electric

思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

西本智実のドヴォルザーク「新世界」

2010-03-09 22:10:48 | 音楽・映画
ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調 作品95 「新世界より」
演奏:ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:西本智実

この曲を耳にしたのは、いったいどれくらい前のことだったろう。思い出せないくらい前のことに違いないが、当時は何度も何度も繰り返し聴き込んでいたことを覚えている。もっぱらカラヤン指揮ベルリンフィルの演奏だった。だからカラヤンの解釈によるこの曲の楽想を長年概念として持ち続けて来たのだが、この西本智実による演奏を聴いて目から鱗が落ちた。

新鮮。まずはこの一言。そして、洗練。それだけではない、曲に対する西本智実の確信がハッキリと分かる。曖昧を排除し、潔く“こうだ!”という指揮ぶりは大いに頷ける。これはショスタコーヴィチやチャイコフスキーなどの演奏にも通じるものであり、西本智実が本物であることを、こんどはこちらが確信するに至った。よくもまあ、あのか細い腕からこれほど力強い音を引き出すものだ。指揮台の上の彼女を鬼神と称する所以であろう。このドヴォルザークの「新世界交響曲」は種々多様な魅力的フレーズで全体が構成されている名曲だが、それら各々に絶妙の表情を与え、曲全体を完成させている西本智実に賞賛の拍手を送りたい。疑いなく現代の名演奏のひとつに数えられるだろう。弦による短く穏やかな開始から一瞬の間をおいて強く叩きつけられるティンパニ、それですべてが決まった。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする