goo blog サービス終了のお知らせ 

徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

ゾコーバ®の使い方

2022年11月28日 06時17分46秒 | 小児科診療
日本感染症学会がゾコーバの使い方を含めたガイドライン「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版」を11/22に発表していました。
前項目の私のコメントを、より具体化したような内容なので、
引用させていただきます。

一言でいうと、

重症化リスク因子のない患者で、
症状(高熱・咳・咽頭痛)がきつい場合に、
発症後72時間以内に投与を考慮する、

ということになりそうです。

・COVID-19の5つの症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、倦怠感[疲労感])への効果が検討された臨床試験における成績等を踏まえ、高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討する。

・重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は慎重に判断すべきということに留意して使用する。

・重症化リスク因子のある軽症例に対して、重症化抑制効果を裏付けるデータは得られていない。

・SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから遅くとも72時間以内に初回投与する。

・(相互作用の観点から)服用中のすべての薬剤を確認する(添付文書には併用できない薬剤として、降圧薬や脂質異常症治療薬、抗凝固薬など36種類の薬剤を記載)。

・妊婦又は妊娠する可能性のある女性には投与しない。

・注意を要する主な副作用は、HDL減少、TG増加、頭痛、下痢、悪心など。


今回は新たに設けられた「緊急承認」の制度(※)で承認を行ったため、シオノギ製薬は有効性や安全性についての追加のデータの提出などを行った上で、今後1年以内に通常の薬事承認の申請を行うことが義務づけられています。
そしてシオノギ製薬は、通常の薬事承認を目指すことを発表しています。

※ 緊急承認制度とは、今年(2022年)5月に新設され、安全性は従来通りですが、有効性は「推定」によって承認できる制度です。

今回の承認にはどうも“大人の事情”が見え隠れすると感じるのは、
私だけでしょうか・・・。


<参考>
■ ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会
■ 新型コロナ 国産の飲み薬「ゾコーバ」が承認 効果は
■ 「高価なかぜ薬」緊急承認の不可解〜経口COVID-19治療薬ゾコーバをめぐって
東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長 川口浩


ゾコーバ® はタミフル® になり得るのか?

2022年11月27日 14時26分38秒 | 小児科診療
2022/11/22にゾコーバ®(一般名:エンシトレルビル )が緊急承認されました。
対象は「12歳以上のリスク因子のない新型コロナ患者」です。

今までも新型コロナ用内服薬は
・ラゲブリオ
・パキロビッド
の2種類がありましたが、
これらは「重症化リスク因子のある新型コロナ患者」が対象でしたので、
持病がなく健康体の人が新型コロナ陽性になっても使えませんでした。
こちらのサイトにわかりやすい一覧表がありましたので引用させていただきます;



ですから重症化リスク因子のない患者に使える“画期的”な薬が登場したわけです。

では季節性インフルエンザに対するタミフルのように使えるか、
手に入るかというと、
そういうわけではなさそうです。

発売後2週間は、登録された医療機関と薬局経由でないと処方・入手できません。
同サイトよりフロー図を引用します;



当院は小児科であり、
パキロビッド処方医療機関に登録してきませんでしたので、
今回の措置から外れてしまい、
今のところ処方できません。

また、併用禁忌薬がたくさんたくさんあり(後述)、
それをチェックリストで確認し、
かつ同意書を作成する必要があり、
なんだかハードルが高いのです。

つまり、まだまだタミフルのように普及するレベルではないということ。

このゾコーバという薬、
記憶されている方もいると思われます。

そして内容を書き換えて再申請した結果、
今回は承認されたのです。

その中身は、
有効性を評価する症状を12項目から5項目へ減らしたもの。
つまり、
「12項目では内服群と非内服群で症状改善に差がなかった」
けど、
「5項目に減らしたら差が出た」
とのこと。
かつ評価するのは「症状改善」ではなく「症状消失までの時間」に変更。

なんだかなあ・・・これって“ずる”じゃないんですか?
まあ、有効性は微妙なんですね。

その5項目とは・・・
1.鼻水または鼻づまり
2.喉の痛み
3.咳の呼吸器症状
4.熱っぽさまたは発熱
5.けん怠感 (疲労感)
※ 「快復」の定義は、5 症状のすべてが軽減か、もしくはそれ以上悪くならなかった状態。

開発側の言い分は、
・従来の抗ウイルス薬はデルタ株流行期に治験された。
・今回の治験はオミクロン株流行期に行われたため、症状が変化したためアレンジが必要だった。
とのことです。

あれ?
「入院」とか「死亡」とかは入ってない・・・、
つまり「重症化予防」のデータがありません。

開発側の言い分は、
・重症化リスク因子のある患者が対象ではない
・重症化リスク因子のない患者用に開発した薬
とのこと。

タミフルも発熱期間を1日短くする薬効ですが、
ゾコーバは症状が消える期間が8日 → 7日に短くなる薬効。
この臨床試験は日本・韓国・ベトナムで行われました。
さらに日本人に限定すると症状短縮が1日ではなく6時間のみ、というデータだそうです。

突っ込み処がいくつもあり、
タミフルが登場したときよりインパクトがないですねえ。

また、こちらのサイトによると併用禁忌薬(36種類)は以下の通り;

