徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

「黙食」は必要か?

2022年12月11日 19時47分04秒 | 小児科診療
大人は飲み会でクラスターを発生させる中で、
小学生は「黙食」を続けてきました。

文部科学省は11月29日、学校での給食時において、
適切な新型コロナ感染対策を取っておれば「黙食を求めない」と発表しました。

第8波がダラダラ続くこのタイミングで、
黙食は解除可能なのでしょうか?

また、「適切な新型コロナ感染対策を取っておれば」という条件がくせ者です。
おそらく換気とマスクを指していると思われます。

十分な換気(窓全開?)とマスク着用をすれば、
黙食解除もありかもしれません。

しかしもう一つ大きな問題があります。
小学校世代のワクチン接種率の低さです。

最近、当院周辺の学校で学級閉鎖が相次ぎ、
モグラ叩き状態で収まる気配がありません。

件名の記事が目にとまったので紹介します。
玉虫色の記述で、答えがありませんが・・・。

「黙食」は必要か? 小学生と医療従事者の現状をふまえて
倉原優(呼吸器内科医)

・スーパーコンピュータ「富岳」による飲食時のマスクの効果をシミュレーションによると、宴会で同じテーブルなどの近い距離にいる場合、感染リスクは高いですが、この経路をマスクでシャットダウンできれば感染リスクを大きく低減できることが示されました。
・「富岳」は、その他飲食店や観光バスのシミュレーションのデータも提示していますが、総合的な飛沫・エアロゾル対策によって、感染リスクは3分の1程度まで減少させることが可能です。



・学校向けの衛生管理マニュアルでは、
①食事の前後の手洗いを徹底
②食事時に飛沫を飛ばさない(机を向かい合わせにしない、大声での会話を控えるなど)
の対応が必要とされています。
「黙食」ではなく、せいぜい「静食」くらいの扱いですが、当初厳しいニュアンスの通達だったため「黙食」が当たり前になりました。
・小学生の「黙食」について議論する際、高齢者施設とは異なり新型コロナワクチン接種が進んでいない現状と向き合う必要があります。2回目接種まで済んでいるのは約20%で、3回目接種にいたってはようやく5%を超えてきたレベルです。
・接種率が低い状況で緩和に踏み切る場合、ある程度クラスターが発生するリスクが高くなることを、自治体・学校・親は理解しておく必要があります。
・「感染リスクを減らすために黙食を継続すべき」も「その他の感染対策をしっかり講じているのであれば黙食を継続しなくてもよい」も、私はどちらも間違いではないと感じています。



・医療従事者は、病院の休憩室などでは基本的に「黙食」が徹底されています。これは、院内クラスターが出た場合、できるだけ濃厚接触者にならないようにするためでもあります。
・パンデミック晩期まで、国内で「黙食」が継続されるシーンがあるなら、それは「医療従事者の食事」なのかもしれません。
・院内クラスターが出ている病院で、同じ病棟内の医療従事者が休憩室で食事するなら「黙食」は必要でしょう。
・反面、幼稚園・保育園・小学校の給食で「黙食」まで強いる必要はないかもしれません。前を向いて食事を摂り、大声を出さずに会話する「静食」スタイルから始めている自治体もあります。

<参考>
(1) 第八波にむけた感染拡大抑止のための「富岳」飛沫シミュレーション(URL:https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/022/682/20221201_06.pdf)
(2) 「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」の変更等について(URL:https://www.mext.go.jp/content/20221129-mxt_kouhou01-000004520_4.pdf)
(3) 学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~(2022.4.1 Ver.8)(URL:https://www.mext.go.jp/content/20220404-mxt_kouhou01-000004520_01.pdf)
(4) データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-(URL:https://covid19.mhlw.go.jp/)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『そばアレルギー』を血液検... | トップ | 花粉はどのように屋内に侵入... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小児科診療」カテゴリの最新記事