徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)はホントに危険なのか?

2015年03月29日 08時34分59秒 | 小児科診療
 ワクチン接種の現場にいる者として「HPVワクチン(通称「子宮頸がんワクチン」)はホントに危険なのか?」を知りたいです。
 最近の記事を紹介します;

■ 子宮頸がんワクチンで新研究班 信州大などに設置
共同通信:2015/03/28
 接種後に全身の痛みやしびれなどが報告されている子宮頸がんワクチンで厚生労働省は28日までに、接種後に生じるさまざまな症状と接種との因果関係を調査する新たな研究班(研究代表者・池田修一信州大教授)を設置することを決めた。
 信州大のほか全国の7大学病院が参加し、4月から1年間研究を行う。池田教授は接種後に生じる体の痛みや運動障害といった症状のほか、記憶力や読解力の低下などの「高次脳機能障害」と呼ばれる症状にも着目しており、ワクチン接種とこれらの症状との因果関係や治療方法についても調べる。


 HPVワクチンが引き起こす病態について「HANS症候群」という概念が提唱されたのは2014年7月のこと(以前にも取りあげました)。

■ 日本線維筋痛症学会が「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」を提唱
MTPro:2014.9.17
 子宮頸がん予防のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種と,中高生を中心とした全身性疼痛などとの因果関係が指摘されている中,日本線維筋痛症学会(理事長=東京医科大学医学総合研究所所長・西岡久寿樹氏)は,第6回学術集会(9月13~14日)で記者会見を開催。HPVワクチン関連の副反応について,厚労省副反応検討部会が接種部位以外の広範囲疼痛および運動障害のみを重篤患者と発表していることを問題視し,重篤症状では中枢神経症状が群を抜いて多いことから過小評価の可能性があると指摘。HPVワクチン副反応の適正な評価のために「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(Human papillomavirus vaccination associated with neuropathic syndrome;HANS)」を提唱し,診断予備基準案を発表した。




■ 疑問その1:HANS症候群は死亡率100%?
さて、この診断基準、どう考えても科学的とは思えない点がひとつ。
それは最初の項目である「1.HPVワクチン予防接種後(期間は限定としない)」です。
(期間は限定しない)とは、1週間あるいは1ヶ月後のみでなく、1年から数年以内も発症する可能性を考えての設定なのでしょう。
しかし、10年後、20年後も入るのは変では?
例えば、HPVワクチンを接種した女子は、幼少時に他のワクチンも受けているはずです。「HPVワクチン」という単語を「BCG」や「3種混合ワクチン」「麻疹ワクチン」などの置き換えても通用してしまう矛盾。
さらに云えば100年後も入るので、寿命が尽きますから、ほぼ「死亡率100%」ですよ!?
アカデミズムの代表であり医学学界の重鎮達が、このようなアバウトな診断基準を設けたことに疑問を持つ人は多いと思われます。

■ 疑問その2:発生率の疫学データを見せて欲しい
一般論として、ワクチン後の有害事象を副反応と認定するのは、不活化ワクチンでは困難な作業です。
このときに有用なのが「疫学」的手法です。

日本でHPVワクチンを接種した女子は約300万人。
では、ワクチンを接種していない同年代の女子300万人を調査して、同様の症状を訴える人数を比較すればよいのでは?
これで明らかに差が出るのであれば、誰もが納得しますよね。
しかし、この数字をまだ見たことがありません。

■ 疑問その3:AS04というアジュバント(免疫増強剤)
それから、ワクチンの成分で問題にされているのは「アジュバント」(免疫増強剤)。
サーバリックス®に使用されているのは「AS04」という新しい物質です。
これが「危険である」とやり玉に挙げられています。
しかし、もう一つのHPVワクチンであるガーダシル®には、日本の他のワクチンにもたくさん使用されてきたアルミニウム塩が採用されています。三種混合(DPT)など、何十年も使用されてきましたが、危険視されることはなく、当然全身の痛みなどの副反応も問題になったことはありません。
もし、新しいアジュバント「AS04」が問題ならば、サーバリックス®の方が発生頻度が多くなるはずですよね。
しかし、HPVワクチン接種後の副反応の発生頻度はサーバリックス®とガーダシル®とで差がないとのこと。
すると、アジュバントは関係ない、と判断するのが常識でしょう。


・・・以上の私の疑問が解決するのはいつになるのでしょう。現場は困っていますので、できるだけ早く「科学的に」解決していただきたいです。
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2 コメント

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子宮頸がんワクチンの真実が知りたい (caolila)
2015-05-29 12:58:04
子宮頸がんワクチンの、副作用といわれている方の報道やブログを見て、『ワクチン接種後、1年後になって副作用が…』『その後、日々悪化している』 原因が、本当にワクチンなのか、疑問を抱き、こちらにたどり着きました。
正直、今では、子宮頸がんワクチンを打った方が、その後、どのような病になったとしても、『子宮頸がんワクチンの副作用』だと言われてしまうのでは?と思っています。
自分の症状に、『答え=病名』が欲しい気持ちは重々わかるのですが、あまりに盲目的になってはいまいかと思うのです。この問題が、冷静に、科学的に解決することを願ってやみません。
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疫学データが出ました。 (管理人)
2015-05-30 07:31:09
管理人です。
私も真実が知りたい人間の一人であり、この問題をウォッチしています。
ブログ中の「疑問その2:発生率の疫学データを見せて欲しい」に対する答えが最近出ました。
2015.5.14「HPVワクチン副反応問題、その後」に提示しましたので、ご参照ください。
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