▼ ピモジド、キニジン硫酸塩水和物(統合失調症等治療薬のオーラップ錠)
▼ ベプリジル塩酸塩水和物(狭心症等治療薬のベプリコール錠)
▼ チカグレロル、エプレレノン(心筋梗塞等治療薬のブリリンタ錠)
▼ エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン(頭痛治療薬のクリアミン配合錠)
▼ エルゴメトリンマレイン酸塩(子宮収縮止血剤のメテルギン錠ほか)
▼ メチルエルゴメトリンマレイン酸塩(子宮収縮止血剤のパルタンM錠ほか)
▼ ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩(頭痛等治療薬のヒポラール錠)
▼ シンバスタチン(高脂血症治療薬のリポバス錠ほか)
▼ トリアゾラム(睡眠導入剤のハルシオン錠ほか)
▼ アナモレリン塩酸塩(抗がん剤のエドルミズ錠)
▼ イバブラジン塩酸塩(心不全治療薬のコララン錠)
▼ ベネトクラクス〔再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〕(抗がん剤のベネクレクスタ錠)
▼ イブルチニブ(白血病等治療薬のイムブルビカカプセル)
▼ ブロナンセリン(統合失調症治療薬のロナセン錠ほか)
▼ ルラシドン塩酸塩(統合失調症等治療薬のラツーダ錠ほか)
▼ アゼルニジピン(高血圧症治療薬のカルブロック錠)
▼ アゼルニジピン・オルメサルタンメドキソミル(高血圧症治療薬のレザルタス配合錠)
▼ スボレキサント(不眠症治療薬のベルソムラ錠)
▼ タダラフィル(肺動脈性肺高血圧症治療薬のアドシルカ錠)
▼ バルデナフィル塩酸塩水和物(勃起不全症治療薬のレビトラ錠ほか)
▼ ロミタピドメシル酸塩(高コレステロール血症治療薬のジャクスタピッドカプセル)
▼ リファブチン(抗菌剤のミコブティンカプセル)
▼ フィネレノン(腎臓病治療薬のケレンディア錠)
▼ リバーロキサバン(血栓塞栓症治療薬のイグザレルト錠)
▼ リオシグアト(血栓塞栓症治療薬のアデムパス錠)
▼ アパルタミド(前立腺がん治療薬のアーリーダ錠)
▼ カルバマゼピン(統合失調症等治療薬のテグレトール錠)
▼ エンザルタミド(前立腺癌治療薬のイクスタンジ錠)
▼ ミトタン(副腎がん治療薬のオペプリム)
▼ フェニトイン(抗てんかん薬のアレビアチン錠ほか)
▼ ホスフェニトインナトリウム水和物(抗けいれん剤のホストイン静注)
▼ リファンピシン(抗菌剤のリファジンカプセル)
▼ セイヨウオトギリソウ(St.John’sWort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品(各種ハーブなど)

・・・とても覚えきれません。

現在は新型コロナ関連の医療費は公費負担ですが、
来年4月には2類から5類へ変更されて保険診療になると噂され、
つまり3割負担になると思われます。
ゾコーバの薬価は、他の新型コロナ薬と同等であれば1クール10万円位でしょうから、3割負担でも3万円・・・。
「症状が消える期間が8日 → 7日に短くなる」
薬に3万円払うかというと、希望者は少ないと思われます。

以上、新薬ゾコーバについて、概観してみました。
「軽症者でリスク因子がない患者に使える!」
と鳴り物入りで承認されましたが、その内容は、

・症状がほんのちょっと短くなるだけ
・重症化は防げない?
・72時間以内に開始しないと無効
・飲み合わせが悪い薬がたくさん(31種類)
・まだ手に入りにくい
・高い

等々、問題点が山積み状態であることが判明しました。
皆さんはどう感じましたか?


<参考>
■ 誤解しないで 新型コロナ新承認薬「ゾコーバ」は簡単に処方できない
倉原優(呼吸器内科医)
■ 国産初の抗ウイルス薬の飲み薬「ゾコーバ」審議会で承認を了承 診療現場での意義や承認プロセスに疑問も
■ コロナ感染症の新たな経口治療薬「ゾコーバ錠」を緊急承認、多数薬剤と併用禁忌・注意ある点に留意を―厚労省
■ 塩野義の“コロナ飲み薬”、承認の可否判断が先送りされたわけ
■ 塩野義コロナ薬「承認見送り」の審議に残る違和感目立った「緊急承認」の制度趣旨との隔たり


子どもへの新型コロナワクチン、効果と副反応(2022年11月現在)

2022年11月24日 05時55分38秒 | 小児科診療
ワクチンを接種していない世代である子どもが、
新型コロナ流行の主役になりつつあります。

新型コロナワクチンは、
当初医療関係者へ、
その後高齢者に承認され、
徐々に年齢が下げられてきました。

・16歳以上:2020年12月
・12歳以上:2021年5月
・5~11歳:2022年1月
・6か月~4歳:2022年10月

しかし、接種率がなかなか上がらないようで、
2022年11月現在のリアルデータは以下の通り;
(12~19歳)
 2回接種完了者:74.3%
 3回接種完了者:42.7%
(5~11歳)
 2回接種完了者:19.1%
 3回接種完了者:4.7%

日本小児科学会は、乳幼児への接種を“推奨”しています。

テレビで報道される街の声を聞くと、
具体的に知りたいこと、つまり、
・有効性
・安全性
についての情報が今一つ伝わってこない、
と不安を感じてる人が多いように感じます。

2022年11月23日に開催された「東日本小児科学会」で、
新潟大学の斎藤明彦先生により、
保護者の悩みに答える形式で最新のデータが提示されましたので、
ここに提示します。

結論から申し上げると、

小児におけるオミクロン株に対する新型コロナワクチンは、
・発症予防約70%(ただし数か月間のデータ)
・入院予防効果40%(ただし重篤例予防は80%)
・副反応はほかの年齢層と同等か軽度

ということになります。

繰り返し単純なことを言いますが、
新型コロナパンデミックを乗り切るには、
国民の大部分が免疫を獲得する必要があります。

それを自然感染で獲得するか、ワクチンで獲得するか・・・

ワクチンはウイルスの一部を体に入れて、
ヒトの免疫システムをだまして免疫獲得させる技術、
自然感染はウイルス全部が体に入って暴れまくるので、
体へのダメージの強さは自然感染>ワクチンであることは明白です。

そして大きな違いは、
自然感染は周囲に広がる、
ワクチンは周囲に広げない、
こと。
この点が社会的インパクトに大きく影響します。

自然感染した場合は、
家族が濃厚接触者となり、
社会生活が制限されます。
高齢者が同居している場合は、
隔離・感染対策に最大限の注意を払う必要があります。

ワクチン接種では、
接種部位の腫れや痛み、
一過性の発熱はありますが、
接種した本人だけの問題にとどまります。

ワクチン接種のメリットとデメリットを比較して考えましょう。
私の印象は「季節性インフルエンザワクチンより有効」です。


1.有効性は?

