師走の喧騒の中を…人々が足早に通り過ぎていく…。
ゆっくり歩いているのは…僕ぐらいなもの…。
町のあちらこちらに飾られたイルミネーションの蔓…。
夜になれば美しく輝くのだろうが…今は間抜けな電球の集まり…。
明日はクリスマス・イブ…。
さっき…通りすがりにぶつけられたあの袋の中には…きっと…いろんな想いが詰まっているのだろう…。
僕はただ…歩くだけ…。
通りの中央辺りの…よく磨かれたショー・ウィンドウの前で…ちょっと立ち止まる…。
そこに見えるのはふたつの顔…。
豪華にディスプレイされたウィンドウの向こう側から見つめている貴女の顔と…ウィンドウに映る僕の顔…。
貴女の顔には温かな実体があり…僕の顔には…ない…。
貴女が気付いて…優しく微笑む…。
僕は慌てて…ぶざまに会釈する…。
ただ…それだけ…それだけのこと…。
何事もなかったかのように…その場を通り過ぎる…。
胸が熱い…けれど…寒い…。
あの時…貴女の視線は…何処に向けられていたのだろう…。
僕ではない…分かっている…。
聖夜を共に過ごす誰かに…だろうか…。
それとも…愛する家族へ…だろうか…。
日常的に訓練された営業用の微笑でさえ…今の僕には温かい…。
視線の向けられるその先に…一瞬だけ僕が居た…。
それだけ…ただ…それだけのこと…。
多分…言葉を交わす前に…僕の恋は終わる…。
おつおのこと見てたの
・・・ちがった?
おつおのことじゃない?
イメージが壊れる?
・・・すいまへん。
PS
きれいだけど、せつない詩だね~
背中がえらく寂しそうだったよぉ~…。
…ってここは新潟じゃないんだけど…。
「視線の向けられるその先に/一瞬だけ僕が居た
>これは行間にも凄く含蓄のある作品ですね。
僕なりに凄く理解できます。
言葉の使い方、こんなのが好みなんです。
そう言って頂けると嬉しいです…。
何か余所事をしている時に…ふと…頭の中で誰かが動き出すことがあるんですね…。
そういう時はあまりあれこれ考えないで…短時間で書きます…。
作品の出来が良いか悪いかは分かりませんが…。
詩的な短篇と僕は読みます。
それで短時間に凝縮された分、凄く詩的なんですよ。
僕はこういう作品がくどくですが、好きです。
解るし、アプローチも自由ですしね。
作品が当然のように
匿名性を持っててね。
所謂、美文だと思いますよ。
この短編は…時の中のある瞬間を切り取ったようなもの…。
背景にあるものすべて凝縮している…と言えなくはないですね…。
切ないなぁ・・。
なんでこんなに切ないの・・。
足跡だけで・・・
切ない想い…誰の心にもありますよね…。
ものですね。
でもこの作品でもある意味で普遍性を持ちますよ。
この貴方と僕の大元にある「齟齬感」は。