所所長が、問題の本質をひもとき、合理的な解決策を探求する。連載第1回はその総論を提示する。

遅れる事故対応と情報開示に
G8では世界の見方も冷ややか

 3.11東日本大震災から約3ヵ月が経つ。損傷した東京電力・福島第一原子力発電所の復旧作業は依然続いているものの、安定化のメドは未だ立たない。

 世界の見方も厳しさを増している。

 G8サミットで異例の冒頭発言の機会を得た菅直人首相だが、「原発事故の現況や情報開示」の意見表明には具体性がなく、「2020年代に自然エネルギー電力20%」というメッセージも冷ややかに受け止められた。それどころか、事故調査に訪れているIAEA(国際原子力機関)から、事故対応の責任の所在が官邸・政府・東電の間で混乱している、と指摘され、日本の対応能力に疑いの眼差しが向けられている状況だ。

 3.11以前に掲げられていた「2030年までに発電量の50%を原子力発電でまかなう」という、昨年策定されたエネルギー基本計画は、ほとんど根拠もない妄想的な計画であり、白紙として見直しが始まったことは当然であろう。

 私はこの際、エネルギーの軸足を原発から自然エネルギーに移す、大胆な“エネルギーシフト”を目指すべきと考える。その要諦は大きく二つ、「自然エネルギーの飛躍的な拡大」と、無理のない「省エネルギー・節電の深化」だ。

 今回を初回とする連載で各論に踏み込んでいく。第1回は、そもそもエネルギーシフトを目指すべき背景を明らかにしたい。

今夏の電力は足りる! 
腰を据えたエネルギー計画を

 最初に、今夏の電力需給について言えば、関東圏の供給力や過去の需要量を検証する限り、電力不足は回避できる。つまり、目先の対策に振り回される必要はない。10年、いや50年の計で、エネルギー計画を考えるべきだ。

まず、エネルギー計画の大前提は「原発がどうなるか」である。

 福島第一の事故があった以上、安全審査・安全基準はいったん無効の状況と言える。損害賠償の枠組みも、原子炉1基あたり1200億円、しかも天災の場合は免責になる点を考えれば、いわゆる“保険”の意味をなさない。

 今の原発はいわば、自動車を無車検・無保険運行しているようなものだ。「陸運局」すら存在しない状態である。早急に、安全基準や規制、それを取り巻く組織と人を総入れ替えしなくては、原発の安全性は担保できない。

 特に安全基準については、基準をつくる人と体制も抜本的に見直して、その新体制・新基準のもとで、初めて原子力施設の審査ができるようになる。保安院も安全委員も「原発は安全だ」という思い込みがあるうえ、そもそも専門性に乏しい。仲間同士で緊張感もなく馴れ合ったまま、チェック機能のまったく働かないデタラメな安全審査体制だったことが、誰の目にも明らかとなった。

 損害賠償の枠組みも、抜本的な見直しが必要だ。50年前に法が定められて以来、今日まで利用されることがまったく「想定外」の、「ホコリを被った竹光」に過ぎなかった。

 今後は、具体的な適用指針を定めることはもちろん、特にいざという時に国民に迷惑をかけることがないよう、原則として天災等の免責のない、青天井の損害賠償保険に入ることを義務づけるべきだ。これは、地震保険と同じ仕組み(カタストロフィ・ボンド)で原理的には可能となる。こうした「国民に負担を押し付けない新しい損害賠償の枠組み」の策定は必須だ。

 「体制と人の見直し」、「基準の見直し」、「国民に負担を押し付けない新しい損害賠償の枠組み」――この3つが整うまでは、原発の新増設と核燃料サイクルは直ちに凍結すべきである。

既存の原発の運転を担保する 
安全基準の策定は急務

 その上で既存の原子炉はどうするか。

 もっとも厳しい立場に立てば、全原発の即時停止となる。それを避けたいのであれば、地域の首長や住民の合意を得ることのできる最低限の「仮免許的」な判定基準と、ある程度の損害賠償の枠組みを大急ぎでつくらねばならない。それをもとに、既存の原発に対して、バックチェック(ストレステスト)をしっかりと実施し、それぞれの原発を動かすか否か判定する必要がある。