(アメリカからの報告)
・デルタ株流行期では小児における入院予防効果は90%以上
・オミクロン株流行期では入院予防効果は約40%(ただし重症例は約80%予防、軽症例は約20%予防)

(ファイザー社のデータ)
・オミクロン株流行期の発症予防効果
(ただし観察機関中央値は3回接種後約2か月)
 6~23か月:75.8%
 2~4歳:71.8%

2.安全性は?

(ファイザー社のデータ)
・生後6か月~5歳未満における3回接種1か月後の中和抗体平均抗体価;
 6か月~2歳未満:1406.5
 2~4歳:1535.2
→ 16~25歳のワクチン2回接種後の抗体価と同等

(アメリカからの報告)
・5~11歳のワクチン副反応を解析(N=48795)
・ファイザー社製ワクチンの1回目と2回目の解析
→ 有害事象はまれ、心筋炎の頻度は低い

(アメリカからの報告)
・生後6か月~4歳に対するファイザー社製ワクチンの安全性を
 V‐safe システムで解析(N=接種890378、副反応報告8541)
(6か月~2歳)
 局所反応:①19.0%、②18.3%
 全身反応:①55.8%、②47.1%
 発熱:①18.7%、②13.8%
(3~5歳未満)
 局所反応:①28.4%、②26.5%
 全身反応:①32.2%、②29.2%
 発熱:①12.1%、②10.9%
・VAERS(予防接種安全性監視システム)によると、
 496件の報告中486件(98%)は非重篤
・重篤な10件中、4件が痙攣(心筋炎はゼロ)
→ 他の年齢層と比較して副反応頻度は同等か低く、
 重篤な副反応の報告なし


秋の花粉症~原因植物ベスト3

2022年11月20日 07時08分09秒 | 小児科診療
前項目のごとく、
秋の花粉症の主役は、
ブタクサ、ヨモギ、アキノキリンソウ(セイタカアワダチソウ)です。
それと、スギも少し。

しつこいようですが、
もう一つ特集記事を見つけましたので紹介します。
ここでは「ブタクサ」「ヨモギ」「カナムグラ」をベスト3にあげていますね。
中でも「オオブタクサ」は“ラスボス的”と表現されています。

▢「見るだけでカユい!」秋の花粉症を呼ぶ「ヤッカイ植物」3選
2022/11/18:BRAVO MOUNTAIN)より抜粋;
・・・

■ 秋の花粉症を引き起こす「厄介な植物」3選

 秋に花粉症を引き起こすヤッカイ植物は主に3種類。それらはヨモギ、カナムグラ、ブタクサだ。これらは繁殖力も強く、我々のすぐ近くに生育していることも多いので一度は目にしたことがあると思うが、果たしてどれだけ知っているだろうか。 
ヨモギ
 菊科の多年草であるヨモギは繁殖力が大変強く、雑草の生い茂る空き地や河原など至るところに群生している。ヨモギは初秋に地味な花をつけ、風で大量の花粉を飛散させる風媒花(ふうばいか)だ。 
 図鑑等によると花粉飛散シーズンは8~10月とされているが、温暖化が続いている昨今、11月に入っても道端の至るところで見かけるので、近くを通る時はくれぐれも注意が必要。主な症状は鼻水、鼻詰まりや目のかゆみだが、人によってはヨモギの葉を含んだ食品を口にするだけでアレルギー症状が出る人もいるので注意したい。
カナムグラ
 ジャパニーズホップと言われるカナムグラはアサ科のつる草で、棘が痛いうえに繁殖力が強く、辺り一面を覆い尽くす。花粉の飛散シーズンは、初秋から初冬にかけてと比較的長い。花粉の量は他と比べて少なく飛散距離は数メートル程度だが、どこにでも生育してるため接触するリスクが高い。主な症状はヨモギと同じだが、アレルギー性結膜炎の症状が出る人もいる。
ブタクサ キク科ブタクサ属の一年草であるブタクサは、風で花粉を飛ばす風媒花の代表格。日本でスギとヒノキに続く花粉症の原因として3番目に多いのがブタクサだ。しかし、それより更に厄介なのがオオブタクサだ。ブタクサが体調1m以下なのに対し、オオブタクサは2~3mになり、繁殖力も強い。花もより密に咲くので花粉も多く、花粉症の人にとって大変厄介な植物だ。  ブタクサ、オオブタクサのどちらも他の植物同様に、温暖化の影響で飛散シーズンが長くなっている。日本だけでなく、世界的にも花粉症問題が深刻化しているため、国際的な対策が望まれている。
・・・
■ 花粉症予防と対策
 今回紹介した植物の花粉は、スギやヒノキなどの針葉樹とは異なり遠くに飛散することはない。しかし我々の身近で生育しており、知らないうちに近づいて花粉を浴びてしまうことがあるのがとても厄介だ。 
 これらの草の花粉は粒子が小さく、一度吸い込んでしまうと気管支にまで入り喘息のような症状を起こすこともあるのでくれぐれも注意したい。
・・・
■ ブタクサとセイタカアワダチソウ
 今回、秋の厄介な植物について調査していくうえで、セイタカアワダチソウとブタクサを混同している人が非常に多かった。最も高く伸びているのがオオブタクサで、秋の花粉症で最も警戒する必要があるラスボス的なヤッカイ植物だ。また、黄色い花がセイタカアワダチソウだ。こちらは虫が花粉を運ぶ虫媒花なので、花粉が飛散することは少ないところが群生地帯だと、ブタクサと同じ様に飛散することが確認されているので、アレルギー体質の人は河川敷などで植物が群生しているところには近づかないことがベストだ。 
・・・

<参考>
▢ 秋の花粉症の基本〜ブタクサ・ヨモギなど雑草が花粉を飛ばす? 春の花粉との違いとは?〜
2021年9月7日 :エステー化学

11月中旬にはどんな花粉が飛んでいる?

