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徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

人類の新型コロナ対策は成功?失敗?

2022年10月02日 09時07分13秒 | 小児科診療
新型コロナが登場してから、約3年が経とうとしています。
人類はこのパンデミックに対して右往左往しながら
その時のベストを思われる選択をして対処してきました。

3年経った今、振り返ってみると、
その対策は成功したのでしょうか、
それとも失敗したのでしょうか。
検証して次のパンデミックに役立てることが、経験した者の務めです。
(まだ新型コロナは終息していませんが)

WHOは当初、発生源や初期の情報を隠蔽した中国をかばう姿勢が批判されました。
初期から十分な情報開示が行われていれば、
他国の水際対策はもっとうまくいったはず、
初期の死亡者数を抑制できた可能性があります。

しかし、水際対策はいずれ突破され、
世界各国でパンデミックが発生することは防げなかったでしょう。

そしてmRNA ワクチンの開発。
これは医療者にとって、驚きと感動を持って迎えられました。
短期間で開発されたこととその有効率の高さは、
従来のワクチン開発の常識を打ち破る高いレベルでした。

実は、コロナウイルスはもともと“風邪ウイルス”として小児科医にとってはなじみ深い名前でした。
幼少期から繰り返し感染し、だんだん軽症化し、かつかかりにくくなるタイプです。
つまり高齢者は、それまで何回もかかっているので軽く済むため、
今まで注目されず、また迅速検査キットも開発されませんでした。

しかしふつうの風邪ウイルスだったものが大きな変異の結果、
「新型」と呼ばれるようになり、
今までかかって獲得した免疫が効かなくなってしまいました。

つまり日本国民の老若男女全員がまっさらな免疫状態。
すると、加齢とともに免疫力が低下した高齢者は、
その年になって初めてコロナウイルスに感染することになるため重症化しやすくなります。
それが初期に問題となった“高齢者の重症化”の正体です。

mRNAワクチンが開発され、その接種が進むとともに高齢者の重症化が話題にならなくなりました。
死亡しても、もともとの病気が悪化してという経過が多く、
新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなることは減りました。

これは、mRNAワクチンを1回接種すると、1回感染したのと同じ免疫が得られるからです。
3回接種=3回感染、4回接種=4回感染とみなせるので、
前述のように「感染を繰り返して軽症化し罹りにくくなる」が実現できたのです。

ただし、ワクチンだからどれでも同じ効果が得られるとは限りません。
mRNAワクチンはスパイク蛋白をヒトの体内で増殖させて強力な免疫を得ることができます。
従来の「生ワクチン」に近く、すると細胞性免疫+液性免疫の両方が獲得されます。
細胞性免疫が獲得されると、長期間記憶されるため、重症化予防に役立ちます。
このワクチンのおかげで、世界の1000~2000万人の命が守られたと試算されています。

しかし中国が開発して使用したワクチンは「不活化ワクチン」なので、
液性免疫しか得られません。
短期間で発症予防効果も重症化予防効果も弱くなってしまいます。

もしmRNAワクチンの登場がなかったら・・・
今でもパンデミックが抑制できない状況だったかもしれません。

著名な科学雑誌「Lancet」が「新型コロナ対策は失敗だった」と論じていることを知りましたので紹介します。

私が失敗と感じる点は、下線を引いた「インフォでミックの制御ができなかった」こと。
ソーシャルメディアが発達し、情報があっという間に世界中に広まる現代社会。
偽情報もインパクトがあればあるほど広まる速度が速く、翻弄される人々が多くなります。

これに対応する手段があるでしょうか?
それは常日頃から、“信用できる”情報源が“わかりやすく”発信し続けることだと思います。

“信頼できる”とカッコ付けにしたのは理由があります。
現在でも厚生労働省とか各学会が情報を出しています。
しかし文章がわかりにくかったり、量が多かったり、科学的根拠のみで実現不可能だったり・・・とにかくとっつきにくい。
さらに、日本国民の中には厚生労働省を信用していない人々もいますし。

政府・学会・市民が参加して感染症に立ち向かう団体を作り、
科学的根拠に基づいた、政治的判断も含めた、市民感覚で実現可能な情報を、
そこから発信する必要があります。

「困ったとき、迷ったときにあそこのサイトを見れば解決する、安心できる」ことが習慣づけられれば、新たなパンデミックが発生しても現在のように振り回されることはなくなるはずです。

アメリカではずいぶん前にそれを実現していて、
ACIPという団体が実働しています。
それを見習って、日本も鋭意製作中・・・というニュースが10年以上前から聞こえてくるのですが、まだ実現していません。

ただ、今回の新型コロナ禍ではアメリカも大混乱しましたので、
猿マネではあまり効力が期待できないかもしれませんね。


COVID-19対策は「世界的失敗」 Lancetの委員会がレポートを作成
※下線は私が引きました。

・・・全世界における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連する推定死亡者数は1,720万人とされている。Lancet誌のCOVID-19委員会は新たにレポートを作成し、この驚異的な死亡者数について「重大な悲劇であり、COVID-19対策の大規模な世界的失敗」と表現。レポートではCOVID-19に対する包括的な調査、分析、対応策を示し、COVID-19パンデミックの終息と次なるパンデミックへの対策として3分野11項目から成る勧告を提示している。

▢ 10の要因によりパンデミック制御に失敗
 レポートでは「多くの政府が組織の合理性と透明性に関する基本的な規範を遵守できず、また多くの人が(しばしば誤った情報に影響されて)基本的な公衆衛生上の予防策を軽視し、世界の主要国はパンデミックを制御するための協力に失敗した」としている。
 その具体例として、
1.COVID-19パンデミック発生時の適時な通知の欠如
2.新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の重要な空気感染経路の認識や、拡散抑制のための世界的、国家的な適切な措置の遅延
3.抑圧戦略における各国間の調整不足
4.各国政府における経済的・社会的影響を踏まえたパンデミックの制御に対するベストプラクティスの欠如
5.低・中所得国に対する資金提供の不足
6.防護具、診断薬、医薬品、医療機器、ワクチンなどの世界的供給と公平な分配の欠如(特に低・中所得国)
7.感染、死亡、ウイルス変異、保健システム、間接的な健康被害などに関する適時、正確かつ体系的な情報の欠如
8.バイオセーフティに関する規制の不足
9.組織的なインフォデミックに対する敗北
10.脆弱性を有する人々を保護するための世界的、国家的なセーフティネットの欠如
の10項目を挙げている。

▢ 多国間主義の強化を呼びかけ
 COVID-19パンデミックの終息と次なるパンデミックへの対策は
①現在のパンデミックを制御および理解するための実際的な手順
②将来のパンデミックに対する防御体制を強化するために必要な投資
③多国間主義を強化する野心的な提案
―から成る。
①については
・世界的、国家的なワクチン接種戦略の確立
・SARS-CoV-2の起源に対する調査を強化」
②に関しては
・国家保健システムの強化、プライマリヘルスケアと公衆衛生への増資
・国家的なパンデミック対策計画
・持続可能な開発および『Good Health and Well-Being※』復興計画のための資金調達」から成る。
③では
・新興感染症対策の主導機関として世界保健機関(WHO)の維持
・WHOのガバナンス改革
・グローバル・パンデミック協定の確立と国際保健規則の強化
・パンデミック予防のための規制
・低・中所得国の金融、研究開発、生産能力に対するG20の支援
・『Good Health and Well-Being』、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、機能的な保健システムを確保するための新たな世界保健基金
ーを挙げている。
 その上で、「政治、文化、制度、財政など、全ての重要な側面で多国間主義を強化すべき。特に裕福かつ強大な国に対し、国際連合への活動の支持・維持・強化を呼びかける」と結論している。詳細はLancet(2022年9月14日オンライン版)に報告されている。


卵アレルギーで注意すべきワクチン問題は解決? 〜アップデート2022〜

2022年08月19日 09時30分06秒 | 小児科診療
私が小児科医になった30数年前は、
卵アレルギー患者はインフルエンザワクチンを打ってはいけない
とされていました。
麻疹ワクチン、風疹ワクチン、おたふくかぜワクチンもそれに準じていました。
これらのワクチンは製造時に鶏卵を使うので、その成分の混入が心配されたのです。

その後、いわゆる“科学的エビデンス”が重要視される時代になり、
ワクチンに入っている卵成分はアレルギー症状を惹起する量より無視できるほど少ない
ことが判明し、アメリカではどんどん卵アレルギーで注意すべきワクチンの数が減っていきました。

日本の動きは鈍く、アメリカの様子をうかがいながら追従するスタンスが見え隠れしました。
まあ、今の新型コロナ対策と同じですね。

アメリカでは、
卵アレルギー患者と非卵アレルギー者で、インフルエンザワクチン接種後の副反応発生率に差がない
という報告を根拠に、
卵アレルギーがあってもインフルエンザワクチンは安全に接種できる
ととうとう縛りを外しました。

今回、予防接種に関する問診を作成する機会があり、
卵アレルギーとワクチンに関して「予防接種ガイドライン2022年版」で確認してみました。

すると、麻疹・風疹・おたふくかぜワクチンの項目では卵アレルギーの記述が消えつつあることに気づきました。

そして極めつけが、
インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーの原因は、卵成分ではなくワクチン蛋白そのものである
という報告の引用です。

よって、
卵アレルギーがあってもインフルエンザワクチンは接種可能
という結論が導き出されます。

ずっとこの問題をウォッチしてきた私は、
「ようやくここまで来たか・・・」
というのが率直な感想です。

ん、待てよ・・・インフルエンザワクチンの定期接種(65歳以上の高齢者)ではどうなっているだろう?

このガイドラインは予防接種ガイドラインよりも慎重な記載が続いていました。
手元にある2020年度版(最新?)を確認すると、
インフルエンザワクチンは、ウイルスの増殖に孵化鶏卵を用いるので、卵アレルギー患者が明確な者(食べるとひどいじんましんや発疹が出たり、口腔内がしびれる者)に対しては接種の際に注意を要する」(p10)
とまだ過去を引きずっています。

以上より、下記ワクチン接種の際に、卵アレルギーの有無を気にしなくてよくなったと私は判断します。

・季節性インフルエンザ
・MR(麻疹・風疹)
・おたふくかぜ

まあ、重症の卵アレルギーでアナフィラキシーの経験がある方で心配な方は精神衛生上、病院レベルで受けた方が安心、程度でしょうか。

では、卵アレルギーを気にすべきワクチンは他に残っているのか?
という問いの答えは「YES」です。それは「黄熱病ワクチン」。

黄熱病ワクチンは、海外に出かける際に、黄熱病が流行している熱帯地域に行くときに必要となります。接種すると「イエローカード」(接種証明書)が発行されるのですが、その提示がないと入国できない国際ルールがあります。


<参考>
予防接種ガイドライン2022年度版
監修:予防接種ガイドライン等検討委員会
発行:公益財団法人予防接種リサーチセンター

該当する箇所を抜粋します;

(p26)⑦予防接種不適当者
ウ 当該疾病に係る予防接種の接種液の成分によって、アナフィラキシーを呈したことが明らかな者
・・・鶏卵、鶏肉、カナマイシン、エリスロマイシン、ゼラチン等でアナフィラキシーを起こした既往歴のある者は、これらを含有するワクチンの接種は行わない(ワクチン添付文書参照)。

(p88)③乾燥弱毒生麻しん風しんワクチン混合(MR)ワクチンの特徴
 弱毒生麻しんウイルスをニワトリ胚培養組織で増殖させ、また、弱毒生風しんウイルスをウズラ胚培養組織、又はウサギ腎培養組織で増殖させ・・・

(p103)③インフルエンザワクチンの特徴
・・・流行の中心となることが予想されるインフルエンザウイルスA型株(H1N1株とH3N2株の2種類)及びB型株(山型系統株とビクトリア系統株の2種類)をそれぞれ孵化鶏卵内で培養し・・・

(p104)④(インフルエンザワクチンの)接種上の注意点
ウ 卵アレルギー:現行のインフルエンザワクチンは、有精卵(孵化鶏卵)から作られ、卵白アルブミンの混入が懸念されていたが、その量は数 ng/mL と極めて微量でWHO基準よりはるかに少ない。
 添付文書には、本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他の鶏由来のものに対して、アレルギーを呈する恐れのある者は接種要注意者、本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかな者は接種不適当者と記載されている。しかしながら、接種後の鶏卵アレルギーによる重篤な副反応の報告はなく、鶏卵アレルギー患者であっても接種可能である。インフルエンザワクチン接種後のアナフィラキシーは鶏卵由来のタンパクではなく、インフルエンザHA抗原によるものであることが報告されている。

(p133)【参考3】予防接種要注意者の考え方
5.接種液の成分に対してアレルギーを呈する恐れのある者
(ア)鶏卵由来成分
 卵成分が関連するワクチンはインフルエンザ及び黄熱である。
 国内の現行インフルエンザワクチンは、有精卵(孵化鶏卵)から作られ、卵白アルブミンの混入が懸念されていたが、その量は数 ng/mL と極めて微量でWHO基準よりはるかに少ない。
 添付文書には、本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他の鶏由来のものに対して、アレルギーを呈する恐れのある者は接種要注意者、本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかな者は接種不適当者と記載されている。しかしながら、接種後の鶏卵アレルギーによる重篤な副反応の報告はなく、鶏卵アレルギー患者であっても接種可能である(文献1)。インフルエンザワクチン接種後のアナフィラキシーは鶏卵由来のタンパクではなく、インフルエンザHA抗原によるものであることが報告されている(文献2)。



オミクロン株BA.5の特徴を確認してみました。

2022年08月14日 07時46分42秒 | 小児科診療
オミクロン株BA.5が世界中を席巻しています。
といっても、一番騒いでいるのは日本かもしれません。
諸外国は、どんどん制限を緩和してきて、
「新型コロナはふつうの風邪」
にソフトランディングさせつつあります。

最近、「日本の患者数が世界一」というニュースが流れました。
諸外国は検査をしなくなったので当然かもしれません。
さらに、諸外国はオミクロン株BA.1とBA.2に相当数感染済みなので、
BA.5には感染しにくいという医学的理由もあるようです。

日本は「制限のない夏休み」までなんとかたどり着いたものの、
現在も感染症報第二類相当の扱いで全数把握し続けています。

さて、流行拡大に伴いBA.5の臨床像・症状が見えてきました。

忽那賢志:感染症専門医(2022/8/13)

いったい、どの程度怖がるべきなのでしょうか。
忽那先生がまとめたわかりやすい図表を読み解いて説明します。


▢ オミクロン株BA.5の症状


武漢株〜デルタ株の頃は、咳〜呼吸困難、倦怠感、味覚/嗅覚異常がクローズアップされていました。
上のグラフを見ると、のどの痛みが特徴ではありますが、ほかは咳・鼻水、頭痛、発熱とふつうの風邪とかわらず、よく指摘される強い倦怠感・関節痛/筋肉痛は30%弱にとどまります。

私は小児科医で、日々、新型コロナPCR陽性者を診療していますが、
発熱・全身倦怠感でつらそうな患者さんがいる一方で、
咳・鼻汁というふつうの風邪症状の人もいます。

「ものを飲み込めないほど強い咽頭痛」はあまりいません。
強い咽頭痛を訴える場合は、新型コロナよりも夏風邪のヘルパンギーナを疑います。

それから、嘔気・嘔吐が目立つ患者さんも多くいて、
上のグラフとちょっと異なりますね。

小児科医の間では、
「ワクチン接種済みの子どもの方が、未接種の子どもより症状が軽い」
という印象が共通認識です。


▢ 小児患者の発熱率は高い


高齢者と比較して、子どもでは発熱率が高いという報告があります。
これは本来の症状にワクチン接種が影響していると考えられます。

もともとある季節性の風邪コロナウイルスは、
小児期から何回も罹り、
だんだん軽く済むようになり、
大人になって罹っても熱が出にくい鼻風邪に落ちつきます。

新型コロナウイルスにおいても、この性質が観察されるようです。

ワクチン接種1回は、1回感染したのと同等の免疫獲得ができます。
ワクチン接種4回の高齢者は、すでに4回罹ったのと同じと見なすことができます。
つまり軽く済むのですね。

今回のパンデミックで当初高齢者が重症化してたくさん亡くなったのは、
高齢で免疫力が落ちたタイミングではじめて罹ったから、と分析されています。


▢ 年齢別重症化率


やはり重症化は高齢者ほど多い、という現象は武漢株〜デルタ株〜オミクロン株でもかわりません。

小児でも希に重症化することはありますが、
従来からふつうの風邪でも希に重篤な合併症は小児科医の常識でした。
・夏風邪のコクサッキーウイルスによる心筋炎
・おたふくかぜの無菌性髄膜炎
・RSウイルスの細気管支炎
これらと比較しても、コロナの重症化率は突出する頻度ではありません。

小児の入院患者が増えてきたと話題になりますが、
入院しているのは肺炎ではなく熱性けいれんが多いとTVで報告していました。


 重症化するタイミング

武漢株は発症するまでに7日、デルタ株は5日、オミクロン株BA.1は3日、
と潜伏期がだんだん短くなってきましたが、
オミクロン株BA.5では2.4日とさらに短くなっています。

実際に家庭内感染では数日以内に順番に発症する現象が認められ、
インフルエンザに近い印象になりました。

重症化するタイミングも、武漢株では発症後約1週間でしたが、
現在のオミクロン株BA.5では発症後2-3日がピークとこちらも短縮してきて、
あっという間に重症化するので臨床現場が大変です。


以上、オミクロン株BA.5情報を拾ってみました。
今後も新型コロナは変異株に振り回されながら、ふつうの風邪にソフトランディングしていくものと思われます。



感染対策も、基本を抑えて、ゆるめてもよいとわかったところはゆるめて生活していきましょう。
つまり、屋内では換気を重視し、接触感染対策はある程度ゆるめてもOKということです。


遅ればせながら、「サル痘」(Monkeypox)について調べてみました。

2022年08月11日 07時35分56秒 | 小児科診療
「サル痘」というワードがマスコミを賑わしてからしばらく経ちました。
「新型コロナがまだ終わっていないのに次のパンデミック?」
と一時期は戦々恐々となるも、どうやらパンデミックのようには広がらないようです。
しかしWHOは注意喚起をしています(2022.7.23に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言)。

一体どういう感染症なのでしょう。
我々はどのようなスタンスで向き合うべきでしょうか。
メディア(TV、ネット)情報から垣間見えることは・・・

・“サル痘”と呼ばれているがサル固有の感染症ではないらしい。
・ヒトの感染例はほとんどが男性で、いわゆるLGBTQの“ゲイ”。
・男性同士の性交渉(?)で感染しやすい。
・症状は天然痘に似ている。
・種痘(天然痘に対するワクチン)が有効らしい。

等々。

ちょっと知識を整理したいと思い、調べてみました。



【概要】
・新たな感染症ではない。
・サル痘ウイルス(Monkeypox virus, ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属(※1)のDNAウイルス、長径300nmとウイルスの中では大きい)による感染症、感染症法第4類(※2)指定感染症。
・ウイルスの分類としては水痘(ヘルペスウイルス科の水痘帯状疱疹ウイルス)とは異なる。
・元々の宿主はげっ歯類(ネズミの仲間)で、ラット、リス、サル、チンパンジー、プレーリードッグ、ウサギなどに感染する。サルも感染することもあるくらいなので“サル痘”というネーミングは適切ではない。
・感染した動物に噛まれたり、体液などに直接触れたりすることでヒトに対する感染が成立する。
・類似疾患である天然痘と比較すると感染率は低く、重症度も軽症であるが、時に重症化して死亡することもある。

※1)オルソポックスウイルス属:天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、ワクチニアウイルスも同属。
※2)感染症法第4類:おもに動物を介して人に感染する感染症

【疫学】

<従来のサル痘>
・1970年にアフリカのザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めて報告され、アフリカ大陸で地域的発生・散発的流行をしていた。WHOによると1981-1986年のサル痘患者発生数は338名、1996-1997年のコンゴ民主共和国での流行では患者発生数511名。それ以外の地域ではアフリカへの渡航歴やペットとして輸入された動物などに関連した例に限られていた。
・患者からの二次感染率は数%。
・ウイルスにはいくつかの株・系統が知られており、重症化率や致死率が異なる。強毒なコンゴ盆地型とやや弱毒な西アフリカ型が代表的で、今回の流行は西アフリカ型系。
・小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合あり。

<今回流行のサル痘>
・2022年5月以降、欧米中心に感染拡大して問題視されるようになった(2022.7.22時点、世界で16836例)。特にスペイン、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス。
・日本では2022.7.25に初めてサル痘患者が報告された。
・今回の流行は9割以上が男性で発症しており、少なくとも60%が男性間で性交渉を行う者(MSM;Men who have sex with men)。

【感染経路】
・元々は動物由来感染症であり、サル痘ウイルスを持つ動物に噛まれる、引っかかれる、血液・体液・皮膚病変に接触しても感染する。
・今回のヒト-ヒト感染流行では接触感染・飛沫感染とされるが、2022年5月以降の患者は男性間での性交渉による接触感染がほとんどで20代から40代の比較的若い世代に多い。
・サル痘では人から人へ感染する頻度は天然痘より低い。

(接触感染)感染者の体液・皮膚病変(発疹部位)などとの接触、感染者が使用した寝具を介する感染
(飛沫感染)感染したヒトの飛沫(唾液など)を浴びて感染
(性的接触)男性間での性交渉(※)