 5月14日に菅首相が中部電力に対して浜岡原発(静岡県御前崎市)の停止要請をした。3月15日に7基の古い原発停止命令を出したメルケル独首相に比べてあまりに遅すぎる上に、「要請」という中途半端な姿勢、他の原発を止めないという「冷や水」をかけるメッセージは、大きなマイナス点だった。とはいえ、私自身も国民も高く評価している。

 しかし、これはあくまで、そうしたバックチェックの第一号として、停止要請したということにしなければ道理が合わない。その基準をほかの全ての既存炉にも適用しないと、逆に不安をあおる。そればかりか、今後1年以内にすべての原発が定期検査で停止した後に、地方自治体の同意が得られないために、一基も動かせない事態を招くに違いない。

ところで、日本の原発の老朽化の問題は、震災前から指摘されていた。もともと30年の運転期間を認可され、その後は10年ごとに延期を判定することになっている。ところが、原子力ムラの人たちは、大した根拠もなく、まともな検査もないままに、60年、100年使えるなどといって通用してきた。福島第一の1号機が、ちょうど40年前に運転が開始された古い炉だ。

 もちろん、今回の事故の原因は老朽化だけに求められない。しかし、過去に世界で閉鎖してきた130基の平均寿命がわずか22年と短いことや、経年に比例して事故トラブルが増えることを鑑みれば、今後は古くなる前に余裕をもって最長でも40年程度、できれば30年目には厳しい検査の上で閉鎖を判定すべきだろう。

 仮に40年寿命とすると、日本原電・敦賀1号機(福井県敦賀市)、関西電力・美浜1、2号機(福井県三方郡)は閉鎖されることになる。加えて、震災で相当なダメージがあると想像しなければならない東電・福島第二1~4号機、東北電力・女川原発1~3号機(宮城県牡鹿郡)、同・東通1号機(青森県下北郡)、日本原電・東海2号機(茨城県那珂郡)は、上記で述べた「新しい安全審査体制」、「安全基準の抜本的な見直し」、「国民に負担を押し付けない新しい損害賠償の枠組み」が整った上で、きちんとした点検調査を行い、再起動するかどうかの判定が必要だろう。

 これまで漠然とイメージされてきた「日本の基幹電源は原発だ」というのは、もはや過去の幻影に過ぎない。すでに震災直後で、日本の原発による発電量は、全体の10%台に落ちている。そして、前述の基準を当てはめると、今後10年で全体の発電量に対し10~0%の水準まで低下するだろう。

 10%程度の供給量なら、他の電源などで補完できる。最終的に、原発を完全に止めるのか維持するのか、その選択は国民の意思に委ねられる。

原発と化石燃料から脱却し 
自然エネルギーと省エネを拡大

 一方で私たちは、残りの90~100%の発電量をいかに賄うか、真剣に考えなければならない。

 短期的(10年程度)な電力需給をまかなうには、火力発電に依存せざるを得ないだろう。ただし天然ガスは別として、特に石油や石炭などの化石燃料に依存すると、2つの問題にぶち当たる。

一つは、コストの問題である。

 化石燃料の輸入額は2008年で23.1兆円(GDPの4.6%)と非常に高い。しかも、その輸入額が増えれば増えるほど、貿易収支(2.1兆円、GDP比0.4%。太陽経済の会調べ)は悪化している。現に、今年度に入って、震災後の輸出の落ち込みに加え、原油等の高騰と輸入急増のために、貿易赤字が拡大する傾向がはっきりと現れている。これこそ国富の流出だ。

 二つめは、温暖化への対応だ。

 目下のところ忘れられがちだが、温暖化対策は消え去ったリスクではない。CO2排出量を考えれば、化石燃料を使い放題というわけにいかない。

 ではどうするか。方策として、「自然エネルギーの拡大」と、「省エネルギー・節電の深化」にたどりつくのである。

大規模停電を起こしかねない 
現体制で安定供給は確保できるか

 まず、「原発を減らすと停電が起きる」、「自然エネルギーを増やすと停電の恐れがある」と、脅しのように繰り返される議論を見てみよう。これは、“電力の安定供給”とはなんぞや、という基本原則から改めて冷静に考える必要がある。

