オバサンは熱しやすく涙もろい

とてつもなくミーハー。夢見るのはお気楽生活

「タブロイド」

2007-01-31 09:18:04 | 映画・DVD【た】


2004年、メキシコ・エクアドル作品


オープニング。
川(沼?池?)の中で、石鹸で身体を洗う、人のよさそうな男の姿。
男は岸にあがり、洗面器に服と漂白剤をいれる。
男の顔は何かをやりとげたようなすがすがしい表情。


エクアドルのババオヨで子供ばかりを狙った殺人事件が多発していた。犯人は"モンスター"と呼ばれ人々から恐れられていた。
その事件を追ってマイアミからやって来たレポーターのマノロは、取材中にある事故に遭遇する。川で身体を洗っていた男の運転する車が、誤って子どもをひき殺してしまったのだ。
一気に群集が押し寄せ、車から出ようとした男を取り囲み、暴行を加え焼き殺そうとする。
マノロのチームは「スクープだ」と言わんばかりにカメラをまわす。
だがすんでのところでマノロは男を助け出した。

結局、暴行を加えた首謀者と、子どもをひき殺したその男は連行されるのだが、男は命の恩人であるマノロに「恩返しにモンスターについて知っていることを教える。モンスターが子どもを殺して埋めた場所を知っている」と言う。

真夜中、マノロは男が教えた場所を掘りに行き、少女の死体を見つける。
マノロは男がモンスターなのではないかと疑い始めるが、スクープに対する強い欲望から、警察に通報せずそのまま少女の死体を埋めなおすのだった。



オープニングから、この男が人を殺したであろうことが読み取れるのだが、人のよさそうな姿やリンチにあっている痛ましい姿を見ていると、彼が加害者なのか被害者なのかわからなくなる。
この映画は、一見普通に見える人間の持つ、意外性や心の闇を描いて、誰でも彼のようになりうる可能性をぼんやりとだが示唆させる。
そしてその男がモンスターだと嗅ぎ取り、彼を取材し特番でスクープとしてとりあげようとしたマノロは、結局のところ彼を釈放する結果をまねいてしまうのだ。
人の命や真実を尊重しようとしながらも、スクープを追い続け視聴率をあげることに重きを置かざるを得ないマスメディアのありかたを、非難するというよりは私たちに問うような形で描いている。
ワタシはとっさに「豊田商事会長刺殺事件」を思い出してしまったのだけれど。


実在した連続殺人事件にインスパイアされたというだけあって、終始緊張感に溢れたストーリーは、見終わった後までも胸に重々しいものを残す。
いつも犠牲になるのは、守るべき弱いものたちなのだと思うといたたまれない。

結局犯人を野放しにしてしまったマノロたちは、そのことを警察に告げるでもなく重苦しい思いを自分たちの胸にしまってババオヨを後にする。
マノロたちの胸の中の重苦しさといたたまれない思いが、この映画の後味の悪さとして私たちの胸に刻み込まれる感じだ。


後味は悪いけれど、映画としては秀逸。
ババオヨの人々の汗の臭いが感じられるような、臨場感あふれるいい映画だと思った。
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする