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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

少し詳しいΔ∑変調④ ノイズシェーピング

2010-03-27 00:24:17 | 電子回路
ΔΣ変調は動作アルゴリズムに基づく「ノイズシェーピング」という特性を持っています。これは多くのWebサイトでも紹介されているように、量子化ノイズが対象信号よりも高い周波数に大きく分布し、対象信号帯域付近の量子化ノイズが小さくなると説明されます。添付図を見てください。下図のグラフがノイズシェーピングの特性です(シャープ技報 77号 2000年8月「1ビットディジタル」より引用)。ΔΣ変調回路の積分器の次数とノイズシェーピング特性は対応し、グラフでは1次~7次までの特性が示されています。このように次数が高いほど特性は急峻になり、対象信号帯域付近のノイズはより小さくなります。では、なぜΔΣ変調はノイズシェーピングの特性をもつのでしょうか?今回はこれを考えてみます。

始めに少し準備体操をしましょう。水色バックのブロック図は、ディジタル信号処理における微分器と積分器です。(「微分は引算、積分は足算」を参照してください)
この微分器と積分器の伝達関数を求めてみます。(伝達関数:ゲイン、周波数応答、等)

【微分器の伝達関数】
出力Yは入力XからX・Z^-1を引いたものだから
Y=X-X・Z^-1
Y=X(1-Z^-1)
よって、伝達関数は
Y/X=1-Z^-1 

【積分器の伝達関数】
出力Yは入力XにY・Z^-1を足したものだから
Y=X+Y・Z^-1 
Y-Y・Z^-1=X
Y(1-Z^-1)=X
よって、伝達関数は
Y/X=1/(1-Z^-1)

はい、微分器の伝達関数は:1-Z^-1 、積分器の伝達関数は:1/(1-Z^-1)となりました。互いに逆数になるのは想定通りですね。(この結果は、あとで使います)

さて、「ΔΣ変調ブロック図」のフォワードラインに存在する積分器は、上で伝達関数を求めた積分器の「積分ブロック図」として表すことができます。何故ならば、差分器を通過して積分器に入力される信号は、振幅はアナログ量ですが時間軸上では離散化されているからです。つまり縦軸(振幅)はアナログ、横軸(時間)はディジタルということですね。

では、ΔΣ変調ブロック図に量子化ノイズ:Nを想定して、入出力の関係を数式化してみましょう。
① 積分器に入力される信号:X-Y・Z^-1 
② 積分器の伝達関数:1/(1-Z^-1)
③ 積分器の出力:(X-Y・Z^-1)/(1-Z^-1)
④ 量子化器の出力:(X-Y・Z^-1)/(1-Z^-1)+N

となります。④の量子化器の出力は、本アルゴリズムの出力そのものですから
Y=(X-Y・Z^-1)/(1-Z^-1)+N -----(1)

となり、これをYについてまとめます。
Y(1-Z^-1)=(X-Y・Z^-1)+N(1-Z^-1)
Y(1-Z^-1)+Y・Z^-1=X +N(1-Z^-1)
Y=X +N(1-Z^-1) -----(2)

となって、出力Yに現れる量子化ノイズは、N(1-Z^-1)となります。
さて、(1-Z^-1)とは何でしょう。準備体操でやりましたね。そう、微分器の伝達関数です。よって、帯域一様に分布する量子化ノイズNは、微分特性によって低域成分が減少し、高域成分が増加する形になります。これがノイズシェーピング特性ということですね。

シリーズ①でも引用させていただいた、Yoshimitsu Murahashiさんのサイト「ΔΣ変調の部屋」では、Java Appletを使って1次と2次のΔΣ変調器を動かしてノイズシェーピングの特性を見ることができます。これも非常にわかりやすいので、ぜひ訪問してみてください。「ΔΣ変調のスペクトル

関連記事:
少し詳しいΔ∑変調③ 積分器の出力 2010-03-25
少し詳しいΔΣ変調①序 2010-03-21


コメント (2)
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