かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠259(中国)

2014年08月03日 | 短歌一首鑑賞

  馬場あき子の旅の歌【飛天の道】『飛天の道』(2000年刊)166頁
                    参加者:N・I、Y・I、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
                    レポーター:T・H
                     司会とまとめ:鹿取 未放


199 おお天山その新雪のかがやける静かなる身もて機窓に迫れ

        (まとめ)(2010年3月)
 全体に昂揚した詠いぶりである。新雪を被った天山の偉容に圧倒されている作者が見えるようだ。「迫れ」は命令形ではなく、「こそ」という係助詞の省略された已然形だろうか。已然形なら「新雪かがやく天山が機窓に迫ってきたことよ」という意味になり、山自体がこちらに向かって迫ってくる迫力を感じる。
 ネパールでは「夢と思ひしヒマラヤの雄々しきマチャプチャレまなかひに来てわれを閲せり」と詠われているが、この天山の歌よりおよそ5年後のことである。
 こちらも『飛天の道』あとがきから作者のことばを少し引用する。(鹿取)

   旅では白雪を被いた天山の並はずれた大きな美しさに日々感嘆の声を発していた…… (馬場あき子)


     (意見)(2010年3月)
★どちらが迫ってくるか錯覚。ネパールの山の歌と歌いぶりが違う。(慧子)


        (レポート)(2010年3月)
 今、飛行機の窓外に天山山脈が見えてきた。その山頂は新雪に輝いている。シルクロードは天山南路・天山北路と、その山脈の裾野の南北を東西に走っている。山々の中には7千メートルをこすものもある。当然、雪を被っている。新雪を被って、照り輝いている様子に、今、馬場先生は感激を新たにしておられる。「静かなる身もて機窓に迫れ」「迫ってくる」ではなく、「機窓に迫れ」と呼びかけておられる先生のお気持ちは、どんなものなのか?「迫ってきてくれ」とは?(T・H)