渡辺松男研究45(2017年1月実施)『寒気氾濫』(1997年)
【冬桜】P153
参加者:泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆
司会と記録:鹿取 未放
377 ひとひとりおもえば見ゆる冬木立ひかりは幹に枝に纏わる
(レポート)
372(空中はひかりなるかや一葉の樹から離れて地までの間)と373(ひとひとりわれには常に欠けていて日向(ひなた)行くときふと思い出す)の歌を受けての一首か。「ひとひとり」というのはこの歌では影ではなく光?光や影ではなくそれを超越した不可視の魂だろうか。ただ、「ひかり」への作者の情は肯定的で、幹や枝に戯れ纏いつくことを悦んでいるようだ。(真帆)
(当日発言)
★皆さんの意見を聞いていると、ある人を思えばと単純に取った方がよかったのかなと思います。
(真帆)
★うーん、でも一人の恋人ってあんまり特定したくない気もするんですよね。ただ、自分と同じ温
さをもった存在、その人と魂の交流がある、そういう存在が今は傍らにいないんだけど、その人
を想うことで冬の木立が見えてくる。そして木立の幹や枝にひかりが戯れている。憧憬のような
存在なんでしょうかね。自分の分身でもいいような気もするけど、次の「バスの来るまでを笑み
いしあなたなりき最後の声を思い出せない」を思うと恋人の方が素直に繋がりますね。(鹿取)
★見えないあなた、とか出てきて、特定しない方がいいのかなあと。恋人の一部かもしれないけど。
恋人ととるとちょっと……(鈴木)
★でも、恋人ととっても通俗的じゃなくて詩に飛翔している美しい一連だと思います。(鹿取)