徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

2015/16シーズンの「インフルエンザ性脳症」続報

2016年03月21日 06時22分26秒 | 小児科診療
 先日扱ったインフルエンザ性脳症の続報です。
 なんと発生数は「過去5年間で最多」となっています。

 今シーズン流行しているA型はA(H1N1)のパンデミック型。
 私の知識では脳症のリスクが高いのはA(H3N2)で、A(H1N1)は肺炎の合併が高いと思い込んでいましたが、脳症も多いのですね。
 死亡5例の年齢を見ると、ハイリスクの1~3歳が多いわけではないこともわかります。
 今までの常識では推し量れないところがあり、気を引き締めたいと思いました。
 ただ、私の周囲では熱性けいれんも少なく、危機感は感じないまま流行が終息に向かっています。

■ インフルエンザ脳症が新たに12例、4歳児の死亡例も
2016/3/14:m3.com
 今シーズンのインフルエンザ脳症の報告が増えている。2月28日までの1週間で、全国から新たに12例の報告があり、累計で79例となった。死亡報告も4歳児の死亡例が1例あり、計5人となった。死亡報告の割合は6.3%で、2009/10から14/15シーズンの6.8%とほぼ同水準にある。インフルエンザ流行が依然として警報レベルにあり、医療機関は引き続き、インフルエンザ脳症などの重症例の発生に留意しなければならない。
 国立感染症研究所がまとめている感染症発生動向調査によると、2015年36週から2016年8週までに、189例の急性脳炎が報告されている。このうち、病型がインフルエンザウイルスと記載された症例を抽出したところ、第8週に新たに12例が報告され、累計で79例となった。
 発生時期を見ると、2015年48週に1例目が報告された以降、50週からは毎週報告されており、症例数は流行の拡大とともに増加する傾向にある。
 79例のうち死亡報告は5例で、2歳が1例、4歳が1例、8歳が2例、40歳代が1例となっている。いずれもインフルエンザウイルスのタイプはA型だった。発生週を見ると、2015年50週に1例あったほかは、2週、5週、6週、8週に1例ずつ発生している。
 国立感染症研究所によると、新型インフルエンザ(A/H1N1pdm2009)が発生した2009/10シーズンに319例のインフルエンザ脳症が報告されている。以降は、80例、88例、64例、96例と推移し、昨シーズンは101例が報告されている(IASR 2015;36:212-3.)。この間の死亡報告例は6.8%だった(表1)。



 感染研は報告書の中で、「インフルエンザ脳症は小児での報告例が多いが、20歳以上の成人例の報告も各シーズンで変動はあるものの、10~35%で認められることにも注意が必要」と指摘している。今シーズンも同様の傾向にあり、小児だけでなく成人例でも警戒は必要だ。


 最新情報は毎日新聞の記事から;

■ インフルエンザ脳症161人 過去5年間で最多
毎日新聞2016年3月20日
 インフルエンザの感染に伴い、けいれんや意識障害などが起きる「インフルエンザ脳症」を発症した患者数が今季は161人と、過去5年間で最も多くなっていることが、国立感染症研究所の調べで分かった。乳幼児の感染は死に至ることもあり、注意を呼びかけている。
 インフルエンザ脳症は、急な高熱の後、突然けいれんが続いたり、意味不明の言動や意識障害を起こす症状。体内のウイルスへの免疫反応が激しすぎて発症するとみられている。症状が重い場合、運動まひなどの後遺症が残り、寝たきりになってしまうこともある。
 感染研によると、今季は今月6日までに全国で患者161人の報告があり、昨季の101人を大きく上回っている。このうち15歳未満が全体の86%にあたる138人と、例年の60~70%を超えて高い割合を占めている。
 インフルエンザ脳症は、新型インフルエンザが流行した2009~10年のシーズンも、319人と患者が増えた。今季も同種類のウイルスが流行の主流となっていることが増加の一因とみられる。
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