※ )医学誌「The Lancet Infectious Diseases」(2022.8.2)に発表された研究では、サル痘患者の精液が感染拡大の源となる可能性が示唆されている。

【潜伏期間】
・7〜14日間(1〜3週間)(平均12日)

【症状】
天然痘に似ており、症状だけでは区別できない(天然痘は1980年に世界から根絶されているが)。初期には水痘とも区別できない。

・発熱
・疲労感
・頭痛
・発疹
・リンパ節の腫れ(首の後ろが多い)(頚部・鼡径部)・・・天然痘では腫れない。

【経過】
・発熱、頭痛、リンパ節の腫れなどが5日ほど続く。
・発熱1〜3日後に発疹出現。赤い発疹 → 水ぶくれ(0.5-1cmで後に膿疱化) → かさぶたという経過を取る。発疹は顔面から出現し全身へ拡大していく。水痘の皮疹は新旧混在するが、サル痘(天然痘も)ではすべての皮疹が同一段階の状態という特徴がある。
・2〜4週間で自然回復。
・死亡率は1〜10%(※1)、アメリカで起きたアウトブレイク(※2)では死亡例ゼロ。免疫不全状態では重症化しやすい。

※1)天然痘の死亡率は20~50%なので、重症度は天然痘より低い。
※2)アメリカでのアウトブレイク:2003年にガーナから輸入されたサル痘ウイルス感染愛玩用げっ歯類(サバンナオニネズミ、アフリカヤマネ)からプレーリードッグに感染が広がり、これを感染源とする流行により71名のサル痘患者が発生。病原ウイルスが弱毒な西アフリカ型だった。

<今回流行例の特徴>
・今回の流行では上記典型例とは特徴が異なるとの報告あり。
・16カ国528例の検討で、潜伏期約7日間、発熱・頭痛・リンパ節の腫れなど先行症状がない例が半数、また皮疹の状態もそれぞれの部位で進み具合が異なる事例も報告されている。
・皮疹の部位が生殖器に多い、というのが今回の流行における大きな特徴。
・症状の頻度;
(皮疹)95% ・・・肛門/生殖器(73%)、体幹・四肢(55%)、顔(25%)、手掌/足底(10%)
(発熱)62%
(リンパ節腫脹)56%
(疲労感)41%
(筋肉痛)31%
(咽頭炎)21%
(頭痛)21%
(直腸炎/肛門の傷み)14%
(気分の落ち込み)10%

【検査・診断】
・サル痘ウイルス感染症に特異的検査所見はない。
・診断にはサル痘ウイルスの存在を証明する;皮膚病変(水疱や膿疱などの内容物)、血液、リンパ節生検を検体とし、サル痘ウイルスの分離、電子顕微鏡によるサル痘ウイルスの確認、PCR法・LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法を用いたサルとウイルス特異遺伝子の検出。
・血液検査でサル痘ウイルスに対する抗体検出(※)。

※ オルソポックスウイルス属間では抗原性の交叉が非常に強く、血清診断による感染ウイルス種の同定はできない。

【治療】
・特効薬はない。対症療法のみ。
・海外(アメリカやイギリス)では天然痘に対する治療薬(シドフォビル、Tecovirimat、Brincidofovirなど)が承認されており実際に投与も行われているが、現時点では日本では未承認(国立国際医療センターでTecovirimatの臨床研究が開始されたところ)。

【予防】
・天然痘に対するワクチン(種痘)が有効。
・日本でも天然痘ワクチンのサル痘への適用拡大が厚生労働省により承認され、接触リスクの高いヒトへの接種が可能となった。
・患者看護の際は、接触飛沫感染対策(手袋、マスク、ガウン、手洗い)を行う。水痘と区別できない初期は空気感染対策も必要。

<天然痘ワクチンの歴史>
・18世紀末イギリス人医師ジェンナーにより牛痘(牛の天然痘)ウイルスから開発され、種痘と呼ばれた。
・日本では江戸時代末期に導入され、明治時代以降定期接種化。
・日本では1968年以前の出生者は2-3回の種痘歴があり、1969-1975年の出生者では1回の種痘対象となっていた。種痘の免疫持続期間は不明であるが、日本人約1000人の抗体検査では、2回以上の種痘歴がある場合、種痘後30年以上経過しても効率に抗体が維持されていたという報告あり。さらに、ウイルス特異的メモリーT細胞は種痘後数十年後でも効率に維持されていた
・1956年以降日本では天然痘が報告されておらず、1976年に国内定期接種は終了した(昭和50年以降に生まれた人は接種していない)。

<サル痘予防に使われる天然痘ワクチン>
乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」:サル痘ウイルスと同属のワクチニアウイルスを弱毒化して作成した生ワクチン。
・接種対象者:サル痘暴露リスクのある医療従事者、サル痘と診断されているモノと濃厚接触して14日以内の者。
・接種回数:1回(他のワクチン接種とは27日間の期間を開ける)
★ まず東京、愛知、大阪、沖縄の4都道府県で投与可能となる予定
★ 日本では国内で生産・備蓄している天然痘ワクチンのサル痘予防への使用が承認されている。

<アメリカのワクチン事情>(参考5より)
米国でサル痘に使えるワクチンは2種類ある。
・ジンネオス(Jynneos):2回接種ワクチン。ウイルスに曝露した人や、感染リスクのある人に接種することができる。
・ACAM2000:1回接種ワクチン。天然痘用に承認されており、サル痘にも使えるものの、このワクチンには比較的有害な副作用が多く、特にHIV患者(※)のような免疫不全の人々は注意が必要だとCDCは警告している。
 しかし現在のところ、ワクチンの供給量は、対象となる人々(男性と性交渉を持つ男性、セックスワーカー、ウイルスにさらされた医療スタッフなどを含む)の需要にははるかに及ばない。
※ 米国、英国、欧州連合の調査データでは、HIVにも感染しているサル痘感染者の割合は28〜51%だった。


参考1の資料ではサル痘・新型コロナ・季節性インフルエンザを比較一覧表にしていてわかりやすいです;


参考2ではサル痘・天然痘・水痘(水ぼうそう)の比較表を提示しています;


<参考>
3.サル痘(Medical Note)
4.サル痘(厚生労働省研究班、バイオテロ対応ホームページ)
(2022.08.10:NATIONAL GEOGRAPHIC)
岡 秀昭:埼玉医科大学総合医療センター(2022/08/02:日経メディカル)


以上、結構なボリュームになってしまいました。
調べる前と後で以下のことがわかりました。

・私は1963年生まれなので種痘を2回接種した世代、そういえば肩に接種痕が残っています。すると今でも免疫が残っている可能性あり(^^)。

・1975年(昭和50年)以降に生まれた人(現在45-6歳)は種痘接種歴がないので免疫がありません。

・元々はアフリカの地域病であったが、男性同性愛者の性交渉で感染が広がったという“性感染症”という性質が浮かび上がってきました。未確認情報では、男性性愛者を斡旋する海外ツアーがあるらしいけどそれが根源?

