徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

子どものインフルエンザ、重症化しやすいハイリスク群は?

2014年12月11日 21時20分44秒 | 小児科診療
 インフルエンザの診療をしていて、昔から不思議に思ってきたことがあります。
 教科書には「喘息患者は重症化しやすい」と記載されているのですが、そういう例に出会う経験は希。
 2009年の新型インフルエンザ(H1N1)の時に感じたくらいでした。

 先日、それを裏付けるような報告を見つけましたので、紹介します;

小児のインフル,重症化の高リスク群は?
~現行GLに記載ない「早産児」を新たに特定,英・システマチックレビューとメタ解析
(2014.12.9:MTPro)
 世界保健機関(WHO)などの現行ガイドライン(GL)ではインフルエンザ関連合併症の高リスク群に対するワクチン接種が推奨されているが,高リスク群の定義はエビデンスではなく専門家の統一見解に基づいており,小児に限定した危険因子は明らかではない。英・University of OxfordのPeter J. Gill氏らは,27件の研究のシステマチックレビューとメタ解析を実施した結果,現行GLで示されている「神経疾患」「免疫抑制状態」「糖尿病」「2歳未満」などに加え,小児では「早産児」も危険因子であることが分かったとLancet Respir Med(2014年12月4日オンライン版)で報告した。一方で,今回の解析では,現行GLにある肥満喘息などの呼吸器疾患は,小児では危険因子ではないことが示唆された。

約1万4,000例のデータを解析,早産児のインフルエンザ関連合併症リスクは4倍超に
 Gill氏らは2013年4月3日までのMedline,Medline In Process,Embase,Science Citation Index,CINAHLの各データベースを検索し,インフルエンザまたはインフルエンザ様症状でプライマリケア施設または外来を受診した小児の基礎疾患および合併症に関するデータが報告されている研究を特定。27件の研究の計1万4,086例を対象に,入院をインフルエンザ関連合併症の代替評価項目として,各危険因子を有する場合とない場合とを比べたオッズ比(OR)を算出した(図)。
 単変量解析で入院の強い危険因子であることが判明したのは,早産(OR 4.33,95%CI 2.47~7.58),神経疾患(同4.62,2.82~7.55),免疫抑制状態(同2.39,1.24~4.61),糖尿病(同2.34,1.20~4.58),鎌状赤血球症(同3.46,1.63~7.37),2歳未満(同2.51,1.71~3.69)であった。
 一方で,反応性気道疾患(RAD)を含む呼吸器疾患(同1.19,0.64~2.22),喘息を含むRAD(同1.36,0.82~2.26),肥満(同0.99,0.61~1.62)は入院の危険因子ではなかった。
 また,4件の研究の小児1,612例を対象に,2歳未満であることも危険因子として含めた多変量解析では,2つ以上の危険因子を有する群の入院率(124例中92例,74%)が単独因子群(817例中428例,52%)に比べて高いことも示された(群間差22%,95%CI 13~30%,P<0.0001)。


世界の乳児の10%が早産児,「重要な意味を持つ結果」
 今回特定された危険因子のうち「神経疾患」「免疫抑制状態」「糖尿病」は米国予防接種諮問委員会(ACIP),英国保健省,WHOの3つのGLで高リスク群として示されている危険因子と合致しており,「鎌状赤血球症」および「2歳未満」はACIPとWHOの2つのGLに合致していた。
 一方,肥満はACIPとWHOのGLで,呼吸器疾患は全てのGLで危険因子とされているが,これらは今回の解析では危険因子ではなかった。ただし,Gill氏らは疾患の重症度を考慮するにはデータが不十分であったと説明。「重症例に限定すると異なる結果になる可能性がある」としている。
 また,「早産」は前述の3つのGLでは危険因子とされていなかった。この点について,同氏らは「世界の乳児の約10%が早産児であることを考えれば,早産がインフルエンザ関連合併症の強い危険因子として新たに特定されたことは重要な意味を持つ」と強調している。

予防接種プログラムでは特定された高リスク群に照準を
 Gill氏らは今回の結果について,「神経疾患,鎌状赤血球症,免疫抑制状態,糖尿病,2歳未満をインフルエンザ関連合併症の危険因子として現行GLに含めることを支持するもの」とした上で,「同合併症を予防するための介入はこれらの高リスク群に優先的に実施すべきだが,その他,特に複数の危険因子を有する小児や重篤な基礎疾患を有する小児に対しても考慮すべきである」と述べている。
 さらに,同氏らは各国での季節性インフルエンザワクチンの接種率が依然として不十分であることを指摘。それを踏まえて,「国家的なワクチン接種プログラムで最大の効果を得るためには,今回同定された高リスク群に照準を合わせた接種率向上のための戦略が必要だ」と付言している。

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