かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠261(中国)

2014年08月05日 | 短歌一首鑑賞

  馬場あき子の旅の歌【飛天の道】『飛天の道』(2000年刊)167頁
                   参加者:N・I、Y・I、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
                   レポーター:T・H
                    司会とまとめ:鹿取 未放


201 烏魯木斉に天池(てんち)あり標高二千なり西王母の雪風に匂へり

     (まとめ)(2010年3月)
 その名もズバリ天池という風光明媚な池が烏魯木斉にある。標高二千という高度にあって、周囲には雪を頂いた山々が連なっている。山々の峰には雪が積もっていて、風に乗って雪が匂ってくる。それは西王母の降らす雪であって、清新このうえもない。
 二句め「あり」、三句め「なり」と二箇所に切れがあり、結句は「匂へり」とi音の脚韻を踏んで力強くシャープなリズムを生み、作者の感動の強さを伝えている。もっといえば二句めの「あり」は音数上は「天池あり/標」と句割れになっており、さらにそれが切れ目でもあるという複雑なリズムを作っている。
 ところで作者が訪問した時の天池は、ひっそりして人もまばらだったのだろうか。いまや観光地化してレジャーランドのようなにぎわいで、国の内外から連日観光客が訪れてごった返していると聞く。土産物屋などもたいへんな数のようだ。
     (鹿取)
 

       (レポート)(2010年3月)
 烏魯木斉には、標高2000メートルのところに天然の池がある。雪消水で作られた池であろう。「西王母の雪風に匂へり」とはどんな雰囲気なのであろうか。神々しい雰囲気、それは下界とは違い、とおい過去の伝説を思い出させる。(T・H)
 西王母:中国の伝説上の仙女。災害と刑罰を司る、と考えられた。漢の武帝が長命を願って
       いることを知り、3000年に一度実がなるという仙桃を捧げた、と言われている。