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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇ストフスキー指揮のカール・オルフ:カルミナ・ブラーナ

2010-05-25 09:26:15 | 合唱曲

カール・オルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」
           
            序  <運命、世界の王妃よ>第1曲―第2曲
           第1部<春に>第3曲―第5曲
               <草の上で>第6曲―第10曲
           第2部<居酒屋にて>第11曲―第14曲
           第3部<求愛>第15曲―第23曲
           エピローグ<ブランチフロールとヘレナ>第24曲
                  <運命、世界の王妃よ>第25曲
           

指揮:レオポルド・ストコフスキー

管弦楽:ヒューストン交響楽団

ソプラノ:ヴァージニア・ベビキアン
テノール:クライド・ヘーガー
バリトン:ガイ・ガードナー
合唱:ヒューストン合唱団

CD:EMI(新星堂) SAN‐13

 カール・オルフ(1895年―1982年)の世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」の第1曲を、初めて聴くとその雰囲気の異様さに見まがえるリスナーも出てこよう。それもそのはず、作曲者のカール・オルフは、自他共に許す“バーバリズム”に傾倒した作曲者なのだから。バーバリズムとは何かというと、野蛮とか未開性、あるいは野蛮な行為、無作法、また、反文化的な行為を指す。これだけなら何か悪いことのようにも取れるが、カール・オルフの場合は、和声・旋律・リズムのすべてが、単純さ、明快さ、力強さにあふれているのだ。そもそも「カルミナ・ブラーナ」の意味が分らないと、この曲を充分に味わうことは不可能だ。そこで「カルミナ・ブラーナ」の紹介から始めてみよう(「ウィキペディア」による)。

 「カルミナ・ブラーナ」とは、19世紀初めにドイツ南部のバイエルン州にあるベネディクト会のボイレン修道院で発見された詩歌集のことだ。歌の数は約300編にのぼり、ラテン語、古イタリア語、中高ドイツ語、古フランス語などで書かれていた。書かれたのは11世紀から13世紀の間と推測されている。歌詞内容は若者の怒りや恋愛の歌、酒や性、パロディなどの世俗的なものが多く、おそらくこの修道院を訪れた学生や修道僧たちによるものと考えらている。オルフはこの詩歌集から24篇を選び(内1曲はオルフの自作)、曲を付けた。「春に」「居酒屋にて」「求愛」の3部から成り、その前後に序とエピローグがつく。1936年に完成した。

 カール・オルフは、舞台音楽として作曲したようで、このCDを聴いていても、どことなく舞台上でダンサーが踊っている光景が目に浮かんでくるような感じもする。全部で25曲があるが、オーケストラ伴奏で、ソプラノ、テノールそれに合唱が交互に歌われ、聴き進むうちに最初の異様さも次第に薄らぎ、なかなか雰囲気のある世俗カンタータであることが、徐々に理解でき、中世の世界へとリスナーを誘ってくれる。中世の詩歌集という我々からすると理解さえ難しい雰囲気を、カール・オルフの単純で明快な作曲技法を通して、何となく理解できるような雰囲気がしてくから不思議だ。美しい部分もありなかなか聴かせるが、全体としては通常のクラシック音楽の世界とはまた別の世界へと迷い込んだような気がする。

 演奏は、ソプラノ、テノール、合唱団それにレオポルド・ストコフスキー指揮ヒューストン交響楽団とも最善の仕上がり振りを見せ、ともすると単調になり勝ちなこの曲を、飽きることなく最後まで楽し聴くことができるのが何より嬉しい。さすがは名指揮者ストコフスキーのことはあると、ひとり納得した。カール・オルフはドイツ生まれの作曲者だが、「フーガやソナタといった純音楽を書くことは不可能である。そういった形式の可能性は、すべて18,9世紀に使い果たされてしまった。劇場音楽こそ未だ開拓されざる世界であり、そこに可能性を見いだすことができる」と語ったように、演劇や舞踏の世界に興味を示し、他にない独特の世界をつくり出した作曲者でもあった。
(蔵 志津久)


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