2022年11月11日 22時15分46秒 | 小児科診療
11月も中旬になると、
道端のブタクサは枯れて目に入らなくなり、
咲き誇っていたセイタカアワダチソウ(≒ アキノキリンソウ)が、
ピークアウトするタイミング。

さて現在、どんな花粉が飛んでいるのでしょう?
花粉症クエスト」というサイトの情報によると、

・ブタクサ/ヨモギの季節は去り、セイタカアワダチソウ花粉が飛んでいる。ブタクサと同じキク科なので、ブタクサ花粉症の人がセイタカアワダチソウに反応することもある。
・イネ科花粉は初夏〜夏のカモガヤ/チモシーから、秋のススキに取って代わっている。
スギ花粉が少し飛んでいる。この時期、晴れて暖かいと、冬の休眠前にこぼれ落ちたスギ花粉が飛ぶことがあるので注意。

とのこと。

セイタカアワダチソウが花粉症の原因になるかどうかは、
以前から議論があります。
その理由は、この花粉が風で飛ばされる“風媒花”ではなく、
虫が運ぶ“虫媒花”であるため。
でもなんとなく、花粉症の原因植物に居座っていますね。

イネ科花粉は初夏から秋まで長い期間飛ぶとされていますが、
同じ植物ではなく、異なる植物がリレーのようにつないでいます。
ただ“ひとつの雑草のイネ科花粉症になると、
他の種類のイネ科雑草にもアレルギー反応しやすくなりますので、
イネ科花粉症の人も用心してください”
とのこと。

スギ花粉が秋に少し飛ぶ現象は以前から耳にしていましたが、
その理由は知りませんでした。
“冬の休眠前にこぼれ落ちたスギ花粉が飛ぶ”のですね。


人類の中性化が止まらない。

2022年10月17日 07時49分14秒 | 小児科診療
私が子どもの頃(約50年前)は、
LGBTQという言葉は当然ありませんでした。
どう呼んでいたかというと、
女らしい男は「オカマ」、
男らしい女は「オトコオンナ」、
などと、今は差別用語扱いされる単語が使われていました。

近年、テレビタレントも男女グレーゾーンの人々が増えてきて、
これは最近の流れなんだな、
日本は、人類はどうなっちゃうんだろう、
と素朴な疑問が生まれてきました。

しかし今回、NHKのTV番組を見て目からうろこが落ちました。

「人類が絶滅の危機!?“中性化”と生殖の未来」
体や心の性差が縮まる「中性化」に最新科学で迫る。中性化の原因とされるのは男性らしい体や脳の形成に関わる性ホルモン・テストステロンの分泌の変化。先進国では、男性では分泌が減少、女性では増加している実態が見えてきた。中性化が進行した未来を見据えて、男と女によらない「新たな生殖の仕組み」を作り出そうという研究も始まっている。スペシャルナビゲーターの井上咲楽さんと「中性化」という人類の大課題を考える。

なんと、人類の中性化は数万年前に始まっていたというのです。
最近じゃないんだ・・・。

そのきっかけは「共同作業」。
具体的には複数の人間が協力して大きな獲物を捕る「狩猟」です。
力仕事ですから、男性が対象となります。

それまでは個人の能力、野性的嗅覚や攻撃性が強い人間が生き残れる世界でした。
しかし共同作業では、“協調性”が必要とされます。
ただ攻撃性が強いだけの人は、
連携を乱すので必要とされなくなり淘汰されるというのです。

頭蓋骨から、男性の中性化兆候が読み取れると解説がありました。
それは眉毛部分の骨の盛り上がり程度。
これは男性ホルモンであるテストステロンの分泌が多いと、
盛り上がりが強くなる場所とのこと。

数万年前から現代までの頭蓋骨を並べて比べてみると、
確かに眉毛部分がだんだん平らになっていることに気づかされます。

つまり、人間の生活文化が変われば、必要とされる性質も変わる、
ということなのですね。
テストステロンは男性なら多く女性なら少ないという単純なものではなく、
いろんな状況で分泌量が変化するホルモンであるという解説も、
驚きでした。

単純な肉体労働中心の時代は、
男女をはっきり分けることが秩序を保ちやすかったので、
テストステロンも男女差の分泌がはっきりしていたはず。

肉体労働からデスクワークに移行した現代社会では、
マッチョさは必要とされませんので、
男性のテストステロンは減るばかり・・・。

一方の女性は、
会社の管理職になったりすると、
テストステロンの分泌量がどんどん増えていきます。

現代社会でのテストステロン分泌は、
男女でオーバーラップするのが当たり前になってしまいました。

そういえば、これもNHKのドキュメンタリーで、
という番組がありました。
その中で、ガミガミ子供を叱る母親と、
それを見守る草食系男子の夫のテストステロン値を測定したところ、
なんと母親の方が高値だったのです。
つまり、テストステロン値が男女逆転していた・・・。