・ウイルスの変異があったのか明言している文章は見当たらず、なぜ今のタイミングなのかは不明。サル痘ウイルスの感染力が強まった結果とは考えにくく、男性同性愛者の性的ネットワークが感染拡大しやすい環境をつくり出したという記述も目にしました。アメリカ大陸を発見したとされるコロンブスが梅毒をヨーロッパに持ち帰り、あっという間にヨーロッパ中に広がった史実を思い出しますね。

・性行為感染がメインなので新型コロナのような広がり方はしないでしょう。

・果たして日本人は種痘を再開するのか、興味深く見守りたいと思います。種痘は天然痘が撲滅されて終了したとの文章が多いのですが、実は副反応が強いワクチンで被害者が訴訟を起こし(種痘禍)、国が負け続けて中止に追い込まれたというダークな歴史があります。これが日本人に“ワクチンは怖いモノ”という考えを根付かせた原点なのです。ただし、現在使用されている、あるいは使用されようとしている天然痘ワクチンは安全、という記述も目にしました。


新型コロナは「空気・飛沫・接触」以外の“第四の感染経路”に注目すべし。

2022年08月06日 21時24分58秒 | 小児科診療
その第四の感染経路とは「マイクロ飛沫によるエアロゾル感染」です。
理解しにくいのは、聞き慣れない新しいワードが2つ並ぶから。

(マイクロ飛沫)空気中に漂う約5μm前後(未確定)の物質
(エアロゾル感染)病原体を含むマイクロ飛沫を吸うことによる感染

う〜ん、空気感染・飛沫感染とどこが違うの?
 → それは浮遊物質の大きさです。

飛沫感染 → “飛沫”(直径が5μm以上、マイクロ飛沫より大きい)
エアロゾル感染 → “マイクロ飛沫”(約5μm前後・・・未確定)
空気感染は → “飛沫核”(マイクロ飛沫より小さい)

つまり、病原体を含む粒子の大きさが、
飛沫感染>エアロゾル感染>空気感染
ということ。

飛沫はくしゃみの祭に飛び散る唾のイメージ。
ほかのエアロゾルと飛沫核は目には見えません。

いや、目に見えるエアロゾルもありました。
それは「タバコの煙」(後ほどまた登場)。

さて粒子が大きい程、浮遊する距離と時間が短くなり、地面や床の落ちます。

飛沫 → 1-2mの範囲に数秒で落下(ソーシャルディスタンディングの根拠)
マイクロ飛沫 → しばらく浮遊(30分?)
飛沫核 → ずっと浮遊

そして新型コロナの感染経路は、
・飛沫感染:7割
・エアロゾル感染:2割
・接触感染:1割
程度と推定されています。

では各々に対する感染対策はどう違うのでしょうか。

屋内では、
・飛沫感染 → マスク
・エアロゾル感染 → マスク+換気
・空気感染 → N95マスク+換気

が標準的でしょうか。

マスクを正しく装着すると飛沫感染(7割)を予防できますが、
エアロゾル感染(2割)に対抗できません。

十分な換気が必要です。
では換気はどの程度をイメージすればよいのでしょう。
よくシミュレーション動画で、

「部屋の窓を2カ所5-10cm開けておいて空気の流れる道を造る」
「ドアの近くに扇風機をおいて強制換気する」
「30分〜1時間に1回は窓を全開にする」

等、いろいろ言われてきましたが・・・

私は某講演で聴いたフレーズ、
「新型コロナウイルスを含むエアロゾルはタバコの煙をイメージしてください」
感染者が吐く息やくしゃみ・咳に含まれるエアロゾルは、タバコの煙を追い出すほどの換気をしないと部屋からなくなりません
に大いに頷きました。

タバコの煙はまだしも、ニオイってしばらく部屋に残りますよね。
ニオイがする限り粒子は浮遊している≒ウイルスは浮遊している、
ということになります。

部屋の窓を5-10cm開けたくらいでは、
タバコの煙やニオイはすぐになくなるとは思えません。
これはやっかいです。

やはり窓全開か、
それができなければ強制換気する以外方法はないでしょう。

タバコを吸う人は、洋服にもニオイが染み付いていますよね。
同じようにウイルスも付着しているはずなので、接触感染の原因になり得ます。

当院では“エアロゾル感染”が話題になった頃から“換気”に注力してきました。

診察室は窓の他に3カ所の出入り口を半開しており、
さらにウイルスを捕獲する空気清浄機と、
新たに設置した(音がうるさくて困るほど)強力な換気扇で、
強制換気をしています。
その結果、CO2濃度モニターは高いときでも600台(<1000が換気十分の指標)です。

そのおかげで、私を含めてスタッフの感染者はゼロ更新を続けています。


<参考>
飛沫対策とエアロゾル対策は本質的に違う〜COVID-19対策における適切な「換気」
(2022年08月02日:メディカルトリビューン)

学校での「運動器検診」について

2022年08月02日 08時46分49秒 | 小児科診療
この度、中学校の学校医就任の依頼があり、
いろいろ調べている最中です。

その中で話題になるのが健診に含まれる「運動器検診」。
これは2016年に導入された、新しい分野です。

そのマニュアルを読むと、
以前からあった脊柱検診(脊柱側弯症の早期発見)の他に、
整形外科領域の病名が並んでいます。
小児科医の私には縁がなく、
名前くらいしかわからないものばかりです。

(例)
単純性関節炎
足部疲労骨折
下腿疲労骨折
大腿骨頭すべり症
ペルテス病
発育性股関節形成不全
先天性股関節脱臼
腱板断裂
肩甲骨高位症(スプレンゲル変形)
腋窩神経麻痺
分娩麻痺(腕神経叢麻痺)
・・・

これらを診療経験のない整形外科医以外の医師に診断しろというのは無理があります。

検索したところ、
運動器検診は整形外科医が中心に提案して実施された経緯があるようです。
それを整形外科医が担当すれば何の問題もありませんが・・・。

しかし実際に学校医を担当するのは整形外科医以外が多く、
他科の医師からは反対意見が多かったそうです。

なんだかなあ。

であれば、怪しい所見のある学童生徒は、
整形外科へ二次検診として誘導・紹介するしかありませんね。

前項の「上半身裸の学校健診はセクハラ?」で調べた際に、
形骸化・儀式化した学校健診は淘汰されて消えゆくもの、
と感じてきましたが、
「専門外のこともチェックすべし」
というヘンな横槍が入って負担が増え、
しかし報酬は従来通りで、

調べれば調べるほど、
学校医を引き受けるモチベーションが下がってきてしまいます。

どうしたもんだろう。


新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは同時接種可能

2022年08月02日 06時08分00秒 | 小児科診療
新型コロナワクチン(mRNAタイプ)の有効性と安全性については、
イメージできる程度に日本人に認識されたと思います。

変異株への感染防御率は徐々に落ちていくものの、
重症化予防率は保たれ、
高齢者は接種回数を重ねることで自分の身を守れることもわかってきました。

現在の私の興味は、
1.オミクロン株対応ワクチン
2.インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンのハイブリッドワクチン
の有用性です。

しかしまだ市場に出回っていないので、あまり情報がありません。

そんな折、先日の政府の会議で現在単独で行われている新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種可能と決定されました。

その判断の根拠となった、新型コロナワクチンと従来のインフルエンザワクチンの同時接種の安全性を検討した報告を紹介します。

要約すると、
「インフルエンザワクチン単独と、新型コロナワクチン(ファイザー製あるいはモデルナ製)と同時接種による副反応を比較すると、ほぼ同等」
と心配には及ばないようです。


■ コロナとインフルワクチンの同時接種での副反応、ファイザー製vs.モデルナ製
ケアネット:2022/08/02)より抜粋;
  