 2003年に東電の原発17基が一斉に停止したときも、2007年に新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が停止したときも、そして今回も電力需給が厳しくなった。歴史を踏まえて言えば、日本のような大規模集中型の電源体制が突然に一斉に止まるリスクは非常に高い。1999年には、関西電力で変電所のトラブルにより、京都で大停電が発生したこともあった。“安定供給”といったときに一番避けるべき停電が、一極集中の構造のために起きてきたのである。

 なおかつ、今回の震災で実施された計画停電は、変電所単位でボツボツと止めるので、公共インフラである病院や信号など、本来は優先度が高いはずの設備もまとめて電気を止められるという、とんでもない事態が起きた。もっと小規模で分散型の電源体制にすることも、真剣に検討すべきである。

 2011年3月11日、日本は明治維新、太平洋戦争敗戦に次ぐ“第三のリセット”の日を迎えた。震災による数多くの犠牲はもとより、福島第一原発の事故が私たちに与えた恐怖や放射能汚染という厄災を捨て石にしてはならない。

 未来に希望を持てるエネルギー政策・原子力政策とは何か、今こそ見直すときである。

飯田哲也の新・エネルギー原論

東京電力・福島第一原子力発電所の事故は、私たちに様々な問題を提起した。夏場の電力不足への対応という短期的課題だけでなく、原発存続の是非や、電力の供給体制のあり方といった中長期的な政策に及ぶ議論が一気に噴出している。エネルギー政策の第一人者として知られる飯田哲也・環境エネルギー政策研究所所長が、問題の本質をひもとき、合理的な解決策を探求する。


「脅し」でなく適切な「政策」で 今夏の電力は充分足りる!

2011-06-09 22:19:52 | 日記
飯田哲也 [環境エネルギー政策研究所所長]【第2回】 2011年6月9日 ダイヤモンド社

夏場の電力不足と、計画停電の実施が懸念されている。震災直後、予定が何度も覆される“無計画停電”で巻き起こされた混乱はご免被りたい。しかし実際のところ、夏場の電力は充分足りるはずなのだ。必要な施策について、まだ国も十分な手を打てていないので、ここで提案しよう。

東電の供給能力は
震災直後より1500万kW増

 一足早く梅雨がやって来た。果たして、昨年のような猛暑になるのだろうか。夏場の電力供給不足が予想され、節電が喧伝されているため、みな「家庭やオフィスはどんなに暑くなることか」「また計画停電で電車が大混乱するのか」と今から戦々恐々である。

 しかし、結論から言えば、今夏の電力供給量は足りるはずだ。

 まず、東京電力の供給能力は日を追って増強されている。確かに、震災直後の3月下旬には、4650万kWという厳しい見通しだった。

 ところが、その後の火力・水力発電所の復旧などで供給能力は増強されつつある。5月下旬の見通しでは、揚水発電を含めると6000万kWを越え、実に当初予測より約1500万kWも上乗せされた。

 第一回でも述べたが、日本のピーク時の電力需要量は10年前から下がり続けている。近年では、観測史上もっとも暑かった昨年の夏でさえ、6000万kW弱である。もともと大震災前に予測していた今夏の最大電力量である5700万kWと比較しても、現実の供給能力は十分にカバーしていることがわかる。

 では、電力需要のピーク使用量が急増する恐れはあるだろうか? 

 震災後に取り組まれたさまざまな節電対策の効果をみれば、ほとんど考えにくい。震災直後、東電が緊急の計画停電を発表したときの、節電の呼びかけと自粛による省エネ・節電効果は、なんと約500万kW前後にのぼったと推測される。

東京電力は当初、大震災直後の休日明けについて、ピーク時の最大需要を例年どおりの数字そのままに4100万kWと見込んでいた。しかし蓋を開けてみると、当然ながら需要量は大幅に少なく、計画停電は限定的な地域・時間にとどめられることとなった。不幸中の幸いと言えるだろう。

 とはいえ、揚水発電を駆使しての数字であり、圧倒的に供給量が需要を上回るとは言えない。厳しい状況にあることに変わりはない。

 確実な電力需給を実現する方法があるのか? 