さてここで、世界の各民族社会の調査報告を紹介します。

(joyjoy83:2021年8月23日 )より抜粋;
(考察として)
・女性の社会的地位が高くなるほど、性的二型性は低下し、食料リスクがその傾向に関与することが示された。
・人類は、その長い歴史の中で、過度に攻撃的な個体を殺害・排除していく中で、全体的に穏やか性質を持つようになった。このプロセスは自己家畜化と呼ばれる。
・食料リスクに晒されている地域では、より男性性の強い男性が女性によって選択される。
・しかし安定して食料が確保できる状況では必ずしもそうではないと考えられる。
・女性の男性選択基準が人類の自己家畜化に影響していることが考えられた。
(原著)
・Female status, food security, and stature sexual dimorphism: Testing mate choice as a mechanism in human self-domestication.  Am J Phys Anthropol. 2018 Nov;167(3):458-469. doi: 10.1002/ajpa.23642. Epub 2018 Aug 29
(女性の地位、食料安全保障、および身長の性的二形性:人間の自己家畜化のメカニズムとしての配偶者選択の検証)

なるほど。
その人が要求される仕事や立場により、
男女にかかわらず、
テストステロン値は変動するのですね。

手の指の長さを見ると、
テストステロンの分泌量の多い少ないがわかるそうです。
人差し指と薬指の長さを比べてみてください。
ふつう、
男性は人差し指<薬指
女性は人差し指>薬指
なのですが、性別にかかわらず逆転している人が一定数います。
つまり、女性らしい男性、男性らしい女性ということになります。

このグラデーションがいいことなのか、悪いことなのか・・・
単純に判断はできませんが、
異性との恋愛、結婚、妊娠、出産が減ってきていることは事実です。
つまり、この傾向が続くと再生産~子孫を残すことが難しくなってくることから目をそらすわけにはいきません。

番組の中ではiPS細胞を使った無性生殖を紹介していました。
マウスではすでに実現しており、
人類では倫理上ストップがかかっていますが、
理論的には可能だとのこと。

精子と卵子がいらない生殖、
父親も母親もいない子ども、
いのちを創れるかもしれませんが、
哺乳類でちゃんと育つのかどうか、私には疑問です。

哺乳類の子どもが育つためには、
愛情がたくさんたくさん必要です。

両親が揃っていても「愛着障害」が社会問題化しているのに、
両親がいない哺乳類の子どもを創ってしまうと・・・。


“性教育”は誰が担う?

2022年10月10日 20時37分25秒 | 小児科診療
近隣の中学校の校医を引き受けることになりました。

小児科医院には中学生はあまり来ません。
そこで、予習もかねて日本思春期学会に参加してみました。
新型コロナ禍以降、学会がWEB配信されるようになったので、
現地に行かなくてもお金を払えば簡単に視聴できるのです。
これは持病を抱えたアラ還のおじさんにとって朗報です。

今まで縁のなかった“性教育”に関するレクチャーを中心に視聴しました。
すると、ある問題が浮かび上がってきました。

日本の学校では“性教育”が禁止されているのです。
具体的には性交渉について授業で教えてはならない、
性交渉に付随すること(避妊や性感染症)についても触れてはならない、
というルールがあることを初めて知りました。

少し詳しく説明すると、
日本の「学習指導要領」には以下のように学年で教えるべき内容が決められています。

(小学2年生)へそ
(小学4年生)月経・射精
(小学5年生)ヒトの誕生
(小学6年生)二次性徴
(中学1年生)生殖にかかわる働きの成熟、性への関心と行動
(中学3年生)性感染症・コンドーム
(高校生)  避妊

「な~んだ、ちゃんと教えてるじゃん」
と思うなかれ。

上記内容には「はどめ規定」というモノが存在し、
「セックス・性交渉・性行為」は扱ってはならないんだそうです。

つまり、セックスの説明抜きにコンドームの使い方を教えろということ。
誰が考えても無理ですよね。

思春期学会のシンポジウムでも、
性犯罪対策や性感染症対策を子どもに教えなければならないのに、
このジレンマの解決法が見いだせず、悩みに悩んでいる様子でした。

実は、昔の日本には“性教育”システムがありました。
そのことについて書いてみます。

私はふつうの人々の歴史を研究する民俗学が好きで、
ときどきその系統の本を読んでいます。

江戸時代まで、村々には「若者組」という組織があったそうです。
基本的に15歳で入り、結婚すると抜けるシステムで、
その間、農業・林業を担い、
祭りの実働部隊や、村の警備なども担当したようです。

その中で、年長者から新入りに“性教育”も施されました。
昔の日本では、性の知識の入手先は、
家庭でもなく、学校でもなく、悪友からでもなく、
当然、メディアでもなく、
人生の先輩からだったのです。
まあ、自然ですよね。

若者組を卒業すると、一人前の大人として見なされ、
村の中で一定の役割を担うようになりました。

勉学は学校で、社会性は若者組で育んだのですね。

このようなシステムは、世界を見渡すと各民族に存在するようです。
アフリカの草原に生きる某民族では、
思春期になると“若者組”に似た組織に入り、集団で旅に出ます。
狩猟や生活の知識をそこで育み、一人前の男になって帰ってくるのです。

そのドキュメンタリーでは、
「思春期のほとばしるエネルギーと創造力は、
大人や既存社会とぶつかることは目に見えている」
「それを避けつつ、逆にいかす方法を編み出した」
と説明されていました。

ああ、やはり思春期男子を家庭内に囲ってはいけないんだ、
家族の殻を突き破ろうとするエネルギーを押さえつけてはいけないんだ、
外に向かって放出し、創造力を生かすべきなんだ、
とそのとき感じました。

女性はどうだったか?
女子にも「乙女組」というシステムがあり、
13歳頃に入り、結婚すると抜けるルール。
その間、裁縫や手仕事を習い、
やはり性の知識も伝授されたものと思われます。

明治維新以降、若者組も乙女組も解散されました。
一部は「青年団」へ移行しましたが、
悲しいことにそれは富国強兵政策に利用されました。
戦後、青年団が機能している自治体は見聞きしませんね。

地域での縦の繋がりが存在しない現在、
学校も家庭も性教育に躊躇している現在、
子ども達はインターネット上の怪しい性の情報に翻弄され、
誤った知識で頭がいっぱいになりがちです。

無理解と誤った知識は、誤った行動に繋がりがちです。

どうすればいいのでしょう?