 日本国内でも先日開催された厚生労働省の厚生科学審議会・予防接種・ワクチン分科会にて、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が了承された。世界ではすでに同時接種を行う例もあり、米国・CDC COVID-19 Response TeamのAnne M Hause氏らが同時接種による有害事象の増加有無、ワクチンメーカーによる違いについて調査した結果、新型コロナワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチンを同時接種した者は新型コロナワクチンのみを接種した者と比較して、接種後0~7日の全身反応の報告が有意に増加していたことが明らかになった。ただし、それらは軽度~中等度であること、また、同時接種による調整オッズ比[aOR]はファイザー製で1.08、モデルナ製で1.11であったことも示唆された。本研究はJAMA Network Open誌2022年7月15日号に掲載された。

・・・用いたデータはv-safe*から収集したもので、12歳以上の2021年9月22日~2022年5月1日のワクチン接種後0〜7日目の情報(接種部位反応[注射部位疼痛]と全身反応[倦怠感、頭痛、筋肉痛…]および健康への影響)だった。

・v-safeに登録されている12歳以上98万1,099例のうち、9万2,023例(9.4%)が新型コロナのブースター接種とインフルエンザワクチン接種を同時に行った。女性が5万4,926例(59.7%)、男性が3万6,234例(39.4%)で、性別不明は863例(0.9%)だった。
・年齢構成は、12〜49歳が3万7,359例(40.6%)、50〜64歳は2万3,760例(25.8%)、65〜74歳は2万4,855例(27.0%)、75歳以上は6,049例(6.6%)だった。
・ワクチン接種翌週の回答によると、ファイザー製とインフルエンザワクチンを同時接種したうちの3万6,144例(58.9%)と、モデルナ製とインフルエンザワクチンを同時接種したうちの2万1,027例(68.6%)が全身反応を報告し、ほとんどの反応は軽度または中等度だった。
・報告はワクチン接種の翌日が最も多く、その症状は倦怠感、頭痛、筋肉痛だった。ファイザー製とインフルエンザワクチン同時接種群(6万1,390例)とファイザー製単独群(46万6,439例)を比較した場合の報告割合は、接種部位反応(注射部位疼痛):62.2% vs.61.1%、疲労:44.2% vs.43.6%、筋肉痛:33.2% vs.33.4%、頭痛:33.7% vs.34.8%だった。一方、モデルナ製群(3万633例)とインフルエンザワクチン同時接種群(42万2,637例)では、接種部位反応(注射部位疼痛):70.6% vs.67.4%、疲労:52.8 vs.48.9%、筋肉痛:43.6 vs.39.6%、頭痛:43.1 vs.40.3%だった。
・インフルエンザとワクチンと同時接種した場合のファイザー製とモデルナ製でのaORを算出したところ、さまざまな全身反応については、ファイザー製が1.08(95%信頼区間[CI]:1.06~1.10)、モデルナ製が1.11(同:1.08~1)だった。接種部位反応については、ファイザー製が1.10(同:1.08~1.12)、モデルナ製が1.05(1.02~1.08)だった。
・さまざまな健康への影響についてはファイザー製が0.99(0.97~1.02)、モデルナ製が1.05(1.02~1.08)だった。そのうち、通学や業務への支障は、ファイザー製が1.04(1.01~1.07)、モデルナ製が1.08(1.04~1.12)だった。
(ケアネット 土井 舞子)

<原著論文>

<参考文献・参考サイト>

なお、現時点ではインフルエンザワクチン以外のワクチンと新型コロナワクチンの同時接種は認められていません。

学校健診で上半身裸になるのはセクハラ?

2022年07月31日 09時24分34秒 | 小児科診療
(他のブログにも書いた記事ですが、多くの人の目に触れてほしいので転載します)

ふと、中学校の学校医の依頼が舞い込みました。
引き受けるつもりですが、以前から気になることがあります。

それは「内科診察の際の着衣・脱衣問題」。

思春期女子はデリケートな世代で、
「学校検診で上半身裸にされた」
とトラウマになったり、
「学校検診で男性医師に胸を触られた、セクハラ行為だ!」
とクレームが出てきたりで、
結構メディアを賑わせています。

何が問題なのか、
どうするのがベストなのか、
私なりに調べ考えてみました。

生徒と家族の意見は、
「健診レベルで裸になる必要があるのか?」
という論調です。

そのこころは、
「健診に価値はあるの?」
「予防接種の診察同様、省略しても問題ないのでは?」
という声が見え隠れします。

実際、新型コロナワクチン接種の際、
内科診察が省略されましたが、
それによって大きな問題が起きたニュースは聞こえてきません。

逆に医師の立場からすると、
学校健診は症状のない時期に病気を早期発見する
という難しい作業を課せられた、結構重いものです。

以下のマニュアルに目を通すと、
チェックすべき病気がたくさん記載されています;
児童生徒等の健康診断マニュアル(平成27年版、文部省)
学校における運動器検診マニュアル(群馬県教育委員会、群馬県医師会)

一番の問題点は、
学校健診に対する児童生徒家族と医師の認識に大きなギャップがあること
だと思います。
それを解決するにはどうすべきか?

調べた結果の私の結論を最初に提示します;

・まず学校健診の意義・目的を理解してもらう。
・理解した上で、診察の際の脱衣・着衣を選択してもらう。
・着衣診察で病気を見逃しても医師の責任は問われない。
・健診は権利であり義務ではないので、検診拒否も可。

では、上記に至った経緯を書いていきます。
まず、学校検診の内科診察では何を診ているのかを説明させていただきます。

1.心臓と肺の異常の有無
2.胸郭異常の有無
3.脊柱側弯の有無

等々。
他に皮膚の観察(アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患や虐待を疑わせる所見の有無を確認)もありますね。

これは学校医が勝手に決めることではなくて、前出の「児童生徒等の健康診断マニュアル」で決められています。
その項目一覧表を提示します;


「脊柱・胸郭」「心臓」「皮膚」はすべての学年に入っている項目であり、
省略することはできません。

一つ一つ見ていきましょう。
まず1の「心臓と肺の異常の有無」。
これは聴診器を皮膚に直接当てて心臓の音を聞きます。
聴診器とは音を増幅して聞く器械であり、
周囲が静かでないと聞き落とすことがあります。
むろん、服の上からでは摩擦音などが混じり、感度と精度が落ちます。
聴診器を当てる場所は以下の通り;


(「聴診の基本」)より

心臓の位置と聴診部位がわかるイラストですが、
実際の肌感覚がわかりにくいのでもう一つ、

(「基礎看護技術I」)より

上図のように、心音の聴診部位は左胸(女性では乳房)を横切ります。
つまり、
・聴診部位がブラジャーで隠れていたり、
・直接見えない状態で聴診器を不正確な部位に当てたり、
・Tシャツの上から聴診器を当てたりすると、
本来のオーソドックスな診察より情報量が不足し、
病気の見落とし率が上がります。

実際の学校健診時はこんな感じ;

(「学校検診マニュアル」沖縄県南部地区医師会)より

皆さん、心電図検査を受けたことはありますか。
検査の際に、上半身裸になり電極をつけますよね。
心臓の状態を知るためには、左胸全体から情報を得る必要があるからです。
それと同じことです。

