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密謀(下) 藤沢周平著

2008年12月28日 00時07分21秒 | 書評 歴史系
藤沢周平の 密謀(下)では
いよいよ関ヶ原の合戦の大舞台で上杉景勝、直江兼続が
どんな思いで徳川家康に対抗していったかが明らかにされます。



「密謀」では主人公は兼続ですが、
石田三成の人物造型が秀逸だと思いました。

俊秀で頭の回転が早く、
政治状況を見極める力はあるものの、
人徳に欠け、豊臣恩顧の大名をまとめ切れず、
器量としては徳川家康に劣る、
そんな人物像を洗練された文章で表現されています。

一方で天下取りに向けて手練手管を使う家康も
豊臣恩顧の大名たちがいつ裏切るのか、
猜疑心や不安感に苛まれながら関ヶ原に臨んでいる
心理がこと細かに描写されています。

歴史に「もし」はないでしょうけど
石田三成にもし人間に対する深い理解があれば、
関ヶ原の合戦前夜の展開は
もう少し変わっていたのかもしれない、
そう思わせる小説でした。

物語の終盤、兼続は家康追討のため
景勝に「二万の兵を自分に預けるよう」頼みます。
しかし、景勝は認めませんでした。

なぜ、景勝は家康と雌雄を決しなかったのか?


人間心理の機微を描くことにかけては
やはり藤沢周平は一流だと思いました。

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