ひとつの答えとして、SNSを利用した啓蒙があります。
学校における性教育の「はどめ規定」の範囲外であることを、
逆に利用するのですね。

学会レベルでの活動を報告しておきます。
世界標準から遅れに遅れ、何とかせねば、という動きはあり、
こんなHPが作られました。


日本に合うようアレンジした内容で、
年齢で分けられた各ステージ別に学習目標が掲げられています。

(レベル1)5~8歳
(レベル2)9~12歳
(レベル3)12~15歳
(レベル4)15~18歳
(レベル5①)18~40歳代前半
(レベル5②)40歳以上

ぜひ一度、覗いてみてください。
すごく充実していて、各レベルに複数の、

イラスト絵本(まなぶっく)+解説動画復習動画

が用意され、至れり尽くせり。

ただ、レベル2~4は鋭意製作中で、2023年度に完成予定だそうです。
肝心の性交渉も扱い、コンドームの正しい装着方も「別冊」としてイラスト入りで解説される予定です。

こうご期待。

<参考>
・三重県答志島の青年宿・寝屋子制度と青年期発達に関する基礎的資料
・若者・青年組織の民俗 ― 近代愛媛の事例 ―



オミクロン株(BA.5)対応ワクチン登場(2022年10月)

2022年10月08日 07時53分27秒 | 小児科診療
新型コロナワクチンに関するニュースが目まぐるしく更新されています。
オミクロン株(BA.1/2)対応ワクチンが2022年9月下旬に始まったと思ったら、
早くも現在流行中のオミクロン株(BA.5)対応ワクチンが登場しました。

現在のBA.1/2対応ワクチンを接種するか、
BA.5対応ワクチンを待つか・・・悩ましいですね。

どう考えればよいのでしょうか?

当然、現在流行中の株に対するワクチンの方が感染予防効果としては有利だと思います。
しかし、重症化予防率はそう変わりませんし、
ワクチンを接種しても3か月後には免疫が消えて感染リスクが戻ることは同じです。

なので、私の意見は、
「接種できるワクチンを速やかに接種すべし!」
です。

 オミクロン株 BA.5対応ワクチンの使用承認 厚生労働省
2022年10月5日:NHK)より抜粋(下線は私が引きました
  新型コロナウイルスのオミクロン株のうち、感染の主流になっている「BA.5」に対応するワクチンについて、厚生労働省は国内での使用を正式に承認しました。
 今後、必要な手続きを進め、早ければ10月中旬にも接種が始まる見通しです。
・・・
◇接種の計画は
 厚生労働省はオミクロン株対応のワクチンについて、年末年始に懸念される感染拡大に備えて希望する人が年内に接種を終えられるよう体制の整備を進めています。
 オミクロン株の「BA.1」と従来のウイルスに対応する成分が含まれたワクチンはすでに9月20日から接種が始まっていて、4日までにおよそ56万人がファイザーとモデルナのワクチンを接種しています。
 一方、今回了承された「BA.5」「BA.4」などに対応するワクチンの自治体への配送計画もすでに示されています。
 10月10日から11月上旬にかけてファイザーのワクチンおよそ4300万回分が配送される計画で、無料で受けられる公的接種に位置づけたうえで、今月中旬以降に接種が開始できる見込みです。
 また、2種類のオミクロン株対応ワクチンをあわせた11月上旬にかけての配送量はおよそ8000万回分で、厚生労働省はどちらのワクチンもオミクロン株に対して従来のワクチンを上回る効果が期待されるほか、今後の変異株にも効果がある可能性が高いとしています。
 厚生労働省は、接種の時期が来た時点で接種できるオミクロン株対応のワクチンを接種してほしいとしています。
◇専門家「接種できる機会を逃さずに接種を」
 新型コロナウイルスのオミクロン株の1つ、「BA.5」に対応する成分を含むワクチンについて、臨床ウイルス学が専門でワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「現在、主流となっている『BA.5』に対しては感染や発症を防ぐ効果は、今回のワクチンのほうが高いと思われる」と話しています。
 すでに接種が始まっている「BA.1」対応のワクチンと「BA.5」対応のワクチンのどちらを接種するかについては「『BA.1』と『BA.5』の違いは従来のウイルスとその後の変異ウイルスの違いと比べると大きなものではない。『BA.1』対応のワクチンでも重症化を防ぐ効果は十分期待できる。今、『BA.1』対応のワクチンを予約しているのならそれを接種すればいいのではないか。前回の接種から5か月たつころに『BA.5』対応のワクチンが実際に出回るなら『BA.5』対応のワクチンを接種すればいいだろう。接種できる機会を逃さずに接種するというのが基本だと思う」と述べました。 