2の胸郭異常について。
胸の中央が凹む漏斗胸、逆に盛り上がる鳩胸などがあります。
基本的に目で見て(視診で)判断する病気であり、
重度の場合は手術を考慮します。
これもTシャツや運動着で上半身が見えない場合は、判断できません。

3の脊柱側弯について。
保健調査票で事前に家庭でチェックするようになりましたが、練習としての意義はあるものの、所詮素人なので「見逃し率27%」と報告されています。
医師が観察する際は「前屈位で肩甲骨の高さが7mm以上左右差」があるかないかを検出する必要があります;

(「学校検診における運動器健診の実際」栃木県医師会 長島公之先生)より

このような微妙なレベルなので、背中に下着とか服があれば情報不足で判断をあやまります。

さて、側湾症とはどんな病気なのでしょうか。
こちらにわかりやすく書いてありますので参考にしてください。

概略を述べますと、(特発性)脊柱側弯症とは
・思春期女子に多く
・進行性であり
・重度の場合は手術が必要になる病気である
という中学生女子をターゲットにしたかのような病気です。学校検診は(特発性)脊柱側弯症を早期発見して手術を回避するという役割があるのです。



しかし、恥ずかしいからという理由で着衣のまま学校診断が行われた結果「見逃し」が発生し、訴訟問題(学校医が訴えられる!?)に発展したこともあります。


1の「見落としリスク」は家庭での27%より低いものの、医師の視診でも17%と報告されています(どのように診察したのか不明です)。

注目すべきは2の「思春期女児に対する実施の難しさ」です。
学校検診を毎年うけていたのですが、風邪で受診した病院で「脊柱側弯症」と診断されてしまいました。
「えっ、学校検診では引っかからなかったの?」というのが自然の反応ですね。
学校医に問い合わせると「思春期の女子に裸の背中を出させることはできず、脊柱健診はしていない」と回答したとのこと。
生徒・保護者の希望により着衣での診察を容認したことが病気の見逃しを発生させ、配慮した医師は逆に攻められる、という双方にとって不幸な結末

まあ、学校健康診断が儀式化され、やっつけ仕事になっているという現状があぶり出されたトラブルですね。

では、どうすればいいのでしょう?

学校健診の目的を「症状を自覚しないレベルで病気を早期発見する」
に置くなら、オーソドックスな診察法(脱衣)をすべきでしょう。

それを望まないなら着衣でも何でもどうぞご自由に、その場合は、あとで病気が見つかっても学校医に責任をなすりつけないでください!

・・・と喉まで出かかっているのですが、ケンカ別れになってもまずいので、学校側へいくつか提案してみました。

・女子の診察は女医が担当するよう手配する。
 → 需要に見合う女医さんの数が足りません。

・器械(モアレ画像)を導入する。
 → 全国的には導入する学校がありますが、まだ一般的と言うほど普及はしていないようです。



・事前の説明プリントで「病気を見逃さないための内科診察は脱衣が基本です。希望により着衣も可能ですが、情報不足により病気を見落とすことがあります」と家族・本人に周知してもらい、実際の診察の際は希望スタイルで行う。
 → これが双方の事情を斟酌した現実的な選択でしょうか。

こちらの東京都議会への陳情書によると「児童生徒には学校健診を受ける権利がありますが、義務はありません」と断言しています。
つまり「受けたくなければ受けなくてもよい」のです。

これは画期的な解釈!
もう一つ選択肢が思い浮かびました。

・診察を受けたくなければ拒否してくださってかまいません。その代わりにかかりつけ医で健診を受けて書類を書いてもらってください。
 → 「着衣での診察」は今まで紹介してきた病気の早期発見できるかもしれない「権利を放棄」することです。

おそらく将来の学校健診は・・・
・心臓疾患は心電図・心音図で
・脊柱側弯はモアレ画像で
判断し、医師の診察はなくなると思います。
その方が、お互いにとってベターですね。

あるいは乳幼児健診や予防接種のように、
集団から個別への移行という流れもあるかもしれません。

「小中高校での健診を個別化すべし」という声が出てこないのは、
子ども本人も親も時間がなくてクリニックへ行く時間がない、
という社会的事情の影響が大きいかもしれません。


その症状がワクチンの副反応かどうか・・・どう判定する?

2022年05月08日 10時15分10秒 | 小児科診療
新たなワクチンが登場する度に炎上する“副反応”問題。
ワクチン接種後に出現した症状はすべからくワクチンのせいにされがちです。
しかし“真の副反応”はその内の一部と考えられています。
ただ、因果関係あり(ワクチンが原因で症状発生)も、因果関係なし(ワクチンと症状は関係ない)も、証明が難しい。

例えば、
① 予防接種翌日に発熱
② 予防接種翌日に咳と鼻水
③ 予防接種翌日に交通事故(もらい事故)
④ 予防接種翌日に購入した宝くじで1億円が当たった

という事例を考えますと、

①は副反応の可能性がありますね。しかし、集団生活の場で発熱する風邪が流行していると風邪による発熱の可能性も出てきて判断が難しいです。
②はワクチンの種類(生あるいは不活化)にかかわらず、翌日風邪症状が出ることは理論的にあり得ないので、否定的です。
③関係ないでしょう。
④関係ないでしょう。ゲン担ぎのキッカケにはなるかも。

以上のように考察できますが、確定はできません。
つまり、時間関係(ワクチン接種後に〇 〇 が起きた)だけでは、
肯定も否定もできないのです。

①をワクチンのせいだと決めつけることは、
③のもらい事故をワクチンのせいだ、
④の宝くじ当選もワクチンのおかげ、
と決めつけることと同じレベルということ。

しかし、①のパターンだけ“副反応”として取りあげられることが多いのが現状です。

さて、ワクチン接種後の症状が副反応かどうかを判定する目安として、
古くは「白木四原則」なるものがありました。
その内容は以下の通り;

① ワクチン接種と予防接種事故とが、時間的、空間的に密接していること、
② 他に原因となるべきものが考えられないこと、
③ 副反応とその後遺症が原則として質量的に強烈であること、
④ 事故発生のメカニズムが、実験・病理・臨床などの観点からみて、科学的・学問的に実証性や妥当性があること

一見、もっともな判定基準に思えますが、④の証明が難しいのが現実です。

こちらの記事によると、最近、新たな基準を提唱する人が出てきました。

Myersらは、ワクチン接種と副反応について以下の有用な質問を投げかけている;
〔書籍『Do Vaccines Cause That?!: A Guide for Evaluating Vaccine Safety Concerns』(Immunizations for Public Health, 2008)〕

① 生ワクチンを使用した場合、ワクチンウイルスは分離されたか
② 病気や状態はワクチンを接種した人にのみ発生し他の人には発生していないか
③ ワクチンがどのように有害事象を引き起こす可能性があるかを説明できる既知の生物学的機序はあるか
④ ワクチン以外に有害事象について考えられる説明はあるか
⑤ 予防接種後に最初の症状が現れたか

①は「白木四原則」の④の一つの答えですが、不活化ワクチンには適用できません。
ポイントとなるのは、
②の「ワクチンを接種した人にのみ発生し他の人には発生していないか?」
だと思います。
これは“統計学”という学問の考え方を取り入れた基準であり、
因果関係が不明な事象に対して用いられる手法です。

