electric

思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

少し詳しいΔ∑変調③ 積分器の出力

2010-03-25 02:23:11 | 電子回路
では、いよいよ積分器の出力波形について考えてみましょう。添付の図は、「1ビットオーディオ」と題された、シャープ(株)の技術論文(シャープ技報、第77号・2000年・8月、増田清、早瀬徹、佐藤昭治)に掲載されている波形図を引用し、色を付けて再現したものです。何やら複雑怪奇な波形に見えますが、黒い矢印先端の「赤の横棒」が積分器の出力です。さて、どのようなメカニズムで積分器の出力はこのような波形になるのでしょうか?順を追って見ていきましょう。まず、この波形図が示している要素は次の4つです。

青い線:アナログ入力
赤の横棒:積分器の出力
黒の矢印:アナログ入力の振幅
水色の矢印:量子化器の出力が負帰還されたもの

なだらかに変化する「青の波形」はアナログ入力信号(analog signal)です。「黒の矢印」は長さがアナログ信号の振幅、矢印の向きが振幅の正負を示しています。「水色の矢印」は量子化器(quantizer)の出力が、遅延(1sampled deray)を経て加算器(adder)に負帰還(feedback)される信号です。これはディジタル信号ですから、矢印の長さは常に一定(単位ベクトル)であり、矢印の向きは、積分器の出力がプラスであれば下向き、積分器の出力がマイナスであれば上向きに示されています。また水色の矢印はディジタルとは言え、入力のアナログ信号と加減算されるのですから、その長さ(振幅)はアナログ量としての意味を持ちます。そして「赤の横線」が積分器の出力です。(黒の矢印の長さは、その時のアナログ入力の振幅と一致しますが、本図では作図の都合上、少し長さが異なっています)
【加算器(adder)は負帰還によって、結果的には差分器になります。】

積分器の出力が0Vより大きければ量子化器の出力は「1」、積分器の出力が0Vより小さければ「0」となります。この1と0は水色の矢印の向きに対応しており、1の場合は上向き、0の場合は下向きになりますが、加算器(adder)にフィードバックされると、負帰還によって上下逆になります。

以降、黒の矢印および水色の矢印ともに「ベクトル」として扱います。積分器の出力がプラス(threshold:0Vより上)の時、水色のベクトルは負(下向き)になり、その時の黒のベクトルと加算され、加算値が次の積分器出力になります。その積分器出力値がマイナス(threshold:0Vより下)になれば、水色のベクトルは正(上向き)になり、その時の黒のベクトルと加算され、加算値が次の積分器出力になります。この動作を延々と繰り返すことによって、波形図に見られるような積分器の出力波形になるのです。なお、その結果として、アナログ入力の増大に対して抑制がかかり、負帰還が働いていることが波形図から読み取れますね。

ここで興味深いのは、先述のように、フィードバックされるディジタル信号の振幅がアナログ量としての意味を持つこと、同様に、差分器を通過したアナログ信号が振幅としてのアナログ量を保ちながら、時間軸上において離散化されることです。両者とも時間軸上ではディジタル、振幅軸上ではアナログという中間的な信号ですね。まさにΔΣ変調という中間信号生成の源であるように思えてきます。

関連記事:
少し詳しいΔ∑変調④ ノイズシェーピング 2010-03-27
少し詳しいΔΣ変調② 始めにΔ変調ありき 2010-03-22

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 少し詳しいΔΣ変調② 始めにΔ変... | トップ | 少し詳しいΔ∑変調④ ノイズシ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

電子回路」カテゴリの最新記事