 震災直後は、強引な「無計画停電」だったものが、その後は「談合的節電」に進んだ。もう少し合理的な市場メカニズムを利用した、21世紀型施策を講じるべきではないだろうか。

需要家側の戦略的な管理が
夏場の電力需給には必須

 それには、需要家側の管理が欠かせないと考える。これをディマンドサイド・マネジメント(DSM)、あるいは「節電発電所」と呼ぶ。

 方策は、効果の小さいほうから以下の3点がある。

 第一に、家庭および中小オフィスビル等の小口電力(50kW以下)について、直接的な引き下げ効果を狙う。小口電力は、電気料金の変化に対してあまり需要量が変わらない、すなわち価格弾力性が小さいためだ。

 「お願い」という啓発ベースではなかなか進まないので、アンペアブレーカーを変更し、一律2割程度を強制的に引き下げさせる。家庭の電力使用量は常にフルアンペアではないので、一気に2割減るわけではないが、ピーク時の使用量を押し下げる効果はあるはずだ。

第二に、中小事業者(50~500kW)には、「ピーク料金」を適用する。電気需要のピーク時に課徴金(サーチャージ)を上乗せし、ピーク需要が25%程度引き下げられるような価格設定を行う。結果、管内に約7万5000口ある対象需要家の電力量を約200万kW引き下げる可能性がある。

 ただし、このときの課徴金は東電の収入や国庫に入れるべきではない。中小事業者に節電メリットが出るように、省エネ投資への補助金に充てるとともに、需要家へのインセンティブとして還付する方式が望ましいだろう。

最も大きな効果が期待される
大口需要家との需給調整契約

 第三に、500kW以上の需要家に対する「需給調整契約」を、基本的には全需要家に拡大することだ。

 需給調整契約というのは、電力需給が逼迫したときに電力会社が使用削減を要請できるもので、通常は大口需要家との間で取り交わされている。現在、約1300件の契約がある模様だが、これを強制的に拡大するのである。

 たとえば2000kW以上の大口需要家は、東電管内に約2000万kW(約3000口)あると推定される。これら大口顧客には、ライフラインなど絶対に止められない設備や公共的に優先度の高い施設を除いて、国のあっせんのもとで基本的に需給調整契約を結んでもらう。ピーク料金との選択制にしても良い。これによって、全体でざっと約500万kWの低減効果が期待される。

 これには副次的な効果も期待できる。

 企業側に、いざというときに電気を止められる施設と止められない施設を自ら仕分けしてもらい、その情報を東電および国と共有しておくことは、社会全体で優先順位を見極めることにつながる。リスクマネジメントを強化することができるわけだ。

 また、500~2000kW以下の需要家は、およそ650万kW(6200口)あるものと思われる。こちらは、まずはピーク価格の適用から開始し、順次、大口側から需給調整契約へ誘導する。これで約150万kWの引き下げ効果が見込まれる。

 これら3つの施策を足し合わせると、合計1000万kW以上の削減効果が期待できる計算になる。大きなバッファーである。

 たとえば、60アンペアなら50アンペアに、50アンペアなら40アンペアに、といった具合である。引き下げ効果の歩留まりが50%と仮定すれば、合計で約2500万kWある家庭・小口の最大電力量に対して、約250万kW引き下げることができる。

需給調整契約や、ピーク時の課徴金を“強制的に”実施するには、電気事業法第27条の発動により、具体的措置を定めるための政省令を策定する必要がある。だが、この手の“作文”は、官僚が得意とするところだ。大きなハードルではないはずで、実現可能性は高い方策である。