「白木四原則」には残念ながらこの“統計学”的視点がないのが致命的欠陥です。

例えば、ワクチンを接種した1万人と接種していない1万人を比較して、
ある症状の出現率に差があるかどうか、を統計学的に検討します。

ワクチン接種群の方が非接種群より多い
 → ワクチンと因果関係有り

ワクチン接種群と非接種群で差がない
 → ワクチンと因果関係なし

と判断されます。
ワクチンをしてもしなくても症状出現率が同じ場合、
ワクチンのせいにできませんよね。

これは客観的であり、誰もが納得できる手法です。

記事の中ではこの基準に基づき、HPVワクチンの副反応問題を検討しています;

① 生ワクチンではない
② 多様な症状はワクチン非接種者にも発生する
③ 説明できる機序はない
④ 症状と発症時期からCRPSやPOTSの紛れ込みの可能性がある
⑤ 今回問題となった多様な症状は科学的に説明できなければ紛れ込みの可能性があり、それだけでは予防接種と因果関係があるとはいえない

以上より
「副反応疑い例の多くはHPVワクチンとの因果関係が認められず、
多種多様な症状が偶然にHPVワクチン接種後に見られた紛れ込みの可能性が高い」
と結論づけています。

これがサイエンスです。
自分が経験したこと、目の前で起きたことは確かにインパクトがありますが、
そのような先入観や感情を排除し、常に科学的に検証する姿勢を持ちたいものです。


クレベリンは効果ありませんでした、嘘ついてごめんなさい <(_ _)> by 大幸薬品

2022年05月04日 13時38分58秒 | 小児科診療
当ブログでは「空間除菌は無効」と、
たびたび(しつこく)取り上げてきました。

■ ウイルスより危険な「ウイルスプロテクター」(2013.2.19
■ 再度、「エアーマスク」の安全性と効果について(2014.2.8
■ とうとう消費者庁にダメ出しされた「空間除菌」グッズ(2014.4.18
■ 消毒に使われる「塩素」に関する情報2つ(2014.12.3

もう、8-9年前になるのですねえ・・・懐かしい。

さて、この4月に消費者庁から最終通告があり、
クレベリン販売会社の大幸薬品がようやく、
と今更・・・ホントに今更ながら謝罪広告を出しました。

返金はないそうです。

このような“疑似科学”に騙されないよう、
常に情報のアンテナを張りましょう。

もう一つ話題提供を。

他にも以前から怪しいと思うCMに、
「コンドロイチン」
「グルコサミン」
があります。

コンドロイチンやグルコサミンを飲むと、
体に吸収される前に消化・分解されてしまいます。

バラバラになって体内に吸収された各成分が、
血流に乗って関節内に再集合し、
再びコンドロイチンやグルコサミンに合成されることは、
科学的にあり得ません。

ちょっと考えればわかりそうなものなのに・・・

過剰演出のCMや、
有名人がニコニコして効果を宣伝すると、
コロッと逝ってしまうファンが後を絶たないのでしょう。

実際の医療現場では、
ヒアルロン酸の局所注射が行われています。
内服ではなく、関節内に直接注射するのです。

これなら成分が分解されずに病気の場所にたどり着きますから、
効果が期待できます。

なお、コンドロイチンやグルコサミンを関節内に直接注射すると有効なのかどうか、私は知りません。

こちらの厚生労働省のHPには以下のように書かれています:

グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントの有効性について
コンドロイチンは変形性膝関節症または変形性股関節症の痛みに有効ではないことが研究結果から示唆されています。
グルコサミンが変形性膝関節症の痛みに有効かどうか、また、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントがそれぞれ他関節の変形性関節症の痛みを軽減するかどうかは不明です。

まあ、いわゆる“健康食品”や“トクホ”は大体このレベルですね。


さて、視点を変えて、
「人間がいかに思い込みに左右されるか?」
というお話をします。

新しい薬が開発されて厚労省が認可する際に、
偽薬(プラセボ、プラシーボ)との比較試験が行われます。

外見上、区別ができないようにして新薬と偽薬を被検者に投与し、
効果を比較するのです。

新薬に6割(?)以上の効果が認められれば、
かつ偽薬と統計的に有意差があれば、
有効と判断されます。

しかし、偽薬を投与された被験者でも、
「効果があった」
と回答する人が一定数(だいたい3割くらい)います。

え? くすり成分は入っていないんですけど・・・

薬と思って飲むとニセ薬でもなぜか効いてしまう、
この現象を「プラセボ効果」と呼びます。

逆の現象も観察されています。

ニセ薬を投与されてもなぜか副作用が出てしまう現象。

新型コロナワクチンの副反応についての検討で、
①ワクチン成分の入った液と、
②ワクチン成分の入っていない液(生理食塩水)を、
どちらか本人にわからないように接種し、
副反応の発生頻度を比較したところ、
②でも①の半分の確率で副反応が発生したとの報告があります。

偽薬に反応して副作用症状が出る現象を“ノセボ効果”と呼びます。

■ 症状の多くは心理要因 コロナワクチン接種後
2022.3.15:47ニュース)より一部抜粋;
 新型コロナウイルスのワクチンを接種すると頭痛や発熱、体のだるさなどの異常が起きることがある。一般には副反応と考えられているこうした症状の多くが、薬の直接の作用ではなく、接種への不安や懸念といった心理要因によって引き起こされている可能性があるとする研究結果を、米ハーバード大のチームがまとめた。
 思い込みなどによって薬効と関係のない有害事象が起きる現象は「ノセボ効果」と呼ばれる。チームは各国で実施されたmRNAワクチンなどの臨床試験データを分析。すると1回目の接種後に起きた症状の76%、2回目の52%がノセボ効果と関係しているらしいことが示された。
 チームは米国や英国、中国などで行われた12件、約4万5千人の臨床研究データを利用。本物のワクチンの接種を受けた人と、比較対照のため生理食塩水など偽物のワクチンを接種した人で、発熱や頭痛、倦怠(けんたい)感など症状の現れ方を比較した。
 参加者は自分がどちらを接種したか知らされていないが、偽ワクチンでも1回目の接種で35%、2回目で32%の人に症状がみられた。ただ本物のワクチンの方が1回目で46%、2回目で61%と症状の割合が高かった。
 統計的な手法で分析すると、本物の接種でも症状の半分以上がノセボ効果によるものと考えられた。

前述のプラセボ効果も、このノセボ効果も、
「約30%」
と発生率が同じくらいのところが興味深いですね。

まあ、人間なんてそんなもの。

巷では“病は気から”と言われていますから、
“効いた感じがする”と本人が幸せになれば、
それはそれでよいのかもしれませんが・・・。

逆に、ワクチンを接種した際に、
“副作用が出た気がする”
となると困ります。
ワクチンがえん罪を被り、
有効なワクチンが接種できなくなることがあるからです。

これは、ワクチン成分による症状ではなく、
「注射は痛い、注射は恐い」
という心理的要素が大きい副反応であり、
注射液がワクチンではなく生理食塩水(つまり偽薬)でも同じ頻度で起こりえると思われます。

以前、ワクチンの副反応について調べたことがありますが、


<参考>
▢ 低濃度二酸化塩素による空中浮遊インフルエンザウイルスの制御 ―ウイルス失活効果の湿度依存性―
西村 秀一・林 宏行・浦 繁・阪田総一郎