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元中日ドラゴンズのルナ選手(1)個人名 Héctor(エクトル)と姓 Luna

2018-03-07 20:46:31 | 名前
  今回ご登場願うのは中日ドラゴンズと広島カープに在籍したルナ選手。ドミニカ共和国の出身である。在籍期間は2013年から16年までなので、記憶に新しい。
 
 ウィキペディア「エクトル・ルナ」には「エクトル・R・ルナ」(Héctor R. Luna)の名前で出ている。スペイン語圏の人名は、父の父姓と母の父姓の二つを表記するのが普通だが、一つしか書かれていない。念のためにスペイン語版ウィキペディアでも調べてみたが、やはり一つしか書かれていなかった。
 個人名の Héctor(英 Hector) はホメロスの詩『イリアッド』に出るトロイ戦争の勇士の名前として知られる。ただし、最後はアキレス(英 Achilles、西 Aquiles)に討ち取られてしまったが。
 スペイン語版ウィキペディア“Héctor (nombre)”によると、Héctor の意味は「所有者」ということである。
 勝者の Aquiles も男子名として使われているので、ルナ選手の個人名も Aquiles の方がよかったのではないかと思う。
 個人名はこれくらいにして、姓の Luna に移る。この名前は日本でも女子名として使われるケースがあり、「月」と書いて「ルナ」と読ませる水泳の選手がいる。何となく欧米風の響きのある名前だが、欧米人でこのような個人名を持つ人物はまだ知らない。
 ただ、日本のパスポートでは「ルナ」は“Runa”と表記されてしまいそうなので、これでは「月」にはならない。
 さて、普通名詞の luna が姓として使われているわけだが、この姓を持つ人はルナ選手以前に走らない。あまり多くないのではないかと想像していた。ところが、“Historia Apellidos”によると、スペインでのランキングは199位。全然珍しい部類の姓ではない。世界的な分布を見ると、絶対数でも人口比でもメキシコに多い。
 “Mis Apellidos”によると、Luna 姓の起源はアラゴン(Aragón) ということである。
 
 【ウィキペディア「アラゴン州」より。赤い部分が「アラゴン」】
 Luna 家の紋章は当然、月をかたどったものであるが、満月(luna llena)ではなく、三日月(それとも下限の月)である。三日月はイスラム教の象徴だが、Luna 家はひょっとしたら、イスラム教から表向きキリスト教に改宗した、いわば隠れムスリムだったのだろうか。イベリア半島はサラセン帝国の支配下にあったわけだし。

ルナ選手の背番号は「0」だったが、こちらは満月を表していたのだろうか。確かに、ルナ選手は丸顔(moon-faced)ではあるが。
 

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