無理ない省エネは
継続して構造化する

 上記施策とは別に、無理のないかたちの省エネには自発的に取り組んでもらいたい。減らせる先は、「家庭」「事務所ビル」「産業」の大きく3部門が考えられる。

 特に効果が大きいのは「事務所ビル」と「産業」部門である。

 事務所ビル部門で電力量が多いのは、照明と空調、パソコンなどのデータセンターである。照明は人感センサーなどつけて、どんどん消す仕組みを導入したり、空調時に外から熱が入らないようにする工夫で、電気使用量をかなり減らせる。

 産業部門では、工場など製造プロセスに関わる電気と、事務部門のユーティリティ使用に大別されるが、意外と多く電気を使うのが後者である。事務所ビルと同様の方策で、相当量が効率化できるだろう。

 前者は、もう少し大きなグランドデザインが必要だ。鉄にしろセメントにしろ、社会全体のスループット(資源の消費と流通の総量)を引き下げる社会システムに見直さねばならない。資源のリサイクル化と再生可能化を推し進めるとともに、個別の工場プロセスについても、設備投資のタイミングでエネルギー効率を最適化するなど、大局的で多層な取り組みが不可欠だ。

 ただし、この手の取り組みを実現するには、時間を有するだろう。

皆さんの電力不足に対する不安は払拭できただろうか。そもそも、昨今のように声高に夏場の“電力不安説”が唱えられ始めたのは、いつからか覚えているだろうか。

浜岡停止は英断だが
電力不安を煽った遠因

 私が記憶する限り、菅直人首相が中部電力浜岡原子力発電所のすべての原子炉を停止すべき、と要請した5月6日以降である。この「英断」は評価できるが、過剰な“電気が足りなくなる”キャンペーンはここから始まった。

 東京電力管内に比べて、他の電力会社はもっと余裕がある。そうしたデータも踏まえずに「電力不安説」が広がったのは、明らかに、浜岡以外の原発を止めないためのプロパガンダの様相である。

 浜岡を止め、それ以外を動かすかどうかを判定するにあたって、明確な基準、いわゆるストレステストの基準を示さなかったためである。原発を動かし続けたい人たちも地方自治体の首長も誰もが疑心暗鬼になって、こうした騒動を呼んだわけだ。

 結局、政治的判断と、政策プロセスの失敗に他ならない。場当たり的な判断に惑わされず、合理的かつ現代的な施策を探求してもらいたい。

 

 


3断層で地震確率高まる=福島「双葉」、東京「立川」など―政府調査委

2011-06-09 21:56:01 | 日記

 政府の地震調査委員会は9日、東日本大震災の全国106断層帯への影響を分析した結果、宮城・福島両県の「双葉断層」と埼玉県・東京都の「立川断層帯」、長野県の「牛伏寺(ごふくじ)断層」の3カ所が動きやすくなり、地震発生確率が従来の長期評価より高くなった可能性があると発表した。具体的にどれぐらい地震が起きやすくなったかは分からないという。

 また地震調査委は、今年秋までに三陸沖から房総沖の海溝型地震の長期評価に東日本大震災の影響を反映させると発表した。

 さらに、陸上の津波堆積物や海底の地殻変動の調査結果などを積極的に評価手法に取り入れ、来年春までに東南海、南海地震の長期評価を改訂する。両地震は東海地震と連動する可能性があり、新たな長期評価に基づいて防災対策を早急に強化する必要があるという。

 これまでの長期評価によると、牛伏寺断層(長野県松本市・塩尻市、長さ約17キロ)で想定される地震の規模は、同断層を含む「糸魚川―静岡構造線断層帯」が動いた場合にマグニチュード(M)8程度と大きく、今後30年間の地震発生確率も14%と高い。立川断層帯(埼玉県飯能市から東京都府中市、約33キロ)はM7.4程度で0.5〜2%とやや高く、双葉断層(宮城県亘理町から福島県南相馬市、最長40キロ)はM6.8〜7.5程度でほぼ0%。

 双葉断層は放射能漏れ事故が起きた福島第1原発から近いが、地震調査委事務局の文部科学省によると、想定される地震の規模は変わらないため、耐震性評価には影響しないという。阿部勝征地震調査委員長(東大名誉教授)は「科学的根拠に基づき想定できるものは取り入れていこうという決意表明だ。地震がいつでも近くで起きるという備えが必要」と話した。


