徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

出口の見えないHPVワクチン問題

2016年04月23日 06時19分05秒 | 小児科診療
 最近の動きです。
 ますます出口が見えなくなってきた感があります。
 “健康被害者”は訴訟に踏み切りました。

■ 【子宮頸がんワクチン】接種後に全身痛み…10代女性ら 国と製薬会社を提訴へ
2016.3.30:産経新聞
 接種後に全身の痛みなどの症状が報告されている子宮頸(けい)がん(HPV)ワクチンについて、副反応被害を訴える17~21歳の女性4人が30日、都内で会見し、国と製薬企業2社に損害賠償を求める訴訟を起こすことを明らかにした。HPVワクチンをめぐる訴訟は初めて。
 同日、結成された全国弁護団によると、原告に加わる意向を示しているのは30日時点で4人を含む計12人。原告を募り6月にも東京、大阪、名古屋、福岡各地裁に提訴する方針。
 国は平成25年6月から接種を積極的に勧めていないが、裁判の行方は積極勧奨を再開する判断にも影響を与える可能性がある。
 HPVワクチンは国の承認を受けた21年12月、国内での販売を開始。22年に国の補助事業が開始され、多くの自治体で無料接種が受けられるようになった。25年4月から定期接種としたが、6月に積極勧奨を中止している。26年11月までに約338万人が接種。厚生労働省はこのうち健康被害報告のあった2584人を追跡調査し、昨年2月時点で未回復の患者が186人いたとしている。
 弁護団の水口真寿美共同代表は会見で、副反応被害を「薬害」とし、「国がワクチンを承認した経緯や公費助成、定期接種、接種時の説明など、それぞれ問題があった」と指摘した。具体的な損害賠償請求額などは今後、精査する。


 一方、関連学会は声明を出しました。

■ 子宮頸がんワクチンを推奨 小児科学会など17団体が見解
2016.4.21:産経新聞
 全身の痛みやしびれなどの副作用が報告されている子宮頸がんワクチンについて、日本小児科学会など17団体は21日までに、ワクチン接種後の診療体制などが整備されたとして、積極的な接種を推奨するとの見解を発表した。
 見解では、子宮頸がんワクチンを導入したオーストラリアや米国など複数の国で、子宮頸がんの前段階の病変の発生が約半分に減っており、有効性は明らかと指摘。健康被害に遭った人への救済が開始されたことも推奨する理由として挙げた。


 当事者の若年女性たちは・・・

■ 子宮頸がんの検診は低迷 20~24歳では68%も未受診
2016.4.13:産経新聞
 ほとんどの女性が子宮頸(けい)がんという病気は知っていても、ウイルスが原因になると知っているのは33%、検診の受診率も依然低いとの実態が、婦人科系疾患の予防を啓発している一般社団法人、シンクパール(東京)の調査で分かった。
 対象は女性向け健康情報サイト「ルナルナ」を利用する12~52歳の8132人。20歳から2年に1度の受診が勧められる子宮頸がん検診だが、未受診が20~24歳では68%、25~29歳も36%だった。20~24歳の受診のきっかけは「自治体のお知らせや無料クーポン」が51%と最多。同法人は、働く女性が増えたのを受け、企業も健康診断の項目に取り入れるなどの対策が必要だとしている。


 というわけで、私にはこんな構図が見えてきます。
・日本では子宮頸がんについての教育・啓蒙がなされていない。ワクチンについても同様。
・すると、マスコミの扇動情報に振り回され、その危険性だけが入ってくる情報となりがち。
・学会が見解を出しても、厚生労働省が動かないので状況は変わらず。

 イギリスでは、実際に接種する当事者、つまり子どもたちに病気とワクチンの教育をしているそうです。ワクチンの危険性の前に、病気の怖さとワクチンの効果を正しく知っているので、マスコミ情報に流されにくく、接種率は80%以上を維持してます。

<参考>
■ 「HPVワクチンにみる日米欧のリスクコミュニケーションの比較検討」(くすりの適正使用協議会海外情報分科会)
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