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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

フェライトコアが高周波ノイズを除去するしくみ

2010-02-24 00:03:12 | 電子回路
シールド線はSGおよびFGに1点接地することによりシールド線全体を低インピーダンスに保ち、静電誘導ノイズを遮蔽しようとするものです。具体的には、静電誘導ノイズによりシールド線の電位が変動しようとしても、ノイズ電圧はシールド線を電流となって流れ、FGに流れ込み信号線に影響を与えません。

しかしながら、ノイズが高周波になれば必ずしも上記の理屈の通りにはいかなくなります。例えば、シールド線をFGに接続する電線は、高周波電流に対しては誘導リアクタンス(インダクタンス)として働くようになります。誘導リアクタンスは、Z=ωL(Ω)ですから、ノイズの周波数が高いほど、また電線の長さが長いほど大きな値となり、ノイズがFGに流れ込むのを妨げます。よって、シールド線をFGに接続する電線はできるだけ短く、また表面積の広いものが好ましいといえます。おおむねノイズの周波数がMHz(メガヘルツ)オーダーを超える場合は、この点に十分注意する必要があるでしょう。

以上のように、1点接地による静電シールドは高周波ノイズに対してはシールドの役目を果たすことが困難になりますが、ならば高周波ノイズに対しては如何に対処すればいいのでしょう?さてさて、そこは世の中うまくできているもので、実は高周波専門のノイズキラーが存在するのです。それが本論であるフェライトコアです。作図の関係で角筒の絵になっていますが、実際のフェライトコアの形状は円筒です。ノイズ対策の一般論はノイズをアース(FG)に流すことですが、フェライトコアはアースに流すのではなく、ノイズを熱に変換して除去します。

フェライトコアを取付けたシールド線に高周波電流が流れると、それによって発生した磁界がフェライトに集まり、フェライト内に磁束φを作ります。この磁束φに対するインピーダンスがフェライトコアのインピーダンス(Ω)であり次式で表されます。

Z=R+jX (R:磁束φに対する抵抗性分、X:磁束φに対するリアクタンス成分)

このリアクタンスXと抵抗Rの値はフェライトコアの透磁率μ(ミュー)と磁束φの周波数によって決まります。一般に、透磁率μは複素数 μ=μ’-jμ” で表され、虚部のμ”は低周波では非常に小さく(磁束φが直流の場合μ”=0)、1MHzを超える辺りから顕著に現れてきます。そして、XおよびRのμとの関係を単純化して表せば

リアクタンスXは X=ωμ’抵抗Rは R=ωμ”となります。

添付の特性図は村田製作所製の代表的なフェライトコアの特性です。
http://www.murata.co.jp/products/emc/basic/ferrite/reason.html

透磁率μ’は3MHz辺りから急峻に低減し、μ”はほぼ1MHzから急上昇しその後なだらかに低下しています。これにともない、フェライトコアのインピーダンスは、200MHz以上はほとんどR成分のみになっています。

Z=R+jXより、リアクタンス成分Xは磁束φと90°の位相差の関係にあり、力率がゼロとなり磁気損失は生じません。これに対し、抵抗成分Rは磁束φと同相であるため、(φ^2)Rの磁気損失が発生し、結果として高周波ノイズは熱消費されるのです。一般に、フェライトコアがノイズ除去に有効とされる周波数は30MHz~1GHzと言われています。

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コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-07-11 14:44:47
結局意味わからん
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そこまでは・・・ (kaoaru)
2013-01-24 12:05:34
真剣に考えたことはなかったです。

ただ、感覚的に「ケイ素鋼板」の鉄心で高周波用コイルはムリだねぇ~!くらいです。

一番効率のいいのは「トロイダルコア」ですよねぇ~!

VHFとかUHFなんかほんの2~3回しか巻かないし、トリファイラ巻きとかやると・・・っていうシロモノだという感覚です、私は。

FMチューナーのフロントエンドのコイルをドライバーの柄でかるくコンコンとやるとほんとにそのまま音になる・・・っていうもの面白かったです。
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EMCの世界 (ホロン)
2013-01-25 20:00:35
フェライトコアがノイズ対策品として重宝するのは仰るようにVHFとかUHFなどの高周波、つまり電波の領域ですね。EMC対策では盛んに話題になります。

私はもうこの歳でいまさら高周波をやろうとは思わないのですが、ディジタルも少々かじっていますので、その時には多から少なかれ考えないわけにはいきませんね。
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