<米原子力規制委>耐震不安「無視」…福島と同型のマーク1

2011-06-09 08:38:26 | 日記

毎日新聞 6月9日(木)2時31分配信

<米原子力規制委>耐震不安「無視」…福島と同型のマーク1
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日米のマーク1
 東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発の1~5号機と同型の原子炉格納容器「マーク1」の安全性について、米原子力規制委員会(NRC)が80年に再評価した際、原子炉格納容器の圧力上昇を抑える圧力抑制プールの耐震強度が十分でない可能性を予測しながら、米国内の電力会社の意見を参考に「無視できる」と結論づけていたことが、毎日新聞が入手したNRCの「安全性評価報告書」で分かった。

日本の原子力安全委員会もこの報告書と同様の国内指針を作成していた。しかし、米国のマーク1は地震の少ない東側に集中しており、日本の安全基準のあり方を根本的に検証する必要がありそうだ。
【吉富裕倫】

【1960年代、更地だった時代も】写真で見る 福島第1原発の歴史

 ◇米原子力規制委、80年に結論

 米国の原発の安全性を監督するNRCの内部文書から、マーク1の問題点が明らかになったのは初めて。開発した米ゼネラル・エレクトリック(GE)社などによると、マーク1は世界5カ国・地域に38基あり、米国24▽日本10(廃炉決定の中部電力浜岡原発1、2号機を含む)▽台湾2▽スイス1▽スペイン1。

 マーク1の世界的販売開始後の70年代、圧力抑制プールの設計が十分な強度を想定していなかったことがGE社の技術者の内部告発などから発覚した。

 報告書によると、同プールは、格納容器内に高温高圧の水蒸気が充満した時に冷却、圧力を下げて爆発や炉心溶融などを防ぐ役割であることから、危険情報を知ったNRCは安全性の異例の再評価を決定。再評価チームは、地震で圧力抑制プールの内壁への振動圧力や水面の揺れによる水蒸気管の露出などから、水蒸気が冷やされることなく過度の圧力がかかる可能性を指摘した。

 しかし、プール内壁に対する最大圧力を「最高95%の確率で0.8PSI(1平方センチあたり56グラム)以下」とする推計値をもとに電力会社側は「地震による冷却水の揺動を無視するよう」提案。NRC側も最終的に「無視できる」とした。

 この報告書に基づく形で、日本の原子力安全委員会も、87年決定の「BWR(沸騰水型軽水炉)・MARK1(マーク1)型格納容器圧力抑制系に加わる動荷重の評価指針」で圧力抑制プール内の地震揺動を検討項目に含めなかった。

 ◇日本に10基 技術者「調査必要」

 報告書について、福島第1の建設を請け負った東芝でマーク1の設計を担当した渡辺敦雄・沼津工業高等専門学校特任教授(環境工学)は、「原発の技術は確率論。冷却材喪失と地震、余震の同時発生は無視できると考えられていた」と語り、「(日本の指針は)米国の考え方を輸入したもの。私もNRCと同じ意見だった」と明かした。

 一連の事故原因と報告書指摘の問題点との直接の関係は明らかになっていないが、渡辺氏は「地震で圧力抑制プールの水蒸気管が水面から露出して格納容器全体の圧力を高めた可能性がある」と指摘、事故との因果関係を含めた強度調査の必要性を訴えた。しかし、東電広報部はマーク1の安全性について「(原子力安全委員会の)評価指針に従った」と対応に問題なかったとの見解を示した。NRCのスコット・バーネル広報担当官は、「報告書は米国の原発に対するもので、日本の原発に対するものではなく、米側が見直す必要はない」と述べた。

 【ことば】マーク1

 米ゼネラル・エレクトリック社が40年以上前に開発した初期型。電球のバルブのような形状で、沸騰水型軽水炉を収める上部と下部にあるドーナツ形状の圧力抑制プールが特徴。80年代以降、上部と下部を一体にして容積を増やすなどしたマーク1改良型、マーク2へと移行した