K本に行くと、タクシー運転手と旅館の番頭役をお願いしている二人が来ていた。二人とも当ブログや、テストプリントを見た人から話を聞いて、先発隊の名演技の件はすでに知っていた。たまたまアクションを伴うカットで、夫婦役の意外な演技力を引きだす結果となったが、この二人は特にそういうシーンはない。 今回漏れ伝わるところによると、もっとも鼻息が荒いのが、小道具の帽子を自腹で用意してしまったタクシー運転手役のKさんである。山登りするのでいやに黒いが、撮影前に山に行くので、さらに黒くなるらしい。オープンカーのタクシーならともかく、私が脱色しないとならないが、デジタル処理は、こういうしかたがない場合だけ使うべきである。飲むにつれ声がでかくなるKさんは意外に神経が細かく、左手と左足が同時に出てしまう可能性があるのもこの人であろう。演技に悩んで真顔になっているところが目に浮かぶが、その点は事前に軽く一杯引っ掛けておいてもらえば問題はない。「たった1カットで終ったりして」。と私は軽く釘を刺されたが、登場シーンが少なく、編集者が眠狂四郎のような冷酷な奴なので、今のところなんともいえない。 番頭役のTさんは、撮影日を考えて床屋にいったという。ちょっとイメージより短かくなっていた。旅館の番頭は、河童が隠れたマテ貝の穴を、そうとは知らず客のステッキでグサリとやって、河童の腕を折ってしまう。これが物語の発端となるわけである。Tさんに入手してあった黒のはっぴを着てもらったら、これを着たまま生まれてきたかのように似合っていた。
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