 オミクロン株「BA.5」対応ワクチン 13日から無料接種開始へ
2022年10月7日:NHK)より抜粋;
 新型コロナウイルスのオミクロン株のうち、感染の主流になっている「BA.5」に対応するワクチンについて、厚生労働省は今月13日から無料で受けられる公的接種を開始する方針を決めました。
 オミクロン株対応の新型コロナウイルスのワクチンは、先月20日から「BA.1」と従来のウイルスに対応するワクチンの接種が始まっています。
・・・
 今後は必要な手続きを経たうえで今月13日から接種を開始する方針で、厚生労働省はおよそ4300万回分のワクチンを来週以降、自治体に配送する計画です。
 一方で、「BA.1」などに対応するワクチンの接種も続けられ、厚生労働省は2つのワクチンの効果を比較するデータが現時点では確認できていないとして、接種の時期が来た時点で接種できるオミクロン株対応のワクチンを接種してほしいと呼びかけることにしています。
◇オミクロン株「BA.5」対応ワクチンの接種計画は
 厚生労働省はオミクロン株対応のワクチンについて、年末年始に懸念される感染拡大に備えて、希望する人が年内に接種を終えられるよう体制の整備を進めています。
 オミクロン株の「BA.1」などに対応するファイザーとモデルナのワクチンは、先月20日から4回目の接種を行っていない60歳以上の高齢者などから接種が始まっています。
 これに加えて今後は「BA.5」などに対応するファイザーのワクチンの自治体への配送も始まり、厚生労働省はこれら2つのオミクロン株対応ワクチン合わせておよそ8000万回分を来月上旬にかけて配送する計画です。
 厚生労働省は先月と今月の2か月間で接種の対象となる人数をおよそ6850万人と想定していて、

▽60歳以上の高齢者の4回目の接種としておよそ1500万人、
▽12歳以上60歳未満の4回目の接種としておよそ3470万人、3回目の接種としておよそ1800万人などが対象となるとしています。
また、
▽60歳以上の高齢者で5回目の接種としておよそ1万人も、今月25日以降、接種できるとしています。

厚生労働省は、5か月としている前回の接種からの間隔を短縮するかどうかについても今後検討することにしています。 

生後6か月~4歳児へ新型コロナワクチンの適応拡大(2022年10月)

2022年10月08日 07時39分05秒 | 小児科診療
新型コロナワクチン関連のニュースが続いています。

5~11歳児へのワクチンが始まったばかりですが、
さらに低年齢の生後6か月~4歳児へ適応が拡大されました。

私の意見は前項目同様「Go!」です。

小児は重症化しないから、
自分を守るというより周囲と社会を守るのが目的、
と前ブログで書きましたが、
乳児は重症化しやすく「クループ症候群」で入院する例が報告され、
私自身も経験しています。

なので乳幼児に関しては、
「子ども自身の重症化予防」
という強力な理由が生まれました。

有効性や安全性の細かいことは、
こちらの記事を参考にしてください。

新型コロナワクチン 生後半年~4歳も対象に 厚生労働省
2022年10月5日:NHK)より抜粋(下線は私が引きました)
 新型コロナウイルスのワクチンについて、厚生労働省は生後6か月から4歳までの子どもを対象にしたワクチンの使用を正式に承認しました。今後、必要な手続きを進め、早ければ10月下旬にも接種が始まる見通しです。
 子どもへの接種をめぐっては、ことし1月に対象が5歳以上に拡大され、ことし7月には、生後6か月から4歳の子どもも対象に加えるようファイザーから承認の申請が行われました。
 5日夜に開かれた厚生労働省の専門家による部会では、生後6か月から4歳の子どもを対象にしたワクチンについて、体の中で作られるウイルスの働きを抑える「中和抗体」の値の上昇など有効性が確認されたと評価しました。
 また安全性については、臨床試験の結果から重大な懸念は認められないとしてこのワクチンを使用することを了承し、その後、厚生労働省が正式に承認しました。
 これまでワクチンの対象年齢は、モデルナとノババックスが12歳以上、ファイザーが5歳以上となっていて、5歳未満の子どもへの接種は初めてとなります。
 有効成分の量は大人のワクチンの10分の1で、3回の接種が必要とされ、3週間あけて2回目を接種した後、少なくとも8週間あけて3回目を接種するとしています。
 厚生労働省は10月下旬から11月下旬にかけておよそ700万回分のワクチンを自治体に配送する計画で、今後、無料で受けられる公的接種に位置づけたうえで、早ければ10月下旬以降接種が始まる見通しです。

◇専門家「利益と副反応リスク 比べて接種するか決定を」
 ファイザーが開発した生後6か月から4歳までの子どもに対する新型コロナウイルスワクチンは、アメリカではことし6月に緊急使用の許可が出され、接種が進められています。
 ファイザーの発表や、アメリカのCDC=疾病対策センターの会議で示された臨床試験の結果を分析した資料によりますと、3回接種したときのオミクロン株に対する効果は、
・生後6か月から4歳の子どもで80.3%で、このうち、
・2歳から4歳では82.3%、
・生後6か月から1歳では75.5%
だったということです。

副反応の程度はほとんどが軽いか中程度で、偽の薬を投与された場合とほとんど変わらなかったとしています。

具体的には、2歳から4歳では、
▽けん怠感が1回目の接種で29.7%、2回目で25.7%、3回目で24.5%
▽38度以上の発熱が1回目の接種で5.2%、2回目で4.9%、3回目で5.1%
などとなり、生後6か月から1歳では、
▽いらいらして機嫌が悪くなった子どもが1回目の接種で51.2%、2回目で47.4%、3回目で43.6%、
▽食欲の減少が1回目の接種で22.2%、2回目で22.2%、3回目で20.2%、
▽38度以上の発熱が1回目の接種で7.2%、2回目で7.4%、3回目で6.8%
だったとしています。


子どもへの新型コロナワクチンが「接種勧奨」から「努力義務」へ(2022年10月)

2022年10月08日 06時20分11秒 | 小児科診療
2022年8月に子どもへの新型コロナワクチンが制度上、
「接種勧奨」→「努力義務」
に変更されました。
わかりにくいお役所言葉ですが、どういうことなのか考えてみましょう。

