徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)関連記事(2015年4月)

2015年04月04日 07時41分44秒 | 小児科診療
 賛否両論、異論反論。
 昏迷状態の日本。

 まずは推進する産婦人科医の声明を紹介します。

子宮頸がんワクチンに対する国民に向けた声明(吉村やすのり、慶応義塾大学産婦人科教授、2015.3.31)

 「接種後に○○が生じたからワクチンのせいだ!」という短絡的思考に終始することなく、科学的に論証し、病気のインパクトとワクチンの副反応を冷静に比較検討して評価する必要性を説いています。

 次に、メディアの報道を。

子宮頸がん:ワクチンの健康被害 国の救済ストップ(毎日新聞、2015.4.3)

 この記事の中で、以下の文言が?と気になりました:

 医師で弁護士の大磯義一郎・浜松医科大教授(医療法学)は「副作用の診断基準がはっきりしない中での判断は難しい面もあるが、健康被害を幅広く補償するのが救済制度の趣旨で、因果関係は厳密な証明ができなくても認めるべきだ。・・・」

 「原因がはっきりしなくても、実際に苦しんでいる患者がいる以上、国は治療の支援をしてほしい」と母は訴える。


 記事は「ワクチンと健康被害との因果関係が証明できなくても国は補償すべきだ」という論調です。
 確かに、日本の薬害の歴史をひもとけば、国が責任を認めるまでには多大の労力と時間を要して来ました。
 例えばサリドマイド事件では、発売国のドイツで危険性が発覚して発売中止になってから日本が措置を取るまでに時間のずれがあり、さらに薬害裁判が和解に至るまでに10年を要し、国への信頼は失墜しました。
 予防接種を仕切る国と接種を受ける国民との間に信頼関係が存在しないことがそもそもの問題でありこれを放置したまま議論を続けてもかみ合わないことは明白です。

 しかし今回、世界を見渡すとHPVワクチンの副反応で混乱しているのはほぼ日本のみ(フランスも?)のようです。
 非科学的な経緯のまま、勢いで国が補償をすれば「ワクチンの副反応と認めた」ということになってしまい、「日本の常識は世界の非常識」と批判されることを免れません。
 議論を日本の中で完結しようとしても無理があるようですから、世界に視野を広げて解決を図るというのはいかがでしょうか。
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