接種勧奨」とは、文字通り「接種をお勧めする」という意味です。
「このワクチンは有効で安全であることを保障します、お勧めですよ」
という感じ。

努力義務」は、
「現在の状況を考えると、
 個人を守る・社会を守るという視点から
 このワクチンを接種することが必要です、
 接種を積極的に検討してください」
と、一歩踏み込んだレベル。
しかしあくまでも「努力義務」であり、義務・強制ではありません。

微妙なニュアンスの違いです。

厚労省の「新型コロナワクチンQ&A」の以下の事項もお読みください。

Q. なぜ小児(5~11歳)の接種に「努力義務」が適用されるようになったのですか。

A. 小児の接種について、オミクロン株流行下での一定の科学的知見が得られたことから、
小児についても努力義務の規定を適用することが妥当であるとされました。
ただし、接種は強制ではなく、ご本人や保護者の判断に基づいて受けていただくことに変わりはありません。

<初回(1回目・2回目)接種に関するエビデンス>
  • 発症予防効果は中等度の有効性、入院予防効果は接種後2か月間で約80%の有効性が報告されている(※1)
  • 米国の大規模データベースによる解析で、安全性に関する懸念はないと報告され(※2)、日本での副反応疑い報告の状況からも、ワクチンの接種体制に影響を与えるほどの重大な懸念はないとされている
<3回目接種に関するエビデンス>
  • 時間の経過とともに低下した感染予防効果が3回目接種により回復することが、近接した年齢層(12~15歳)で確認され(※3)、日本において薬事承認されている
  • 3回目接種による局所及び全身反応について、その頻度は、2回目接種と比較して有意な差がなかったことが海外で報告され(※4)、日本の薬事審査でも、そのほとんどが軽症又は中等症であり大きな懸念はないとされている

厚労省は必要性より効果と安全性を強調していますね。
医師としての私の視点からは、
安全性は既に問題ないことがわかっていたので、
あとは社会が受け入れるタイミングを計ったという印象です。

では「努力義務」に変更された現時点で、
子どもへの接種をどう考えるべきか?

私の意見は「Go!」です。

ワクチンは病原体(この場合はウイルス)の一部を取り出して、
体をだまして症状なしに免疫だけつけるという高度な医療技術です。
つまり、ウイルスそのもの全部が体に入るより、
体の反応・ダメージは低く抑えられるのが基本です。

実際にウイルスに感染すると、症状が出て後遺症も心配になります。
ワクチンも接種後の副反応やワクチン後遺症が話題になりますが、
実際の感染と比較すると、
・感染症状 → 接種後副反応
・感染後遺症→ ワクチン後遺症
となり、実際の感染の方がハイリスクであることは明らかです。

今回の新型コロナワクチンは接種後の発熱・全身倦怠感などが問題視されていますが、
これはワクチンを強力に作りすぎたためです。
何しろパンデミック当初はどれだけ危険なウイルスかわからなかったため、
人類を救うために強力なワクチンが必要と判断され作成されました。
なんと常識を覆して、接種後の抗体価は自然感染より上がるのです。

そのため、小児用ワクチンは成人用より抗原量を減らしました。
5~11歳用では1/3へ、6か月~4歳用では1/10へ。
そして副反応としての発熱は成人用より少なく抑えられ、
有効性&安全性のバランスが取れたワクチンになりました。

有効性・安全性のほかに「必要性」も考えねばなりません。

Q.子どもは自然感染しても軽く済むことが多いと聞こえてくるけど、
接種する必要があるんですか?

という素朴な疑問ですね。私の答えは、

A. 
・ワクチンを1回接種することは、1回感染することと同じと考えてください。
・子ども本人は感染しても軽く済むため「感染すると重症化して心配」という視点では必ずしも必要ではありません。
・でもワクチン接種後はふつうに生活できますが、自然感染の際は隔離が必要になり、家族に広げること(家庭内感染)が必発で、一家全滅すると生活が大変、高齢者が同居している場合は命の危険・・・と周囲・社会への影響・負担が大きく、どちらがいいかよく考えてみてください。

つまり「情報提供」と「選択」です。
言葉の微妙な違いを考えるより、自分の置かれた状況について考え、
状況を把握してどちらを選択するか、家族でよく話し合ってください。

こちらの記事も参考になります。

 子どもの新型コロナワクチン接種が「推奨」から「努力義務」へ 困惑の声「親も子も周りから白い目で見られることになるんじゃないか」
 子どもに対する新型コロナワクチン接種が「推奨」から「努力義務」に変わることに伴い、各所から困惑の声が上がっている。 
◇「努力義務」この言葉をみなさんは正しく理解していますか?
 5歳から11歳への新型コロナウイルスのワクチン接種について、オミクロン株に対する有効性などの科学的知見が十分示されたとして、厚労省の分科会では8月8日に「努力義務」とすることが了承された。 
・・・
 厚生労働省のホームページの説明では「『接種を受けるよう努めなければならない』という予防接種法の規定のことで、義務とは異なります」と掲載されている。難しい説明だが、厚労省は「接種は強制ではなく、あくまで本人が納得したうえで判断してください」とも補足している。 
 長崎大学病院 小児科・森内浩幸教授は「できるだけ接種してくださいということを、文字通り『接種することを努力してください』と保護者の方にも呼びかけるということになる。決して強制力を持つわけではないが、言葉の響きとしては“かなり強いもの”になります。有効性のデータがでてきたことと、安全性についての治験も積み重なってきたということを踏まえて、今回はより強い推奨になったとは思う」と述べた。そのうえで、接種の意義については「重症化を防ぐという点では、十分に期待することのできるワクチンであり、メリットの方がほとんどの子どもさんにとっては大きいということを、かかりつけの先生にきちんと確認をしていただきながら、どうするかを決めていただきたい」と対策案を出している。